
俗の金字塔
窓ハルカ
トーチ
ジャンルは「窓ハルカ」。もしくは「自由」。
収録作品は「俗の金字塔」全6話、「隣人は住んでいる」、「テポドン」、「豚の夏焼き」、「パート・タイマー」、「どっきんラブぽいずん」全3話、「白鳥鍋」、「吹雪と親子」。 電子版ではいくつか分冊版で販売されていますので、未読の方は試し読みをされてからの方がよいと思います。 なぜなら、この作者の個性が強すぎるから。 あまりにもアクが強すぎて、「読者をおいてけぼりにしても構わない」つもりで描いているのではないかと思ってしまいます。 けして上手とは言えない画は、今が平成何年だったか忘れてしまうような自由度。 予測できない、ちょっとアレなお話。 分からなくはないけれど、共感しがたい登場人物。 いやもぅ、なんなんだ、これ? いったい何がしたいんだ?! 自由です。 何というか、自由というほかありません。 もうそのまま、伸び伸びとやってくださいという感じです。 けしてメジャーな漫画雑誌では味わえない自由さが、この作品の売りなのではないかと思えてきました。
2投稿日: 2016.06.10アンモラル・カスタマイズZ
カレー沢薫
太田出版
まさかの「文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品」! ……なんでだ?
この作家さんの作品の中では、最も「一般向け」な作品です。 女性ファッション誌を創刊することになった、「グリズリー出版」。 しかし会社には男性しかおらず、女性誌のことなんかとんと分からない。 仕方なく他誌を研究しつつ出版するが、売り上げが伸びない。 やはり女性誌なのだから、女性がいないとだめだ。 男性だらけの出版社に、紅一点の女性が加わり、さて雑誌の売り上げはどうなることやら……。 ざっくりとストーリーを紹介すると、なんだかテレビドラマにもなりそうな感じです。 しかし、そこはさすがのカレー沢薫氏。一筋縄ではいきません。 ちまたに溢れかえる「女子力」や「モテ」などの風潮を、独自の言い回しでバッサリ。 そのストレートな物言いは、当事者である女性も、「女性って大変だなぁ」と他人事のようにぼんやり思っている男性も、激しく同意してしまうこと請け合いです。 世の中の「美人至上主義」「恋愛至上主義」を厳しく激しく皮肉りつつも、それに惑わされざるを得ない「女性の業」を一刀両断した本作は、自分自身を「ブス」と自覚し苦悩してきた女性作家・カレー沢薫さんだからこそ描ける作品。 個人的には、女性誌の読者である20代30代の女性は必読だと思いますが、「気がつかなければよかった……」と思うようなことも多数描かれているので、寧ろ最も読んじゃいけないのかも知れません。 「彼女が流行に敏感で、おしゃれで困ってる」という男性は、買って彼女にプレゼントしてみては如何でしょうか(自己責任でお願いします)。
4投稿日: 2016.06.051ドルの価値/賢者の贈り物 他21編
O・ヘンリー,芹澤恵
光文社古典新訳文庫
O・ヘンリー、初めてまともに読みました。
名前だけは知っていた作家。 なんとなくあらすじだけは知っている「最後の一葉」と「賢者の贈り物」。 まともに読むのはこの短編集が初めてなのですが、「この人の作品、好きだなぁ」と思いました。 切なかったり、クスッと笑えたり、皮肉が効いてたり素直に泣けたり。 この一冊で、様々な感情を味わいました。 総じて「人間が愛おしく思える」、そう思える一冊でした。 短編なので当然ですが、一つ一つのお話を読むのにそう時間がかかりません。 私は今後、気に入ったお話を幾度か読み返してしまうだろうなと思います。
2投稿日: 2016.06.04深追い
横山秀夫
JIPPIノベルス
「刑事物」ではなく、「警察物」。
舞台となっているのはある一つの警察署ですが、そこに勤務する様々な立場の警察官(警察事務官)がそれぞれの短編の主人公です。 交通課や警務課、生活安全課やまさかの会計課までも。 当たり前のことなのかもしれませんが、警察という組織が様々な視点、様々な人間関係で構築されているのだなと改めて思わせてくれます。 時代設定がちょっと古いので、時々「ん?」と思うこともありますが(「深追い」はポケベルがキーアイテムです)、あぁ、そんな時代もあったなぁ、という程度。 大して気になりません。 むしろ登場人物たちの人間性が普遍的なものだということに気づかせてくれます。 私はあまり他の警察物は読んでいないのですが、この作品には大満足です。
3投稿日: 2016.06.04【電子限定フルカラー版】ねことじいちゃん
ねこまき(ミューズワーク)
コミックエッセイ
ねこは生活必需品。
