
魍魎の匣(3)【電子百鬼夜行】
京極夏彦
講談社文庫
幸せとは何か。
ノベルズ版以来の再読。御筥様への畳み掛けるような憑物落し。匣詰め頼子のインパクトと共に、うっかりコミカライズでの青木君の苺柄のパジャマを思い出してしまって気が緩みかけた…のも束の間、舞台は美馬坂近代醫學研究所へと変わり、空気は重苦しくなっていく。美馬坂幸四郎の狂気。久保竣公の執着から絶望、苦痛と怒りに壊れていく様にゾッとする。そういえばシリーズで最も怖いと思ったのもこの作品だった。酷く息苦しい。関口の危うさも相変わらずで。破局を迎えるしかない幕引きであった。幸せとは何か。そして、雨宮はどこまで…。
5投稿日: 2017.04.29
魍魎の匣(2)【電子百鬼夜行】
京極夏彦
講談社文庫
じわりじわりと、厭な空気が匣に満ちてくる。
ノベルズ版以来の再読。口外法度なんだよー。榎木津の登場。少しずつ末端の部分や背景で絡み合った、それぞれの事件とその関係者が京極堂を中心に集まり始める。柚木陽子の過去と嘘、穢封じ御筥様の黒幕と、兵衛と久保竣公との関係。情報は集約され、じわりじわりと厭な空気が匣に満ちてくる。ノベルズ版の後にコミカライズを読んだのですが、久保竣公『匣の中の娘(後編)』での崩壊寸前な様は、画で見るとインパクトあったのだなと改めて。唯一まだ進行していたバラバラ事件、頼子の腕が発見され、物語は更に展開しつつ下巻へと。
5投稿日: 2017.04.29
魍魎の匣(1)【電子百鬼夜行】
京極夏彦
講談社文庫
百鬼夜行シリーズ第二弾。
再読。ノベルズ版から20年ぶりくらい。姑獲鳥もそのくらいで再読したのですが、そちらと同様に大まかな部分は殆ど覚えていた。相変わらず頼子の性格は嫌いで、初読みの時はさぞや苛々したろうなと思い返しながらも、今回はラストを知っているので生温い気持ちで読み進めた感じ。上巻では、中央線武蔵小金井駅で発生した美少女転落事故、連続バラバラ殺人事件、美馬坂近代醫學研究所、穢封じ御筥様、物語が展開するキーワードが出揃った。衆人環視のなか、研究所から忽然と姿を消した加菜子。最後は久保竣公の『匣の中の娘(前編)』で、中巻へ。
5投稿日: 2017.04.29
生物学者山田博士の奇跡
松尾佑一
角川文庫
ふ、増えた…!
金沢で小さな雑誌社に勤める文系女子・鈴木沙夜梨(スズキサヨリ)と、石川大学でヒキガエルの研究をしている理系男子・山田博士博士(やまだひろしはかせ)の、双方共に拗らせ系の、チグハグだけど微笑ましい恋愛模様…ふわふわ第二弾。連作短篇集。そして謎の枕さん、と、こまくらさん。増えた謎まくら…ちょっぴりファンタジー。ゆるっと謎解き。前作よりも全体的にぼんやりとしたイメージも、軽快な文章でサックリ読了。
5投稿日: 2017.04.03
新釈 走れメロス 他四篇
森見登美彦
角川文庫
新釈
明治から昭和にかけての、文豪たちによる名作短篇『山月記』『藪の中』『走れメロス』『桜の森の満開の下』『百物語』五篇を、現代の京都の腐れ大学生たちを主人公にして再篇した連作短篇集。あらすじのメロスが、無二の親友との約束を守「らない」為に全力で京都を疾走する…とあったので、全てが登美彦節にハチャメチャに改変されているのかと思いきや、それぞれ原典の雰囲気や良さ、文体等しっかり残っていて、とても良かったです。個人的には『山月記』と『百物語』が好きかな。
5投稿日: 2017.04.03
アンデッドガール・マーダーファルス 1
青崎有吾
講談社タイガ
怪物専門、怪奇ミステリ。鴉夜と津軽の、趣味の悪い笑いと掛け合いは癖になる。
十九世紀末の欧羅巴。世界的に異形の者や怪物が一掃されつつある世界。怪物専門の探偵・輪堂鴉夜と真打津軽に、鴉夜に仕えるメイド姿の馳井静句。鳥籠使いと呼ばれる彼らが、怪物が絡む不可解な事件を解決する。不死に、鬼。吸血鬼、人造人間。ミステリとしても面白いし、惜しげもなく登場するビッグネームにテンションが上がる。ホームズ、ルパン、警察官時代の、灰色の脳細胞。ファントムに切り裂き魔。そして三人が追う人物は…教授。ミステリとしても面白いし、鴉夜と津軽の趣味の悪い笑いと掛け合いが癖になる。似非噺家風の津軽の口調も心地よい。久しぶりに頁を捲る手が止まらなかった。
4投稿日: 2017.03.14
姑獲鳥の夏(4)
京極夏彦,志水アキ
コミック怪
物語は結末へと…。
少しずつ、少しずつ、生じていた歪みが限界を超え、物語は怒濤の展開で悲劇という結末へと。富の偏りによって生じた様々なもの。名誉や家柄。因習と差別。良い部分だけを残したいと思うは浅はかというか…人の業というか。結局は呪いから逃れられなかったわけだが。一方、内藤に呪いをかける京極堂の悪魔のような顔。原作とはニュアンスが違うような気がするけど、あれはあれで…。里村による屍臘の解説シーン、何気にロザリア・ロンバルド。二度見してしまったわ。ラスト、奥さん方の笑顔に、ほっと一息。
2投稿日: 2017.03.14
姑獲鳥の夏(3)
京極夏彦,志水アキ
コミック怪
鬼気迫る、憑物落し。
鬼が下りてくるシーン、文字通り鬼気迫る。視覚的に見る憑物落しは、画力の高さもあって迫力とインパクトが凄い。降り注ぐ血の雨の中、微笑む涼子はゾッとする程に美しかった。狂乱状態の内藤が語る惨劇の夜の記憶。木場と旦那と再登場の榎さんは気分的に一服の清涼剤。藤牧のお母様の最後の手記は原作でも胸に来るものがあったが、解釈を違えると悲劇に繋がるな。藤牧…ご両親が、せめてお母様だけでも生きていたら、違った人生観が持てただろうか。残念だ。
2投稿日: 2017.03.14
姑獲鳥の夏(2)
京極夏彦,志水アキ
コミック怪
謎の核心となる例のシーン
久遠寺の院長だけがイメージから大きく外れたキャラデザインで、まだ医者でやってるのに、産婦人科医として最も診てもらいたくないレベル。思いきったなぁw 謎の核心となる書庫のシーンはコミカライズの利点が出ていたと思います。視点の位置と、圧倒的な本、本、本。20年近くぶりに原作を再読した時も思ったけど、関口の無駄なアクティブさ…うーん。次巻はいよいよ京極堂の憑物落し。
2投稿日: 2017.03.14
姑獲鳥の夏(1)
京極夏彦,志水アキ
コミック怪
京極夏彦デビュ作コミカライズ
原作の雰囲気を損なうことのない良いコミカライズ。膨大な蘊蓄の纏め方も上手です。榎さんは麗しくハチャメチャで、京極堂は意外と茶目っ気があり、関口は情緒不安定な残念な大人度が上がりまくり、敦ちゃんは可愛い。学生服姿も三者三様で良い感じ。ストーリーは久遠寺医院に到着するまで。
2投稿日: 2017.03.14
