
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
・あらすじ 昭和8年に青森県で起こった強盗致死事件の犯人として逮捕され無期刑判決を受けた佐久間清太郎は昭和11年、昭和17年、昭和19年、昭和22年と脱獄を繰り返す。 4箇所の刑務所を脱獄した佐久間の執念と、戦中戦後の混乱期の世相や治安維持に努めた執行機関の取り組みなどを描く。 ・感想 読む前は主人公である佐久間がどうやって刑務所を脱獄したのか、という方法論やその執念がどこから来るのか?などの佐久間の人となりに焦点にあてた作品だと思ってた。 でも実際は、佐久間という脱獄犯を通して戦中戦後の日本の 移り変わりを描いた社会派作品だった。 そうだよね、吉村先生だもんね。 戦中の刑務所や警察組織がどうなっていたのかなんて全然考えたことなかったけど物資不足、人員不足や治安の悪化にこうやって無いものを振り絞りながら対応してたんだなぁ。 刑務所に収監されてる囚人も辛いだろうけど、刑務官もとても過酷な環境で働いてたんだな…そりゃそうだよな。 お互いに反感を持つ刑務官と佐久間。 違反するたびに過酷になる罰。 その度に「絶対に脱獄してやる」という執念を燃やす佐久間、という悪循環。 佐久間の様に反抗心が強く負けず嫌いな性格の人間って不当な扱いをされればされるほど燃え上がるところがある。 佐久間も別に何にでも反抗する人間だったのではなく、「辛い境遇」から抜け出すために必要性に駆られて脱獄してただけ。 だから脱獄の原動力だった「辛い環境」が改善されてしまえば脱獄もしないという終わり(もちろん加齢や疲労による心身の衰えもあるけど)も、何だか日本の社会と似ているな、とも思った。 反抗心とか「何クソ!!」っていう精神って困難な時代を生き抜くには必要なものなんだろうけど、この日本では中々培われないものだよなーと読みながら感じた。
1投稿日: 2025.11.14
powered by ブクログタイトルや題材から難解な作品かと思ったが、読みやすく、脱獄囚と刑務官の人物描写も巧みで物語に没入できた。 戦前戦中に脱獄を繰り返した脱獄囚のことは知っていたが、読後に凄まじい行動力と智力の持ち主だと思い、インターネットで調べるとモデルの脱獄囚はそれほど脚色されていないことがわかった。 府中刑務所でのこの人物への扱いは、まさに「北風と太陽」だろう。 いまは網走刑務所は博物館として保存公開されている。脱獄囚の脱獄する様子のモニュメントもあるそうだ。いつか行ってみたい。
2投稿日: 2025.08.29
powered by ブクログ4回の脱獄王の物語でした。 読んでいると、なぜ脱獄を繰り返したのかが気になる所でした。 戦中と終戦直後の刑務所のリアルな部分(看守不足や食糧不足、司法、GHQ等)に突っ込んで居て面白いと思いました。 看守が佐久間との心理戦において葛藤するシーンが多く、巧妙な脱獄方法と佐久間の体力には目を見張るものがありました。 佐久間の物語終盤の心情の変化に感動しました。 全体的に丁寧に描写されていて良かったです。
15投稿日: 2025.08.24
powered by ブクログ四度の脱獄をした囚人の英雄譚だと思っていたが、そうではなかった。 戦中戦後という時代に翻弄され困難な状況にも関わらず、脱獄囚を通じて、法と秩序を守る看守や刑務所長が、社会秩序のために奔走する話だった。 網走刑務所は、北海道の極寒の立地上、逃亡するのは難しいにも関わらず、脱獄する囚人。そして、その過酷な刑務所が、戦中戦後の食糧事情において、ほかの刑務所と比べ格段に良かったという点。感慨深い。
1投稿日: 2025.08.05
powered by ブクログ観光で網走監獄に行った時に脱獄のことを展示してたので興味があって読んでみた。 4回も脱獄をした佐久間と対峙した人々の話で、戦時中の刑務所の様子など圧倒的な筆力で読ませる本です。脱獄後も捕まることなく過ごしたのがすごい。北海道の冬や熊も強敵なのに。
1投稿日: 2025.06.11
powered by ブクログ首都圏を環状に回る武蔵野線。始発を出て次の駅。府中街道を北へと歩けば、高く聳える壁が右手に見える。その向こうで、かつての脱獄王が懲役を果たした。青森、秋田、網走、札幌と、手錠足枷もろともせず、難攻不落の獄舎を抜け出した。中にいれば食いはぐれはない。外に出れば、食うにも困る。雨風凌げる屋根も壁もない。猛獣も棲息する地域。襲われる恐怖。それでも、逃げることに執念を燃やした。何を思い、何故最後は止めたのか?戦前から戦中、戦後へと、受刑する側もさせる側も、時代に翻弄されながら、厳しさから暖かさへと変わって行った。
3投稿日: 2025.04.23
powered by ブクログ吉村昭さんの小説は本当にハズレがありません。 綿密な取材や時代考証を経て作り上げられる作品は完全なるノンフィクションと信じて疑わないようなリアリティがあり、そして人間味がありありと描かれています。 本作の中心人物、佐久間の終始漂う不気味さと、その奥には必ず秘めたる真髄があることをしっかり印象付けて400ページを超える間、まったく飽きさせず、最後に急展開を見せる。 出来すぎた物語ですが嘘くささを感じさせない。 この上ない満足度を味わさてくれる吉村作品です。
0投稿日: 2025.03.10
powered by ブクログ物語の大半は刑務所という閉鎖的空間を舞台としており、戦前戦中の混乱や統制を潜り抜けた情報は僅かであっただろう。これらの時代を緻密に描写する吉村昭の取材力、表現力は畏れ多いと感じる。 彼の文章は滑らかに頭の中を駆け巡る類のものではないが、本書は章立てがされているので途中で区切って読み易い。
0投稿日: 2025.02.26
powered by ブクログ戦前から戦後の刑務所の設定だが、まるで現代かのように時代を感じさせない。 刑務官の仕事は大変だ、敬意を持った。 無期刑囚の佐久間が、彼の持つ頭脳と強靭な体力を犯罪で使わずにいたら、相当優秀な人物として有名になっていただろうと思うと悲しい。 鈴江府中所長にもっと早く出会えてたら、佐久間は4回も脱獄しなかっただろう。 引き込まれるように読みふけった1冊でした。
1投稿日: 2024.12.15
powered by ブクログ相変わらずの丁寧な調査に基づいており、時代背景やその当時の刑務所の環境も理解でき、興味深かった。太陽政策が全てにおいて通じるかは疑問だが、心を閉ざしている人に寄り添う姿勢は学ぶところがあると感じた。
0投稿日: 2024.10.19
powered by ブクログ昭和の脱獄王をモデルにしたフィクション大作。網走刑務所を訪れた際に、ついでだからと網走市の本屋で購入。 四度の脱獄をした犯罪者とそれを防ごうと奮闘する看守の攻防に戦時中、戦後という社会情勢が複雑に絡み合う。社会面と人間ドラマ、孤独と反発、そして人間を更生に導く人間ドラマ。緻密な取材と文献資料を読み込み、構成したのだと感じずにはいられない作品だった。読後は時代の大きなうねりに巻き込まれた興奮と虚無感、感動が一度に押し寄せた。中々に素晴らしい作品でした。
9投稿日: 2024.08.22
powered by ブクログ佐久間がとにかく脱獄する。戦時中の刑務所のことなど考えたこともなかったし、一般市民よりも豊かな食生活を送っていたことは驚きだった。
0投稿日: 2024.04.05
powered by ブクログ脱獄を4回成功させた実在の男を題材にした話。 文中にもあったが、常人離れした知力体力と運動能力の全てが脱獄する事に費消されてしまった不幸。 戦中戦後の厳しい状況と過酷な刑務所の環境、そして超人的な佐久間の行動が淡々とした筆致で語られ、あっという間に読了。
