
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
佐久間は自由を求めて投獄されたのか、そもそも破獄ではなく投獄こそが目的であったのではないか考えさせられる。長く懲役を受けた囚人が模範囚となり出所するも、一般社会よりもひとりの人間として扱ってくれる所内に居場所を求めてまた戻ってくる話は珍しくない。破獄という点に焦点が当てられがちだが、この小説が描くのは明らかにその手口ではなく佐久間の人間性や求めている何かの部分である。吉村昭の文章には淡々ながらも力強さがにじみ出ており、「戦艦武蔵」に続き陰鬱とした戦時の物語にはぴったりだ。
0投稿日: 2013.03.23
powered by ブクログ(「BOOK」データベースより) 昭和11年青森刑務所脱獄。昭和17年秋田刑務所脱獄。昭和19年網走刑務所脱獄。昭和23年札幌刑務所脱獄。犯罪史上未曽有の4度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎。その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口を、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡し、獄房で厳重な監視を受ける彼と、彼を閉じこめた男たちの息詰る闘いを描破した力編。読売文学賞受賞作。
0投稿日: 2013.02.17
powered by ブクログ網走刑務所でマネキンみた人だ。 4回脱獄した実在の人物をモデルにした緻密な小説。 戦前戦後の刑務所内外の様子も克明に描かれてて、小説の流れとも見事にマッチしてる。
0投稿日: 2013.01.29
powered by ブクログ吉村昭の大作。 歴史的事件を起こした超人的な脱獄犯の心の動きを、 日本の複雑な時代背景と共に克明に描く。 充分に警戒し、脱獄を阻止しようと必死の看守たちをしりめに、 天才的な頭脳と、超人的な力でみごとに脱獄してしまう対決は スリル満載。
0投稿日: 2013.01.27
powered by ブクログ昔、さいとうたかをの描いた『監獄島からの脱出』というゲームブックがあったんだけど、その本で何度も取り上げられていた実在の脱獄者をモデルとした小説。くり返される脱獄と、戦中•戦後の刑務所の混乱とが絡み合うように物語が展開し、読み応えがあった。
0投稿日: 2013.01.25
powered by ブクログ本作の主人公のモデルとなった白鳥由栄については、斎藤充功『脱獄王―白鳥由栄の証言』(幻冬舎アウトロー文庫、1999年)というノンフィクションがある。併読を勧めたい。
0投稿日: 2012.12.28
powered by ブクログやっぱり吉村昭の本は良い。 「犯罪史上未曽有の四度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎」と、看守たちの戦い。そしてその背景には、太平洋戦争という時代の変化が含まれている。 このなんとも暑苦しい話を、吉村昭の筆致でひたすらドライというか、事実見上げというか、報告書のように書いていって、そして読後感が、まさに文学という感じだ。 いいものを読んだと思う。
0投稿日: 2012.11.18
powered by ブクログ独房から何度も脱獄する1人の囚人を中心にしているが、脱獄よりむしろ大戦前後の刑務所と日本社会の様子が描かれている。 戦中だけでなく戦後しばらくの間、日本はこんなにひどい飢えに襲われていたんだということを初めて知った。自分の両親が幼い頃、日本はこんなに飢えていたのか。。。
0投稿日: 2012.11.17
powered by ブクログ移動中に読み終わりました。 小説の中では関係者への配慮もあり、仮名とされていますが、"昭和の脱獄王"の異名をとる白鳥由栄という実在の人物をモデルにしたほぼノンフィクションの小説。屈しない男の姿、脱獄の鮮やかな手口が主眼となっていますが、第二次世界大戦前・中・後を時代背景として、戦争の混乱によって刑務所の看守・囚人をとりまく環境がどのように変化したかも克明に記述されています。 戦争を知らない世代としては、戦況悪化による食糧事情の劣化の凄まじさが印象に残りました。戦争末期~敗戦直後には、不足する配給食糧に頼る看守より、刑務所付属の農園等から採れる食材を食べられる囚人の方が食糧事情が良いという皮肉な状況も生まれていたそうです。官服の支給も途絶え、ぼろぼろの服を着て、人数も不足するなか、ぼろぼろの体で囚人を監視する業務をなんとかこなしていく看守達に感情移入させられるおはなしでした。 それにしても脱獄の方法は、おどろくべき方法で、実話を基にしたと知らなければ、「ないない(笑)」と否定するに違いないほど。
0投稿日: 2012.11.08
powered by ブクログ昭和初期の脱獄王をモデルとしたフィクション。時代背景描写のキメが細かく、これノンフィクションだったっけってなった。脱獄が果たされると気持ちよく、謎だった脱獄手口もゴロリとした骨太な方法で満足。ラストにむけどんどん穏やかになっていく主人公にはさみしい気分にさせられた。
0投稿日: 2012.10.27
powered by ブクログ戦中・戦後の時代背景とともに、今まで考えもしなかった、刑務所の過酷な実情やそこで働く看守や服役者たちを、脱獄囚:佐久間を中心とした、圧倒的に重厚なノンフィクション!!
