
九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子
九井諒子
HARTA COMIX
恐るべき才能とは、この人にこそ使うべき。
1冊の本の中で、様々なジャンルと様々な画風を圧倒的な画力で混在させ、単行本わずか三冊にして、すでにその独自のポジションを築きつつある九井諒子。 本作は、人と人もしくは人とお伽話に登場するような存在との”絆”を描いた作品であり、竜と人、人魚と少年、神様と小学生、狼男、超能力者など、住む世界を異にする者の間の関係が描かれる。ファンタジーのようであり、SFのようであり、奇譚のようでもある。 自分たちが過ごす日々と同じ時間が流れるところに突如差し込まれる、異世界からの存在はなぜかとても自然で、物語に不思議なリアリティが流れている。その不思議な状況にどう対応するか、読者と作家の距離はそこで測られる。 九井は、どれもやさしく寄り添うような結末でもって、読者に感覚のリアリティをもたらしてくれる。怖ろしくレベルの高い、マンガだ。
0投稿日: 2013.09.20ヘルタースケルター
岡崎京子
ヘルタースケルター
岡崎京子
FEEL YOUNG
崩壊へと向かう美の世界
整形手術で美しさを作り出し続ける人気絶頂のファッションモデル・リリコは、恋人の裏切りや美しく若いモデルへのライバル心と嫉妬で、徐々に歯車は狂い、破滅への道を歩み始める。背中がブルっと震えるようなラストシーンは、見せ物として生き、戦い、負けたリリコにとって、行き着くべき場所だったのかもしれない。 人間にとって、とりわけ女性にとって“美”とは何か、“欲望”とは何かを常に問いかけ、価値観を揺さぶるこのマンガは、マンガ史に留まらず、表象の歴史の中でも大きな意味を持っている。 「ヘルタースケルター」連載終了後、岡崎京子を襲った事故は、マンガの衝撃的な内容とともに強く印象に残っている人も多いだろう。 今後新作が出るのかどうかさえもわからない今はまず、繰り返しこのマンガを含む、けっして多くはない作品を読み続けていきたい。
0投稿日: 2013.09.20
