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ramsさんのレビュー
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  • タルト・タタンの夢

    タルト・タタンの夢

    近藤史恵

    東京創元社

    フランス料理と謎解きの美味しい関係

    住宅街にある小さなフランス料理店ビストロ・パ・マル 気取らない料理とピッタリ合ったワインにかけられた 日常の謎解きが7編 一風変わった雰囲気のシェフの推理が冴えます 個人的にフランス料理は馴染があまりなく 料理の知識がもっとあったらもっと楽しめたのにと 惜しい気持ちで読み進めました 続編ではキャラのたつシェフへの掘り下げを期待します

    13
    投稿日: 2014.09.23
  • ヒート

    ヒート

    堂場瞬一

    実業之日本社文庫

    モヤモヤが残る結果となりました

    警察小説で定評のある堂場さんのスポーツ小説です スポーツを描くには少々雰囲気が重苦しく感じました まず天才と言われるランナーのレースに対しての心の動きなど ベースとなるべきところの描写が薄く 世界記録への挑戦が単なる知事のエゴだけに感じたり 天才ランナーも自信過剰で我儘な人間としか伝わらず その分物語への入りづらさを感じます また途中までの手に汗握る展開は良かったのですが エンディングの中途半端さもあり モヤモヤの残る読書体験となってしまった感があります

    4
    投稿日: 2014.09.19
  • ホルモー六景

    ホルモー六景

    万城目学

    KADOKAWA

    鴨川ホルモーを読んだら次はこれですよ!

    ReaderStoreでもシリーズ作品として取り扱われていますが 「鴨川ホルモー」のスピンオフ版といえる作品 これ単体で読んでも何とか読めないことはないのですが 順番通りに読むと「鴨川ホルモー」をより深く楽しむこともできます 六編ほどの短編で構成されていますが タッチが微妙に違う作品もあり飽きさせません 特に「もっちゃん」「長持ちの恋」が良いアクセントになっていると思います

    4
    投稿日: 2014.09.09
  • ジェントルマン

    ジェントルマン

    山田詠美

    講談社文庫

    嫌な話なのに惹きつけてやまない、すごい話でした

    共感できる人間も誰一人として出て来ない、楽しいとは程遠い話で 不快感を露わにしたり、読む事を拒絶する人も居られると思うのですが それらを全てひっくるめて山田詠美さんらしい味の話だったと思います この話には一般的ではない愛の形が描かれていますが そういった表面的な事柄ではとらえきれない もっともっと奥にある人間の本性を一切の躊躇なく描き切った傑作だと思います

    3
    投稿日: 2014.09.08
  • ぐるぐる猿と歌う鳥

    ぐるぐる猿と歌う鳥

    加納朋子

    講談社文庫

    重みのあるテーマを温かみを持って描いた話

    加納さんと言うと「七人の敵がいる」だけは読んだことがある そんな方の多いのではと思いますが 加納さんの中ではどちらかと言うとあれは異色で こういった少し重みのあるテーマを温かみをもって描いた作品こそだと思います 重いと言っても楽しく読みやすい話で、後味も悪くなく安心して読んでいけます 最後に明らかになる謎解きの部分も悪くはないのですが この作品は謎を解き明かすといった読み方よりも 秘密を抱える子供たちの気持ちに 寄り添うように読んでいくのが良いかと思います

    3
    投稿日: 2014.09.04
  • 妖怪アパートの幽雅な日常(6)

    妖怪アパートの幽雅な日常(6)

    香月日輪,深山和香

    月刊少年シリウス

    オーッ!やっちまったゼ!!

    子供も大人も楽しめる妖怪アパートシリーズ 子供に「妖怪アパート6」を買って~、とせがまれ 夏休みの宿題も終わらせたし、まぁ良いかとReaderから購入 すると子供が「お父さ~ん、これ漫画版だよ~」 えーっ!うわぁ~やっちまった~!! 仕方ないから6巻だけは漫画版で読んでくれと言おうとしたら 追い打ちをかけるように「これもう小説版で読んだ」 (小説版と漫画版では進みが違うようです) がっかりしながら小説版を買い直しました パソコンからだったら間違う事もないのでしょうが Readerから買う時には画像が小さくて表紙のデザインが解りづらいので よ~く確認してから購入しましょうね、トホホ。 でも漫画版で登場妖物のイラストが観られてちょっと嬉しかったので まぁいっか

    1
    投稿日: 2014.08.29
  • GO

    GO

    金城一紀

    角川文庫

    時の移り変わりとともに変化する心情に囚われずに読みたい作品

    ↑の書籍説明を読んでみてください この書籍が出版された2000年頃とは この話の舞台を取り巻く情勢には変化があり 物語で描かれている差別や感情などを そのまま受け取る事が難しくなってきています ですがそういった部分を抜きにして ハードボイルドでありながらコミカルなラブストーリーとして 単純に楽しむことが出来る秀作です とにかくカッコイイ主人公を追うだけで十分に楽しめると思います

    3
    投稿日: 2014.08.28
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

    猫を抱いて象と泳ぐ

    小川洋子

    文春文庫

    ひょっとすると小川さんの作品は電子ブックと相性が悪いのかも知れない

    小川さんらしい静けさを纏った作品です 単純にストーリーそのものを追いかけるのではなく 物語を支配する薄暗い静かな空気の匂い そしてその先にある小さな暖かさを感じるそんな印象の話でした できればゆっくりと時間をかけて対峙し ページを捲る音さえも物語の一部として楽しみたい ひょっとすると小川さんの作品は電子ブックと相性が悪いのかも知れない

    7
    投稿日: 2014.08.24
  • マドンナ

    マドンナ

    奥田英朗

    講談社文庫

    40代のサラリーマンの悲哀をコミカルに描いた短編集

    会社ではそれなりに発言力も有るが 上と下に挟まれちょっとツライ立場の中間管理職 そんな微妙な立ち位置で毎日奮闘する課長さんたちの心のモヤモヤを 奥田テイスト全開で描いた話 課長たちが頑張れば頑張るほど空回りする姿が何とも可笑しく 少しだけ気の毒にもなったり… それでも最後はほんのり暖かいのも奥田流です 妙齢の女性の揺れる心を描いた「ガール」の中年男性版といった話で 二つを読み比べると 男女間での人間関係や悩みの違いが際立ち、更に楽しめると思います

    6
    投稿日: 2014.08.18
  • 対岸の彼女

    対岸の彼女

    角田光代

    文春文庫

    角田さんらしい普通の女性の心理の奥深くを炙り出すような物語

    家族の中の父親を描かせたら 重松さんの右に出る人は居ないのではと思うことがありますが 普通の女性が抱える心の隙間を描かせたら 角田さんが一番ではないかと思います 女性の友情と孤独をテーマに描かれたこの作品も 女性だからこその心理を深く炙り出した角田さんらしい話だと思います

    5
    投稿日: 2014.08.16