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わらぶるさんのレビュー
いいね!された数387
  • プリニウス 5巻

    プリニウス 5巻

    ヤマザキマリ,とり・みき

    新潮45

    最近ネットにウソのニュースが多いと言われてますが

    ローマ時代のニュースや情報なんて、人伝の伝聞を記録するわけだから、大げさに伝えるヤツがいても、真偽の確認なんて不可能だったんでしょうし、伝えてくれること自体が貴重で、さらにそれを確認しようとするプリニウスのような人がいたから博物誌があるわけですよね。ネットで検索しておしまいの我々には想像もつかない苦労や冒険があったのでしょうね。コミカルに、時にシリアスに描かれるヤマザキ先生のキャラクターととりみき先生の絵が合体して、なんとも贅沢な作品になっています。この先が楽しみ。 また一巻から読み直そう。

    6
    投稿日: 2017.02.16
  • 虐殺器官

    虐殺器官

    伊藤計劃

    早川書房

    人間の本性とは

    虐殺器官。 え、機関じゃないの?と思って読み始め、改めて人の残虐性を、そして社会性や愛情について考えさせられました。作者が亡くなられていること、執筆中も闘病中であったことを考えると、生と死に対する思いが冷静に、執拗に描かれているように思います。大量虐殺は、当事者にとってどんなものなのか、なぜそんな残酷なことができるのかと思うことなんて、平和に暮らしている限りほとんど無いと思いますが、この作品を読んだことで、少しでもそういうことについて思いをめぐらすことができたのは良かったと思います。あるものは淡々と作業のように人を殺し続け、あるものは、熱に浮かされたように人を殺す。そんな現実に放り込まれた時に、それを止めることができるか、少なくとも、他者が行なっているのだからと、自分も手を下すことがないようにありたいと思いました。でもそうなると、殺される側になってしまうのかな。自分の大切な家族を守るために、誰かを殺すことがないように祈るばかりです。 現在のいわゆるボタン戦争でも、PTSDに苦しむ兵士が多数出ているというニュースもありました。人を殺すということの重みは、直接か間接かということではないのだろうと思います。人は、考え、想像できる生物ですから、直接手を下さなくとも、遠隔操作で人が死んだことを自らの行為として感じることができ、それが重荷となって苦しむ事こそが、本来の人の在り方であると信じたい。ゲーム感覚で人を殺すようになったら、あっという間に世界中あちこちで大量虐殺が始まるでしょうから。本作の主な登場人物は、そこをきちんと受け止めているところが描かれていました。世界の平和を思うために、ぜひ一読を。(残酷な描写に耐性のない方は、難しいかもです。)

    6
    投稿日: 2017.02.07
  • 悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)

    悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)

    小野不由美,いなだ詩穂

    ARIA

    ヒタヒタと忍び寄る「ゾクッ」

    小野不由美先生は、十二国記でドハマりして、ゴーストハントコミック版、小説版と読み進め、残穢、鬼談百景といったら、怖い。ファンタジーじゃなくてホラー。しかも、リアルとフィクションの境が解らなくなってくる。思い出してゾクゾク。ゴーストハントと本作は、楽しく読んで、「ゾクッ」がいいのです。いなだ先生の絵柄が柔らかく、時にオドロオドロシク。小説版より幾分怖さがマイルドに感じられるかもです。全3巻一気読みして楽しめました。ナルとじーんも大好きだけど、小野先生、泰麒のその後が気になって、気が変になりそうです。今年こそ十二国記をヨロシクお願い致します。 いなだ先生、コミカライズとっても素敵です。他の作品も読んでみまーす。

    7
    投稿日: 2017.01.31
  • 空飛ぶ広報室

    空飛ぶ広報室

    有川浩

    幻冬舎文庫

    今頃になって、やっと読みました

    発売当時、何度も手にとって、元に戻して。すごく売れてたし、ドラマにもなって、うーん、と考えていたら今になってしまいました。自衛官の気構えが心地よく、それ以前に人間ドラマとしても良くできていて、これは人気でますよね。でも、大空を舞うT-4やF-15の場面でなぜか目頭が熱く・・・。グアムでセスナスカイレーンを飛ばして以来、飛行機が大好きなんですよ。(無免許でいけますよ!)空を飛ぶ飛行機を見て涙ぐむオッサンて、なんか変。 ちょうどアマゾンプライムビデオでドラマも公開になっていたので、見てしまいました。ところどころ懐ネタやオヤジギャグが盛り込まれ、泣けるシーンも盛りだくさんで、これも人気がうなずけますね。 原作の取材がしっかりしているから、変な飛躍や脱線もなく、どちらも良い作品と思います。 3.11の章、熱い想いで読みました。私もあの時、少しは人の役に立っていたのかなと思い出しながら。ラジオから聞こえていたあの現実離れした、しかし、冷たい現実に恐れおののいた日から随分立ってしまいましたね。時に無慈悲で恐ろしく、しかし、私たちを暖かく包み込み育んでくれる自然を恐れ敬いつつ、あの日のことは決して忘れません。・・・誕生日なもので。 二人のぎこちない愛に妬けて星4つ。

    8
    投稿日: 2017.01.18
  • コントラスト88 3

    コントラスト88 3

    川崎宙

    ジャンプSQ.

