
the SIX ザ・シックス
井上夢人
集英社文庫
良いお話になったのが逆に残念
望まない能力を持ってしまった子どもたちのお話である。一人目からしっかりとストーリーに引き込まれてしまい、3人目の壮絶な話にどっぷりと浸かりこんだ。しかし周辺に望まれる能力を持った六人目であれっと思い、良いお話でまとめようとした最終章に逆にがっかりした。子どもたちの心情 疎外感 孤立感の解消 で話をまとめたほうが良かったのではないか。
0投稿日: 2021.08.08
深海生物学への招待
長沼毅
幻冬舎文庫
深海もの科学エッセイ
チューブワームを中心とした深海生物の話を中心に色々な話を順不同に並べたような科学エッセイである。一つ一つの話は平易で面白く読むすすめることができる。ただ一冊の本として全体の構成を見るといかにも「寄せ集め」という印象は免れない。特にこういった科学物に必須の図版がないのが残念である。
0投稿日: 2021.08.04
ブルボン朝 フランス王朝史3
佐藤賢一
講談社現代新書
ヨーロッパ歴史上、最も王朝らしい王朝
ヨーロッパ歴史上、最も王朝らしい王朝、典型的な王朝。小説、映画、TV、漫画 で繰り返し取り上げられているだけに一応わかったつもりにななっていたが、改めてこの作品を読むと色々と気付かされる点があった。何よりも王朝の始祖アンリ4世の偉大さ功績が日本ではあまり知られていないと思った。ルイ14世の華やかさに幻惑されてしまっている。 語り口は例の佐藤賢一の本領発揮。グイグイ読みすすめることができる。
0投稿日: 2021.08.01
ヴァロワ朝 フランス王朝史2
佐藤賢一
講談社現代新書
王様達頑張る
同じ時代を扱った佐藤賢一の「双頭の鷲」「傭兵ピエール」を既に読んでいたせいか、その作品の通史的な時代背景をよく知ることができ大変に興味深く読むことができた。最近の歴史書は経済史視点や技術史視点なものが多いが、やはり人物史は物語として無条件に面白い。
0投稿日: 2021.07.31
桜川のオフィーリア 川に死体のある風景
有栖川有栖
e-NOVELS
思い込みが
推理小説というものは真相 真犯人を明らかにするものだ との思い込みがあったが、この作品は良い意味でその思い込みを潰された。時間軸や人物の登場順がやや前後するところがあって事件の真相がややつかみにくかった。後半になって話がどんどん展開していって面白くなってきた。オチもまずまず美味しい。
0投稿日: 2021.07.30
リトル・バイ・リトル
島本理生
講談社文庫
ゆるくて淡い感じ
特に大きな事件が発生するわけではなく、日常生活のエピソードを淡々と描いた、ゆるくて淡い感じの作品である。文書のスタイルもやや類型的で特徴がないがその分とても読みやすい。ただ周の描き方がどうにもこなれていない感じがして、違和感 唐突感が拭えなかった。随分若書きの作品とのことでそれなりに納得した。
0投稿日: 2021.07.29
ふたつのしるし
宮下奈都
幻冬舎文庫
ストーリー構成はいいが
前半の学校生活の部分が随分重苦しい展開で読みにくかった。いじめたり いじめられたり 無視したり 無視されたり そういえばそういう事あったよな と身につまされた。二人の出会い 二人が惹かれ合った という一番肝心の部分がいかにも唐突で説得力がない。締めくくりの章は良かった。
0投稿日: 2021.07.24
運命の湯/運命の人はどこですか?
瀬尾まいこ
祥伝社文庫
「佳作」
この作者の力が抜けたユーモアのある語り口が大好きで入入りな作品を読み漁っている。この短編も「佳作」という表現がぴったりな、ほのぼのとして良い作品だと思う。ありきたりの恋愛物ではなく、相方に銭湯のおじいちゃんを持ってきたところなど実に秀逸なアイデアと感じた。
0投稿日: 2021.07.24
桜月夜に
皆川博子
e-NOVELS
散文詩
御年90を過ぎてもなお盛んに新刊を出されている皆川博子さんの作品は非常に幅広いが、幻想小説も重要なジャンルの一つである。この作品に限らず 詩 そして 歌が作中に非常に効果的に使われている。小説として読むとストーリーがはっきりせず幻想の霧の中に逃げ込んでしまうような印象を抱くが、散文詩としてじっくり読むと丁寧で印象的な言葉遣いに感心する。
0投稿日: 2021.05.19
陽はまた昇る 黄昏ホテル
皆川博子
e-NOVELS
幻想的小説の典型
御年九十を越して今でも小説を書き続けている作者の典型的作品である。 文章の書き方、単語の選び方のうまさは、ひたすら感心するばかりである。もっともストーリーの組み立て、展開の点から見ると幻想小説ということなのでどうにもとりとめがない。 私個人的にはこのような短編幻想物より、ストーリーが明確な長編ものの方が好きである。
0投稿日: 2020.10.27
