
いねむり先生
伊集院静
集英社文庫
人を救うのは、人でした
突然眠気に襲われるナルコレプシーという病気だった小説家・色川武大氏を「いねむり先生」と親み、付き合った伊集院静氏が自らを小説の主人公におき、色川と過ごした当時の日々を書きました。妻(現実には夏目雅子)の死は伊集院氏にとって堪え難い悲痛なもので、酒やギャンブルに明け暮れてしまう。ただその時、色川とともに過ごした時間は悲しみを和らげてくれたのです。麻雀という共通項がある二人ですが、色川と伊集院を繋ぐものは賭け事だけでなく、互いの存在を認識しあう安堵感だったように思います。二人の温かいやりとりに、人と人の出会いの妙を感じます。(スタッフO)
0投稿日: 2013.09.20
バゴンボの嗅ぎタバコ入れ
カート・ヴォネガット,浅倉久志,伊藤典夫
ハヤカワ文庫SF
ヴォネガットの観た50-60年代アメリカ
第二次世界大戦中、兵士も捕虜も経験したカート・ヴォネガットは、アメリカ文学を語る上で重要な人物です。彼の作品を数多く翻訳している浅倉久志氏と、伊藤典夫氏の訳による本書は、1950年代、60年代にヴォネガットが雑誌に寄稿した短編を集めたもので、ヴォネガットの初期作品集ということになります。文明批判や権力の集中を憂う作家として知られていますが、本作には特有のシニカルはありつつも、全体としては非常にリーダビリティの高い作品になっています。戦争経験を活かした作品など、5-60年代のアメリカが抱えた雰囲気を反映した作品で、不幸な結末であろうとも彼の視線はいつも温かい。(スタッフO)
0投稿日: 2013.09.20
あ・うん
向田邦子
文春文庫
恋、友情、自己愛の終着点はどこに
神社の狛犬「あ・うん」のように、一言交わすだけで相手を理解できるほどの親友を持つ男が、親友の妻を愛してしまう葛藤を書いた小説です。先にテレビドラマの脚本として書かれ、その後、自ら小説化。人と人の関係はこうあるべきと言い切らずに、誰かを愛するかたちは様々あるのだとそっと教えてくれる。二人の関係性を公然と言い切れなくても、大切に想ってしまう人が居るとは切ないかぎりです。(スタッフO)
1投稿日: 2013.09.20
行動することが生きることである 生き方についての343の知恵
宇野千代
集英社文庫
なによりも「行動」は説得力をもつ
何事も頭の中で考えるだけなら簡単ですが、考えついたことを実際の行動に移すことは何て難しいのでしょう。「今」は「行動」を重ねてきた結果であり、「行動」こそがすべてと諭す本書。人生の酸いも甘いも味わい尽くしてきた小説家であり随筆家の宇野千代氏が、生きる作法を説きます。「思い込んだことは、その通りになってあらわれる」「忘れることが新しい道へ踏み出す一歩である」などと、99歳まで生きた彼女が腹の底から発する言葉には相当な説得力があります。過去に縛られたり、未来ばかり追いかけている人々の思考をシンプルに一掃してくれる、自分にはお叱りの一冊。(スタッフO)
0投稿日: 2013.09.20
荒木飛呂彦の超偏愛! 映画の掟【帯カラーイラスト付】
荒木飛呂彦
集英社新書
独断で映画を語るすすめ
マンガ家、荒木飛呂彦氏がひたすら映画について語ります。彼は、高校生のときには、年に200〜300本の映画を観て、観た映画のあらすじを自分なりに書き留めていたほどの映画好き。それだけ映画の蓄積が脳内にあるのだとしたら、代表作『ジョジョの奇妙な冒険』の場面やキャラクター造形、スタンド能力にも映画の知識は活かされているかもしれませんね。スタンド名にバンド名が多いので、音楽方面はチェックしていましたが、これは映画の引用やオマージュも要チェックです。映画への熱いコメントを通して、荒木氏自身の感性や、彼の作風に影響をもたらしたものを知ることができるので、まずはこれを読んで映画を観ましょう!(スタッフO)
3投稿日: 2013.09.20