3投稿日: 2024.03.17
powered by ブクログ昭和の脱獄王がモデルの小説。『赤い人』に続き本書を読めたことは幸いだ。明治時代の集治監とさほど変わらない構造の刑務所建屋に、青森刑務所を筆頭に脱獄を繰り返した佐久間清太郎(仮名)を収監する刑務所職員・看守との息詰まる攻防。そして、戦前~戦中~戦後の行刑史にも多くの紙幅を割いた構成。佐久間に対する量刑は、現在の刑法と比べ重いような気がする。戦中からの食糧難にあっても、受刑囚には既定量の食事を提供しようとしているのに、刑務所職員は一般国民と同じ配給だけというのは、いかにも融通の利かない国民性だと感じた。
0投稿日: 2024.02.21
powered by ブクログこの夏、知床旅行をした際に網走監獄博物館に行った。庭は整備されて沢山のハーブが咲き天気に恵まれた事もあり写真映えする所だった。 しかし、130年前の網走刑務所の建物、歴史は囚人、看守共に過酷な環境であったと博物館の記録で知った。そこで、脱獄を重ねた白鳥由栄をモデルにした小説がある事を知り本書を読む事にした。 読み進めると、博物館で観た当時の模型や映像などが頭をよぎる。そして最後は模範囚となる話に引き込まれた。 網走監獄博物館に行ってから読むか、行く前に読むか、取り敢えず、旅に一味加えてくれる小説であった。
0投稿日: 2023.12.09
powered by ブクログ戦前から戦後にかけて4回に渡り破獄を繰り返した無期刑囚佐久間清太郎の物語。ゴールデンカムイの白石のモデルである白鳥由栄がモデルと思われる。青森、秋田、網走、札幌の監獄をそれぞれ奇想天外な方法で脱獄をする。方法もすごいが最もすごいのは看守たちの心理をうまく読み取り手玉に取って行動していたこと。戦争の時代背景も描かれており、戦時中の監獄がどのようなものなのかも描かれており面白かった。戦争が進むにつれ食糧が不足していき栄養不足で死ぬ囚人が増えてい様を読むと戦争なんてするもんじゃないなと思う。
0投稿日: 2023.11.12
powered by ブクログ表題の通り、戦前から戦後にかけ4度の脱獄に成功した佐久間(仮称)を話の中心に据え、刑務所内の人間関係を丁寧に描写しているが、国内情勢・司法環境の遷移を緻密な調査をもとに数十年のスケールで厚みのある肉付けがされている。ドキュメンタリーとして非の打ち所ない読み応えある作品である一方、とにかく読み易さが目に付いた。『漂流』も名作だが、本作はドラスティックな展開に読み疲れも少なく非常に楽しめた。
6投稿日: 2023.11.07
powered by ブクログ昭和の脱獄王の話。 佐久間は人情に厚く、自分を人として扱ってくれた人に対しては礼を持って接するが、そうでないと感情を爆発させ破獄にはしる。 国家や社会に異常事態が発生した際に、囚人たちが懲役で軍務や労働力として関わっていたことを初めて知った。
0投稿日: 2023.10.04
powered by ブクログすごい奴が世の中にはいるもんだ。最後は少し心が温かくなる。戦前から戦後にかけての混乱も感じ取れて、よかったです。
0投稿日: 2023.09.08
powered by ブクログ白鳥由栄と思って、読み進めた。 佐久間の人間性は特異かも知れないが、実はかなり今でも通じる人間の根底にあるものだと思う。 脱獄させないために手錠足錠をとること人間らしく扱うことが、更正につながる。この考えは、教育界にもつながると思う。
1投稿日: 2023.08.05
powered by ブクログ実話を元にした小説。 佐久間清太郎は秋田、青森刑務所を破獄し当時一番の体制の網走刑務所に移送される。 極寒の地、網走。破獄は不可能と思われた日、佐久間は破獄する。 捜索もかなわず見つからなかった佐久間。とても冬は越せず死んだと思われていた。 そして、終戦。 突然砂川で佐久間が逮捕されたというニュースが入り、札幌刑務所に収監。 破獄の責任を回避したい進駐軍の考えもあり、府中刑務所に移送。 府中刑務所ではそれまでと違った破獄対策を佐久間に施す。
0投稿日: 2023.06.25
powered by ブクログ高校時代に友達に勧められて読みました。私のそれまでの読書遍歴に登場しなかったジャンルで非常に新鮮だったことを覚えています。 主人公は牢破りの犯罪者なのに憎めないキャラクターで次はどんな手口で脱獄するのかハラハラさせられます。追う側と追われる側の攻防戦。かと言ってエンタメに終わらない重厚感。 紹介してくれた友人に感謝。
2投稿日: 2023.05.03
powered by ブクログ実話に基づく小説。生涯で4回の脱獄を成功させた佐久間。中には、かの網走刑務所も含まれる。特製手錠を解錠したり、3.2メートル上の天井窓を破って逃げるなど、どのような技を使ったのか、興味深い。 戦争の経過に伴う日本の状況と刑務所事情の厳しさが背景にあり、囚人よりも看守の大変さに驚いた。看守、所長より何枚も上手の佐久間。そんな佐久間に破獄を断念させたのは、厳重に拘束するよりも人間らしく尊重して扱う事だった。 これほどの知恵と忍耐力があれば、まともに生きれば、何でもでき、大成功しただろうに、勿体無い。 でも破獄にしか用いられなかったからこそ、この物語を面白く、彼をさらに魅力的にしている。
6投稿日: 2023.05.01
powered by ブクログ「吉村昭」の長編小説『破獄』を読みました。 『新装版 逃亡』に続き、「吉村昭」作品です。 -----story------------- 驚くべき手口に、大胆な実行力で、四回の「脱獄」成功。 犯罪史上に残る無期刑囚を描いた「吉村」記録文学・畢生の大傑作。 昭和11年青森刑務所脱獄。 昭和17年秋田刑務所脱獄。 昭和19年網走刑務所脱獄。 昭和22年札幌刑務所脱獄。 犯罪史上未曽有の四度の脱獄を実行した無期刑囚「佐久間清太郎」。 その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口を、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡し、獄房で厳重な監視を受ける彼と、彼を閉じこめた男たちの息詰る闘いを描破した力編。 読売文学賞受賞作。 ----------------------- 1983年(昭和58年)に発表され第36回読売文学賞(小説部門)を受賞した作品… 1985年(昭和60年)と2017年(平成29年)にテレビドラマ化されたらしいです、、、 脱獄の常習犯である「佐久間清太郎」と、それを防ごうとする刑務官たちとの闘いを描いた犯罪小説… そして、戦前から戦後の混乱期にいたるまでの刑務所の実態を克明に描いた歴史小説でもありましたね。 四度の脱獄を実行した「佐久間清太郎」、大戦下から戦後へと変遷した社会、そして戦争と刑務所の係わり方… その三つの視点から展開していく物語、、、 脱獄を成し遂げた手法は彼でなければ実行できないものでしたね… 非凡な頭脳と行動力、そして看守たちの心理を鋭く見抜き、いつの間にか看守たちよりも優位に立ち、自分の思うままにコントロールしてしまう神業とも思える能力には感服しましたね。 戦争と刑務所の在り方については、知識もなかったし、考えたこともなかったので、とても興味深かったですね、、、 そして、イソップ寓話の『北風と太陽』を彷彿させる終盤の展開からは、人間関係の在り方の基本を教えられた感じがしました… 会社における上司と部下の関係もこんな感じなんですよね。きっと。 