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パドラッパさんのレビュー
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  • イマリさんは旅上戸2

    イマリさんは旅上戸2

    結城弘,さばみぞれ

    GA文庫

    移動距離は短いのにめっちゃ濃いのは、この土地ならでは

    1月に1巻が出た滋賀県在住ライターさんによるラノベデビュー作の続きがもう出た。語り部ハシビロくんの性癖はますます冴え渡り、主人公から脇役まで個性的な面々を配置しつつ、きちんと筋は通すバランスが楽しかった。ハシビロくんの出身地を1巻の段階では読み違えていましたが、いま思えば納得です。

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    投稿日: 2025.06.14
  • 追跡 公安捜査

    追跡 公安捜査

    遠藤浩二

    毎日新聞出版

    毎日新聞とNHK以外の追求は弱かった

    毎日新聞記者の本。著者らによる大川原化工機冤罪事件の報道はオンタイムで読んでおり、そのまとめだと思って後回しにしていたのだが、あに図らんや記事になっていない内容が山ほどあって驚いた。「捏造」「マイナス証拠の排除」「検察への情報隠蔽」等を繰り返す警視庁公安部、さらには面子にこだわり現場を蔑ろにし公益通報さえ握りつぶす警視庁上層部、思った以上にヤバいです。メディアによる権力監視の重要性もあらためて痛感しました。

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    投稿日: 2025.06.07
  • NHK 100分 de 名著アトウッド『侍女の物語』『誓願』2025年6月【リフロー版】

    NHK 100分 de 名著アトウッド『侍女の物語』『誓願』2025年6月【リフロー版】

    日本放送協会,NHK出版

    NHK 100分 de 名著

    2冊とも電子化されている。ぜひ読みたい。

    おととい(2025/06/02)番組が始まったところで、ぎりぎり予習できた。どうして2冊なのかという基本的な疑問が完全に解消したとともに、今まさに読んでおきたい名著だと思う。主題とは異なるところで、非特権階級のモブ男性(「保護者」と称される「女性を割り当てられていない」存在)の描かれ方も気になります。

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    投稿日: 2025.06.04
  • 謎の香りはパン屋から

    謎の香りはパン屋から

    土屋うさぎ

    宝島社

    お腹がすいてくる1冊

    私が生まれ育った大阪府池田市のお隣・豊中が舞台になっていて懐かしく、日常系ミステリィに求めている養分がいっぱいバランスよくライトに盛り込まれていて楽しかったです。そして、美味しいパンが食べたくなってしまうおまけ付き!

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    投稿日: 2025.05.27
  • 別れを告げない

    別れを告げない

    ハン・ガン,斎藤真理子

    白水社

    一年遅れでも電子化してくれた白水社さんに感謝

    冒頭数ページの不思議な情景が反復して現れ、肉付けられていくのと裏腹に生命が薄れていく感覚に見舞われる連続。どこか遠い出来事だったジェノサイドが急に身近に立ち上がってくる凄まじさに震えつつ、どうしても最後まで離してくれない引力。久しぶりに文学の底力を感じました。

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    投稿日: 2025.04.21
  • 無の国の門:引き裂かれた祖国シリアへの旅

    無の国の門:引き裂かれた祖国シリアへの旅

    サマル・ヤズベク,柳谷あゆみ

    白水社

    本書以後の10年にも耐えた人々に幸あらんことを

    アサド政権の独裁に立ち向かう非暴力な市民革命が、たった数年の間に内戦へと転じ、宗派間闘争に絡み取られ、世界中の武器と傭兵と過激思想がなだれ込んでくる中、空爆下の子どもからジハード主義の指導者に至る様々な当事者が考え感じていた物事と風景を克明に記録していく。そして状況の変化とともに強い疎外感に見舞われていく著者自身も痛ましい。 本書から約10年を経てようやくアサド政権が崩壊したあと、失われ傷ついたものが癒やされていくことを願うばかりです。

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    投稿日: 2025.04.12
  • アテンション・エコノミーのジレンマ 〈関心〉を奪い合う世界に未来はあるか

    アテンション・エコノミーのジレンマ 〈関心〉を奪い合う世界に未来はあるか

    山本龍彦

    KADOKAWA

    「情報的な健康」は、相当意識しないと得られない

    エンゲージメントを高めることが収益に繋がるという民放テレビで確立された方法論がネット社会に解き放たれると、放送法やBPOなどの縛りがない「ビジネス」が発生するのは当然と言えば当然だった。この状況を様々な観点から検討した対談集がこの本で、私は特に認知科学の面から「直感」が「思考」に覆い被さること、具体的にはフェイクをフェイクだと理解しても揺らされた感覚は残るという話が興味深かった。

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    投稿日: 2025.04.08
  • イマリさんは旅上戸

    イマリさんは旅上戸

    結城弘,さばみぞれ

    GA文庫

    ぽーんと旅に出たくなる

    滋賀県の地域情報や旅行記などを発信しているライターさんのメジャーデビュー作がラノベだということで、楽しみにしていた1冊。鉄道旅の楽しみだけでなく逃避的な気分が懐かしく、登場人物たちの触れあいも甘酸っぱくて面白かったです。 ちなみに2025/01/27までの試し読み増量版が出ています(4割ほど読める)。

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    投稿日: 2025.01.17
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

    それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

    会田弘継

    東洋経済新報社

    民主党の方が立ち後れているのが現状か

    2025/01/20の就任前に気になっていた本を読んだ。表面的にしか知らなかった諸々、特にトランプ登場に伴う米国保守思想の革命的変遷とその意味合いが、様々な角度から照らし出されてよく分かる。ずっと不思議だった「露骨な分断と呉越同舟の両立」が、アメリカ特有の「信教の自由」→「宗教の自由市場」からくる二分法のレトリックを基礎にしているという分析には空恐ろしいものを感じた。

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    投稿日: 2025.01.16
  • ライトノベル市場はほんとうに衰退しているのか? 電子の市場を推計してみた

    ライトノベル市場はほんとうに衰退しているのか? 電子の市場を推計してみた

    鷹野凌

    HON.jp Books

    電子書籍と印刷書籍の市場特性がいかに違うか

    興味深い情報を日々流してくれている HON.jp の理事長による、気になるポイントの検討報告。販売統計のない電子版ラノベを公開情報から推計する方法が徐々に洗練されていくのが興味深く、考え続けることの大切さを再認識した。 電子書籍はロングテールで、セット売りなどで「在庫」掘り起こしが容易であることから、既刊点数が増えるほど売上が伸びる(伸ばしやすい)という話は納得。そして肝心の「推計」は、一読者の肌感覚としてはだいたい合っていると思った。

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    投稿日: 2025.01.07