
聖マッスル
宮崎惇,ふくしま政美
太田出版
普遍的な、人間愛に満ち溢れた物語(ただしアクが強い)。
屈強な肉体を持つ全裸の青年が花畑の中で目覚め、そして直後にボディビルのようなポージングをきめるところから、物語は始まります。 全体を簡潔に言うならば、 「記憶喪失の青年が自身の素性を探るために旅に出て、その過程でさまざまなひとたちの誇りを取り戻していく」、 そんな人間愛にあふれた物語です。 まさに劇画!といった感じのどぎつい絵柄や、時折見受けられる「え? これってギャグ?」という訳のわからなさ(上記のオープニングなど)もあり万人にはおすすめし難いですが、人の尊厳を謳いあげる本作品には感動を禁じえません。 不思議な魅力を持つ作品です。
2投稿日: 2014.02.19マンガで分かる心療内科(1)
ゆうきゆう,ソウ
ヤングキング
紙版と電子版と、比較してもしょうがないけど。
紙の単行本から移行しようと思い購入しました。 電子版は、紙版に比べて「削られて」いる部分があります。 (どんな作品でも同じようなことが言えると思いますが) 詮無きことですが、参考程度に記しておきます。 ・目次がない。(紙版では1ページ1コマのネタマンガです) ・裏表紙がない。(紙版では本編にはない1ページマンガになっています。書籍説明にある、背負い投げ云々のくだりです) ・本編の合間の作品解説がない。(原作者ゆうきゆう医師のコラムというか本編解説です。ネタを交えながらも、マンガで扱った内容をさらに深く解説しています) 紙版と比べて値段も安いし、場所も取らない電子版。 小説などでも、作品解説なんかは電子版にはなかったりしますね。 (権利関係の問題でもあるのでしょうが) しょうがないのかなと思います。 本編で扱っている内容は、ロリコンとかEDとか幻聴とかうつとか、おもしろおかしく分かりやすく、学術的なことが楽しく理解できるように描かれています。 個人的には、シモネタもあまりきついものではなく、愉快でした。 掲載誌は、どちらかと言うと男性向けの青年誌ですが、女性や少年でも楽しめると思います。(責任は持てませんが) 純粋にマンガとしても、入門書としてもおすすめです。
6投稿日: 2014.02.19マンガで分かる心療内科(6)
ゆうきゆう,ソウ
ヤングキング
他の巻も全部同じでしょうが。
紙の単行本で1巻から5巻を所有しており、この6巻から電子版を購入してみました。 非常に残念なことに、裏表紙が収録されておりません。 紙の単行本では裏表紙にも1ページ分ほどのマンガが掲載されており、それも極めて愉快なのですが、そのマンガがないのです。 (ついでに言えば、目次もありませんでした。) 本編を読む分にはなんら差し支えがないのですが、個人的には残念でなりません。 同時に7巻も購入しましたが、同様でした。 電子化した会社側の判断なのでしょうが、他の巻を購入するのは、ちょっと考えたいと思います。 本編の内容としてはストレス対処、自殺の兆候、依存症の仕組みなど、ギャグを交えながらもためになる内容で、その点では看板に偽りなし。 万人におススメできます。 個人的には「生理的覚醒による優勢反応の強化」についてが、とても参考になりました。 「気合を入れて強まる気持ちは……」というものです。 へぇー、なるほどと思ったので、気になった方は是非。
3投稿日: 2014.01.20それでも彼女は生きていく 3.11をきっかけにAV女優となった7人の女の子
山川徹
双葉社
語られているのは、あくまでもあの震災のこと。
AV女優。 この単語に食指が動いた人も、そうでない人も、ぜひ一読してほしい。 前者には、少し物足りない内容であるかも知れない。 いわゆる「業界の裏話」的なものではないから。 それでも、読んでほしい。 この本で語られているのは、 「あの震災がなければ選ばなかっただろう生き方を、選んだ(選ばざるをえなかった)ひとがいる」 ということ。 そして 「被災地の復興は、まだまだ終わっていない(けれどそれを理解してくれているひとが少ない)」 という現実だからだ。 あの震災を知る端緒として、男女問わず読みやすい本であると思う。
1投稿日: 2013.12.27みんなのうた
重松清
角川文庫
地元は、苦いがあたたかい。
東京を始めとする、「都会」で生まれ育ったひとには、分かりにくいところがあるかも知れない。 田舎に住んでいる人間は、自分の住んでいる田舎を嫌い、都会に憧れることがあるものなのだ(私の周りには多かった)。 都会は、田舎より素晴らしい。 田舎にはないものが、都会にはある。 そう考えて、都会(特に東京)に憧憬の念を抱くのだ。 必ずしもそうでないことに気づくのは、だいぶ年数を経てからだったりする。 帰れる場所、そして家族。 それがあることの、幸せ。 時には重苦しく感じたり、疎ましかったりするかも知れない。 けれどそれらがあることは、当たり前のことではなく、奇跡的に幸福なことなのだ。 そのことに、早くに気づけたのなら幸いだ。 ひとは往々にして、その幸福を軽んじすぎる。 レイコさんは、挫折して帰郷した。 それはとても、不本意なことだったに違いない。 けれど結果として、掛け替えのない物があることに気づけた。 ほんの少し、遠回りをした。 だからこそ見つけられた希望が、間違いなくそこにある。