相変わらず「吉村昭」作品は面白いですね、、、 綿密な取材に基づくリアリティのある描写が魅力ですよね… 何とも言えない満足感に浸ることができました。 以下、主な登場人物です。 「佐久間 清太郎」 主人公。7月31日生まれ。準強盗致死罪による無期刑囚。 5尺2寸の小柄な体型だが、肩幅が広くて腕力がある。斜視。 幼いころ両親と死別して親戚に預けられ、成人した後魚の行商から豆腐店を営むようになっていた。 布団を頭からかぶって寝る癖があり、看守が注意しても直さない。 「桜井 均」 青森県警察部刑事課長。のちに青森警察署長。 昭和8年に発生した未解決の事件を独自に捜査。 粘り強い捜査により佐久間を逮捕するに至る。 佐久間の破獄との連絡を受けて、県下に住む妻子のもとに戻ると考え、部下を張り込ませる。 「板橋 長右衛門」 岩手県警察部刑事課長で、全国最古参の刑事課長。 面識のあった桜井の要請を受けて、別件で逮捕した佐久間を青森県に移送することを同意する。 「山本 銓吉」 網走刑務所長。 司法省の信頼に応えるため、移送されてきた佐久間に対して、厳重な管理をすることを決める。 「内野 敬太郎」 網走刑務所看守部長。柔道・剣道の有段者。 沿岸を防備する第31警備隊に依頼された道路工事のため、駆り出した囚人たちを監視する。 のちに人員不足のため、刑務所内の工場で働く200人の囚人を1人で監視することになる。 「亀岡 梅太郎」 札幌刑務所戒護課長。囚人監視の最高責任者。前職は網走刑務所看守長。 網走に在籍していたが、当時は庶務課長だったため、札幌で初めて佐久間を担当することになった。 慢性的な食糧不足と老朽化した建物、さらに進駐軍との交渉で苦労する。 「オックスフォード」 大尉。軍政部保安課長。 日本人は残酷であるとの考えから、当初は佐久間に対して同情的だったが、 実情を知るにつれて再び逃走されることを恐れ、府中刑務所に移送するように手続きを取る。 「鈴江 圭三郎」 府中刑務所長。 明治大学法学部卒業後司法省に入り、佐久間が収容される前の網走刑務所長、札幌刑務所長を歴任。 昭和22年8月から府中刑務所長に着任していた。 行刑局長から佐久間清太郎を府中刑務所に移管されることを告げられ、幹部職員と対策を立てることになる。
0投稿日: 2023.03.20
powered by ブクログ脱獄のことが詳細に書かれていると期待したが、思ったより詳細には書かれていなかった。 戦争中の社会情勢が刑務所にどう影響を与えたかに重点を置かれて書かれている。
1投稿日: 2023.03.16
powered by ブクログ網走監獄で購入し、積読にしていたもの。ゴールデンカムイにハマった流れで読んでみると、みるみるうちに引き込まれた。 Wikipediaで佐久間(白鳥)を調べても4回脱獄したことしか書かれていないが、本書のおかげで時代背景を事細かに知ることが出来た。まさか戦争真っ只中の出来事だったとは。
2投稿日: 2022.05.12
powered by ブクログ想像していた以上に面白かった。 最初は4回も脱獄だなんてどうやったのだろうという興味から読んでいたが、それ以外にも背景にあった戦争や食糧不足など当時の生活を沢山知ることが出来て満足だった。 佐久間は体力も記憶力も計画性もあって、その能力を別のことに使えば良いのにと言うのはすごく思った。 壁を何も道具なしによじ登れるのは半端ない。 刑務所で看守は囚人に強く当たっているものだと思っていたが、そんな事はないのだと感じた。 最後の方の場面の鈴江さんの優しさが身にしみた。 佐久間が塀の外で亡くなる事ができて良かったなあ。
0投稿日: 2022.05.11
powered by ブクログ第二次大戦を跨いでの脱獄実話。 空襲などで膨大な数の犠牲者が出ていた状況下で、脱獄と逃走に明け暮れていた人物がいたっていうのもシュールだ。 詳しい戦況と刑務所の動向が交互に綴られるため、さらにその「ズレ」感が増す。 感心したのが、(たしかに平時に比べれば事件事故は多いものの)戦時中でも囚人への対応がしっかりしていたことと、法制度がちゃんと機能していたこと。 これってすごいことだと思う。 ちなみにこの小説のモデルの脱獄囚・白鳥は、一緒に仕事をさせていただいた唐沢俊一さんの『すごいけど変な人×13』でも取り上げられていたが、この本で紹介していた13人、実にバランスが取れていたんだなぁ、と再確認(笑 続編、出したかったなぁ……。
0投稿日: 2022.04.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
監獄の話は「海峡の光」に続き、2作目 食糧難で囚人の生活を羨む看守、囚人よりも少ない人数で絶えず緊張感を持って立つ看守など、看守と囚人の立場の逆転していく様は震える 戦後、好景気へ移りゆく社会の中ころりと死ぬ佐久間。仮出所してからの姿は涙が出そうになる
0投稿日: 2022.03.19
powered by ブクログ青森刑務所、秋田刑務所、網走刑務所、札幌刑務所を脱獄した男の話。あらすじですべて紹介されているのだが、戦時中の状況と、刑務所の看守の苦悩が生々しく描写されており、牢獄の状況が目に見えてくるよう。400ページ以上と長い話になるが、するすると読めてしまった。 脱獄した後で牢獄に戻って来る佐久間の姿や、最後の状況も考えさせられる。
0投稿日: 2022.01.04
powered by ブクログ脱獄を繰り返す佐久間とその周辺にいる看守達との話。と同時にその時期の時勢が紹介される。 有名な話の味噌汁を使って錆させて脱獄という話が出てきます。
2投稿日: 2021.09.09
powered by ブクログ佐久間の脱獄の手法と執念に凄まじさを感じるが、その心を開かせようとする鈴江の信念がそれを上回ることが出来るのか。この作品で一番平和なのかもしれない場面でこそハラハラした。
0投稿日: 2021.08.13
powered by ブクログ読むのに非常に時間がかかった。 脱獄王佐久間視点の大脱出物語かと思ったが、かなり客観的な内容で戦争の状況などあまり興味のないことがツラツラと書かれていて読む気が失せた。 期待していた内容ではなかった。
0投稿日: 2021.06.30
powered by ブクログけっこう昔に読みました。細かいとこは覚えてません。 読んでいると、主人公(さくま...?合ってるか地震がない)はけっこうえげつないことしているのに、なぜか嫌いになれず、逆に応援してしまっていた気がします。 多分結局悪いのは戦争です。
0投稿日: 2021.05.28
powered by ブクログ昭和に4度もの脱獄を行った男の話。 その男の生涯を軸に、戦前、戦後の刑務所の状況が詳細に描かれており、非常に興味深い。 最終的に男は府中刑務所に入れられるが、それまでの厳しい扱いと異なり、刑務所所長が温情を持って接したことにより、それ以上脱獄をすることはなくなる。 脱獄をやめたのは繰り返す脱獄と逃走の日々の疲れもあったのだろうが、疑いや警戒心のみを持って人と接すると、それは良い結果を生まないということがよく分かる。
0投稿日: 2021.05.13
powered by ブクログ実在モデルの存在に驚愕。 「もう疲れましたよ」と言わせ、仮釈放までを思う鈴江所長の人間性は唸りました。 囚人も人間。 あまり知ることのない、戦争時の食糧難での待遇や囚人が囚人を監視する特警隊制度など、勉強になりました。 硬いけど事実が丁寧に伝わる作品でした。
5投稿日: 2021.02.23
