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パドラッパさんのレビュー
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  • オスマン帝国全史 「崇高なる国家」の物語 1299-1922

    オスマン帝国全史 「崇高なる国家」の物語 1299-1922

    宮下遼

    講談社現代新書

    メフメト二世は「ブリタニア列王史」を読んでいたのかな

    帯に「他民族・多宗教の大帝国はいかに栄え、そして滅びたか」というそのものズバリな関心事が書かれている一冊。分からないことは分からない、この内容は推測、などと明記され断言しない誠実な書きぶりに好感を持ちました。建国期の「戦国時代」は相当複雑でしたが、大きな流れが掴みやすくて面白かったです。かつて帝国であった地域(試し読み範囲の地図参照)が、現在なお紛争に見舞われている意味を考えたい。

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    投稿日: 2025.11.17
  • ネコは(ほぼ)液体である ネコ研究最前線

    ネコは(ほぼ)液体である ネコ研究最前線

    服部円,子安ひかり

    KADOKAWA

    ネコのことを真剣に考えている世界中の研究者を尊敬します

    ネコとヒトの関係性で博士号を取得した著者による、厳選ネコ論文40報(うち、イグノーベル賞2報)。知識だけでなく、勉強会の読み合わせみたいな雰囲気も伝わってきて楽しい。元エンジニアとしては猫舌応用ブラシのようなバイオミメティクス方面が気になります。例えばネコの柔軟性(柔粘性かも)がロボットに応用される日は来るのだろうか。 (なお、まえがきに「39報」とありますがDOIの付いていない1報を数え漏らしているようです)

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    投稿日: 2025.11.04
  • 腸はなくとも食欲はある! (2)

    腸はなくとも食欲はある! (2)

    島袋全優

    エッセイささくれーる

    美味しそうだなぁとほのぼのしていたら一転し…

    潰瘍性大腸炎で全摘した著者のその後を描くコミックエッセイ。web公開が無くなってからの、読めていなかった話が大半で新鮮。ふつうに美味しそうな家庭料理が並ぶなか、要所で消化に気配りするなど勉強にもなる。そして「あの」姉が結婚して独り暮らしになって… とても不安な幕切れに(いま雑誌目次を見たらまた大変そうだ)。

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    投稿日: 2025.10.09
  • 別冊NHK100分de名著 フィクションの超越者 筒井康隆

    別冊NHK100分de名著 フィクションの超越者 筒井康隆

    中条省平,池澤春菜

    NHK出版

    「虚構船団」電子版が固定レイアウトで、とても残念

    2025年正月の「100分de名著」特番におけるディープ討論を踏まえて、各指南役により書き下ろされた別冊。番組で語られた筒井御大の凄みが、テキストからも滲み出てきて面白かったです。 出てきた中で既読は数冊だけ。大森さん最推しの「虚構船団」は固定レイアウトで残念だけれど、他に何冊かピックアップしたので、近いうちに読もう。

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    投稿日: 2025.09.04
  • 町の本屋はいかにしてつぶれてきたか

    町の本屋はいかにしてつぶれてきたか

    飯田一史

    平凡社新書

    コップの中の嵐で体力が削られていったように見える

    書店経営の視点から、様々なデータを元に「町の本屋」さんの経営が成り立たなくなってきたことを分析している。元々文化政策が弱い上に流通の力関係から普通の商いとかけ離れた「儲からない」構造があるところ、大手書店やコンビニとの競争と雑誌売り上げの減少が痛かったようだ。一方、図書館無料貸本屋論・Amazonに持っていかれた論・電子書籍化論などは言われるほどでない(というか見当違い)らしい。 いま経済政策として書店振興が言われているが、むしろ文化政策が必要だと思った。

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    投稿日: 2025.08.19
  • 「イスラエル人」の世界観

    「イスラエル人」の世界観

    大治朋子

    毎日新聞出版

    イスラエル2000年のナラティブの政治利用を打ち砕くには

    ホロコーストを重要な契機として作られた国家に、どうしてパレスチナへのジェノサイドが可能なのか。 ひとつにはイスラエルでは幼稚園からユダヤ人がやられたことだけを教えており他の虐殺への想像が働かない。また、絶対的な国防力の安全神話が破られたことによるパニック状態と、国際法より遙かに長いユダヤの教義を利用するネタニヤフらの保身と利益。そして自衛権の拡大解釈で都合がいい国々の黙認状況、など。 こうして腑分けすることで見えてくる希望も少しはあったが、やはり厳しい。

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    投稿日: 2025.08.16
  • 本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生2

    本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生2

    香月美夜,椎名優

    TOブックス

    1巻からジャスト1年経っていました

    いつの間にか神々に巻き込まれ/巻き込んでしまった代償で、多くの領地を巻き込んだ騒動が膨れあがるが、まだ本番前。一体全体どんな結末に導こうとされているのか、ますます楽しみです。 書き下ろしのエピローグ&SS2本ではダンケルフェルガー以外の状況が語られ、本編中のキーになった言動や行動の種明かしが面白かったです(そして多分に切ない)。

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    投稿日: 2025.08.10
  • ネオ・ユーラシア主義 「混迷の大国」ロシアの思想

    ネオ・ユーラシア主義 「混迷の大国」ロシアの思想

    浜由樹子

    河出新書

    プーチンは案外ポピュリストで、支持者の背景がこれなのかも

    ウクライナ侵攻後に様々なところでプーチンの思想的背景として語られる「主義」の系譜と内容そしてプーチンとの関係について冷静に考察している。ロシアの中道左派〜極右そして指導層〜民衆まで様々な形で浸透している思想ではあるが融通無碍で、国家統合ナラティブになり得るまで昇華されておらず、侵攻とも直接の接続は無いという卓見。まさしく知りたかった内容で、とても面白かったです。

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    投稿日: 2025.07.29
  • イマリさんは旅上戸2

    イマリさんは旅上戸2

    結城弘,さばみぞれ

    GA文庫

    移動距離は短いのにめっちゃ濃いのは、この土地ならでは

    1月に1巻が出た滋賀県在住ライターさんによるラノベデビュー作の続きがもう出た。語り部ハシビロくんの性癖はますます冴え渡り、主人公から脇役まで個性的な面々を配置しつつ、きちんと筋は通すバランスが楽しかった。ハシビロくんの出身地を1巻の段階では読み違えていましたが、いま思えば納得です。

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    投稿日: 2025.06.14
  • 追跡 公安捜査

    追跡 公安捜査

    遠藤浩二

    毎日新聞出版

    毎日新聞とNHK以外の追求は弱かった

    毎日新聞記者の本。著者らによる大川原化工機冤罪事件の報道はオンタイムで読んでおり、そのまとめだと思って後回しにしていたのだが、あに図らんや記事になっていない内容が山ほどあって驚いた。「捏造」「マイナス証拠の排除」「検察への情報隠蔽」等を繰り返す警視庁公安部、さらには面子にこだわり現場を蔑ろにし公益通報さえ握りつぶす警視庁上層部、思った以上にヤバいです。メディアによる権力監視の重要性もあらためて痛感しました。

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    投稿日: 2025.06.07