3投稿日: 2013.11.18櫻子さんの足下には死体が埋まっている 骨と石榴と夏休み
太田紫織
角川文庫
私は彼女のことを、誤解していたのかも知れない。
前巻を読んだときには、正直「九条櫻子」さんについて、好きになれそうにないなと思った。 わがままで、自分勝手。 僕こと「館脇正太郎」くんの迷惑省みず。 (骨やご遺体に関する趣味については、まぁ、ちょっといいなあと思うけど。) 美人なのかも知れないけど、「ちょっとなぁ……」というのが正直な感想だった。 だった、のだが、この巻に収録されている「第壱骨 夏に眠る骨」「第弐骨 あなたのおうちはどこですか」を読んで、少し、彼女に対する見方が変わった。 意外と優しく、熱い。 特に第弐骨、意識のない者に対する彼女の呼びかけは、胸を打つ。 その場にいたら、涙をこぼしてしまっていたのではないかと思うほどだ。 彼女はただ単に、死体を愛するだけの変人(?)ではなかった。 「僕」と一緒で、今まで私は、彼女のことを少し誤解していたようだ。 この巻を読んで、快い方向で、誤解が解けた。 誤解したままで終わらずによかった。 彼女たちのことをもっとよく知るために、もう少し、この物語に付き合ってみようと思う。
4投稿日: 2013.11.07THE NEW NUKE トリウム原発の新時代(WIRED Single Stories 008)
リチャード・マーティン
コンデナスト・ジャパン
何故、現在の姿の原発となったのか?
現在の、ウランを燃料とする原子炉は何故開発されたのか。 何故、より安全であるとされたトリウム炉が姿を消していったのか。 この本でひとつ、分かったことがある。 世の中には、核兵器を必要としている人間がいるということだ。
1投稿日: 2013.10.24メメント
森達也
実業之日本社文庫
「読んでて『もやもや』するので、一度読んでみてください」
ひどくもやもやする。 それが本書を読み終えての、率直な感想だ。 読んだ人全てが同じとは言わないけれど、けど多くの人が、自分と同じく「もやもやしたもの」を感じるんじゃないかと思う。 『~だからタバコなんて吸うべきじゃない。それはもう当たり前。でも十代後半なら吸ってもよい。いや吸ってほしい。吸いながら自分は今規則を破っていると実感してほしい。~』 『~そもそも被害者が「明るい人だったこと」とか「挨拶をきちんとする女の子だったこと」など、僕は本当に知りたいのだろうか?~』 『~画面だけを消してラジオと比較すれば、テレビのうるささがよくわかる。音の媒体であるはずのラジオのほうが、映像の媒体であるテレビよりずっと静かだ。~』 自分が「当たり前」だと思っていたこと。 特に何も考えずに、受け入れていたこと。 思い込みや固定観念。 そういったものに突然疑問符を付けられてしまうから、もやもやする。 疑問を提示されて、考えざるを得なくて、それでもすっきりとした解答にたどり着けなくて、ひどくもやもやする。 それこそ日常的、身近なことから、普段の生活の中で殆ど考えてこなかったようなことまで。 広く、多岐にわたり、もやもやさせられる。 強い口調で、断定的に書かれた本のほうが、読むほうとしては気分がいいのかも知れない。 読んでいて、楽かも知れない。 すんなり首肯できる本のほうが、読後感もすっきりするだろう。 けれど自分は、この本から与えられた「もやもや」のほうが、好ましい。 世の中のことを、自分なりに考えて生きていこうと思わされる。 だから自分は、あまり適切ではないかも知れないけれど、そのままの言葉で薦めたいと思う。
6投稿日: 2013.10.15マンガ日本性教育トーク
内田春菊
角川文庫
子供に対してではなく、読者である大人に対する「性教育」
性的な話はなんとなく秘されがちで、いい歳した大人でも意外と正しいことを知っていないものだ。 そんなことを改めて思わされました。 私自身が、前述の「いい歳した大人」だからです。 女性の生理の話やタンポンの話など、男性からすると「苦手」な内容も多い本書。 けれど、苦手な話、あまり聞きたくないような話が、「知らなくていい話」というわけではありません。 むしろこの本に描かれているのは、性別関係なく知っておくべき話、だと思います。 私の中では「読んで損はない」ではなく、「読んどけ(必須)!」と大声で言っておきたい一冊でした。 (著者が受けた児童虐待・性的虐待の話もありますが、それを含めて上記の感想です)
2投稿日: 2013.10.12いけちゃんとぼく
西原理恵子
角川文庫
読んでるうちに、泣きそうになる。
好きなひとがいるひと。 子どもがいるひと。 大人のひと。 お年寄りの方。 以前、子どもだったひと。 (性別問わず) いろんなひとに読んでもらいたい。 みんな、あたたかな気持ちになれるはず。
2投稿日: 2013.10.07