0投稿日: 2012.09.28
powered by ブクログ戦前から戦後にかけて四度の脱獄を行い、難攻不落とされた網走刑務所からの脱走にも成功した脱獄王:佐久間清太郎と、看守、警察官等との攻防を描いた作品。 著者の吉村 昭氏は、史実や証言を徹底的に調査、検証し、事実をどこまで追求した作風で知られているが、本作でも勿論その緻密さは健在。 本書はただの脱獄小説には留まらず、太平洋戦争の戦況を通して、戦中から敗戦〜占領下での刑務所事情、そして社会情勢も詳細に描かれており、一つの戦記小説としても機能している。 以前に同著者の「漂流」を読んでいるが、吉村氏の徹底した事実追求による、感情や想像を排除した迫真の文体は、ノンフィクションが持つ緊迫感とどっしりとした読後感を与えてくれる。 吉村氏にかかるとフィクションとノンフィクションの境界線は消滅する。凄いお方です。
1投稿日: 2012.09.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
実話ベースのフィクション。ここのところ、柔らかい作品ばかりだったのでちょっと硬い文体のものを読みたくなったので。 面白かった。実際、日本の刑務所から何回も脱獄した人がいるなんてそもそも知らなくて、その事実があっただけでびっくりした。第二次世界大戦をの戦前から戦時中、戦後をまたいでいる時期だったこともあって、歴史描写が丁寧で、それが妙に傍観の視線になってて興味深い。主人公の心理状態は常に予測として描かれているのもその傍観を手伝ってた。いつも心理が描かれるのは看守側。見ている人と見られる人の対比が明確で、久しぶりにこんな物語を読んだな。 古い本もたまには読まないとね。
0投稿日: 2012.09.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
4回の脱獄を果たした元服役囚をモデルに、戦中戦後の時代背景と絡めて描かれた小説。ノンフィクションに近いと思われる。 単純に、4回にもわたる脱獄、過去の脱獄により信じ難い厳しさの監視の下で成功した脱獄に驚嘆した。主人公の知恵と身体能力には、驚くばかり。 最終的に脱獄を防止できたのは、厳しい監視・拘束ではなく温情に基づく緩やかな収監方法だったそうで、「北風と太陽」の寓話を思い出した。 事実の羅列のような描き方で、文章も淡々としている。素材が素材だけに、もっとメリハリをつけた描き方をすれば、ものすごく面白い読み物となりそうだが、このような抑えた手法こそ作者の意図なのか。
0投稿日: 2012.09.06
powered by ブクログ佐久間清太郎、府中刑務所の鈴江所長。 ドキドキした。 佐久間の行く末が知りたくて知りたくて、「すみませんすみません・・・」と思いつつもかなり飛ばして読んだ。 佐久間が無事に脱獄しますようにって思うのに、看守たちの弱さが骨身に沁みて。 緊張していたようで、読後の今、呼吸が荒い。
0投稿日: 2012.08.19
powered by ブクログ4度の脱獄を実行した佐久間清太郎という男。 戦中・戦後、彼の脱獄とそれを防ごうとする者たちの戦いを描く。 戦中・戦後の状況が細かく描かれているものの、 それが少し邪魔になっていたような気がする。 序盤は読み進めるのが遅くなっていたような。
0投稿日: 2012.07.08
powered by ブクログ時代背景をうまく織り込みながら、主人公の行動と刑務所の変遷がバランスよく描かれる。戦時中の日本を変わった角度から考えることが面白い。また主人公の行動はある意味で爽快感を与えてくれる。読み応えも、読後感も申し分ない作品。吉村昭作品をまた読みたいと思った。
0投稿日: 2012.06.26
