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パドラッパさんのレビュー
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  • 無の国の門:引き裂かれた祖国シリアへの旅

    無の国の門:引き裂かれた祖国シリアへの旅

    サマル・ヤズベク,柳谷あゆみ

    白水社

    本書以後の10年にも耐えた人々に幸あらんことを

    アサド政権の独裁に立ち向かう非暴力な市民革命が、たった数年の間に内戦へと転じ、宗派間闘争に絡み取られ、世界中の武器と傭兵と過激思想がなだれ込んでくる中、空爆下の子どもからジハード主義の指導者に至る様々な当事者が考え感じていた物事と風景を克明に記録していく。そして状況の変化とともに強い疎外感に見舞われていく著者自身も痛ましい。 本書から約10年を経てようやくアサド政権が崩壊したあと、失われ傷ついたものが癒やされていくことを願うばかりです。

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    投稿日: 2025.04.12
  • アテンション・エコノミーのジレンマ 〈関心〉を奪い合う世界に未来はあるか

    アテンション・エコノミーのジレンマ 〈関心〉を奪い合う世界に未来はあるか

    山本龍彦

    KADOKAWA

    「情報的な健康」は、相当意識しないと得られない

    エンゲージメントを高めることが収益に繋がるという民放テレビで確立された方法論がネット社会に解き放たれると、放送法やBPOなどの縛りがない「ビジネス」が発生するのは当然と言えば当然だった。この状況を様々な観点から検討した対談集がこの本で、私は特に認知科学の面から「直感」が「思考」に覆い被さること、具体的にはフェイクをフェイクだと理解しても揺らされた感覚は残るという話が興味深かった。

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    投稿日: 2025.04.08
  • イマリさんは旅上戸

    イマリさんは旅上戸

    結城弘,さばみぞれ

    GA文庫

    ぽーんと旅に出たくなる

    滋賀県の地域情報や旅行記などを発信しているライターさんのメジャーデビュー作がラノベだということで、楽しみにしていた1冊。鉄道旅の楽しみだけでなく逃避的な気分が懐かしく、登場人物たちの触れあいも甘酸っぱくて面白かったです。 ちなみに2025/01/27までの試し読み増量版が出ています(4割ほど読める)。

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    投稿日: 2025.01.17
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

    それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

    会田弘継

    東洋経済新報社

    民主党の方が立ち後れているのが現状か

    2025/01/20の就任前に気になっていた本を読んだ。表面的にしか知らなかった諸々、特にトランプ登場に伴う米国保守思想の革命的変遷とその意味合いが、様々な角度から照らし出されてよく分かる。ずっと不思議だった「露骨な分断と呉越同舟の両立」が、アメリカ特有の「信教の自由」→「宗教の自由市場」からくる二分法のレトリックを基礎にしているという分析には空恐ろしいものを感じた。

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    投稿日: 2025.01.16
  • ライトノベル市場はほんとうに衰退しているのか? 電子の市場を推計してみた

    ライトノベル市場はほんとうに衰退しているのか? 電子の市場を推計してみた

    鷹野凌

    HON.jp Books

    電子書籍と印刷書籍の市場特性がいかに違うか

    興味深い情報を日々流してくれている HON.jp の理事長による、気になるポイントの検討報告。販売統計のない電子版ラノベを公開情報から推計する方法が徐々に洗練されていくのが興味深く、考え続けることの大切さを再認識した。 電子書籍はロングテールで、セット売りなどで「在庫」掘り起こしが容易であることから、既刊点数が増えるほど売上が伸びる(伸ばしやすい)という話は納得。そして肝心の「推計」は、一読者の肌感覚としてはだいたい合っていると思った。

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    投稿日: 2025.01.07
  • NHK 100分 de 名著安克昌 『心の傷を癒すということ』2025年1月【リフロー版】

    NHK 100分 de 名著安克昌 『心の傷を癒すということ』2025年1月【リフロー版】

    日本放送協会,NHK出版

    NHK 100分 de 名著

    生前に原著者とも交流があった神戸出身の指南役による解説

    角川ソフィア文庫版ののち、電子化されていない「新増補版」で加えられた内容や、著者逝去後の知見などを交えた整理が丁寧かつ分かりやすい。「まだ苦しくて読めない」という心情にも向きあってくれていて、ホッとしました。

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    投稿日: 2025.01.06
  • ギリシャ語の時間

    ギリシャ語の時間

    ハン・ガン,斎藤真理子

    晶文社

    なんと発行から7年経っての電子化

    古典ギリシャ語の講師と生徒として「点」で接するだけだった2人の主人公が、後半になっておもむろに交わる。そこに至るまでの蓄積や、言葉の紡ぎ方が素晴らしく、何度も絶句しながら味わいました。 ノーベル賞受賞に伴う品切れのためかも知れませんが、電子化してくれた晶文社さんに感謝。そしてクオン刊「少年が来る」を読みたい。

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    投稿日: 2024.12.20
  • 本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 短編集3

    本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 短編集3

    香月美夜,椎名優

    TOブックス

    電子版読者へのクリスマスプレゼント!

    第五部5〜12の一部書店向け特典SSを中心に、これまでに収載されていなかったWEBのSSと書き下ろし2編ほかを集成した一冊。第一部の話から始まるなど感慨深く、WEBから大幅に加筆されているところもあり、世界がさらに多元的に見えてきて楽しい。特に書き下ろしの、フェルディナンドの誓いの言葉と解釈の対訳は面白すぎました。

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    投稿日: 2024.12.10
  • 浜村渚の計算ノート 11さつめ エッシャーランドでだまし絵を

    浜村渚の計算ノート 11さつめ エッシャーランドでだまし絵を

    青柳碧人

    講談社文庫

    ちょっとややこしいのですがシリーズ13巻目

    毎年のように刊行されていた頃にちょっと息切れかなぁと感じていたところ、4年半あけた前巻で息を吹き返し、本巻では数式や図形にミステリィを絡めた元気で楽しい作品が復活していて嬉しかったです。ぼちぼち無理せず続けて欲しい。

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    投稿日: 2024.12.07
  • 腸はなくとも食欲はある! (1)

    腸はなくとも食欲はある! (1)

    島袋全優

    エッセイささくれーる

    フードロス削減に燃える(?)萌える(?)

    潰瘍性大腸炎との闘病ギャグエッセイマンガ「腸よ鼻よ」その後。そのまま大学病院の近くに住み着いた著者の楽しく美味しい(にしては尖った)日常系家庭料理ギャグマンガ。内容は連載1〜9話+各料理写真+おまけ。本題とは違いますが、ちょくちょく出てくる姉の生活力が心配になります。

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    投稿日: 2024.12.03