
ボックス! 下
百田尚樹
太田出版
迫力いっぱい
ボクシングを題材とした小説には迫力あるものが多いが、この作品の迫力もなかなかのものである。特に高校ボクシングを題材としただけあって、アマチュアボクシング特有の規則の解説がとても興味深い。単なる学生スポーツと言えない怖さがよく分かる。ストーリーとしてはややお約束どおり という展開が多いが、逆にその分 引っかかりがなくどんどん読みすすめることができ、迫力が増してくる。
0投稿日: 2022.03.19ボックス! 上
百田尚樹
太田出版
やや陳腐ではあるが
ストーリーの流れや登場人物の造形そして色々なエピソードがあまり意外性がなく想定の範囲内で、それでも随分元気よく踊っている。文章は大変読みやすく、勢いがあるが、次の展開が読めてしまうような前フリが所々にありやや興ざめ。
0投稿日: 2022.03.19拳に聞け!
塩田武士
双葉文庫
掛け合い漫才
ボクシングがメインテーマの作品ではあるが、実は大阪弁での掛け合い漫才のような会話がとても面白い。大阪で仕事をしていた頃、同僚たちの会話が自然と漫才っぽくなっているのを思い出した。主題のボクシングの話も正統派で随分迫力ある描きだし方をしている。語り部 狂言回しの役割をする省吾の芸人の話もまずまず うまく絡んでいる。 ただ優香のエピソードが浮いてしまっている感じがするのが残念である。
0投稿日: 2022.03.15ニートな彼とキュートな彼女
わかつきひかる
創元SF文庫
可愛らしいお話
ジュール・ベルヌ以来、SFは現実を予言するという。2011年の第2回創元SF短編賞最終候補作だそうだ。11年前は「直近未来SF」という位置づけの作品であったが、IoTが普及し始めた今となっては現実の物語と思える。物語そのものは、文字通りキュートで可愛らしいお話である。
0投稿日: 2022.03.10絵金、闇を塗る
木下昌輝
集英社文庫
構成が不統一
「絵金」という異色の絵師の生涯を描いた作品である。前半は素直に生い立ちから修行時代を時系列順に描いていたのだが、中盤以降 構成が変わってくる。勤王の志士の話やライバルの絵師の話などが、なんとなく順不同に並んだ感じになっている。第三者の口から絵金を語らせるという構成ならば、最初からその構成に統一したほうが良かったと思う。
0投稿日: 2022.02.26記憶屋
織守きょうや
角川ホラー文庫
ストーリー構成はいいのだが
複数のエピソードを積み上げていって、最後 真犯人は、と落す ストーリー構成はいいのだが、語り口がやや冗長でテンポが悪い。途中で全体の見通しがつかなくなって疑問に思ってしまうようなところがある。も少しエピソードを絞り込んだほうが引き締まった話になるのではないか と感じた。
0投稿日: 2022.02.24飯野文彦劇場 再会
飯野文彦
e-NOVELS
この作家にしてはオチが
落語ネタなどの日常的な話から、いつの間にか幻想 怪奇へスライドしてゆくという、この作家得意のパターンである。代表的な日常生活の象徴としての列車内風景描写などはなかなかいいが、この作家にしてはオチの部分がぬるい。
0投稿日: 2022.02.20蒼の上海-Sogen SF Short Story Prize Edition-
折輝真透
東京創元社
幻想的な色彩豊かな作品
幻想的な色彩豊かな作品である。作品中の文章の多くが幻想的な色彩と風景 生物を表現することに充てられている。逆にストーリーの展開や事物の説明に充てられている文章が少なめで、ぼんやり読んでいるとわけが解らなくなる。幻想味に大きく振った作品である。
0投稿日: 2022.02.04カーテンコールのスペースおばちゃん
竹村広巴
電書バト
喋り過ぎなほど
語り口が本当に特徴の作品である。息つく暇もないほどよく回る舌で喋りまくっている感じの作品である。ただその喋りが面白いかというと、まあ面白くないことはない という程度のものである。感銘を受けるとか、しみじみするとか、知的好奇心を満たされるとか なんてことはない。気楽に気軽に読むもの という程度の作品である。
0投稿日: 2021.12.28七十四秒の旋律と孤独-Sogen SF Short Story Prize Edition-
久永実木彦
東京創元社
「好」短編
いろいろなSF要素が過不足なく詰め込まれれた「好」短編である。目立った欠点はないが、だからといってとりわけいい という点も見当たらない。青い目 でリリカルな雰囲気を出しているのはいいが、それ以上踏み込んでもいない。戦闘シーンはそれなりに手が込んでいるが、これが唯一の見せ場でもある。
0投稿日: 2021.12.14