
東京観光
中島京子
集英社文庫
ノスタルジックな雰囲気が心地良い作品です
さすがは中島さん 派手さはなくとも、実力に裏打ちされた安心感のある文章が じんわりと心に沁み込んで来るようです 落とし所が意外だった「植物園の鰐」からファンタジックな「ゴセイト」 設定が楽しい表題作「東京観光」とバラエティーに富んだ ノスタルジックで、ちょっと不思議で、ユーモラスな短編が七つ じっくりと中島さんの世界に浸れる一冊です
7投稿日: 2015.08.04体育館の殺人
青崎有吾
東京創元社
その挑戦、受けて立ちましょう
学校を舞台とした軽いタッチのミステリですが 謎解きのロジックは本物 今時珍しい「読者への挑戦」の章があり ひさびさに事件の重要なポイントが書かれている部分に戻って読み直したり 容疑者一人一人の行動を洗い直したりしながら推理を楽しみました 結果は 自分で言うのも何ですがかなり良い所まで行ってたんだけど… というのも密室の謎解きで「こうすれば破れると思うが現実的には無理だろう」と 正解から外していた方法が正解として挙げられていて 「現実として無理」が「まぁアリかな」くらいまでの説明はされていたのでした そんな訳でけっこう自己満足に浸っていたのですが エンディングを読んで更に深い所まで突っ込んで書かれているのには ちょっと驚かされました
6投稿日: 2015.07.09新釈 走れメロス 他四篇
森見登美彦
祥伝社文庫
動機はどうあれ、阿呆学生が京の街を目一杯走り抜けます
お馴染みの物語を森見さんが森見さんなりに解釈し リメイクした短編集 誰もが知っているあの「走れメロス」 確かに本家同様目一杯走り抜けましたが 正義感溢れるメロスと阿呆学生ではその源は正反対 立場一つを変えただけでこうも対照的な話を作り上げ 最後はメロステイストで収めてしまう事に脱帽です その他にも「藪の中」や「百物語」のような 森見テイストを少し抑えて書かれた話の 抑え気味で吶吶とした語り口にゾクリとさせられ 全編に渡り楽しめる内容となっています
6投稿日: 2015.07.02ハケンアニメ!
辻村深月,CLAMP
マガジンハウス
ラブ要素の薄い有川さん!?
人の心の奥底の闇を描くのが上手い印象の辻村さん あれっ、ラブ要素の薄い有川さん!?と見間違うような 見事なまでに軽るい雰囲気の話ですが 節々に感じる文章の上手さに「軽いものしか描けない」のではなく テーマに合わせ「軽く読ませるように描いている」そんな雰囲気を感じ 「彼女らしからぬではなく」、「幅広い作風の」と思わせてしまう 実力の高さが伺えるような気がします アニメ好きでも、そうでなくても楽しめる作品です
5投稿日: 2015.06.28むかしのはなし
三浦しをん
幻冬舎文庫
後半に盛り上がります
始めの1,2章を読んだ時には、何が面白いの???状態でしたが そこはやっぱり三浦さん 始めの方の中途半端と感じた章には多くの伏線が隠され それが後の物語へと大きく小さくリンクされていて 何度も前に戻り読み返しをしてはニヤリとさせられました 誰もが知っている昔話を未来の人に向けてヒトヒネリした意欲作です
13投稿日: 2015.06.20中高年のためのカンタン自宅トレ お腹引き締め編
永田克彦
ゴマブックス
シックスパックを目指し日々精進中
期限切れポイントが微妙にあり、お腹のたるみもちょっと気になっていたので ホンの軽い気持ちで買った本でした 力の抜け具合が良かったのか 紹介されているトレ方がシンプルで良かったのか、けっこう続いています ホンの少しずつですがお腹周りが締まってきたような気もして それが励みにもなっています この夏、正々堂々と水着姿を披露したいあなた、まだ間に合いますよ 気になるところとして 上の目次の第1回と第2回は収録されておらず第3回から第10回までの 8回で構成されています もしも中の人が見ていらしたら修正されると良いかと思います
3投稿日: 2015.06.01消失グラデーション
長沢樹
角川文庫
騙された快感、のち、モヤモヤ
先入観なく読んだ方が楽しめると思いますので ちょっと書きづらいところもあるのですが この本の一番の見所である騙しはイニシエーションラブなどよりも解りやすく 騙された事の悔しさよりも、やられた感を気持ち良く楽しめるものでした 反対に消失のトリックは、私的にはちょっとナシだったかなぁ それでも、そこに蓋をしてでも 騙せされた事への検証がてら再読をしたくなる良くできた話だと思います
9投稿日: 2015.04.02ビブリア古書堂の事件手帖6 ~栞子さんと巡るさだめ~
三上延
メディアワークス文庫
今度はまるごと太宰治
早いものでビブリアシリーズも6巻目となります 今回取り上げられるのは1冊全て太宰治です ビブリアで太宰と言えば、そう第1巻で描かれたあの事件 そう栞子さんを襲った仮出所中のあの男との対決です その他にも二人の家族を巡る繋がりなどにも踏み込んだ内容にもなっていて これからどう展開していくのか興味深い所 今作では母親の動きは少なめでしたが 太宰と言う原点に戻り、そこから時を経て二人の絆は強まり いよいよラストに向け動き出す気配を強く感じられます 母親の動きは、二人のこれからは 次巻を楽しみに待ちましょう
8投稿日: 2015.03.30お待ちしてます 下町和菓子 栗丸堂2
似鳥航一
メディアワークス文庫
和菓子のお嬢様の正体に迫るか
東京の下町、浅草が舞台 若くして店を継いだ若い和菓子職人と 和菓子のお嬢様が身の回りに起きる騒動を解決していく 前巻で残された気になる宿題 この巻で明らかになるかと期待をして本を開いたのですが 肝心の部分はお預けでした それでも和菓子のお嬢様の正体が少しだけ明かされ、ますます気になるところ あのシリーズをなるべく意識しないで読んだので違和感もなくなってきたので 次巻を期待しながら待ちましょうかね
3投稿日: 2015.02.14お待ちしてます 下町和菓子 栗丸堂
似鳥航一
メディアワークス文庫
浅草を舞台に若い和菓子職人と和菓子のお嬢様が謎に挑む
東京の下町、浅草が舞台 若くして店を継いだ若い和菓子職人と 和菓子のお嬢様が身の回りに起きる騒動を解決していく 下町の温かさ、人の人の触れ合い、若い職人のこだわり そして仄かな恋の予感 うん、悪くないのですがねぇ… 一見強面の若者と 普段は人見知りだが和菓子の事には滅法詳しく、その話題になるとスイッチが入り 小さな違和感からそこにある謎を解き明かしてしまうオタク系美人 ここまでくると、どうも古書店のあの二人と印象が被ってしまって 最後に伏線を残しながらの気になる終わり方 あの話とは切り離して次巻も読んでみたいと思います
4投稿日: 2015.02.05