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まくらたかさんのレビュー
いいね!された数238
  • 傘寿まり子(1)

    傘寿まり子(1)

    おざわゆき

    BE・LOVE

    「私たち 早く死ねばよかったの?」

    ベテラン作家の幸田まり子・80歳。 自分の作品を待っているはずの読者が減っていき、終の棲家だったはずの家にも四世代が同居している中いつの間にか居場所がなくなってしまう。 そんな中、ある出来事をきっかけに「長生き」についての現実を突きつけられる。 「でも私たち 好きで長生きはしたのかも」 「自分でもつらいのよ どうせこの先長くない人間なのに」 その出来事を機に、まり子は家を出る決心をした――。 サイトで第一話を試し読みして、衝撃を受けました。 まり子の台詞に、思わず涙ぐみました。 「高齢者」であることを生きるまり子の言動に胸を突かれます。 重たい空気をはらみつつも、全体としては「初めての経験にチャレンジする前向きな女性」の姿が描かれているので、けして暗い雰囲気ではありません。 (「憧れの男性と再会してときめく」という、少女漫画的な展開もあります。) 一話だけでも読めば、まり子の今後が気になって仕方なくなること請け合いです。

    8
    投稿日: 2017.01.09
  • 老人喰い ――高齢者を狙う詐欺の正体

    老人喰い ――高齢者を狙う詐欺の正体

    鈴木大介

    ちくま新書

    高度に組織化された詐欺集団の内情に、驚愕する。

    裏家業の収益金を奪う少年たちを描いた漫画『ギャングース』のストーリー共同製作でもお馴染みの鈴木大介氏の著書。 特殊詐欺に手を染める犯罪加害者たちに取材を重ねただけあって、詐欺を行う集団がどのような組織なのか、どのように業務に当たっているのかが驚くほど詳らかにされている。 著者自身が「はじめに」で述べているように、本書には防犯知識が書かれている訳ではなく、防犯のための専門書という物ではない。 しかし特殊詐欺を行う側の内情や心情を読んでいると空恐ろしくなってきて、自然と防犯意識が高まってくる。 詐欺の組織運営状況など、部分部分が物語の様に書かれており、非常に読みやすく、分かりやすい。 特殊詐欺の被害者は大半が高齢者だが、生きている以上誰もがいつしか高齢者になる現実を思えば詐欺被害はけして他人事ではない。 特殊詐欺被害が一向に収まらない現状、それが何故なのかを探るためにも読んでおくべき一冊と思う。

    7
    投稿日: 2017.01.09
  • コアソビー

    コアソビー

    おおひなたごう

    月刊office YOU

    読んでると、子どもと遊びたくなる。

    ギャグ漫画家ならでは、と思わされる育児漫画。 「己の持っているスキルの全てを駆使して子遊びに向かい合う」と決めた著者が、四苦八苦しながらもひたすら息子さんと遊んでいます。 試行錯誤しながら、子どもと遊ぶことに真剣に取り組んでいる姿が、大変そうながらも非常に楽しそうです。 読んでいるうちに、子どもと遊ばないと損だなと思えてきます。 漫画本編もおもしろいのですが、ページの横(「ハシラ」という部分?)に時折載っている「コアソビーニストの条件」も必見です。 「子どもにリードされるべからず。」 「行きつけの公園を5つ以上持つべし。」 「コアソビーの最中は己も十分に楽しむべし。」 「手加減していることを子に悟られることなかれ。」 などなど。 そんなこと知ってるよ、というものもあれば、思わずハッとしてしまうような言葉もあります。 子育て真っ最中という方にはもちろん、今から子育てという方にも、子育てが終わったという方にもお勧めです。 「子どもと遊ぶって、いいな」と思わされること請け合いです。

    3
    投稿日: 2016.11.21
  • アラサーちゃん

    アラサーちゃん

    峰なゆか

    KADOKAWA

    知らなかった方がよかった世界……?

