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つたもみじさんのレビュー
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  • 薔薇十字叢書 風蜘蛛の棘

    薔薇十字叢書 風蜘蛛の棘

    佐々木禎子,THORES柴本,京極夏彦

    富士見L文庫

    原作の雰囲気に忠実なパスティーシュ。

    薔薇十字叢書。著者さん二作目。前作「桟敷童の誕」同様、今回もオーソドックスなパスティーシュ。戦時中、日本軍が行っていた連合国向けのプロパガンダ放送ラジオのアナウンサー、愛称を「東京ローズ」。元GHQ職員から、探偵・榎木津に「東京ローズを探してほしい」という依頼が来るが、手掛かりは声。見る事しかできない榎木津と探偵助手・益田。捜査はやがて、薔薇屋敷の人喰い蜘蛛から逃げてきたという少女の保護、刑事・木場が追うバラバラ殺人とも絡んでいく。原作の雰囲気もあり良かったです。個人的には前作の方が好みでしたけど…。

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    投稿日: 2017.07.13
  • 薔薇十字叢書 蜃の楼

    薔薇十字叢書 蜃の楼

    和智正喜,toi8,京極夏彦

    富士見L文庫

    薔薇十字叢書の変わり種。SFチックな幻想小説。

    薔薇十字叢書。昭和二十七年。初の長編小説「蜃の楼」を上梓した関口巽は、刑事・木場、担当編集・桜木と共に東京の街を彷徨っていた。スカイツリー、東京オリンピック、霞が関、市民・学生運動…。連続神隠し事件の犯人と目される・黒衣を纏った”S”を捜し、時代を超えて関口は東京を彷徨い歩く。ずっと「夢オチじゃあるまいな…」と、思いながら読んでた。うん、まあ…夢オチ、ではないか。ノスタルジックな昭和の景観や、隔離された喫煙コーナーに文句を言う木場、これはこれでSFチックな幻想小説みたいで面白かったです。

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    投稿日: 2017.07.13
  • デボラ、眠っているのか? Deborah, Are You Sleeping?

    デボラ、眠っているのか? Deborah, Are You Sleeping?

    森博嗣

    講談社タイガ

    生きているという概念。

    新たに発見された、生殖可能な一族とスーパ・コンピュータ。ナクチュと酷似したその施設の調査に、ハギリはヴォッシュ博士に呼ばれ参加する。一方、ナクチュの頭脳は再起動し、新たにトランスファの存在が明らかに。人工細胞やメモリィ、通信機能を取り入れ機械に近づいてゆく人間。生きているという概念。ネットワークを自由に飛び回り、増殖や合体を繰り返しながら学習してゆくトランスファ。デボラとベルベットの目に見えぬ攻防。サリノの扱いは、ちょっと可哀想な気もする。アネバネも馴染んできたけど、ラストのウグイの仕草…か、可愛い。

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    投稿日: 2017.07.13
  • 黒猫の三角 Delta in the Darkness

    黒猫の三角 Delta in the Darkness

    森博嗣

    講談社文庫

    キャラクターが個性的なVシリーズ第一弾。

    Vシリーズ第一弾。各シリーズを摘み食いのようにして読んでいるのですが、こちらはキャラクターが個性的。1年に1度。決まったルールの元で起こる殺人。プロローグでの「事件に関わった四人組のうちの一人が記述している」てのがズルい。消去法で割り出した人物が、そのまま捻りなく犯人だったので拍子抜けではありましたが。殺人の動機についての考察は面白いです。紅子は勿論だけれど、個人的には練無がとても気になる存在。著者さん喫煙シーンを書くのが多い気がするのですが、流石にステーキ屋でスープ飲んでる時にまで煙草吸ってるのは…。

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    投稿日: 2017.07.13
  • 人形式モナリザ Shape of Things Human

    人形式モナリザ Shape of Things Human

    森博嗣

    講談社文庫

    Vシリーズ第二弾。

    Vシリーズ第二弾。練無がバイトをしている蓼科のペンション・美娯斗屋に遊びに来た紅子、紫子、保呂草の三人。安価で休暇を満喫する筈が、私設の「人形博物館」のステージで行われていた「乙女文楽」演者が殺されるという事件に遭遇する。各シリーズを摘み食いしているけれど、Vは他よりもキャラが立っているせいか、主要キャラの人間関係などに重きを置いて読んでしまう傾向にある。とりあえず林を殴ってもいいだろうか…グーで。今回も消去法で割り出した人物が犯人であったのか、黒幕がいるのか。保呂草の裏の顔が、紅子にバレる行も面白い。

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    投稿日: 2017.07.13
  • 私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback?