海辺のちいさな町で、ねこと暮らす大吉おじいさん。 おばあさんに先立たれ、遠方に住む息子さんもたまに訪ねてくる程度ですが、それでもその生活があまり寂しそうに見えないのは、十年来一緒に生活するタマがいるから。 その穏やかな日々は、なんだか心が温かくなり、そして羨ましくもなります。 全編水彩画のようにやさしく着色されていて、文字通り大吉さんの日常に彩りを添えています。 全ページフルカラーというのは電子版だけらしいので、是非電子版で読んでいただきたいです。 猫好きはもちろん、特段猫に思い入れがなくても楽しめる作品です。
5投稿日: 2016.05.29俺物語!! 11
アルコ,河原和音
別冊マーガレット
お互いの気持ちを尊重していることがよくわかる。
この巻では ○修学旅行で、お互いに「ドキドキ」し合う猛男と大和。 ○「強くなりたい」と言う大和に、厳しく柔道(受け身)を教える猛男。 ○イケメンの転校生・田中と砂川がたびたび一緒に行動するようになり、自分の立ち位置を顧みる猛男。 が見られます。 やはり一番の盛り上がりは、修学旅行。 自分の「ドキドキ」に惑わされるも、それを隠さず相手に伝え、そしてお互いに大切に思っていることを確認し合う。 猛男と大和の二人が二人なりの距離の詰め方をしている姿に、いろんな意味で「高校生なんだなぁ」と思わされます。 いいなぁ、青春……(遠い目)。 イケメン転校生・田中が砂川に接近した理由がわずかに明らかになったところで、この巻は終了。 猛男は転校生に対しどのような行動に出るのか。 砂川との関係はどうなってしまうのか。 気になるところで次巻に続きます。
4投稿日: 2016.05.29分校の人たち 1
山本直樹
分校の人たち 1
山本直樹
太田出版
少年時代に戻りたくなる。
廃校も噂される、田舎の学校。 そこに通う少年と少女の、秘密。 ある意味、彼らが羨ましい。 「あぁ、自分はもう、性的なことに関してこんなに興味や好奇心はないなぁ……」 と、郷愁を覚えました。 ストレートにいやらしい内容なので、読むときは周囲の環境に注意して下さい。
0投稿日: 2016.05.23あそびあそばせ 1巻
涼川りん
ヤングアニマル
顔芸がズルすぎる(笑)。
はっきり言っておきますが、完全に表紙詐欺です。 表紙から想像できるような、ふわっとあたたかな内容では、全然ありません。 ストアの作品説明に「圧倒的画力」とありますが、それはまっとうな方向に発揮されたものではありません。 如何に変な顔を描くかという方向に向かっています。 方向が完全に、ギャグです。 おもしろいです。 ギャグ漫画好きには、オススメです。 まっとうなゆるふわ美少女日常系を望んでいる方には、全くもってオススメできません。
8投稿日: 2016.05.22ねこもくわない
カレー沢薫
漫画ゴラクスペシャル
登場する男性が、この漫画家さんの作品の中でも屈指のクズ。
愛らしい飼い猫が、駄目な飼い主を立ち直らせようと料理に励む。 これだけ聞けば、割りと幅広く好感を持たれそうな漫画なのですが、実体は真逆。 女性を食い物にし金を貢がせる飼い主・トシゾウが紛うことなく本物のクズで、一周回って清々しいほど。 そして飼い猫が作る料理も「BLTサンド LT抜き」とか「逆ダブルバーガー」とか、果てには手作りの「ロキソ●ン」とぶっとんだ物多数(まともな料理も作りますが)。 猫と料理という万人受けする題材をここまでニッチな物に仕上げられるのは、世界広しと言えどこの作者さんだけなのではないかと思います。 いやもう、大好き。 主人公が住んでいる部屋の壁などにある落書きも、ハイセンス。 「信じる者からだませ」「捕まるまでが援交です」「お前のことわかってやれるのはオレオレ詐欺」などなど、名言揃いです。 読み切り作品として雑誌掲載された「フルメタル合コン」も収録されており、そちらも必読。 1ページ目から「婚活くせぇ手で触んじゃねぇぇぇぇぇぇ!」という叫びで始まる、合コンあるある漫画です。 参加女性を厳しく断罪し、それぞれに付けたあだ名が秀逸すぎる。 合コンで失敗したことのある男性は読んで損はありません。 ありきたりの猫漫画には辟易しているという方や、上に挙げた設定や名言等が心の琴線に触れるような心の荒んでいる方にお勧めです。 真っ当に生きている方やフェミニストの方は絶対読んじゃ駄目です(作者も女性ですが)。
4投稿日: 2016.05.05あれよ星屑 1巻
山田参助
月刊コミックビーム
画に力がありすぎる。
戦後、偶然再会した「班長殿」こと川島徳太郎と、戦場で川島の部下だった黒田門松。 この二人を中心として、様々な人たちの「戦後」が魅力的な画で描かれています。 なんと言っても、人物の表情が素晴らしい。 生き生きとしていて、存在感があります。 戦中という過去を抱えたそれぞれの人物像も魅力的。 この第一巻では戦後の彼らがどう生きているかが主に描かれていますが、ラストで戦時中の部隊へと場面が移ります。 川島と黒田はどのように出会ったのか。 どのような部隊生活を送ってきたのか。 二巻へと話が続いていきます。
6投稿日: 2016.04.29