金さんさんのレビュー
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雨音は、過去からの手紙
富良野馨 / マイナビ出版ファン文庫
読んでいる間はずっと、世界が静かなような気がしました。
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「夜を測る鐘」というアート作品を介して繋がる、二人の女性のそれぞれの物語。
とある二人の合作である「夜を測る鐘」を作った作者のひとり、高窓女史と出会う主人公 朝川季衣子。「夜を測る鐘」は子供の頃…に見た憧れの作品だった。
そんな季衣子に、作品を作った頃の昔を語る高窓女史。その歴史は季衣子の生き方にも影響を与える。自分が正しいと思ったものを作り続けること、妥協は輝きを失わせるのに十分な力があることを伝える。
途中、高窓女史にも季衣子にも、その輝きを奪い取ろうとする男が現れる。これがまた酷く不愉快。失ったもの、奪われたものは戻らないが、「正しいと思った道」を進めば、新しい未来、新しい幸せが見えてくる。
もの作りをするなら、「自分の正しい」を貫く努力をし、決して安易な「妥協」をして「魂」を「輝き」を失わないように、そう教えてくれる本でした。 続きを読む投稿日:2017.12.12
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アイミタガイ
中條てい / 幻冬舎文庫
小さな幸福の連鎖
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バタフライエフェクトの様に、ある人の些細な行動が別な人に幸せをもたらす。短編がこっそり絡み合ったり、短編の中で人と人が影響を与えていたり。ちょっとホッコリ系な話の連鎖。
ただ、思ったより短編間での繋…がりが少なく、ドミノ倒しの様な連鎖を想像していると肩すかしを食らう。
でも、なんか幸せな感じが良い。
続きを読む投稿日:2017.12.16
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ななつのこ
加納朋子 / 創元推理文庫
安楽椅子探偵もの+劇中劇な面白さ
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基本的に安楽椅子探偵ものです。
主人公 駒子が買った「ななつのこ」と言う本の中での主人公少年<はやて>と探偵役である<あやめさん>。謎を含むファンレターを送る<駒子>と、謎解きをし返事を書いてくれる…「ななつのこ」作者の<綾乃>。
この二組が入り交じり、交互に話が進みます。
軽快に進むのでそれ程混乱はしませんが、少なくとも一章単位で読み進めないと、一休みは出来ませんね。
出てくる謎も特に殺伐としたものではなく、日常のちょっとした「あれっ?」ちょっと気になるけど、、、的なものです。
しかしそれだけでなく、いつの間にか人と人が絡み合い始め、最後は驚きの結末に。
気楽に楽しめる、ちょっとホッコリもある、いい本でした。 続きを読む投稿日:2017.12.16
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空中ブランコ
奥田英朗 / 文春文庫
もはや「名医」
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第一作目の「イン・ザ・プール」では「迷医」か「名医」か判断に迷うが、これほど患者を救ってくると「名医」と言わざるを得ない。
それが「意図」されたものなのか、「無意識」によるものなのかは未だ不明だが。…(笑)
今作でも全開の伊良部一郎節、この面白さは癖になる。
とくに表題の「空中ブランコ」は、凄すぎるぞ「伊良部一郎」。
抜群のコメディーなのに涙を誘う、この手の本は関東より関西で売れるんだろうね。 続きを読む投稿日:2017.12.17
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さいごの毛布
近藤史恵 / 角川文庫
犬たちの片思いが切ない
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犬たちに感情移入してしまうと、その片思いに切なくなります。
けなげです。
スーパーコミュ症の主人公の智美の成長物語。
この手の設定でお決まりの、実は案外特殊能力保持者であり、ルフィも真っ青の…成長速度。環境変わっただけで全てがうまく行くなら、最初からそんな状況に落ちてないと思います。その辺はちょっと気になるマイナスポイント。
いちおう最初に、人と接するのが苦手なだけで、能力値高い風には書かれてますけどね。
老犬ホームで智美を温かく迎えてくれる、麻耶子と碧。彼女たちにもそれぞれに抱えているものがあり、それらも含めて後半一気に解決に向かっていきます。
全てに希望が見えてくるラストに。
麻耶子曰く「この仕事、すごく犬が好きだときついから」
「この本、すごく犬が好きだとイライラするから」これだけは注意しておきます。 続きを読む投稿日:2017.12.28