
NHK 100分 de 名著安克昌 『心の傷を癒すということ』2025年1月【リフロー版】
日本放送協会,NHK出版
NHK 100分 de 名著
生前に原著者とも交流があった神戸出身の指南役による解説
角川ソフィア文庫版ののち、電子化されていない「新増補版」で加えられた内容や、著者逝去後の知見などを交えた整理が丁寧かつ分かりやすい。「まだ苦しくて読めない」という心情にも向きあってくれていて、ホッとしました。
0投稿日: 2025.01.06ギリシャ語の時間
ハン・ガン,斎藤真理子
晶文社
なんと発行から7年経っての電子化
古典ギリシャ語の講師と生徒として「点」で接するだけだった2人の主人公が、後半になっておもむろに交わる。そこに至るまでの蓄積や、言葉の紡ぎ方が素晴らしく、何度も絶句しながら味わいました。 ノーベル賞受賞に伴う品切れのためかも知れませんが、電子化してくれた晶文社さんに感謝。そしてクオン刊「少年が来る」を読みたい。
0投稿日: 2024.12.20本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 短編集3
香月美夜,椎名優
TOブックス
電子版読者へのクリスマスプレゼント!
第五部5〜12の一部書店向け特典SSを中心に、これまでに収載されていなかったWEBのSSと書き下ろし2編ほかを集成した一冊。第一部の話から始まるなど感慨深く、WEBから大幅に加筆されているところもあり、世界がさらに多元的に見えてきて楽しい。特に書き下ろしの、フェルディナンドの誓いの言葉と解釈の対訳は面白すぎました。
0投稿日: 2024.12.10浜村渚の計算ノート 11さつめ エッシャーランドでだまし絵を
青柳碧人
講談社文庫
ちょっとややこしいのですがシリーズ13巻目
毎年のように刊行されていた頃にちょっと息切れかなぁと感じていたところ、4年半あけた前巻で息を吹き返し、本巻では数式や図形にミステリィを絡めた元気で楽しい作品が復活していて嬉しかったです。ぼちぼち無理せず続けて欲しい。
0投稿日: 2024.12.07腸はなくとも食欲はある! (1)
島袋全優
エッセイささくれーる
フードロス削減に燃える(?)萌える(?)
潰瘍性大腸炎との闘病ギャグエッセイマンガ「腸よ鼻よ」その後。そのまま大学病院の近くに住み着いた著者の楽しく美味しい(にしては尖った)日常系家庭料理ギャグマンガ。内容は連載1〜9話+各料理写真+おまけ。本題とは違いますが、ちょくちょく出てくる姉の生活力が心配になります。
0投稿日: 2024.12.03再生可能エネルギー技術政策論 日本特有の問題点の整理と課題・解決法
安田 陽
インプレス NextPublishing
試し読み、大盤振る舞い
2019〜2024年の学会誌等に掲載された論文をまとめたもので、多岐に亘るテーマについてクリアに述べられている。本書冒頭にそのテーママトリックスが掲げられているのも分かりやすい。 私には第3章「グッドな地産地消とバッドな地産地消」(初出:2019年の日経新聞連載)に示された、ナラティブに囚われない視点が特に興味深かった。あとがきにある「ふんわり情報鎖国」からも脱していけるよう気をつけていきたい。
0投稿日: 2024.12.03決定版カフカ短編集(新潮文庫)
フランツ・カフカ,頭木弘樹
新潮文庫
目次は新潮社webにあります
カフカの自己評価が高かった数作品と、読者の人気が高い作品とを編んだもの。理不尽さや狂気のインパクトが強い前半作品は如何にもカフカで、彼の突き詰めたい方向性だったのかも知れない。といいつつ、人間の存在や社会を抉る後半の作品も輝いていて素晴らしい。 いくつかの作品は青空文庫でも読んでいて、味わいの違いも楽しめました。
0投稿日: 2024.11.20本好きの下剋上ふぁんぶっく9
香月美夜,椎名優,鈴華,波野涼,勝木光,椎名優
TOブックス
年に一度のお祭り本が完結後も出てくれて嬉しい限り
原作者とイラスト・コミックス作者さんの書き下ろし&描き下ろしなど、例年通りに濃くて面白かったです。 電子版で全体の6割ほど(印刷書籍版では33%)を占めるQ&Aは今回も玉石混交で、宝探しが楽しかった。私としては小説第1巻に早くも埋めこまれていた伏線を知れたのが大収穫。他にも思いもよらない情報がいっぱいありました。
0投稿日: 2024.11.10すべての、白いものたちの
ハン・ガン,斎藤真理子
河出文庫
白水社さんやクオンさんからの電子化に期待
生の儚さを様々な「白い○○」を通して静謐に紡いでいく、詩のような小説。作者の仕掛けによる細かな違和感を大事に読み進めることで、最後に訪れた感動がすごい。見事な訳文も相まって、とても良かったです。あと、なぞなぞの答が韓国語と日本語で違ったのにクスッと笑いました。 *10月末に旧作「ギリシャ語の時間」電子版が晶文社から出た
0投稿日: 2024.11.07日本の宇宙開発最前線
松浦晋也
扶桑社BOOKS新書
SpaceXの「物理帝国主義」に伍していくために
タイトルからJAXA周りが中心かと思いきや、米欧露の開発史、特にSpaceXについて丁寧に述べられていて、それらから照らし出される日本の現状がよく理解できた。 懐かしの「スーパー301条」が大きな影を落としていたこと、ようやく今年スタートした「宇宙戦略基金」を活かすことの重要性など、俯瞰的な視点が得られて良かったです。 なお、この手の本で図版ゼロというのは思い切ったと思うけれど、いまはwebで補足できるので問題なし。
0投稿日: 2024.11.01