金さんさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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恋は光 1
秋★枝 / ウルトラジャンプ
理屈っぽいと思う人にはお奨め
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自分の中で「思考」を悶々と巡らせることの多い人にはお奨めの作品。
まとめ買い、一気読みが良い。
ただし面白い発言やぐるっと回った思考が多く、決して素早く読める作品ではないので、腰を落ち着けて。
…コマ内に部分的にしか見えなくても、中に出てくる交換日記を拡大して拾い読みすると更に楽しい。
一人のキャラに感情移入してしまいすぎず、皆を応援する気持ちで読んだ方が後々良いでしょう。
実際に「光」が見えたとしたら、、、便利と言うより、やはりかなり難しく、ますます人前(異性の前)では無口になってしまいそう。同時にアタマの思考能力加速も付くんならなんとか捌けそうですけど。
欲しい能力では無いですね。どちらかと言うと、いろいろ哀しくなる能力かも。光でこれなら、テレパスってもっと哀しいでしょうね。
尤もこの作品での「光が見える」は、人間の意識外での「勘」が本人には視覚化されて感じられる、そういう意味だろう。ムダに非現実的な設定でないあたりが、よりリアルさを出し、ついつい作中の登場人物と一緒になって考えさせられてしまう。 続きを読む投稿日:2018.02.07
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新装版 不祥事
池井戸潤 / 講談社文庫
小説も痛快
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ドラマもなかな痛快であったが、あのイメージを残して読んでいても痛快。
キャストのイメージは微妙に違う気がするものの、すかっとする結末はどの短編も気持ちいい。
こんなきっちり作られた話、ドラマ化なん…て楽でしょうがなかっただろう。
ドラマとの違いはオチが付いたところで、ストンと終わる。無駄な後日談的説明はいっさいない。この辺もスピード感を維持して読み続けられる良さ。
読んでいて次から次へと面白い話が続く短編集。もの凄く濃い短編集だと感じる。その割りに読み進むのも早いという不思議。
ドラマなんて気にせず読んで、最高に楽しめる作品。
続きを読む投稿日:2018.02.22
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君の望む死に方
石持浅海 / 祥伝社文庫
彼女の知性は抜き身の刀
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あまりに切れすぎる碓氷優佳。
一作目ではいろいろ不満もあり終わり方疑問もあったが、本作でその後にもちらっと触れている。「やはりそうだったのか」と、そこからは碓氷優佳の狂気を感じた。
本作は、殺…してやろうと本気で思う者(梶間)、是非殺されてやろうと思う者(日向)、たまたま居合わせてしまった知ることへの追求者(優佳)、この三人が繰り広げる心理戦を楽しむという趣向。
一作目とは違い、それぞれの動機はマシになっているので、違和感はない。しかしそれでも弱いと言わざるを得ないのだが、この辺りは著者も分かっているようで、「動機というのは、他人がどうこう言うべきことではないと思っています。」人それぞれなんだからと、なにやら言い訳っぽい台詞を優佳に言わせている。
前半は日向と梶間の心中を中心に、それぞれが間をうろちょろする優佳にどぎまぎされられる話が続く。
後半残り2割で一気に謎解き、クライマックスを迎える。
一作目に比べ、心理戦という意味でも種明かしという意味でも、良い出来に成っていると思う。
それにしても聞けば聞くほど「碓氷優佳」はその知力を無作為に無造作に使い続けているのだと知れる。何もかもを見透かしてしまう、そんな力を振り回してまともな生活が出来ているのだろうかと思いもする。
「あんなことはもうたくさんです。あなたが死ぬのは勝手です。好きにすればいい。でもそれは、わたしのいないところでやってください。」そんな優佳の奥にはちゃんと感情があるのだ。
あらゆる事象を論理的に見通し冷静に行動してしまう、そんなAIのようなロボットのような優佳と、その陰にかくれた普通の女性としての優佳。
感情の優佳が望むことも、論理の優佳があらゆる感情を排除して実現する。
そう理解すれば、一作目の結末も納得出来る。
ちなみに、今回も結末は謎含みのままである。
続きを読む投稿日:2018.02.10
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水やりはいつも深夜だけど
窪美澄 / 角川文庫
これで誰か助かる?
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どれも不満が募る重苦しい気分の作品。
その割りに救いは薄く、イマイチ希望を持てる感じがしない。
全体に印象が薄い作品群で、レビューを書いている今もどんどん記憶からこぼれ落ちている。
かと言って、…もう一度読み返したいとは、全く思わない本だった。
短編集なのに読み続けるのが面倒になり、なかなか進まなかった。 続きを読む投稿日:2018.02.10
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姫椿
浅田次郎 / 文春文庫
コース料理のような短編集
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前菜のようなファンタジーで始まり、次の表題作「姫椿」はスープのように体に染み渡る。
三話目「再会」はちょっとホラーっぽいが、ポワソンとしての「マダムの喉仏」はなかなかの味。
アントレ手前に「トラブ…ル・メーカー」でちょっとリセット。
アントレ「オリンポスの聖女」はしっかりとした味が噛みしめるほど来る。
シャレの利いている「零下の災厄」の後、口に運ぶまで予想しなかったくらい甘い味が広がるデセール「永遠の緑」。
ごちそうさまでした。
良くできた短編集です。ちょっとジャンルがあっちコッチするのでビックリしますが、コース料理と捉えればなかなかどうして良いシェフに出会えたものです。
短編集だけれども、一気読みをお奨めします。 続きを読む投稿日:2018.02.16
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砂漠
伊坂幸太郎 / 実業之日本社文庫
一瞬で駆け抜けてしまう青春の一ページ
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主人公 北村と名前に「東・西・南・鳥」が付く仲間達の、あっという間に駆け抜けてしまう大学4年間の青春冒険活劇。
日常の無駄な描写はスパッとカットすることで、大学4年間の濃い出来事部分をあっという間に…読ませてしまう。本当に大学生活なんてあっという間だよ、それを小説で表現してしまった感。こんなに面白おかしくはないけれど、大人になってから思い起こす大学生生活ってこのスピード感だなと納得する。
一人、超能力保持者が出てくるんだけど、、まぁ、扱いとしては、料理に入ってるピリ辛スパイス、なくてもこの小説は書けたはず。それでもこのスパイスは隠し味として入ってて良かったなとそう思える。なので、超常現象でオチがあるとか、非日常的な何かが起きてしまうとか、そんなオカルトやSF系の本では全く無い、その系が嫌いな人でも読めると思う。
500ページを超える本だけど、本当に面白くてどんどん読み進まずには居られない。一見つまらない学生の日常なだけなのに、、、なぜだろう、この面白さ。
二度三度とじっくり読みたい本と言うより、一冊を休憩なしに一気に読み切ってしまいたい。時間のあるときにどうぞ。 続きを読む投稿日:2019.01.22