    終わっちゃいました

    熱情 いい曲ですね。ピアノは ソロでも豊かな表現ができる楽器ですよね。楽譜というスピリットを受け止めて、楽譜の通りに演奏する模倣から始まり、自分なりの解釈を加えて表現できるようになれば素晴らしいですよね。同じ曲をいろんな演奏者で聞くと、それぞれの表現の違いに驚くこともしばしば。そんなピアノ演奏の世界を見事に表現した作品でした。 そんな境地にたっすることはできなかったけど、音を楽しむことが身についたピアノに感謝。 川崎先生の次回作に期待してます。

    5
    投稿日: 2017.01.01
  • 陰陽師 1巻

    陰陽師 1巻

    岡野玲子,夢枕獏

    メロディ

    夢枕獏さんも絶賛

    小説の漫画化はなぁーとお思いのあなた、まずは夢枕先生のあとがきを読んでください。小説家と漫画家の相思相愛の作品ですよ。絵の雰囲気もとても良い。小説と漫画と映画&ドラマを行ったり来たりしながら楽しめる「陰陽師」は、やっぱり凄い。みんなで安倍晴明という呪に取り込まれちゃいましょう。

    7
    投稿日: 2016.12.26
  • エル・シオン

    エル・シオン

    香月日輪

    徳間文庫

    ファンム・アレースを読んだ方も、これからの方も。

    香月先生のファンタジー。ファンム・アレースの前日(はるか過去)譚になります。(たぶん)義賊がうっかり神霊の封印を・・・、そして世界を救う という壮大なお話し。ヒトがヒトの力で世界を救うことがいいんですよ。カッコよくて、ちょっと間が抜けていて、熱い想いを秘めたキャラクターが香月先生らしくてとてもいいんです。やっぱりカミサマって奴は、基本傍観者でお願いしたい(アマテラスみたいに・・・)というのは、ヒトの思い上がりかな?両作を読むと、ああ、なるほど、という箇所がたくさんあって、読み直しの楽しみがふえるのです。 ところで、このみなさんのレビューが読めるってとってもいいですよね。読書って、作者の思いを受け取る行為だと思うんですけど、そこにどうしても読者の主観が介在するじゃないですか。でも、他の方のレビューを読むことで、あっ、こんな見方があったんだと気づかされることがたくさんあります。気に入った本は何度も読み直す方なので、みなさんのレビューが読書の一部になっているんです。みなさんありがとうございます。良いお年をお迎えください。

    6
    投稿日: 2016.12.23
  • 【番外編】 守り人作品集 炎路を行く者

    【番外編】 守り人作品集 炎路を行く者

    上橋菜穂子,二木真希子,佐竹美保

    偕成社

    やっと読めました

    このシリーズ、この一冊だけ読めてなかったんです。ヒュウゴの背負っているもの、怒り、哀しみ、ときおり浮かべる淋しげな笑み、強い意志を感じさせる眼。こんな青年時代を過ごしたからなんだなと納得してしまう。フィクションなのに。若き日のバルサの苦悩も。エリンの外伝にも書きましたが、こうした外伝の存在が、さらに物語に厚みと奥行きを加えてくれるから、上橋先生の作品は何度も何度も読み直してしまうのです。そうしてまた違った感動があるのです。天と地の守り人を読み終えたみなさん!本作を読んでからもう一度新ヨゴに旅立ちましょう。先に行って待ってます。

    8
    投稿日: 2016.12.16
  • 難民探偵

    難民探偵

    西尾維新

    講談社文庫

    スッキリ解決ミステリー ではありません

    そう。極めて重要なアレが足りないんですよ。でも、アレがないと解明とは言えないんですよ。日本の警察がいつも苦労するアレを集める描写はなし。状況と推定に終始します。だから面白くない、いやいやそんなことはありません。じっくり読んで推理して、悔しがって、深読みして、裏切られて、弄ばれましょう。現実ってこんなものかもしれませんよ。 でも、給料払い続けることは絶対にないと思いますけど。

    8
    投稿日: 2016.11.28
  • 聖の青春

    聖の青春

    大崎善生

    角川文庫

    涙で画面が見づらい

    以前小児病院の事務をしてたことがあって、その頃の患者さんと話したことを思い出して涙が止まらなくて。聖(さとし)と師匠の関係がまた痛くて。逃げられない運命に立ち向かう力強さ。容赦無く襲いかかる病魔。これほどまでに残酷な運命が聖をさらに純粋に勝負世界へ誘っていく。ストレスに押し潰されそうになって、暴れることだってある。当たり前だろう。弱いものを助けたいという想いがまた素晴らしい。仲間から愛された様子も素敵に描かれている。コミックの「聖」一巻も読んだけど、どちらも甲乙つけがたい。三月のライオンの二階堂も聖をモデルにしたのでしょうね。松山ケンイチさんの映画も期待しちゃうな。タオル持って見に行かないとダメかな。

    11
    投稿日: 2016.11.23