powered by ブクログ昭和11〜22年の間に東北・北海道の刑務所から4度の脱獄を果たした無期刑囚の大胆かつ緻密な計画とその超人的手口に肉薄描写した一冊。 著者は昭和54年、元警察関係の要職にあった人から脱獄を繰り返した一人の男の話を聞き、関心を寄せる。取材を重ね膨大な資料を渉猟。それらを元に肉付けし、ノンフィクション仕立ての物語にした筆力にただただ唸るばかり。 この小説の特徴として『会話』が極めて少なく、主人公の無期刑囚と、いつまた脱獄するのではないか…という看守たちの怯えと不安が交錯する心理描写が淡々と描かれ、極寒の独房での過酷さ、看守の目を盗み、着々と脱獄の企てをしているであろう不気味さと緊迫感を生む相乗効果もある。 主人公は難攻不落と言われた網走刑務所からも脱獄をしており、『アルカトラズからの脱出』よろしくやすやすと監獄の壁を破っていく。看守たちからは『容易ならざる特定不良囚』と呼ばれる。 身体能力もさることながら、知力・判断力・洞察力に加え忍耐力を兼ね備え、ある看守は呟く。『その類稀なる智力と体力を他のことに向ければ何事かを成し遂げた男になったはず…』は、読者も総じて抱く思いのはず。 本書は脱獄歴を縦軸に、戦前戦中戦後の刑務史について筆は及ぶ。戦時中の食糧難時でも一般人より栄養価の高いものを提供され、看守より体格がよかった。ただ都会にある刑務所は例外で、栄養が偏り受刑者の病死が相次ぐ。一方、野菜を自給できる網走刑務所は極寒地であるにもかかわらず死亡率が低かった。網走刑務所が『農園刑務所』と呼ばれる所以である。 もっとも驚かされたのは戦時中の囚人たちの使役。刑務所外活動〈道路・港湾・飛行場建設等〉も頻繁に行われ、占領国に海外にまで派遣もされている。多くの男性は戦争に駆り出され、労働力が払底している最中だけに貴重な労働力であったことを物語る。 戦後は国に代わりGHQが囚人の不当な扱い調査を 執拗に行い、戦前までの旧弊の撤廃と民主化に向けて介入を行うも頓挫をしている。そう、本書は刑務所内も戦争に大きく揺さぶられていく経緯を克明に記している。 著者は現実の事件や歴史上の事象をめぐり、一貫して文学的アプローチで追求をしていく。本書の場合は『脱獄』であるが、その『目的(プロジェクト)』完遂までの狂おしいほどの熱情と知恵を遺漏なく押さえ、壮大な物語へと仕立て上げ、読者は善悪・良否という二元論をどこかに捨て去り、脱獄を果たす度に思わず快哉を叫びそうな衝動にかりたてられるはず。 〈無期刑囚と看守たちの息詰まる攻防記〉オススメ!
7投稿日: 2021.01.18
powered by ブクログとってもおもしろい! 脱獄ストーリー大好き・ この本は今は亡き父のお気に入りの一冊でした 3回は読み返してます
1投稿日: 2020.09.24
powered by ブクログ戦時下、破獄を繰り返した白鳥吉栄をモデルに書かれた作品。 彼の異様な機敏さはしこさや、彼と看守たちとの関係性、そしてそれらを生み出した戦時中の刑務所という世界と実情がとても興味深かった。
1投稿日: 2020.08.23
powered by ブクログ初めて吉村さんの作品を読みました。最初の10分位は読み慣れない文体に違和感があり、失敗したかなと思いましたが、読んでいくにつれ目が離せなくなり、目の前で繰り広げられる舞台を見ているような、すごい臨場感で、一気に読了しました。 何十年も前の作品なのに、まして描かれてる戦前戦後、受刑者、刑務所、というできれば目を背けたくなるようなテーマなのに、その世界をもっと深く知りたいと思いました。フィクションであっても、日本の刑務所は多くの犠牲を払いながら、必死に治安を守ってきてくれたんだろうなと、感謝の気持ちになりました。 主人公に家族を殺害された人、主人公の家族に関する話題はほとんどないのに、主人公の勝手さ、孤独がすごく伝わってきました。 刑務所の人々が囚人を守ろうとどれだけ努力しても、爆弾一つで勝手にすべてを壊される、戦争ってほんとに失うものが多すぎると、改めて思いました。
1投稿日: 2020.08.21
powered by ブクログ1935年準強盗致死罪で無期懲役となった佐久間は、なんと4回も脱獄した。実在した脱獄王をモデルにした小説。 物凄く面白かった。脱獄そのものだけじゃなく、戦前から戦後までの世相や、食糧事情、米軍指導下で進む行政などの「歴史」がとても興味深い。
0投稿日: 2020.05.10
powered by ブクログこの人ってアレだよね、ゴールデンカムイの白石のモデルになってる実在の人だよね。作中の坊主頭にはんてんみたいな描写、白石と同じだし。 毎回脱獄する手段がすごく面白かった。肉体的にも壁を登ったり獄内のものだけでノコギリを作ってしまったりとすごいんだけど、何より交渉術が卓越してる。脱獄の可能性をテコにして看守を脅し、自分に有利な艦首との間の人間関係を作り看守を精神的に制圧し、脱獄の準備のための環境を作り上げてしまう。現代の経営者とか政治家になったらすごくでかい仕事をしたのではないか。 4回目の脱獄が終わって、その後もページ数が結構あったので、なにを書くことがあるんだろ?と思ったけど、最後の府中の所長との交流で凍りついた佐久間の心が徐々に溶けていくのかよー泣けたよー。
0投稿日: 2020.04.24
powered by ブクログ2020年3月20日読了。 実在した昭和の脱獄王、白鳥由栄をモデルにした脱獄小説。 著者の本は初めて読んだが、会話文が極端に少なく、淡々と戦時中戦後の日本の情勢・刑務所内の状態等が語られていく。 序盤は読み始めのテンションで黙々と読み進めたが、中盤は会話の少なさと硬い文章に気が滅入ってしまった。 綿密な取材と日付や人物名など細かな描写のおかげでフィクションの分類に括られてはいるが、ほぼほぼノンフィクション。もはや歴史的教科書のようであった。 しかし終盤は、今まで脱獄する事しか考えず憎悪の気持ちに支配されていた無期懲役囚佐久間が看守や刑務所長との人間味のあるやり取りに心を開き改心していく様子を読み、人を厳しく抑圧するだけではなく温情をかけて接する事の大切さを学んだ。 著者の作品には気になる題材のものが他にもあるので、機会があれば読んでみたいと思う。
2投稿日: 2020.03.22
powered by ブクログ破獄する佐久間が主人公かと思ったらそんなことはなく、佐久間の気持ちや思いなど一切語られない。語られるのは、佐久間の周りの人たちの気持ちや思いと当時の日本の情勢。佐久間が周到に準備して、なんてことは一切でてこないので、佐久間はあっさり脱獄していく。 でも期待外れではなく、読み応えあり。よいと思う。 佐久間が人の心を操るところは示唆に富む。上ばかり見て上に注意を向けて、実は下に脱獄の策があったところとか。
1投稿日: 2020.02.02
powered by ブクログ四度の脱獄を繰り返した白鳥由栄をモデルとした、戦前から戦後占領期にかけての行刑を背景とした小説。 戦時中でも刑務所は六合の穀物が配給され、所員より食べてたというのは意外というか何というか。召集されるより刑務所の方がマシだったとか。
5投稿日: 2019.09.20
powered by ブクログ「昭和の脱獄王」と呼ばれた白鳥由栄(よしえ)がモデル。 戦中・戦後の混乱した国内、刑務所の状況などが丹念な調査から描かれている。人の心理を巧みに操る男。彼を脱獄に向かわせる動機、環境、処遇、関係、能力...。作中に出てくる新聞の風刺記事は、時代を組織を扱き下ろす。 ご都合主義が生まれる背景・状況について、最後にサラッと切り込むのは流石。
4投稿日: 2019.06.25
powered by ブクログ戦時中の脱獄犯の話。合計4回脱獄しており、その綿密な計画と並外れた身体能力は人間とは思えない離れ業。 少しプリズンブレイク的なところがあり、脱獄しては捕まり、なので中だるみが感じられた。 最後は、人間として扱ってくれた看守長への感謝を忘れない、という人間味が描かれた一冊。