powered by ブクログ昭和初期。太平洋戦争に突入し、日本が混乱状態に陥る中、脱出不可能と言われる刑務所を脱獄不可能な状況に追い込まれてなお何度も脱出に成功する男の物語であり、実話であるらしい。 手錠などは簡単に外すことができ、想定外の方法で刑務所の構造の隙をつきひたすら脱出をする。その死刑囚に翻弄される刑務官と出口なき太平洋戦争に突入した日本の社会情勢を描きつつ、佐久間清太郎の人生を描き出す。極限状況に置かれた人間を描き出すと吉村昭はやはりすごい。
0投稿日: 2012.05.02
powered by ブクログ雑誌「ダヴィンチ」で紹介されていて手に取った本。 何度も脱獄を繰り返す佐久間に対して、 過去の経験をもとに、脱獄を防ごうとする 刑務所職員の苦闘が詳細に書かれており、 とても興味深く読むことができた。
0投稿日: 2012.04.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
戦争ものが続いたので。 印象に残るシーンは 佐久間の脱走直後、看守たちがあわてて四方に追いかけだすところで躓いて転ぶシーンがある。 また、出所後佐久間が世話になった看守宅に正月招かれ、うまそうに食事をするシーン。
0投稿日: 2012.03.31
powered by ブクログ超人的、天才的な能力と綿密な計画性で、脱走不可能とされる独房からすらも刑務所脱走を繰り返す男。脱走癖のある受刑者と、なんとか破獄を阻止しようとする刑務所職員、看守との攻防。その背景にある戦時中の特殊な状況、進駐軍の支配、食糧難などさまざまな状況変化。 彼がなぜ破獄を企てるのか、どのような方法で獄を破るのかという興味もあるが、不思議なことにいつしか脱走犯に感情移入し始めている。また、アプローチを変えた府中刑務所の鈴江の考えも非常に興味深い。 吉村氏の作風らしく、ただ事実を淡々と書き連ねていく文体でありながら、これはただの記録ではなくてしっかりと深みのあるストーリーになっている。
0投稿日: 2012.03.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
83年の作品。読売文学賞。固いあの吉村文体で固いテーマで僕の体は硬くなったのだ。360ページとそこそこの分量。
0投稿日: 2012.02.27
powered by ブクログ本書では、戦時中での刑務所についてよく述べられていた。著者の綿密な調査があったんだろうな。 印象に残ったことは、戦時中の刑務所内での囚人に対する待遇。食糧難で暴動が起こされないよう、主食の摂取量が一般国民の配給量の二倍であったこと。さらに網走刑務所では、栄養失調者が増える中、自給自足によりそれを回避したという。 改めて農業の重要性を実感した。食べ物さえあれば生きることが可能ということを、そんな当り前なことを、現代の私たちは忘れがちではないだろうか。 <あらすじ> 昭和11年、青森刑務所脱獄。昭和17年、秋田刑務所脱獄。昭和19年、網走刑務所脱獄。昭和22年、札幌刑務所脱獄。 4度の脱獄を実行した佐久間清太郎。戦中、戦後の時代背景に重ね、彼を閉じ込めた男たちの闘いを描破。読売文学賞受賞作。
0投稿日: 2011.12.30
powered by ブクログ大戦前後の刑務所が舞台。外国相手だけでなく、いろんな人が自分の職場で戦っていた。真冬の網走刑務所を脱走、というところだけとらえるとミステリーみたいだけど、人間が必死に生きていた時代を感じた。
0投稿日: 2011.12.23