国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)
ダロン・アセモグル,ジェイムズ・A・ロビンソン,鬼澤忍
単行本
専門家だけでなく、一般の人向けでもある
ノーベル賞よりも受賞が難しいとさえ言われる経済学の賞、ジョン・ベイツ・クラーク賞受賞者であるMIT教授ダロン・アセモグルと気鋭のハーバード大学教授ジェイムズ・A・ロビンソンが、産業革命以降の国家の繁栄、衰退に関わる要因となる社会の仕組みを、歴史的事象を取り上げながら解説しています。これからの経済学を担う2人が、およそ15年の歳月をかけて研究した結果は、間違いなく贅沢で価値ある1冊。ノーベル賞歴代受賞者がこぞって褒めたとされるのにも納得。政治と経済の両面からみて、持続性のある社会とはどのようなものなのでしょう。過去の事象から豊富な引用を行っており、政治経済の点から世界史を再読する機会にも。(スタッフO)
0投稿日: 2013.09.20
ずる 嘘とごまかしの行動経済学
ダン・アリエリー,櫻井祐子
単行本
こういう人は「ずる」するんです
騙してやろうだなんて悪意はなくても、反射的に嘘をついてしまったり、失敗をごまかして隠そうとしたことはありませんか?日常で経験するかもしれないシーンを、アメリカのデューク大学の行動経済学者ダン・アリエリーが分析しました。咄嗟に口を衝いて出てしまったちいさな嘘も重ねると、ごまかしのきかない不祥事に発展してしまうことも…。人が物事を選択するときの心理や、集団行動の中で不正が生まれる瞬間を、検証的に解析。ついズルしちゃう人の脳内思考がわかります。(スタッフO)
1投稿日: 2013.09.20
青春を山に賭けて
植村直己
文春文庫
登頂したなら、次なる頂上を目指す
標高8848メートルのエベレストを日本人で初めて登頂したばかりか、世界初、モンブランやキリマンジェロ、マッキンリーなど5大陸の最高峰を制覇する快挙を遂げた植村直己氏。そのすべての登頂を、山登りをはじめてから10年で成し遂げてしまったのだから驚きます。植村自身は「山登りは5年や10年ではまだ初心者、私もほんの新米にすぎないのだ。」と話していて、登山家として先人たちに敬意を払い、更なる山に挑戦する姿勢をみせる、偉大な人物であり冒険野郎の生きざま。(スタッフO)
0投稿日: 2013.09.20
ポップ中毒者の手記(約10年分)
川勝正幸
河出文庫
ポップカルチャーのカタログでもある
エディター川勝正幸氏が、90年代渋谷を中心としたポップカルチャーを徹底的にルポして書いたエッセイやコラムを集めた1冊。デニスホッパーやセルジュ・ゲンスブール、デイヴィット・リンチなどの人物を敬愛し、サブカルチャーの魅力にずぶずぶとのみこまれていった川勝が、当時の空気をまるごとコンパイル。その見識の幅広さには脱帽するばかり。ポップカルチャーを愛してきた人はもちろん、そうでない人も川勝の並々ならぬ放熱には魅せられてしまいます。亡くなったことが悔やまれるばかりですが、その思いを、愛をいまなお読める喜びを噛み締めましょう。(スタッフO)
0投稿日: 2013.09.20
ねむいねむいねずみ
佐々木マキ
ねむいねむいねずみシリーズ
ねむいときはどこだってねむれてしまいます
『羊をめぐる冒険』や『ダンス・ダンス・ダンス』など、多くの村上春樹作品のカバーイラストを手掛けてきた佐々木マキ氏。本書は、1976年にはじまった「ねむいねむいねずみシリーズ」の第一作。まぶたを重そうに開いて、眠い顔をしているねずみが可愛くて、子供の頃から何度も開いた1冊です。木の枝に荷物をぶらさげ、旅するねずみ。旅路で寝床を探してたどり着いた一軒家では、お風呂で寝てしまい溺れそうに…溺れてもなお眠ろうとするねずみにニヤリとしてしまいます。さすが三大欲、眠気との格闘も命がけですね…。(スタッフO)
1投稿日: 2013.09.20