1投稿日: 2019.01.02
powered by ブクログ・しかし、鈴江は、危惧される要素はあっても試みてみるべきだ、と思った。佐久間がどのような反応をしめすか予想はつきかねるが、今までつらぬきとおしてきた方針を推しすすめてみたかった
2投稿日: 2018.11.28
powered by ブクログ第36回読売文学賞、第35回芸術選奨文部大臣賞 著者:吉村昭(1927-2006、荒川区、小説家) 解説:磯田光一(1931-1987、横浜市、文芸評論家)
1投稿日: 2018.10.28
powered by ブクログ何度も脱獄を繰り返す佐久間と、閉じこめる側との戦い。そして、太平洋戦争中の日本の混乱が刑務所にどのような影響を与えていたかが描かれる。 味噌汁を使って脱獄…というのは衝撃的である。そして、看守に対して心理的に優位に立つ佐久間の頭脳、常人離れした発想、行動力には驚かされる。 物語は北風と太陽のような結末を迎える。破獄、というタイトルから想起されるようなスリルに満ちたハラハラドキドキする小説ではなく、淡々とした記録文学であるが、なかなかに面白かった。
1投稿日: 2018.10.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
社会人1年目の時に網走へ出張に行った際に、網走刑務所を脱獄した囚人の話として紹介された。 読んでみると、そこも脱獄してしまうのか、脱獄できないところはないのではないか、と思わせられる一方で、小説内にもあったが脱獄する能力(体力、知力、精神力)がもったいない、ほかに向けられればとも思う。 戦争により脱獄が可能になった一面もあり、解説にもあったが当時の世相が大きく影響しているんだとも思った。
2投稿日: 2018.09.24
powered by ブクログとても読み応えがある!戦争を挟んだ時期に無期懲役囚が網走刑務を含めて4回脱獄する話し。最後は年齢などから脱獄の気力が失われかけていたところ、刑務所長の温情を受けて、模範囚となり、仮釈放を受けるストーリー。読み応えがあるのは、脱獄方法それ自体というよりは、戦前は戦争に役立つものを作り、自家農園で自給自足し、被爆した刑務所は囚人が脱走し、人で不足から囚人に刑務官をさせて無秩序になったり、戦後はアメリカ軍の指導監督を受け囚人への暴力を理由に殴られるなどし、これを知った囚人がアメリカ軍に言いつけると脅して、便宜を受けるなどという時代背景と刑務所の関連、囚人には自給した食べ物を与える一方、刑務官は少ない配給で我慢し、脱走時に備えて囚人よりも薄着でいたことなど、公務員としての高潔さも描かれており、盛りだくさんの内容
6投稿日: 2018.07.17
powered by ブクログ昔テレビドラマで見たのをきっかけに読んだきりだったので、少し前に読んだ刑務所物が不完全燃焼だったのもあり再読。 ああ…清太郎かわいいよ(笑) 津川雅彦さんと緒方拳さんが良かったという事しか覚えて無おらず、はて津川さんが誰役だったのかと思いつつ読んでいたのですが、府中刑務所の鈴江だったのか。 吉村昭さんの硬質な文章は偶に読むと頭が良くなった気がするのが不思議です。気がするだけです。
1投稿日: 2018.06.15
powered by ブクログ4度の脱獄を成し遂げた稀代の脱獄犯・佐久間清太郎。時代が戦中〜戦後とラップしており、当時の国内の混迷や市民の力強い生き様に心打たれる。一人の脱獄犯を軸に、激動の時代を描いた傑作。
1投稿日: 2018.06.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
吉村昭、最高。 文体は固く、頁数が多く、ストーリーの起伏は少なく、終始淡々と綴られる語り口は一見退屈に思えてしまうが、なんのなんの夢中になってる自分がいる、、、というパターンを繰り返すこと、はや4回目(笑)。 実話を下敷きにしている・・・しかも、トレースしてるレベルで、という点も大きいのだろう。 さて、本編の感想。 脱獄するか、させまいか、との攻防よりも、府中へ移管されてからの部分に特に心引かれた。 むろん、作中にもあるように「疲れた」という佐久間の感想も大きな要因のひとつではあろうが、府中刑務所長の英断に心打たれた。 彼は教育者の道を選んだとしても大きな仕事をなし得たのだろうと思った。 ★4つ、9ポイント。 20170705
4投稿日: 2017.07.05
powered by ブクログ吉村昭作品を読むのはこれが3作目。少ない読書経験ながら通じて思うのは、観察・叙述の人だなと。脱獄モノだからとスリルを期待するのは間違いで、脱獄者と脱獄される側と監獄という機構を通して、太平洋戦争前後の日本の社会と日本人を”記録”している。佐久間と看守たちとの攻防…ではあるのだけど、その合間合間に入ってくる当時の社会機構、監獄を取り巻く組織、収容人数、死者数、食事量、奉仕など勤労活動などの記述のほうが頭に残っている。佐久間はじめ登場人物の心理状態を内側から描かないので、やはり生き物を観察して記録してるみたい。佐久間が4度も逃げ出した理由は「寒さに耐えがたかったから」と私は思っているのだが、そこもとても動物的な動機、動機というより生存本能。それが後半、府中の刑務所に移される頃から、人間の物語に変わっていく。佐久間に最も影響を与えた府中の鈴江所長が印象的だが、札幌からの移送を担い、佐久間の誕生日にリンゴを与えた看守長たちも心に残る。後半の佐久間が心を開き落ち着いていく場面はなんだか寓話のようで、そういえば当時の社会の描写も減っている。戦前・戦中の個人の人間性を否定する閉塞的な社会から、戦後民主主義の人が人として存在できる開放感をあらわしているってことなのかな?吉村作品は、ついノンフィクションとして受け取ってしまう危険性もあり、こういうファンタジックなエピローグを「人を信じることが大事だよ」みたいなメッセージだと受け止めたらいいのか、なんかもやっとしました。
2投稿日: 2017.06.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
脱獄王佐久間と刑務所との攻防が臨場感があって面白かった。戦時中の刑務所のことや戦後復興史としても興味深く、戦争の知らなかった一面を知った。一気に読める。 ゴールデンカムイの白石のモデルだよ! 小説なのでどこまでが創作なのかは分からないが、これは漫画に出てくるあの話の元ネタかな?と想像しながら読むのもまた楽し。
1投稿日: 2017.04.08全く違った視点で描かれた戦争の悲劇に驚くばかりであった。
かなり前のことだが網走監獄博物館で脱獄囚の人形を見た。獄舎の天井の梁を伝って逃げようとしている姿は強烈に印象に残っている。北海道の開拓の歴史は壮絶である。札幌からオホーツクまでの幹線道路には過酷な労役で亡くなった囚人の骨が埋まっていると言われている。北見から網走へ行く途中の道端には鎖塚という慰霊碑が今でも残っている。この本は小説というより戦争と刑務所のドキュメンタリーである。戦時中の軍需工場での労役や空襲で亡くなった方の遺体処理まで囚人が駆り出された実態や軍国主義の下での監視体制などが詳しく書かれている。 網走刑務所の囚人は氷点下30度の冬でも暖房なしで眠った。それでも脱獄は少なかったと言われている。一般市民のほうが食糧事情が悪いうえ戦時中は健康な男性が外を歩いているだけで目立った。しかし、この本の主人公は戦時中も2回脱獄している。普通では考えられない方法で手錠をはずし3メートルも上にある窓から逃走している。その執念は看守に対する憎しみとしか考えられない。終戦直後、札幌刑務所を脱獄、これが4回目である。札幌郊外を転々とし鉱山に潜んでいたこともあった。 計4回の脱獄のあと府中刑務所の所長と心が通じ合い人間らしさを取り戻していく姿は素晴らしい。子供のころ、私の周囲には戦争を語る人が居なかった。戦争よりも開拓の苦難のほうが大きかったのだろうと思う。戦争の悲惨さは大人になってから小説やドラマや報道で知ったことがすべてである。この本を読むきっかけは網走監獄博物館で見た脱獄囚の人形と「破獄」という題名がすぐに結びついたからだ。しかし、読み進むうちに今までとは全く違った視点で描かれた戦争の悲劇に驚くばかりであった。