    アラウンドサーティー女性、あるある(?)漫画。 キャラの立ったアラサーちゃん、ゆるふわちゃん、ヤリマンちゃん等の女性陣と、文系くん、オラオラくん、大衆くん等の男性陣たちが、本音を隠したりぶつけあったりのやりとりを披露しています。 大人は読んで損はない気はしますが、女性にある種の固定観念(と言うか幻想)を抱いている男性にはお勧めできません。 いや、それを抱いていない男性なんていないか。 自分の中の女性像が壊されるのが嫌だ、怖いという人にはお勧めできません。 それ以外の人にはお勧め。 ある意味「実用書」です。 中途半端な恋愛指南本よりも、よっぽど役に立つ気がします。

    5
    投稿日: 2016.10.20
  • しましま曜日 1

    しましま曜日 1

    竹本泉

    ビームコミックス

    自分の人生を狂わせた作品(よい意味で)。

    ファンタジー色の強い少年誌に掲載されていた、ちょっと変わった学園ラブコメ。 当時小学生だったか中学生だったか、とにかく若かった私は、この作品にすっかり参ってしまったのでした。 この作者の他の作品も読みたい。 そう思った私は、本屋を探し歩きます。 インターネット検索なんてない時代。 探して探して、そしてとうとう作者が「少女漫画家」であることを知りました。 大人になった今なら、どんな本でも手に取って堂々とレジに持って行くことが出来ます。 しかし当時は○学生。 少年漫画ならともかく、少女漫画の単行本を手にレジに向かうことは、相当に勇気のいることでした。 しかし、Amaz○nなんてない時代。 自らがレジに向かうしか、漫画を手に入れることは出来なかったのです。 本屋で単行本を見つけた時の喜び、購入に至るまでのドキドキ、そして手に入れたときの達成感は今でも鮮やかに思い出せます。 ある意味、この作品に出会って私は壁を一つ乗り越えたのでした。 余談が長くなりました。 「服に着られる女の子」、宮崎ゆかりちゃんがかわいい。 毎度毎度のドタバタが楽しい。 読んで和める作品です。 なんで少年漫画誌に掲載されていたのか分からないくらい、ほのぼのした作品なのです。 ところで、この作者さんは単行本の「あとがき」(場合によっては「まえがき」だったり「なかがき」だったりもします)が楽しい方なのですが、この作品では電子版オリジナルのあとがきが描き下ろしで収録されています。 こんな作品、なかなかないですよ。 サービス精神旺盛です。 ファンの方も、まだそうではない方も、買って損はない作品だと思います。 紙の単行本を持っている方も、あとがきのために是非購入してください(笑)。

    3
    投稿日: 2016.10.16
  • ストレッサーズ (1)

    内田春菊

    ストレッサーズ (1)

    内田春菊

    バンブーコミックス 4コマセレクション

    ギャグマンガではない。

    主人公(と言っていいものかどうかわからないけれど)の「日常」くんが、周りの迷惑を考えずひたすらに自分の欲望の赴くままに行動する(そして大概うまくいかない)、「あ~、こんな不愉快なひといるよねぇ……」というあるある漫画。 この作品を読んで笑えるひとは、あまりいないのではないかと思う。 テーマは重く、息抜きとして読むには向いていないが、日常くんのあまりにも不愉快な言動は反面教師としては役に立つのではないか。 この1巻だけでは何の解決も成長もせず終わってしまうが、2巻(完結巻)まで読むとある意味納得の結末が待っている。 一度読み始めたら、最後まで一気に読んでしまうのがお勧め(じゃないと不快なだけで終わってしまうから)。

    5
    投稿日: 2016.10.14
  • ナゾ野菜

    ナゾ野菜

    カレー沢薫

    ビッグスピリッツ

    一応、料理漫画です(否グルメ漫画)。

    「『ナゾ野菜』とは?? とにかく、なんかしゃらくさい小洒落た野菜をカレー沢薰が、めんつゆ片手に体当たりするお話。」 「※カバーの女の子はイメージです。残念ながら本書には出てきません。」 本書のページをめくると、登場人物紹介と共にそんな言葉が飛び込んできます。 この説明で興味が湧いたという奇特な方は、ぜひ購入してください。 良くも悪くも、期待を裏切らない内容になっています。 本書は『ブスだけどマカロン作るよ』(芳文社)の続編らしいのですが、『ブス~』を読んでいなくても問題なく楽しめます。 (電子化されておらず、私も未読です。) 前作を読んでいた方が楽しめるのは間違いないのでしょうが、そこを気にして足踏みするよりはそれはそれとして気にせず読んだ方が人生にとってプラスになるかと思います。 よく分からない食材を、思いつきで調理してしまう作者の姿に男気を感じてしまいます。 また、作者独特の魂の叫びは健在。 「跡形もなく粉砕してやる!」(ロマネスコ) 「あっ、一緒に漬けた、きゅうりのほうが美味い!」(コールラビ) 「油と砂糖の塊、チョコレート様を食おうとしといて、「ヘルシー」とか、寝言を言うんじゃねえぇぇ!!!」 「まずはセロリスティックを用意して…ピーナッツバターをつけて食う!」 「嫌いなものを食う時は、素材の持ち味を完全に殺せ。」 「じゃあ、こいつこの漫画読んでるってこと? 超嫌なんですけど!」(旦那さんが「漫画のネタになるかと思って」野菜を育てた話を聞き) 「仕方ない。ここは、料理人の腕で…不味くする!!」(フィッシュ&チップス) などなど。 グルメ漫画ではないので真っ当な料理好きにはまったくもってお勧めしませんが、際物好きには間違いなくお勧めできます。