powered by ブクログ第二次大戦を挟んで4度の脱獄を果たした主人公を軸に、戦中・戦後の刑務所史を見渡す記録小説。 無期刑囚・佐久間が最初に投獄されたのは準強盗致死の罪を犯したためだった。昭和11年、青森刑務所で服役中に脱獄。その後、特定不良囚と称され、厳しい監視を受けつつも、昭和17年に秋田刑務所から、昭和19年に網走刑務所から、昭和22年に札幌刑務所から逃れ、計4度の脱獄を果たした。 超人的な体力を持った彼と刑務所看守の息詰まる知恵比べも読ませどころだが、時代背景の描き込みもまた読ませる。開戦に向かう時代の空気、戦時中の混乱、戦後の窮乏が綿密にすくい取られ、その中で刑務所はどうやって機能してきたかが詳述されている。 囚人たちが軍用道路建設に奉仕したこと、また環境は厳しいが農場があったため、食料事情は比較的よく、窮乏下での囚人死亡者数も少なかったことなど、佐久間が多くを過ごした北海道の刑務所事情に稿が多く割かれている。 また、戦闘を予期して囚人を避難させようと奔走した所長が奔走した沖縄刑務所、空襲で焼失した全国各地の刑務所。戦後、看守不足により、囚人を補助員として雇ったがために集団脱走事件を起きた静岡刑務所。 進駐軍の圧力におびえる刑務所員の話も興味深い。 詳細な描写からこの時代にタイムスリップしたかのような錯覚を覚える。 佐久間自身を描くのではなく、看守や所長などの周囲の目から浮き彫りにしていく描き方もおもしろい。線描ではなく、背景を塗り込めて浮かび上がらせているようで、佐久間の得体の知れなさがより印象づけられている。 タイトルに「脱獄」でなく「破獄」を用いたのも、佐久間の不敵さを感じさせる。 最後には温厚篤実な刑務所長に出会い、刑期を軽減されて出獄を果たした佐久間だが、どこか、闇の気配を残した幕引きと感じさせる。 *緒形拳主演でドラマ化もされたらしい。いつか見る機会があれば見てみたい。
1投稿日: 2011.11.01
powered by ブクログ脱獄への執念と、綿密な計画性。 そして、実行するための状況判断の深さ。 さらに、刑務所生活をしながらも卓越した体力も持つ自己調整力のすごさ。 しかも、脱獄してからも見つからない、周到な行動。 脱獄を繰り返し、看守が厳戒体勢をとればとるほど、裏をかく知恵がますます冴える。 ある意味、天才の物語。
0投稿日: 2011.10.29
powered by ブクログ故人を偲んで 先日亡くなった作家を偲ぶ。 吉村作品に対するこれまでの私の感想は「あっ、そう」だった。淡々と進む筋を追うんだが、それは記録映画のノリでありそこに取りたてて感動はなかった。 初めて読んだのが「高熱隧道」。それ以外は「あっ、そう」状態だったのだ。 今回の「破獄」は違った。けっこう感動的なストーリーだ。記録と言うよりも小説だ。私にとってはこれまでで最高作かな。 360ページの作品で343ページから後が最高にいいと思う。17ページのためだけに残りの343ページが存在しているんだと思う。 4回の脱獄のやり方はどうでもよい。ミステリーではないのだからそこに興味はない。主人公と言える破獄犯佐久間の心模様が本作の最大のストーリーだろう。 佐久間が4回の脱獄を繰り返す間に日本は戦争に負け、刑務所の統治もアメリカ人となる。佐久間は府中刑務所に送られるが、そこの鈴江所長は佐久間を人情的対応で更生させようとする。 所長が出張しているとき、所から緊急連絡が入る。「佐久間の脱獄か?」というところが343ページとなる。私としては人情的というような甘い処置ではだめだと思うので脱獄したのだと思ったが、実は全く違う用事だった。 佐久間は「もう疲れた」といい脱獄はしないのだという。所長が偉いのは、佐久間の心変わりは、自分の人情的措置のせいではなく、たまたま佐久間が衰えてきた頃に当たったのだと考える。頭がいいというか謙虚というのか。私はその所長の言葉に感銘を受けた。 人は人が簡単に動かせるものではない。それぞれに意志がありそれぞれが個の動きをするんだと思う。個人的には、教育とか更生ってのは宗教的でどうも好きではないな。 さて、物語は刑務所から仮釈放かなにかで世間に出た佐久間が映画館で倒れるところで終わる。2人も人を殺した殺人犯が世間へでるのかという素朴な疑問が残るが、それはそれで戦時中のことだからなぁ。 とにかくいい小説だった