0投稿日: 2017.01.26
powered by ブクログ看守たちと、一人の囚人の戦いの歴史、とでもいうような内容。 現代の刑務所でも同じように脱獄できるのだろうか?と思った。 人は抑圧されれば反発したくなるものなのだなぁ。
0投稿日: 2016.11.13
powered by ブクログ印象的だったのは、囚人にたっぷり主食を与えて反抗心を失くさせるという方針。 確かに、食べ物をくれる人には逆らえない。人間も動物と一緒だなー。日常でもよく見かける光景だ。
1投稿日: 2016.10.03
powered by ブクログ読了語、唸った。深い息が自然とついて出た。物語の世界に浸った。 4回も脱獄を繰り返したという、実在した男をモデルとした小説。 「あとがき」に、「十七年前(註:昭和54年)、元警察関係の要職にあった方から、脱獄をくりかえした一人の男の話をきいた。警察関係者とは作中の桜井均(仮名)であり、一人の男とは私が佐久間清太郎と名付けた人物である」とある。 資料を基に大きく肉付けしてあるだろうが、ノンフィクションでなく、フィクションに仕上げた作者の筆力は、さすがである。 会話文もかなり少なく、淡々と男や看守の心理描写が描かれ、緊迫感がある。 男は、その並々ならぬ監獄の壁を破り、「容易ならざる特定不良囚」と呼ばれる。 その体力もさることながら、洞察力、判断力、忍耐力が尋常でない。 ある看守長の言葉のように、まさに「その類稀なる智力と体力を、他のことに向ければ、何事かを成し遂げられた男になった筈・・」である。 ただ、脱獄を繰り返した男の話だけでなく、脱獄と戦前・戦中・戦後の時代と重なり、当時の時代背景なども知れる。 (二・二六事件のあった年から「男」の脱獄が始まる) 戦時中の食糧難と囚人の死亡者数、あるいは、時に一般人よりも栄養に恵まれた食糧を食べることができていたこと、…。 物語の最後は、少し感情的に流されそうな部分もあるが、人情話で終わるのでなく、淡々と「男の物語」は終わる。それがよい。 読み応え、充分にあり。 新潮文庫なので、「ナツイチ」に入れてもいいのではないのかと思う一冊であった。
2投稿日: 2016.09.02
powered by ブクログテレビで見たことがあった気がする。どんな牢獄であっても、あらゆる知恵を振るい、脱獄に成功する無期刑囚の話だ。味噌汁で鉄を腐食させる所なんかは、有名だ。そうか、これが、その話なんだ。一気に読み進む。 どんな獄も破ってしまう囚人。時代は戦時から戦後。時折戦争の風景も混ざる。さて、そんな囚人をどのように縛り付けることに成功したのか。 読んでのお楽しみ。実話に基づく話である。
2投稿日: 2016.08.28
powered by ブクログ戦中戦後の脱獄物語です。脱獄というと、アメリカ映画のノリと勢いのイメージが強いけれど、この話は淡々と人の動きに加えて時代背景や刑務所の様子、社会情勢も語られるので、読みやすいし、テンションが高くなくてよかった。囚人たちの方がしっかりご飯を食べられていたために、看守よりも体格がよかったり、そもそも待遇が良くなくて看守が集まらなかったりしたところとか、戦後の混乱で罪もなく殺された人がたくさんいて、元囚人が天寿をまっとうするところとか、いろいろ考えてしまう話でした。よかった。
2投稿日: 2016.07.16
powered by ブクログ「脱獄」、その一点に向かって、人生で一番充実した時期を費やした男の物語。 「その類稀なる智力と体力を、他のことに向ければ、何事かを成し遂げられた男になった筈・・」と看守長に言わしめた器量は、本当に計り知れないものがあります。 厳戒態勢の守衛の中、看守官との心理戦に於ける巧みな勝ち抜き方は、最近巷にあふれている「絶対負けないブラック心理術・・ホニャララ~」のような書籍なぞを読むより、よっぽど迫力とリアル感と実践性が高いと思います。 その手の本読むより、小説読もうぜ。
0投稿日: 2016.05.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
網走刑務所を脱走した白鳥由栄の物語。4度の脱走を繰り返した白鳥だが、それは刑務所の看守への恨みなどからによるものであろうか。本当に親身になって自分のことを考えてくれた人間にはホロリと来る性格だったようである。それは彼の出自にもよるのだろう。 著者のノンフィクションは、本人になりきって物語が進むのではなく、淡々と白鳥の行動を、記録などをたよりに綴っていくものである。自分としては、多少のフィクションというか、想像をまじえながら、本人になりきって物語が第一人称で進む方が好みなので、★2つ。
0投稿日: 2016.05.01
powered by ブクログ実は他書とタイトルを混同して間違え買いしちゃった本なんだけど、本当に面白かった( ´ ▽ ` )ノ。 セリフが極端に少なくて、普通の小説の倍くらい時間がかかったけど、一行たりとも読み過ごせなかった( ´ ▽ ` )ノ。 単なるプリズン・ブレイクのコンゲームとしても面白いんだけど、戦中戦後という特殊な時代背景がドラマに厚みを加えている( ´ ▽ ` )ノ。 戦時中の監獄事情なんて、今まで考えたこともなかった( ´ ▽ ` )ノ。 すごいね、これ( ´ ▽ ` )ノ。 佐久間清太郎(仮名)という伝説的人物が、昭和58年という、つい最近まで(シャバで!)生きていたという事実に衝撃(゚д゚)!。 こういう「超人」を特殊機関に採用していれば……とは誰しもが思うところだけど、そうはいかないのが世の常なんだよね(´ェ`)ン-………。結局、脱獄犯の才能は脱獄以外には発揮されないもの(´ェ`)ン-………。 人情にホロリ改心、というテンプレのオチに必ずしもオトさない、ドライでリアルな叙述に感服( ´ ▽ ` )ノ。 ブクログにレビューがたくさん載っていたんでホッとした( ´ ▽ ` )ノ。 さほど有名じゃない作品でも、みんないいものはいいと、ちゃんと分かっているんだね( ´ ▽ ` )ノ。 2016/03/22
0投稿日: 2016.03.22
powered by ブクログ刑務所の中の出来事だけでなく、戦時中の世の中の様子、事件なども描かれていて、現実味を帯びていた。戦時中、囚人の方が看守よりも良い物を食べていたことには驚いた。看守って本当に大変そう。鈴江所長の話を読み、刑務所とは囚人を閉じ込めておく施設ではなく、囚人を更生させる施設なのだと思い出した。
0投稿日: 2015.09.22
powered by ブクログ4回も脱獄を繰り返した男をモデルとした小説.脱走の仕方,看守を心理的追い込むやり方が興味深い.戦争中という時代背景も描写される.食糧難の中で看守より囚人の方が食事量が多かったことなどびっくり.札幌刑務所長は「もしその比類ない能力が他の面に発揮されれば,意義のあることを成し遂げたに違いない.」と畏敬に近い感情を持つ.同感.
