
天平グレート・ジャーニー 遣唐使・平群広成の数奇な冒険
上野誠
講談社文庫
2026年10月の「名著」指南役による小説です
万葉集・万葉文化論の研究者による、手に余りそうな研究書ではなくストーリーもので2012年の作品。 うだつの上がらなかった奈良時代の貴族が師・山上憶良の推挙などを得て使節団の一員となり、当時の日本人としては類をみない経験をする話。万葉集や東大寺大仏につながる裏話的な逸話などもあって面白かったです。
0投稿日: 2026.09.25
ルポ 被爆二世
小山美砂
集英社新書
核廃絶の重要性をあらためて突きつける一冊
小山美砂著「ルポ 被爆二世」読了。 被爆の次世代への影響を語ることが難しいのは、「なかったこと」にした方が都合いいという政治的立場があるだけでなく、そこに差別や優生思想が絡んで自分事として捉えるのが重いからなのだと教えられた。また、放射線被曝量と遺伝との相関も重要だが、そこに矮小化するのでなく、広く社会環境の問題(例えばエピジェネティクス)として捉えることも必要だと思った。
0投稿日: 2026.09.05
浜村渚の計算ノート 11と1/2さつめ 和算!爆弾劇場
青柳碧人
講談社文庫
過去に和算が出ていなかったのは少々意外でした
約1年半ぶりのシリーズ14作目はガッツリと和算を扱っていて読み応えあり。過去に「つるかめ算」があったものの多彩なテーマは無かったようで、関孝和や吉田光由・塵劫記の名前は知っていても具体的にはあまり知らない私には、問題が半分ぐらいしか解けない程度の難度で面白かったです。
0投稿日: 2026.08.28
戦争犯罪と闘う 国際刑事裁判所は屈しない
赤根智子
文春新書
ICCの弱みも冷静に踏まえた議論に凄みがある1冊
読み始めたところでアメリカが著者らを制裁対象に指定したというニュースが流れてきた。読み進めるとトランプやルビオの振りかざす論理の旧さとダブルスタンダードぶりが理解できる。その一方、ICC(ローマ規程)締約国が国連加盟国の2/3に留まり、安保理常任理事国の米中ロが非締約であることの困難さも伝わってきた。 お題目ではない、実体を伴ったグローバルな「法の支配」は、日本を含む中堅国にこそ必要だと思った。その中で、指導的な地位にあれればいいのだが。
0投稿日: 2026.08.22
アンビバレント 山上徹也が私だけに明かした謎の核心
鈴木エイト
講談社
「飛躍がある」のは検察および裁判体の方だったのかも
安倍晋三銃撃死亡事件の公判傍聴と地裁判決前後の面会を整理した1冊。長年の宗教カルト対応を踏まえた、最終的な考察が重い。検察および裁判体は統一協会に家庭を破壊されたことと安倍氏を襲撃したことの間に「飛躍がある」としたが、あまり触れられてこなかった補助線を加えると見え方が変わってくる。 統一協会に与する「右派」政治家の存在そのものが不思議だと、あらためて思った。
0投稿日: 2026.08.07
夢幻のノエル1
小板玲音
青騎士コミックス
繊細で大胆なファンタジーです
名作「エレナの炬火」作者さんの新著。連載が雑誌掲載のみで読めておらず、やっと出て嬉しい。 ネコミミで天涯孤独の美少年ノエルが高級娼館で働くことになり様々な事件に巻き込まれ、自らも事件を巻き起こしていくという仕掛けが実に見事で、既に続きが気になります。もうノエルの瞳に掴まっているのかも知れない。
0投稿日: 2026.07.17
おどろきの刑事司法 “犯罪者”の作り方
村木厚子
講談社現代新書
近しい人が万一逮捕されたら差し入れたい1冊
2006/04/13の荻上チキ・ Sessionに著者が出演されて知った本。「郵便不正事件」に留まらず、殺人から痴漢や商いなど幅広い冤罪事件を扱った「おどろき」どころか「おののき」の内容。にも関わらず理知的な文章は読みやすく、真っ当な行政官の矜恃も感じました。
0投稿日: 2026.05.12
世界史はジャズで踊る
村井康司
文春新書
大きな流れを知ることで、ますますジャズが好きになる
著者が毎月第1木曜日のパーソナリティをしている鎌倉エフエム「世界はジャズを求めてる」で知りました。 アフリカとヨーロッパの音楽がアメリカで混淆し、やがて世界へ拡散し、そこで新たに混淆することで形を変え続けてきた「ジャズ」を、その背景にある世界史と紐付けながら解き明かす試みです。著者は俳人でもあって文章がうまく、4年かけて書いたという膨大な情報が素直に入ってきました。個人的には第3章のヨーロッパへ逆流した話が刺激的でした。 各章にSpotifyプレイリストへのリンクもあるので聴いてみよう。
0投稿日: 2026.04.02
プロトコル・オブ・ヒューマニティ
長谷敏司
ハヤカワ文庫JA
ド直球の近未来SF
何が人間を人間らしくしているのかを、AI搭載義肢と共生するダンサーの生き様から照らし出す。物語の組み立てと言葉のリズムが素晴らしく、生成AIの本質を理解する糸口が得られた上、身体性と表現の掘り下げも興味深かった。 また、現時点で実用化間近と思われる様々なテクノロジーが2050年に社会実装されている状況の世知辛さにリアリティを感じました。
0投稿日: 2026.03.12
スプーンと元素周期表
サム キーン,松井 信彦
ハヤカワ文庫NF
私も講義の脇道は好きでした
前に読んだ「フィフティ・ピープル」が参照していて気になった本。身近な元素の振る舞いから、似たもの同士を並べて暫定的なperiodic tableが描かれた経緯、周期律に当てはまらない元素と科学者の格闘、さらに元素と政治・貨幣・芸術・狂気などのこぼれ話が詰め込まれている。化学は「覚えるもの」で苦手意識が強い私には新鮮な説明がいっぱいで面白かった。
0投稿日: 2026.03.09