0投稿日: 2011.09.16
powered by ブクログ2〜3メートルの壁は軽々駆け上がり、丸太を引っこ抜いたり、力づくで手錠を壊したりする怪力の持ち主。まるでジャン・バルジャンではないか。手錠なんて朝飯前にちょいっとはずす。お前はルパン3世か?刑務所を脱獄すること4回。マイケル・スコフィールド(プリズン・ブレイク)のつもりか?事実は小説より奇なりとはまさにこのこと。恐るべし佐久間清太郎。信じられない話が淡々と綴られています。ただ、ただ、凄い。
0投稿日: 2011.09.11
powered by ブクログ昭和の中で4度の脱獄を実行した無期刑囚の話。 無期刑囚の目線からの小説かと思って読んだので 少し期待外れだったけれど、 戦時中の過酷な労働環境で使命に燃える職員の話も、 今まで考えたことのなかった状況・職業で、とても興味深かった。 戦時中、全国の刑務所で、定員の160パーセントを超える収容がなされ、 囚人の不満を煽ってはいけないから、と、いくら食糧不足でも囚人には一定の食料が配給されるにもかかわらず、 看守たちには満足な食事も与えられず、 特に北海道の刑務所では、防寒着の着用も許されていない、 だけど給料は低く、囚人が逃亡すると罰として減給される、 刑務所職員はほんとうに大変な職業だったんだな、と思う。 戦時史にあまり詳しくない私なので、読み進めるのに若干苦労したけれど、 一般人の死亡率と囚人の死亡率が比較されていたりしていて、 作者の取材力に脱帽しました。
0投稿日: 2011.09.02
powered by ブクログ脱獄を繰り返した男の小説と聞いていた。どうやったら?という興味をもって読み始めたが、この小説はそれだけに留まらず、戦中戦後に刑務所がどのような状態であったのかや、看守や囚人の関係、などとても興味深いことばかりで、読みごたえ十分、おなかの底にずっしり残るような話だった。佐久間清太郎その人間の不思議さ。人生の悲しさ。終盤、泣けてしまった。思っても見なかったこの小説の深さに、名作と言われる作品をやっぱり読んで良かったと思った。
1投稿日: 2011.07.12
powered by ブクログ4度の脱獄。もちろん犯罪も脱獄もいけないのは重々わかってはいるのだけれど、つい主人公に肩入れしたくなる。 なぜノンフィクションでなく、「小説」として書いたか。
0投稿日: 2011.06.25
powered by ブクログ昭和の脱獄王を題材にした小説。小説仕立てながらほぼ実話に即した内容で、ぐいぐい引き込まれます。看守との駆け引きは実にスリリングでした。
0投稿日: 2011.05.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
昭和11年から23年にかけて、犯罪史上未曾有の四度の脱獄を実行した無期刑囚、佐久間清太郎。 実際の人物をモデルに描かれた小説。 大胆な行動力と緻密な計画でもって脱獄する佐久間と、必死でそれを防ごうとする看守たちの攻防。 佐久間の超人的な手口に不謹慎ながらもわくわくするのですが、戦中戦後の刑務所の実態についても綿密な調査により詳細に描かれており、昭和の監獄史としてもとても読みごたえがあります。 著者の筆は常に冷静で、緊張感を際立たせています。 とにかく面白かった!