0投稿日: 2015.08.31
powered by ブクログ吉村さんの本はこの作品が初めてで、この作品から吉村さんのファンになりました。時代風景が感じとれるか少し不安でしたが、自然に入って来ました。ストーリーはタイトル通りですが、吉村さんならでわの表現か飽きさせず臨場感たっぷりな作品でした。
6投稿日: 2015.08.30
powered by ブクログ脱獄犯の背景のリアルさに,ノンフィクションとの境がほとんどない感じがする.戦争という国を挙げての喧騒の中で,刑務所の中は別の時間が流れているかのようだ.といっても戦争の影響はもちろん受けるわけだが,飢えていく世間の人々と米の確保される囚人達,うーん!やっぱり何か釈然としない.それにしても佐久間清太郎の脱獄の技術は凄い.
0投稿日: 2015.08.24
powered by ブクログ実に4度の脱獄を繰り返し、昭和の脱獄王と言われた白鳥由栄を描いたノンフィクションともいえる作品。 世の中は二.二六事件から第二次世界大戦、そして敗戦、、、と平常ではない時代背景が相まっている。戦時中は囚人さえも造船や道路工事に携わっていたこと、特に3度めの収監先の網走での過酷なこと。空襲に備えて(混乱に乗じた逃亡を防ぐため)地方へ囚人を移管したり、物質、配給不足でも囚人には国民以上に食料が与えられていたり。 脱獄しても生きられないだろうって時代。 緻密で計画的、巧みに人間の心理をつき、その上人間離れした運動能力。逃亡しても自ら出頭したり、あっさり捕まったり。捕まる度に刑が重くなる。そんな彼の末路がどんなものなのか。 実話故に、身に染みます。
0投稿日: 2015.05.11
powered by ブクログ入念な計画と大胆な行動で4度の脱獄を繰り返した無期懲役囚の実話を基にした小説。当時の牢獄の様子や世相が良く表されており面白かった。吉村昭作品は素晴らしい。
0投稿日: 2015.05.11
powered by ブクログ昔、緒方拳さん主演でNHKでドラマ化されていたのを見た。 脱獄シーンが印象的だった。 その原作が最近はまっている吉村作品と知って読んでみた。 単に脱獄囚の話ではなく、戦中に刑務所がどのように運営されていたか、という視点があって興味深かった。 特に大都市で空襲があった際に凶悪犯が逃げるのを防ぐため、囚人の疎開が行われていたのは戦争の意外な一面だと思う。 そして、国内の造船や南方諸島の飛行場建設に囚人が借り出されていたのも同様だ。 戦後の進駐軍との刑務所運営をめぐる軋轢もこの本を読まなければ知らなかったと思う。
0投稿日: 2015.02.12
powered by ブクログ脱獄を繰り返した男の半生を描いた小説でした。特に昭和初期までの監獄からの脱獄は牢も看守の質も未熟で、まさに人知と体力の闘いの様子でした。 用意周到に脱獄する者は、ハンニバル・レクターのように知能が高いだけでなく体力も備えておく以上に、脱獄に向けての異常な執念が必要でした。 その執念は看守への怒りから発しているとすれば、動機が屈折しているほど周囲には理解されず孤独感は増すと感じました。 しかしそうであればこそ、自分を理解してくれていると感じた者を深く信頼し、それが執念を軟化させるきっかけになるのだと思いました。 一人で怒ったり悩んだりするのではなく、信頼できる人に自分を解放していく方法は、人の心理的なバランスを保つ手段としてやはり有効なのだと確認しました。
0投稿日: 2015.01.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
大昔に読んだ本の再読。第二次世界大戦前後の混迷した時代に収監された一人の無期懲役囚が、色んな意味で過酷な環境下にある数々の刑務所から繰り返し脱獄する様を描く、という、史実をもとにして書かれた犯罪小説。 脱獄してやる、という囚人の執念と、絶対に脱獄させない、という看守たちの執念のぶつかり合いを描いた小説なんだけど、両者ともに屈強なところや弱いところが鮮明かつ公平に描かれていて、どっちにも理解を示せるし、懐疑を抱くこともできる。この公平さこそ吉村昭。
0投稿日: 2014.10.20
powered by ブクログ戦前、戦中、戦後にあった連続脱獄囚と刑務所の男たちの生々しい対応。 当時の時代背景や懲罰のあり方、人間の驕りや錯覚など、その表面的なストーリーとは別にとても深い示唆に富んでいる。
0投稿日: 2014.09.11
powered by ブクログ再読。 何回読んでも面白い。吉村さんの緻密な取材による文章は、飾り気はないがその分リアリティーに富んでいる。 初めてあとがきを読んだが、ノンフィクションにしなかった意図など、改めて感心させられた。
0投稿日: 2014.08.27
powered by ブクログ直さんが好きな理由が分かった気がする 強くて弱い男のはなし。 彼と真剣に向き合った刑務官のはなし。 花弁の味を確かめるシーンが良かった
0投稿日: 2014.08.19
powered by ブクログ公文の先生に勧められて読んだ本。みそ汁の塩分で鉄を錆びさせて牢をやぶる、とか、スパイダーマンみたく壁を登って牢を抜ける、とか。網走刑務所のいかにも寒そうな記述(布団の湿気が夜には凍りついた、みたいな。)を沖縄で読んだのが思い出。
0投稿日: 2014.07.13
powered by ブクログ何度も脱獄を繰り返す男と、その時代背景を描く。 戦中・戦後の混乱の中で なんという生命力なのだろう。 その力の根源は 愛情に飢えた孤独な気持ちや寂寥感?
1投稿日: 2014.06.23
powered by ブクログ狼王ロボのような読後感。こちらの方が救いがあるが。 単にプリズンブレイクというテーマの持つ普遍的な魅力のみならず、戦中戦後の刑務所事情など、なかなか知ることの無い記述も多く、主人公の際立った個性と相まって一気に読ませる。
0投稿日: 2014.03.18後半に読み応え
「昭和の脱獄王」と呼ばれた白鳥 由栄(しらとり よしえ)をモデルに描かれた作品。 青森刑務所、秋田刑務所、網走刑務所、札幌刑務所と、4か所もの刑務所を脱獄し、累計逃亡年数は3年にも及ぶ。 彼の超人的な脱獄方法と、それを防ごうとした刑務官たちとの攻防。 食糧難・刑務官不足に瀕していた全国の刑務所の状況。 それらが、吉村昭の真骨頂でもある膨大な取材から描かれている。 ただ、残念なのは、前半の網走刑務所脱獄までは、記録を追っている感があり、人物の動きが感じられない。 札幌刑務所から最後の服役になる府中刑務所までの章で、やっと脱獄犯の佐久間と刑務官たちが生き生きと動き出す。 実際にインタビューできたのが、最後の府中刑務所での関係者であったことも影響するのかもしれない。 ドキュメンタリーではなく、小説という形をとっているのだから、もっと大胆に作っても良かったのではないか? 吉村さんはまじめだから、それができなかったんだろうなぁ。
0投稿日: 2014.02.20躍動感が、文書に無い。面白いストーリーなのに。
テーマは、いいが何か表現が単調。 府中刑務所の章は、まだマシだが その前はちょっと耐えられない。
0投稿日: 2013.12.28
powered by ブクログ実際に存在した最大にして最後の天才脱獄囚の男(作中では、佐久間清太郎という仮名で登場)を題材とし、彼と彼をとりまく人間関係を描いている。 とにかく佐久間の努力、執念と明晰さに驚かされる。看守との巧みな心理戦も読んでいて面白い。そして、たまに垣間見える佐久間の人間らしさに少し情が湧いた。 時代の背景の描写や状況説明が豊富なので、当時の空気を味わいながら読める。そういうところは歴史小説の体裁と似ている気がする。 難攻不落の刑務所を四度も破獄した佐久間の生き様を味わってみては?
