みかさんのレビュー
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その日のまえに
重松清 / 文春文庫
涙・涙・涙
8
「その日のまえに」
「その日」
「その日のあとで」
という後半の3つの短編と、その前にいくつかの短編という構成。独立した短編かと思わせておいて、「その日…」の3篇でそれらが大きな伏線になっていることが…わかる。
その日とは、“死を迎える日”
死ぬことと生きること。
かけがえのない人を失うこと、かけがえのない人を残して先に逝かなければならないということ。
とっても暗いテーマだし、涙なしには読めないのだけれど、読後感がすごく良い。 続きを読む投稿日:2014.07.14
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舟を編む
三浦しをん / 光文社文庫
辞書編集への情熱
6
玄武書房辞書編集部のベテラン編集者荒木に、言語感覚の鋭さを見込まれて引き抜かれた馬締光也。
新しい辞書「大渡海」の刊行を目指すが、「金食い虫」と揶揄される辞書編集部には、上からのGoサインがなかなか下…りない。
それでも少しずつ少しずつ準備を続けた13年後…。
辞書編集部に関わっている登場人物の全てが、辞書の刊行に情熱を注いでいる。その熱さが、読んでいる私にも伝わってくる。
私は新明解国語辞典がお気に入りだけれど、「大渡海」が実在すればいいのに…と思ってしまった。 続きを読む投稿日:2014.05.22
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さいはての彼女
原田マハ / 角川文庫
最初の数行でグググっと
4
やり手の女社長涼香は、いつの間にかやり手過ぎて社員が離れていくという状況に陥っていた。沖縄の高級リゾートでの束の間の休暇を…と思い、“有能な秘書”の高見沢に旅行の手配を任せるが…。
辿り着いた北の女満…別で、かけがえのない出会いが待っていた「さいはての彼女」。
その他、女性のおひとり様の旅の短編が2つ。そしてさいはての彼女のスピンオフのような短編が1つ。
どれも挫折からの再生をテーマにしている。
原田さんの作品は、最初の数行読んだだけでグググッと惹きつけられる。
私もおひとり様旅行をするけれど、「旅自体を楽しんでいるんだぞ!」と、女性のおひとり様の旅=挫折からの逃避に思われたくないな…と作品と全然違うところで考え込んじゃった。
続きを読む投稿日:2014.11.07
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ヴァン・ショーをあなたに
近藤史恵 / 東京創元社
美味しくて、優しい
4
フレンチのビストロ“パ・マル”を舞台にした『タルト・タタンの夢』の2作目。
またまた美味しそうだし、優しいし、サクサク読めるし、ほっこり癒される。
どんな経歴で“パ・マル”に至ったのか謎だった三舟シェ…フのフランス修業時代のお話では、あの癒しのヴァン・ショー誕生のきっかけのエピソードがあったり。
第3作も出版の予定だとか。待ち遠しい。 続きを読む投稿日:2015.04.09
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小さなトロールと大きな洪水
トーベ・ヤンソン, 冨原眞弓 / 講談社文庫
知らなかったムーミン
3
ムーミンママとムーミンが、ムーミンパパを探すところから始まっていたのですね。
テレビのムーミンも、ちょこちょこしか観ていなかったので、新鮮♪投稿日:2014.08.09
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大絵画展
望月諒子 / 光文社文庫
周到な計画
3
ゴッホ作「医師ガシェの肖像」がロンドンのオークションで日本人に落札された。しかし、バブルがはじけた後、その絵はと担保としてとある銀行の倉庫に眠ることになる。
その頃、詐欺に遭い大金をだまし取られた3人…の男女が、ガシェを盗むことによって損失を埋めようと計画。なんとか盗み出すことに成功したが、裏にはもっと大きな計画が存在した。
題名の『大絵画展』の意味することが最後の最後に明らかになる。
バブル期に金にあかせて名画を買いあさった日本人が、その後その絵画をどう扱ったか。
名画こそ、個人の持ち物ではなく、たくさんの人に見てもらえる環境に置くべき。
そんなことを改めて感じる。 続きを読む投稿日:2014.07.17