0投稿日: 2011.04.25
powered by ブクログ第二次世界大戦のどさくさに紛れて4つの刑務所から4回脱獄した佐久間清太郎。記録文学というジャンルになるらしく、三人称の語り口で淡々と緻密に書かれている。 空襲で町が破壊され、食糧不足で混沌としていく中で、一般人の2倍の食料を囚人に確保し、刑務所内の風紀を保つことに全精力を傾ける刑務官。その時代、刑務所は唯一秩序が保たれた空間だったのかもしれない。 国がなくなるかもしれないという時にあってなお、職務を全うしようとする日本人に、米軍は尊敬の念を抱いたという。
0投稿日: 2011.04.20
powered by ブクログ昭和11年から22年にかけて、計4度の脱獄を成功させた佐久間清太郎の人生を描くノンフィクション。 4度とも異なる脱獄方法もさることながら、看守を心理的に追い込むプロセスはヘタなミステリーよりも緊張感がある。こんな超人が戦時中にいたのか。 そして、この小説の最大の見せ場は彼の脱獄シーンではなく、なぜ彼が5度目の脱獄をしなかったのか。それに尽きる。
3投稿日: 2011.01.07
powered by ブクログ体と頭とを徹底的に使って脱獄を繰り返す佐久間と、彼を閉じこめるのに全力を尽くす刑務官たちの記録です。拘束され、常に監視の目に晒され、それでも逃亡しようとする佐久間の意図はどこにあったのか。きっと、目的があったのではないと思います。ただ自由でありたいという根源的な欲求。それが彼の場合強すぎたのでしょう。脱獄を繰り返す姿は、子供が何が何でもほしいものを手に入れようとしているようで、鬼気迫る手法はともかくとしてだんだん微笑ましく感じられてきます。出所した後も保護会ではなく、しがらみのない日雇い労働者としての道を選んだ佐久間。ここまで徹底されると、感服です。
0投稿日: 2010.10.12
powered by ブクログ金森先生の授業の中で出てきたネタ元らしいので、読んでみた。 すごいおもしろい。 あとがきにもあったけど、ただ佐久間の行動を追っただけじゃなくて、歴史的背景とか佐久間の心理を予測する登場人物の書き方がおもしろさを増してるんだろうな。 網走監獄行ってみたい!この著者の本読んでみたい!
0投稿日: 2010.10.03
powered by ブクログ昭和の脱獄王・白鳥由栄をモデルにした限りなくノンフィクションに近いフィクション。 硬質で淡々とした文章がとても好みだ。
0投稿日: 2010.08.29
powered by ブクログ脱獄を繰り返した男の話しを通じて、終戦前後の刑務所の歴史についても詳細に記述された歴史小説的な作品。読後、静かな感動があった。北風と太陽なんだね。
0投稿日: 2010.05.03
powered by ブクログ四度の脱獄を成功させた無期懲役囚をモデルに描かれた異色の作品。主人公となる脱獄囚、佐久間清太郎からの視点を一切織り込むことなしに、彼の生き様や人間性といったものを浮き彫りにしていった作者の表現力は、もはや見事というほかない。 なぜ彼は脱獄を繰り返すのか。 なぜ彼は自首したのか。 そして、 なぜ彼は脱獄をしなかったのか! 警察官や刑務所の所員たちと彼との心理的な駆け引きの妙も、この作品を際立たせている一つの理由。
0投稿日: 2010.04.18
powered by ブクログ破獄の方法に(例えば暴動を起こして混乱に乗じて脱走すると入ったような)乱暴なものが一つもないのがすごい。 こんな”男”が実在したなんて……!
