
空の欠片 魂葬屋奇談
九条菜月
C★NOVELS
巻き込まれ系の主人公と魂葬屋
他人に対して無関心な高校生・深波は、自分にしか見えない少年・死んだ人の魂を仮世に送る「魂葬屋」だと名乗るユキと、黒猫の姿をした使い魔の紅葉と出会う。深波の通う高校では女生徒が転落死したばかりで、しかもそれは殺人事件らしい。彼女の魂は欠け、その「魂の欠片」は行方不明。一定期間を過ぎても欠けたままの魂は腐ると聞き、深波はユキの手伝いを始めるが、そこに新たな転落死が…。文章は軽めでサックリ読了。ミステリ部分は普通に読んでいけばわかる程度なので魂や霊、ユキと死神との関係とかが重点になるのかな。次を読むかは未定。
5投稿日: 2016.10.13
人間椅子~乱歩奇譚~
黒 史郎,江戸川乱歩,乱歩奇譚倶楽部,上江州誠
光文社文庫
アニメは見ていないけれど…
眠らされていた小林少年が目覚めると、血塗れの教室に変わり果てた担任教師の姿。バラされ椅子の形に組まれた首無し死体。更に被害者だった教師の家からは幾つもの人間椅子が発見され、凶器には小林の指紋…。わくわくすんな小林ィ!と思わずツッコミ。書籍説明にちゃんと書いてあるのに、アニメノベライズと知らずに読んでしまいました。どおりで。悪魔(デイモン)に魅入られただの狂わされただの、黙れよ変態共w 美少女的小林少年には完全にとばっちりだよね。まあ、小林くんの方が段違いでイッちゃってるのは事実だけれど。独特のノリに少し疲れましたがサックリ読了。
4投稿日: 2016.09.22
トリックスターズM
久住四季
メディアワークス文庫
必ず実現してしまう犯行を防ぐには…
シリーズ第四弾。前作Dの翌日。学園祭二日目。なんというか、今までのは驚愕させてやろう、煙に巻こうっていう意図が見え見えだったのですけど、今回は普通というか。周が魔術師であることを不自然に隠していないから、そう感じたのかも。大掛かりな仕掛けもなく、至ってシンプル。物語は周の見た「仲間の誰かが襲われる」という予知夢から始まり、必ず実現してしまうその襲撃を防ぐ為に、周が奔走する…。周の内面の変化、精神的な成長物語だったかも。
3投稿日: 2016.09.04
残り全部バケーション
伊坂幸太郎
集英社文庫
余韻を残すラスト
当たり屋、恐喝、強請り…裏家業を生業とする岡田と溝口。或る日、岡田が裏家業から足を洗いたいと言い出して…。登場する人物が少しずつ重なり合い、互いに干渉する。離婚、虐待、拉致…と書くと物騒だけれど、飄々と進んでいくストーリー。テンポがよく、とにかく楽しい一冊でした。スパムとしか思えないメールから始まるドライブ。タイムマシン。友情と、裏切り。復讐とケーキ。溝口はどうしようもねぇ男だなあと思うものの、あの緩さというのか甘さというのか、憎めない…ズルい。ハッピーエンドを予感させるだけに止めているラストも良かった。
6投稿日: 2016.09.04
神去なあなあ夜話
三浦しをん
徳間文庫
繁ばあちゃん最強説…。
「なあなあ日常」後日談。連作短篇集。高校卒業と同時に横浜から三重県の山奥・神去村へ来た勇気も二十歳に。林業への思いと共に、ヨキとみきさんとの馴れ初めとか、過去の事故、失せもの探しのお狐様とか。こちらの方が村での日々の日常っぽく感じられた。繁ばあちゃん曰く、あだるとだから夜話かね。なあなあ。クリスマスの話は仄々として良かった。山太も良い子だし、山太の為にツリーを作ったりパーティーを開いたり、勇気を始めとした周りの大人たちも楽しそう。直紀さんとの恋愛事情も一喜一憂。勇気…頑張れ。そして繁ばあちゃん最強説。
8投稿日: 2016.09.04
刑事と怪物―ヴィクトリア朝臓器奇譚―
佐野しなの
メディアワークス文庫
凸凹コンビ、テンション高め。
