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BACH/バッハさんのレビュー
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  • ぼくらのフンカ祭(1)

    ぼくらのフンカ祭(1)

    真造圭伍

    ビッグスピリッツ

    10代の苛立ちは、どうしようもないけど、どうにも楽しいもんだったりする。

    何も変わらない毎日に何かを変えたいという苛立ち、そしてやっぱり誰かがいつの間にか変えてくれないかなという怠惰。10代の悩みの多くはこんなことだったりする。 いつもの日常に、ちょっと不思議な状況とギャグを加えて、楽しい一大事を描く真造圭伍。文化庁メディア芸術祭マンガ部門での新人賞受賞や、雑誌「フリースタイル」の「THE BEST MANGA 2013 このマンガを読め!」での1位など、話題の『僕らのフンカ祭』は、青春と噴火と地元を巡る作品。 過疎の町を突如襲った噴火は変えたのは、観光地化による賑わいと学校閉鎖に反対する文化祭だった。クールというより冷めた富山とノリノリでモテたがりの少々バカな桜島の高校生コンビは、変えたいと思うことは変えられず、不可抗力で変わる環境にどうにかアジャストして、自分の人生の楽しみ方を見つけていく。 どうしようもなく関わらなくてはいけない自分の人生も、なかなか捨てたもんじゃないと昔の自分に言いたくなる。

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    投稿日: 2013.09.20
  • 九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子

    九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子

    九井諒子

    HARTA COMIX

    恐るべき才能とは、この人にこそ使うべき。

    1冊の本の中で、様々なジャンルと様々な画風を圧倒的な画力で混在させ、単行本わずか三冊にして、すでにその独自のポジションを築きつつある九井諒子。 本作は、人と人もしくは人とお伽話に登場するような存在との”絆”を描いた作品であり、竜と人、人魚と少年、神様と小学生、狼男、超能力者など、住む世界を異にする者の間の関係が描かれる。ファンタジーのようであり、SFのようであり、奇譚のようでもある。 自分たちが過ごす日々と同じ時間が流れるところに突如差し込まれる、異世界からの存在はなぜかとても自然で、物語に不思議なリアリティが流れている。その不思議な状況にどう対応するか、読者と作家の距離はそこで測られる。 九井は、どれもやさしく寄り添うような結末でもって、読者に感覚のリアリティをもたらしてくれる。怖ろしくレベルの高い、マンガだ。

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    投稿日: 2013.09.20
  • ヘルタースケルター

    岡崎京子

    ヘルタースケルター

    岡崎京子

    FEEL YOUNG

    崩壊へと向かう美の世界

    整形手術で美しさを作り出し続ける人気絶頂のファッションモデル・リリコは、恋人の裏切りや美しく若いモデルへのライバル心と嫉妬で、徐々に歯車は狂い、破滅への道を歩み始める。背中がブルっと震えるようなラストシーンは、見せ物として生き、戦い、負けたリリコにとって、行き着くべき場所だったのかもしれない。 人間にとって、とりわけ女性にとって“美”とは何か、“欲望”とは何かを常に問いかけ、価値観を揺さぶるこのマンガは、マンガ史に留まらず、表象の歴史の中でも大きな意味を持っている。 「ヘルタースケルター」連載終了後、岡崎京子を襲った事故は、マンガの衝撃的な内容とともに強く印象に残っている人も多いだろう。 今後新作が出るのかどうかさえもわからない今はまず、繰り返しこのマンガを含む、けっして多くはない作品を読み続けていきたい。

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    投稿日: 2013.09.20