    私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback?

    森博嗣

    講談社タイガ

    生きているのかと問うのは…

    Wシリーズ第五弾。フランスの博覧会から脱走したウォーカロンが、アフリカ南端にある「富の谷」と呼ばれる閉鎖された地に潜んでいるという情報を得て、ハギリ、ウグイ、アネバネの三人は調査に出かける。そこには肉体を捨て、脳だけを卵のようなカプセルに入れ、バーチャルの世界・テルグの村に生きるウォーカロン達が居た。リアルとバーチャル、夢と現実の違いとは。生きているものだけが、自分が生きているかと問う。ラストのハギリと、トランスファ・デボラの会話、求めた報酬は知性、それは友情。どことなく仄々としていてほっこりした。

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    投稿日: 2017.07.13
  • 猫と妻と暮らす 蘆野原偲郷

    猫と妻と暮らす 蘆野原偲郷

    小路幸也

    徳間文庫

    ある日、帰宅すると妻が猫になっていた。

    ある日、帰宅すると妻が猫になっていた。大学で研究職にある和野和弥は、古き時代から続く蘆野原一族の長筋の生まれ。事(災厄)を為す(祓う)力を持つ。表舞台に出る事はなく、少しずつ変化していく時代の中にあって淡々と事を為し、暮らしている。事の見立てをする家系に生まれた幼馴染の和泉と、猫になった妻・優美子と、猫から人間になった娘・多美。やがて妻が猫になるのは事の前触れである事を知る。仄々とした日常は、サラサラと流れるような穏やかさで。心地よく、美しい世界観と文章でした。なぜ妻は猫になるのか。その不思議もまた良し。

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    投稿日: 2017.06.30
  • 帝都物語 第壱番

    帝都物語 第壱番

    荒俣宏

    角川文庫

    虚実ごった煮オカルトファンタジー

    明治の末、江戸から東京へと大変換を遂げようとしている帝都。大蔵省の若き官吏・辰宮洋一郎と、軍人・加藤保憲。依童として加藤に攫われる、洋一郎の妹・由佳理。奇門遁甲、陰陽五行に陰陽道、蟲術、風水、土砂加地…泉から湧き出るような知識に圧倒されながらも、特に「神霊篇」は読み難さを感じて結構な時間が掛かってしまった。幸田露伴や森鴎外、渋沢栄一など実在の人物の登場や、当時の都市計画など。物語は面白かったけど、なんとなく後味は悪いなぁ。ああ、なんか洋一郎をブン殴りたいよ…グーで。

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    投稿日: 2017.05.09
  • 文庫版 書楼弔堂 破曉

    文庫版 書楼弔堂 破曉

    京極夏彦

    集英社文庫

    本は墓、書舗は墓場。どのような本をご所望ですかーーー。

    どのような本をご所望ですかーーー。明治二十年代の半ば。本は墓、書舗は墓場のようなものだという主人が営む書楼弔堂。その人にとって、己の為の大切な本は一冊で良い。その一冊を求めて訪れる人々の為に膨大な蔵書から本を選び、売る。読まれぬ本を弔い、求める者に届け供養する。実在の人物、史実と虚実が入り混じる連作短篇集。抑揚は少なく、全体的に静かな物語だったけれど、西洋文化が流れ込み、急激に変わっていく時代の中で、それぞれの人の想いに引き込まれた。他シリーズでも登場した名前もチラホラ。それもまた楽し。

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    投稿日: 2017.04.29
  • 神の時空 鎌倉の地龍

    神の時空 鎌倉の地龍

    高田崇史

    講談社文庫

    霊ファンタジー? シリーズ第一弾。

    シリーズ第一弾。鎌倉好きですよね…著者さん。ミステリのQED、忍者アクションのカンナ、そして今回は、霊ファンタジー? 歴史パートへの繋げ方がいつになく強引だと思ったら怨霊と直接対話アリで、ある意味今までのシリーズよりも歴史的知識の必要性はある…か。辻曲家の情報は小出しに出るものの、辻曲兄妹の友人・陽一の情報だけが全く出ないので、何かあるとは思っていたけれど、そうきたかw 今のところ死んでいる摩季のその後や、高村や磯笛(とその組織?)の正体等、謎はまだ多し。あ、司法解剖って実際、色々と問題アリらしいですね。

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    投稿日: 2017.04.29