
櫻子さんの足下には死体が埋まっている
太田紫織,鉄雄
角川文庫
まだ、そんなにグロくない。
タイトルから勝手に、死体やらなんやらが大量に出てくるのかと思いましたが、普通でした。 普通に、ミステリーでした。 骨やら標本についての説明はありますが、描写があまりグロテスクではないので、ある意味安心して読めます。 探偵役である櫻子さんには共感しにくいので、「僕」 と一緒に様々なご遺体にうろたえながら楽しむのがよいかと思います。
8投稿日: 2013.10.07All You Need Is Kill
桜坂洋
集英社スーパーダッシュ文庫
繰り返す、戦場という名の日常。
あることをきっかけに、日常から戦死までを繰り返すことになった主人公。 そのループの中で、彼はある女性との「再会」を果たす。 私は、その場面を読み返すたびに、思わず涙ぐんでしまう。 彼らが背負い、重ねてきたものを思って。 SFはあまり……というひとにも、苦手意識を取り除いて読んでほしい。 あと個人的には、まだ公開されてませんが、トム・クルーズ主演のハリウッド映画版は全くの別物だと思ってます。 (『DRAGONBALL EVOLUTION』みたいな。)
3投稿日: 2013.09.25さよならもいわずに
上野顕太郎
月刊コミックビーム
愛するひとをなくしたとき、世界はこんなにも歪んでしまうのか。
ギャグ漫画の印象が強い著者の、自らに降りかかった悲劇を題材としたドキュメンタリー。 うまい言葉、いい言葉が出てこないのだが、「愛するひと」がいる、全てのひとに読んでほしい。 ひとは必ず亡くなるもので、誰もその悲しみを避けることはできないから。
6投稿日: 2013.09.25リング
鈴木光司
角川ホラー文庫
……あれ?
映像化作品とかは全く見たことがなく、初めてまともに触れた原作。 テレビや映画、その他パロディなどで氾濫している「貞子」のイメージとだいぶかけ離れていたので、正直読み進めながら、ちょっと困惑した。 (派生作品が、原作からどんどん離れていったのだろうけど。) 続きが気になる終わり方なので、続編に手を出さざるをえない。 そしてあまりにもギャップのある貞子像に、映像作品も気になってきた。
0投稿日: 2013.09.24さんてつ―日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録―
吉本浩二
月刊コミックバンチ
『あまちゃん』が好きでも、そうじゃなくても。
ドラマ『あまちゃん』の舞台として出てくる鉄道会社、「きたてつ」。 そのモデルとなった、「さんてつ」。 あの震災の日、あの土地で、あの鉄道で何があったのか。 さんてつマンたちは如何にして震災被害を乗り越え、復興へのレールを走っているのか。 震災被害のみならず、地方の鉄道会社の実状を知る上でも大いに参考になる、ドキュメンタリー。 余談だが、この著者の絵柄・作風は、ドキュメンタリー向けだなと思わされた。 ひとの表情が、なんだか「ちょうどいい」。
3投稿日: 2013.09.24淋しいのはお前だけじゃな
枡野浩一
集英社文庫
やさしく、ほのかにせつなく。
歌人であり、今では芸人でもある著者の、短歌とそれにまつわるエッセイ。 やさしくてせつなくて、歌と文章が、静かに沁みいってくる。 著者には失礼にあたるかもしれないが、読んでいてたびたび「あぁ、ここにいるのは、俺だ」と、ひどく共感する。 いつでも読み返せるように、傍らに置いておきたい一冊。
3投稿日: 2013.09.24秋葉原通り魔殺人事件 なぜ男には敵が見えないのか―新潮45eBooklet 事件編13
中村うさぎ
新潮45eBooklet
この事件だけの話ではない。
敵は誰なのか? 憎むべきは誰なのか? 自分はどうすれば、幸せになれるのか? この事件の犯人が抱いたものは、何だったのか。 ボリュームは少ないが、その胸中に迫る一冊。 (余談だが、著者へのイメージが少し変わった。)
2投稿日: 2013.09.24桶川ストーカー殺人事件―遺言―
清水潔
新潮社
今の警察官はこの本を読んでいるのだろうか?
単行本・文庫本ともに絶版となっていたため、「待望の電子化」と言える。 埼玉県で起きた、女子大生殺人事件。 その事件を事件としてまともに取り扱ったのは、警察ではなかった。 週刊誌の記者である著者が、自身の身の危険を顧みず取材を続けた結果、真相である「ストーカー殺人」であることが判明したのだ。 取材を続け、少しずつ真相に近づいていく著者。 それはまるでミステリーの謎解きのようだが、違う、これは実際に起こった事件なのだ。 警察がいかに腐っていて信用ならないか、読んでいて腹が立ってくる。 (文庫版で加筆された章が、その怒りを増幅する。) 現在の警察がここまでとは思わないが、いまだに不祥事は多く耳にする。 自戒と反省の意を込めて、警察官は全員この本を熟読すべきだ。 また、「ストーカー」というものの恐ろしさを知る上でも、この本はとても役立つ。 警察だけでなく、万人にお勧めしたい。
9投稿日: 2013.09.24大津波を生きる―巨大防潮堤と田老百年のいとなみ―
高山文彦
新潮社
なぜ、その土地にいるのか?
地震、それによる津波被害を、過去に何度も経験している土地、田老。 部外者からすれば、 「何故、そんな危険性の高い地域に住み続けるのだ」 「何故、もっと安全なところに移住しなかったのだ」 という疑問がわくことだろう。 この本が、その疑問に答えてくれる。 「万里の長城」「世界最大」と言われた防潮堤を築きながらも、そこに生きてきたひとびと、その土地。 生き証人とも呼べる関係者へのインタビューを交え、そこで何が、どんな営みがあったのかを教えてくれる、貴重な一冊。
2投稿日: 2013.09.24