0投稿日: 2010.02.27
powered by ブクログ脱獄の様子と、追う立場の心理描写がすばらしい。息詰まる展開とあわせて、当時の時代背景もわかって面白かった。
0投稿日: 2009.11.30
powered by ブクログ戦時中(第二次世界大戦)、 ある人々は出征し、残された人々は食うや食わずだった。 そんな時代でも刑務所が運営されていた。 国は刑囚を食べさせていた。 国は犯罪者を出征させなかった。 犯罪者だから危険から免れていたと言える。 だから、一般市民が大損をしているように思えてならない。 刑務所から何度も脱獄を繰り返した男と そうさせまいと画策する看守の様子が 戦時の中で、なんだかばかばかしく思えて仕方がなかった。
0投稿日: 2009.09.13
powered by ブクログ不落と言われた網走刑務所からの脱獄を含め、通算4回脱獄を繰り返した男のノンフィクション。 諸事情から全員仮名。おもしろかった〜。 ストーリーの進行と共に、刑務所・囚人の視点から見た第二次世界対戦が語られてて、それが物語に厚みを加えてる。
0投稿日: 2009.04.27
powered by ブクログ冬に網走を旅行し、博物館 網走監獄に立ち寄った際に紹介されていて興味を持った一冊。実在した昭和の脱獄王、白鳥由栄に取材した小説で、主人公 佐久間の網走監獄を含む 4回の脱獄を戦中、戦後の混乱する世相を背景に描き出す。 佐久間の脱獄はいずれも知能、体力と心理術を駆使した超人的なもので、「脱獄」という言葉が与えるワクワクとした印象を決っして裏切らない。また、刑務所という特殊な環境から眺めた戦中の貧困、終戦直後の混乱、米国による過酷な占領支配も、その特殊な視点ゆえに正史とはまた違った趣きを見せる。
0投稿日: 2009.02.15
powered by ブクログ硬い文章で、読むのが少し疲れたけど大変興味深い内容でした。家に転がしてたら、父が1日で読了してました。びっくり。
0投稿日: 2008.11.17
powered by ブクログ淡々とした筆致で脱獄常習者と刑務側、そして戦前・戦時・戦後の日本を描く。なにより実際の事件と歴史を基にしているのだから、好奇心もそそられる内容が多く盛り込まれている。脱獄の手口、看守の仕事、当時の刑務所運営、経済事情、戦後占領国側と日本側の摩擦・・・そのすべてがドキュメンタリードラマのように語られていく。大きく言えば刑務所と太平洋戦争、二つが絡み合って生まれたわけだが、いろいろな読み方と発見ができる佳作。
0投稿日: 2008.09.24
powered by ブクログ友人が1年ほど前に好きだと言っていたので。超越した体力・知力というものが実際にどのようなものなのか興味を引かれる。人を動かす力とは何なのか。適切な判断とは。等々考える。080601
0投稿日: 2008.06.02
powered by ブクログ【犯罪史上未曽有の4度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎。その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口を、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡】 脱獄の方法として、心理をつくといった点に感心。すごいなぁ。おもしろい! 犯罪者モノを見ていて思うのだけれど、その能力を活かして一旗あげようとは思わないのか...と。
0投稿日: 2008.05.01
powered by ブクログ超人的な才能と体力をもち、4度もの脱獄をはたした囚人の物語。実話とまではいかないが、モデルがいるらしい。犯罪者の心情まで推理してえがかれていてとてもリアル。
0投稿日: 2007.01.28
powered by ブクログ犯罪史上未曾有の四回脱獄をした佐久間清太郎。脱獄させまいとする看守と佐久間の心理戦や驚くべき脱獄の手口。刑務所を通して戦争を見ること。この二つの大筋がからみ合って最後まで目が離せませんでした。
0投稿日: 2006.11.02
powered by ブクログ昭和11年から22年の間に、青森、秋田、網走、札幌という四箇所の刑務所を脱獄した無期刑囚がいた。素直にものすごい人だと思うし、それほどの能力を脱獄以外に生かせたらよかったのに・・・と可哀想にも思う。綿密な取材に脱帽すると同時に、看守と囚人の心理的な戦いが素晴らしい。 昭和19年7月29日未明のキスカ島放棄記述もあり、第五艦隊第一水雷戦隊によって脱出した守備隊5600名の一人だった祖父を思った。
0投稿日: 2006.10.10
powered by ブクログ知恵と執念で4回も脱獄を繰り返した男の話。心ある人間に触れ、だんだん穏やかになっていく過程が、北海道開拓や太平洋戦争といった歴史のなかで描かれている。息もつかせないとはまさにこのこと。
0投稿日: 2005.08.11
powered by ブクログ実在した白鳥吉栄とゆう男の物語。人智を超えた力と類い稀なる知恵で生涯4度の脱獄を果たした彼と彼を取り巻く人、環境、時代を鮮明に描いた作品。
0投稿日: 2004.09.27
