
情報セキュリティの敗北史
アンドリュー・スチュワート,小林啓倫
白揚社
Microsoftの取り組みをあらためて知って見直しました
ENIACからの歴史を情報セキュリティという観点で掘り下げると、初期のホストコンピュータにあった課題が度々再発しているようだ(ex. DDoS)。OSやアプリはかなり堅牢になってきたものの、最弱点の移行や政府機関による脆弱性情報の占有など、現象からでは見落としがちな諸問題が整理されていて勉強になった。但し「諸説ある」話が一通りの解釈だけで説明されているところがあり、著者の評価を鵜呑みにはしない方が良さそう。
0投稿日: 2024.04.10
トランスジェンダー入門
周司あきら,高井ゆと里
集英社新書
トランスを通して見えてくる、マジョリティをも含む社会課題
トランスのみならずジェンダーについて、自分がいかに無知だったかよく分かった。そして、まだよく分かっておらずグルグルと考えている。 トランスの人は「出生時のラベリング」と「ラベル付けられた性らしさを求められること」の2重の違和を抱えている。後者は私自身にも付きまとってきたが、シスでヘテロというマジョリティでも抱えている課題へも多く言及されていて、社会や制度の不備や直す手立てなど様々な角度からの手がかりが得られてよかった。
0投稿日: 2024.02.24
イスラームから見た西洋哲学
中田考
河出新書
西洋思想の内側からは得られない視点が多数
様々な西洋哲学者の考えをイブン・タイミーヤを初めとするイスラーム法学者らの考えと対照させるところが流石にユニークで、硬軟織り交ぜた文体もよかった(おそらく体調が悪くて打ち込みと口述が混淆しているのでしょうが)。 1900年に没したニーチェが「今後2世紀はニヒリズムの時代だ」と予言した通り真偽善悪が揺らぐ中、一見それらしい社会課題に右往左往することはニヒルの深淵から目を反らしているだけで、ニヒルの闇を直視しないと希望があっても見えてこないというメッセージは厳しい。畳み掛けるような「おわりに」の数ページを何度か反芻したい。
0投稿日: 2024.02.13
スーフィズムとは何か イスラーム神秘主義の修行道
山本直輝
集英社新書
遠い国なのに、不思議なほど近い感性
NARUTOなどのジャンプ漫画に見られる師と弟子の関係性や道の極め方がスーフィズムと似ていてムスリムに人気らしい。「神秘主義」と訳されるとおどろおどろしく感じるけれど、人道支援NGO活動を行い社会に生きて奉仕するように「教条的な伝統芸」ではない面が多くある。武道や茶道に似た「型」の重視、人間の弱さと向き合う姿、ある教団では最高位奉仕職が料理長、など多くのエピソードが興味深かった。
0投稿日: 2024.01.24
白亜紀往事
劉慈欣,大森 望,古市 雅子
早川書房
旧作ながら新鮮
昔々あるところで、恐竜さんと蟻さんが出会うことから始まる壮大なお伽噺。設定の巧妙さと筋立ての力強さ(強引さともいう)が面白かったです。 「三体」の四年前、作家として駆け出しの頃の作品らしい。最近、日本オリジナルの旧作短編集が出ているようですが、新作が出たら読みたい。
0投稿日: 2024.01.22
イル・コミュニケーション 余命5年のラッパーが病気を哲学する
ダースレイダー
ライフサイエンス出版
とにかく前のめり。かっこいい。
今年の初読み。社会や政治をストレートに語る隻眼のラッパーが、自らの生涯と考えを抜群のリズムに乗せて書きあげた1冊。 様々な体験が人生の流れの分岐点であるように、病気になるということは病気になった後の自分に進むのだ、などの熱い言葉がこれでもかと出てきて、しかし押しつけがましくない。なかなか得がたい読書体験でした。 なお、発行当初は固定レイアウトでしたが、2024年初にリフロー形式に差し換えられて読みやすくなっています。
0投稿日: 2024.01.15
三酔人経綸問答
中江兆民,鶴ヶ谷真一
光文社古典新訳文庫
「100分 de 名著」から来ました
2023年12月の「100分de名著」で平田オリザ氏が指南されている書。 時は明治20年。外には帝国主義に翻弄され、内には帝国憲法発布前の侃々諤々の頃。左右の極論とまどろっこしい漸進論を見通しよく読ませ、考えさせるのに「酔っ払い3人の談義」+眉批(欄外注)という体裁が見事だ。さらに、解説を通して時代背景などの周辺情況が深まり面白い。原文は流し読みしただけだけれど、リズムがとてもよく、弁舌を想像するのも楽しかった。
0投稿日: 2023.12.25
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身XII」
香月美夜,椎名優
TOブックス
ここまで読み継いできた読者へのご褒美エピソード満載です
web版は様々に忙しくなってきたタイミングで、考えられる最短から2番目のプロットだったとのこと。この書籍版では分量的にも約3倍に充実して丁寧にお話を仕舞うとともに、次に来る「ハンネローレの貴族院五年生」との情報ギャップも埋めていて、感無量の内容でした。 なお、カラーのピンナップは末尾にあります。しかも3枚!
0投稿日: 2023.12.09
このライトノベルがすごい! 2024
『このライトノベルがすごい!』編集部
宝島社
「本好きの下剋上」完結目前大特集
昨年に殿堂入りした「本好きの下剋上」本編が12/9発売の次巻で完結するにあたり、これまでの流れと今後の展開が詳しく載っています。特に香月美夜先生のインタビューがとても面白い。印刷書籍では巻頭にあったピンナップは、電子版では巻末にあります。
0投稿日: 2023.12.01
本好きの下剋上ふぁんぶっく8
香月美夜,椎名優,鈴華,波野涼,勝木光,椎名優
TOブックス
大部のQ&Aはじっくり読みましょう
側近の勢揃い内輪話SSや、各コミカライズの番外編、ドラマCD9のアフレコレポート漫画など新たなコンテンツ目白押しで楽しめました。特に鈴華さんの、第二部コミカライズではネタバレで描けない裏話が最高。また、アレキサンドリアの地図を見ると大領地を実感できます。
0投稿日: 2023.11.10