19世紀の倫敦。犯罪者の臓器を移植され、異能を手にしてしまった怪物”スナーク”と呼ばれる人々の存在する世界。そんな倫敦で、新米刑事アッシュは、スナークとコンビを組む事に。最初は「怪物となんて…」と思っていたアッシュだったけれど、同じく最初は非協力的だったスナーク・ジジと行動を共にするうちに、次第に考えを改めていく。擦れた大人なジジに揶揄われながらもアッシュが清廉潔白、真っ直ぐすぎて…逆にアホの子か!っていう。表紙から陰惨な雰囲気を想像していたのに良い意味で裏切られました。声を出して笑ってしまった。 アッシュの父親は…そういうオチなんじゃないかなーと予想はしてても、もう不器用な父親の愛とかいう言葉で片づけられるレベルじゃないし、キングの気持ちもわかる。そういうのは自己愛っていうんだよ。アッシュにはジジの方が不良パパ(お兄ちゃん?)って感じで人生に良い影響を与えてくれそう。大馬鹿野郎な親父なんか見限っちまえよ。ところで個人的に一番興味があるのは狂人・喪服の外科医ブラッド・ロングローゾです。彼の若い頃のエピソードとかもっと読みたいですなあ。
7投稿日: 2016.08.04
幽霊詐欺師ミチヲ
黒史郎
角川ホラー文庫
そこそこグロいがコミカルでもある。
連作中篇2本。結婚詐欺に遭い、借金まみれで自殺しようとしていたミチヲ。まさに首を括ろうかという時に、カタリという謎の男に「ある仕事をすれば借金を肩代わりしてやる」と持ち掛けられる。500万もの借金を帳消しにする仕事がまともな筈もなく、ミチヲは霊の世界へと足を踏み入れる事に…。幽霊に仕掛ける結婚詐欺。そこそこ表現がグロい。けど、カタリとの会話とか犬のカネコとのやり取りはコミカルで、サクッと読みやすい。怖がりのミチヲが良い奴でな…。最初はグロいだけだったマミコも次第に可愛く見えてくるのが面白かった。次巻も楽しみ。
5投稿日: 2016.07.29
絶対城先輩の妖怪学講座
峰守ひろかず
メディアワークス文庫
妖怪学
東勢大学文学部四号館四階、四十四番資料室。妖怪に関する膨大な資料を蒐集・研究するのは、絶対城阿頼耶。原因不明の耳鳴りに悩んでいた新入生の湯ノ山礼音は、絶対城によって長年の悩みを解消される。だがその代わりに絶対城の手伝いをさせられる事に。不思議を不思議として描くだけではなく、怪異という現象と、妖怪という概念(そして小道具)でもって依頼人の悩みを解決したり弱みを握ったり。軽快な会話と文章はコメディ調で軽く、途中まではやや単調なのだけれど、ラストの展開はスピード感があって良かった。トンデモ説も面白い。
6投稿日: 2016.07.24
一八八八 切り裂きジャック
服部まゆみ
角川文庫
真実は…
19世紀末。大英帝国の首都・霧の倫敦。光と退廃の街。日本から医学留学生として、独逸を経てエレファントマンに会うため倫敦にやってきた柏木薫と、友人でスコットランドヤードに所属している美貌の青年・鷹原惟光の二人が、世間を騒がせている「切り裂きジャック」事件に巻き込まれていく。絢爛豪華な貴族社会と、隣り合わせの貧困と犯罪。暴力や売春。当時の倫敦の雰囲気がとてもよく描かれていたと思います。皇太子から女王までを魅了してしまう鷹原と、真面目すぎて腹芸すらできない柏木の友情は良い。ただ後半の柏木は頑固すぎて…ジェムが気の毒で。
6投稿日: 2016.07.24
改訂完全版 斜め屋敷の犯罪
島田荘司
講談社文庫
奇人ぶりを楽しむがいい
18年ぶりに改定完全版にて再読。登場人物は全く覚えていなかったのだけれど、屋敷の秘密の方は完全に覚えていたので、犯人探しなどは考えずに懐かしく読んだ。北海道の最北端に傾いて建つ館・流氷館。通称「斜め屋敷」で連続して起きる密室殺人。雪に閉ざされた館の中で少しずつ恐怖が蔓延していく雰囲気が良い。けれど、前半の英子の行動は何というか…寒すぎるというか、ある意味で痛々しいというか、読んでいて苦笑した。御手洗と石岡が登場してからのテンションが異常で、突然画面に色がついたようなイメージ。奇人ぶりが楽しい。
7投稿日: 2016.07.10