    3
    投稿日: 2016.08.22
  • 魔犬 ラヴクラフト傑作集

    魔犬 ラヴクラフト傑作集

    田辺剛

    月刊コミックビーム

    趣のある画風が、物語と合致している。

    この漫画家さんの画は独特で、唯一無二と言ってよいものではないかと思います。 陰や暗さや闇といったものを、見事に表現しています。 ラヴクラフトの作品を漫画化するにあたって、これほどの適任者はいないのではないでしょうか。 ドイツ海軍の潜水艦乗りが、イギリスの貨物船を見つけたことから恐怖に囚われていく「神殿」。 墓場荒らしに熱中していた若者二人が、曰く付きの墓地から魔除けを持ち帰ったことから魔物に追われることとなる「魔犬」。 探検家がネクロノミコンに記された伝説の都の遺跡に足を踏み入れ、ある真実を知る「名もなき都」。 どれも雰囲気があって、おもしろいです。 軽い絵柄の漫画を好む人には絶対に合わないかと思いますが、そうでなければ一度読んでみて下さい。 ホラー作品好きには特にお勧めです。

    3
    投稿日: 2016.07.28
  • 彼女はろくろ首(1)

    彼女はろくろ首(1)

    二駅ずい

    別冊少年マガジン

    思いのほか、ふつうにかわいい。

    高校生女子が、隣りに住む幼なじみの男子にふつうにドキドキするお話でした。 相手を過剰に意識してしまっている様が、かわいらしいです。 主人公の首が伸びるのはただの個性で、周りもそれを当たり前のこととして受け入れていて、なんら変なことではありません。 それがよいです。 ふつうです。 ふつうに、青春で、ラブでコメな作品です。 「ろくろ首」という点でちょっと敬遠しがちですが、読んでみればいい意味でふつうでした。 設定からは想像できないほど、意外とかわいらしかったです。

    3
    投稿日: 2016.07.16
  • 保育園義務教育化

    保育園義務教育化

    古市憲寿

    小学館

    子育てが、「罰ゲーム」じゃなくなりますように。

    著者が「義務」という強めの言葉を敢えて用いているのは、「後ろめたさ」をなくしたいからだと言う。 今の世の中では、保育園を利用したくて仕方がない人たちがたくさんいる。 それに対し、保育園等を利用する人たちを批難する人たちもいる。 批難する人たちがいるから、保育園等を利用するにあたって後ろめたさを感じてしまう。 その後ろめたさをなくすために、「義務」にしたらよいと言うのだ。 著者は日本の子育てにまつわる現状の異常性を述べ、 盲目的に信じられている事柄(「三歳児神話」や「母乳教」)の真相を説明し、 危機的状況にある日本の少子化の打開策として「義務教育化」を挙げる。 一見して突拍子もないアイディアのように聞こえるが、本書を読み進めていくとさほど荒唐無稽な案ではないことが分かる。 寧ろ「日本は何故これを実施しないのか」と不思議に思えてくるぐらいだ。 (その「不思議」も本文中で解明されている。  政治家は「目の前の選挙の票」になる大人、特に高齢者の方しか向いていないからだ、と。) 子育てを他人事のように感じている人は多いと思う。 けれど、この社会の有り様、日本の将来に関わってくるという点では、子育てが誰しもにとって他人事ではない。 今現在の子育て世代だけでなく、男女問わず幅広い年代の人に読んでもらいたい一冊。

    3
    投稿日: 2016.06.15