0投稿日: 2013.12.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
4度にわたり刑務所からの脱獄に成功した伝説的な脱獄囚佐久間清太郎の物語。語り手は佐久間ではなく、彼を閉じ込め、脱獄を防ごうとする看守たち。彼らの職務にかける情熱や佐久間への複雑な心境も描かれ、それが物語に深みを与えている。 堅牢さで知られる網走刑務所からの脱獄はすごいのひと言に尽きる。絶対に外すことが不可能だと思われた手錠を外し、そびえたつ壁を乗り越える佐久間の執念深さには驚かせられる。 異様な人物にしか見えない佐久間だが、決して人間の心を失ったわけではなく、心の奥底にある人間性がひとりのひとりの刑務所長のやさしさによって目覚める。それが佐久間の人生の大きな転換点になる。
0投稿日: 2013.12.22
powered by ブクログ無期刑囚・佐久間と刑務所関係者達との攻防がドラマティックなのはもちろん、戦中戦後における刑務所の実情が興味深い。民衆が混乱しないよう、囚人の取り扱いを慎重にして規律と秩序を重んじていた戦中。その規律と秩序が瓦解してしまった戦後。刑務所の遍歴に着目するだけでも、とても面白い。
0投稿日: 2013.12.13
powered by ブクログノンフィクション作家の吉村昭氏の凝縮された文章は素晴らしい。刑務所を4回脱獄した男の昭和の実録。昭和11年青森、17年秋田、19年網走、22年札幌。戦前戦後の世相や社会不安を背景にその囚人佐久間清太郎の生き様を描く。
0投稿日: 2013.11.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
難読な文章ではないが、時代背景などの描写が多く中身が濃い小説。淡々と描いているにも関わらず展開が非常に面白いので、一気に読めてしまう。 4度の脱獄を繰り返した男の腕前は見事だが、看守との駆け引きが非常に面白い。脱獄の時には用意周到の割りに、捕まるときはあっさりなのが不思議だったが、この男の脱獄目的が「自分を理不尽に扱った看守を懲らしめるため」と言っており、もしそうだとすれば全体的に辻褄が合うのが興味深かった。実話のようだが、凶悪犯でなくとても人間らしい人間として描いている。
0投稿日: 2013.11.10巧みな連続脱獄犯
現在でも再犯率の高さからか、矯正のあり方を見る番組などが特集されますが、その矯正の難しさを感じる作品でした。 この作品の中心人物「佐久間清太郎」は生涯に4度の脱獄をしますが、いずれも寒さや食事、看守などの獄中の環境が劣悪だったために行った脱獄でした。しかし最後は、あたたかさに触れ、少しずつ矯正していきます。 タイトルの「巧みな」は、作中の工夫を凝らした脱獄方法からつけました。1つ例にすると、味噌汁です。果たして味噌汁をどう脱獄に利用するのか?読んで見てください。使い方に驚きます。
0投稿日: 2013.11.06才能の“超”無駄遣い
才能の“超”無駄遣い――まさにそんな言葉がぴったり来る小説でした。四回も脱獄を繰り返した囚人の執念と生命力にも驚かされますが、脱獄されるたびに罰則を免れえなかった看守の苦労も、涙なくしては語れません。そして一度は死刑判決も受けた男に、仮釈放までの道筋をつけた刑務所長の献身にも心を動かされました。 淡々と描写される中に垣間見える人間模様が素晴らしい一冊です。
1投稿日: 2013.10.03
powered by ブクログノンフィクションではないと思うのだが、モデルがいるので、このカテゴリー。 ベストなタイミングで網走刑務所にいった。 その中にインタビューで実際の声を録音したものがあったので、聞き手は作者? ものすごい臨場感が頭の中でできあがっていた。 そして、戦中、戦後の北海道についても、しれた。 北海道に限ったことでいえば、本当に小学校の歴史の授業以来。 札幌も食糧難だったのだなぁ、と。 脱獄者が確かに主人公であるが、もうひとりの主役は時代であろう。 この作者引き続きいろんな作品を読んでみたい。
0投稿日: 2013.09.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
戦中、戦争直後にかけて4度にわたる刑務所(それも最も難しい網走を含む)の独房から脱走に成功した実在の主人公には驚きますが、主人公と看守の心理の動き、そしてそれの背景となった当時の社会の時代・風俗を知ることの出来る優れた本です。また知恵の限りを絞り、目標を実現する主人公が気の毒で、誤った方向ではありますが、畏敬したくなります。最後に主人公が模範囚に変わり、釈放後、府中刑務所長だった人に毎年始の挨拶に訪問するようになった話は感動的ですらあります。
0投稿日: 2013.08.26
powered by ブクログ戦争の時代背景とリンクさせながら、実在した脱獄犯と看守たちを描いている。すべて仮名でフィクションでありながら、実在した人物や時代を描いていてノンフィクションでもある感じがなんとも不思議。脱獄に対する犯人と看守の心理戦が面白い。
1投稿日: 2013.08.18
powered by ブクログフィクションということだが、事実に基づいたフィクションであった。 これも網走監獄へ観光したときに買った本。 自分の可能性を信じての挑戦なのか、はたまた自由を勝ち得たくて仕方なく考え付くのが破ることなのか。 あるいは両方か。 破る-完遂する の執念が極めて感じ取れる作品。
0投稿日: 2013.07.23
powered by ブクログ20130719 戦中から戦後にかけての生活が刑務所の出来事を通して話になっている。多少疲れるがドキュメントとして読めば楽しめるかもしれない。
0投稿日: 2013.07.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
北海道を観光バスで旅行し、網走に行くとガイドさんが主人公である脱獄者について話をしてくれる(2度聞いた)。本作も全て仮名で描かれており、バスガイドさんもイニシャルを使うが、少し調べれば分かる人である。 この作品は単にその脱獄を繰り返した人間の物語としているのではなく、戦前・戦中・戦後に渡って、犯罪を犯し、収監され、脱獄を繰り返したその時代がどのようなものであったかが描かれている。歴史小説的なイメージを強く持った。 戦前の刑務所の様子、戦時中から戦後まもなくにかけての食糧事情の悪かった時代における、一般社会と刑務所の状況。それぞれが克明に描かれている。今の感覚でその行為を見るだけではその意味が異なってくるからであろう。 「伝説の脱獄犯」を入り口に、あの時代を刑務所を中心に見ることができる、昭和の歴史物である。
0投稿日: 2013.06.20
powered by ブクログ著者の「赤い人」を読んで感銘を受けた。こちらは小説であり、モデルになった人物はいるようだが、ノンフィクションの赤い人ほど感動は受けない。ただ、当時の獄舎や時代背景がしっかりと書かれているので迫力はある。
0投稿日: 2013.06.11
powered by ブクログ面白い! 戦前、戦中、戦後という、時代背景とこの脱獄、そして人間という ものが、すごく一体感というか、お互いに影響をしあって描かれていた。本当に、入り込めた。
0投稿日: 2013.04.16
powered by ブクログ文学に限らず、創作とは何かから脱獄することであり、吉村昭はこの作品における時代を用いて佐久間を用いて、当時から脱獄しようと図ったのであると全て読み終えて納得しました。 戦時と戦後における人に対しての檻、佐久間は自由のために脱獄したのだろうか。 きっと佐久間は時代という檻から抜け出したかったのだろうか、そうとすら思いました。
0投稿日: 2013.04.12
powered by ブクログ何が本当の幸せなのか。ハングリーな事か穏やかな事か。 平和になる事を、主人公が心穏やかに過ごせる日を望みながら読み進んでいたのに、最後はちょっと物足りなく感じてしまう自分がいて、考えてしまった。 脱獄というテーマの裏に、もっと深いものが隠れている気がする。
0投稿日: 2013.04.03
