ハーモニー

伊藤計劃 / 早川書房
(666件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
286
211
81
11
4
  • とある窮屈な世界で

    真っ白な表紙からは、どんな内容か想像できないと思いますが……
    本作は未来の地球を舞台にした物語です。医療技術のめくるめく発達により、そこではほとんどの人類が健康なまま寿命を迎えます。風邪をひくこともなければ、肥満も痩せもありません。そんな世界に違和感を覚える主人公(女)は、大人になってもシステムを騙して煙草を吸ったりしています。誰よりも世界に反感を抱いていた友人、ミァハのことを思い出しながら……。
    これは単なるSFにとどまらない、深い物語です。ときには残酷な描写も出てきますが、それが理由で読まないのはもったいないと思います。独特な人物名やHTMLタグのような文字列を多用した文章形式も、この物語独特の雰囲気を生み出すのに一役買っています(文字列の意味は最後まで読めば分かります)。
    「面白い」の一言では片付けたくない、いろいろな意味で「衝撃的」な作品でした。
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    投稿日:2013.12.05

  • ディストピア小説としての現時点での一つの回答

    テクノロジーが進化して、個々人のあらゆる病気が駆逐された未来を舞台にしたディストピア(見方によってはユートピアなのかも)小説。現実世界でのサラリーマンの企業による健康管理を極端・徹底的にして全人類に適用したような世界が舞台。主人公たちは、そんな体制に陰で反抗する女性(少女)たち。そこで起きた、ある意味必然性をもった大事件とは。
    文体としてはやや取っつきにくい感じもあるが、読み進むうちに気にならなくなる、非常に強烈な魅力を持った作品。エンタテイメントでありながら、(著者の境遇も併せて)考えさせられる問題作。
    このSF小説はすごい。P・K・ディック賞特別賞も当然か。どうしたらこんな小説を考えつくのか。伊藤計劃氏の底の知れなさは慄然としてしまう。早世したのは本当に惜しかったと思えるが、死期が近いことを悟っていたからこその作品かもしれません。
    SFファンなら必読、そうでない人にもお勧め。「虐殺器官」を読めた人なら、抵抗なく読めると思います。

    そういえば、「虐殺器官」共々アニメ化されるとか。実写での映画化はちょっと難しいのではないかと思っていたので、アニメ化は当然と思われますが、気をつけて演出しないと、総スカンを食いますね、これは。
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    投稿日:2014.05.11

  • 意思とは何だろう

    すべての人々が管理され,「健康的に生きること」が最優先されるようになった世界。
    最善の生き方,最善の生活を外部から指示されながら生きていく,人々がそのような道を選び,調和していくとどうなっていくのだろうか。
    人とは,意思とは何だろうか。
    このようなすばらしいSFを書かれた伊藤 計劃さんだが,若くして亡くなられてしまったというのは非常に残念。
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    投稿日:2014.04.23

  • 絶望的なユートピアと無謀な試みに、彼の魂は救われたのか

    わたしという一人称で語られる、人類という種が到達し得る一つの絶望的なユートピアの姿を描いた類稀なるSF小説です。ゼロ年代ベストとの評価は妥当だと思います。

    詳細はネタバレになるので避けますが、時代とテクノロジーの流れとしては『虐殺器官』から繋がっていてより未来の話になっているものの、人間の社会とテクノロジーある種のロジカルな発展をしていった末の姿としての違和感はなく、それゆえに恐ろしくもあります。一人称が女性になったせいか、物語の雰囲気としては前作よりも物静かに感じますが、取り扱っているてテーマはより人間という動物の進化に対する深い仮説から成り立っています。

    色んな作品へのオマージュに作者の遊びゴコロを感じつつも、作者が実生活で死を見据えた病と格闘する中で記したこの小説が、構成員がみな健康的に生きられる社会と自分の意識の死というものを救い得る物語をそれらに対して否定的な『わたし』の視点から書いているところに、作者自身の死に対する距離感をもった諦観や解放などの感情と、意識を失うことへの憧れと恐怖、を感じてしまいます。

    さらに言うなれば、『わたし』の消失を『わたし』が記録することは、体験できる死が常に誰かの死でしかないように原理的には不可能なので、この『わたし』による記録という形式でこの小説を書いたことは、自分の死を描こうとしているような無謀なトライアルに筆者がのぞんでいるように思えてなりません。ひょっとしたら、その無謀な試みにこそ読者は感動させられるのかもしれません。

    この絶望的なユートピアと消失する『わたし』を描くことで、少しでも彼の魂が救われたことを切に願ってやみません。
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    投稿日:2014.01.20

  • ハーモニープログラムの必然性

    大災禍の後、高度医療社会が到来しハーモニープログラムにより人間は自意識を失い、究極の平穏を手にしました。核兵器が「使える」兵器だと世界が認知した状況ではこのような結末は現実的だと言えると思います。結果的に虐殺器官をどう抑制するかという課題は解決されました。それは健康状況が管理された肉体的には死が無い医療社会。そして、選択、決断の必要のない社会。それは管理された潜在意識に支配される自意識の存在しない幸福な社会。
    ハーモニープログラムはやはり必然である。自意識があるからには、死ぬことが許されない社会にあっては集団自殺は不可避である。肉体が健康であっても精神は崩壊する。まさに高度医療社会とハーモニープログラムはユートピアの臨界点である。
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    投稿日:2014.02.09

  • ハレルヤハレルヤ

    著者最後の長編作品。『虐殺器官』同様緻密に練られた設定で、読みすすめる中で情景描写に違和感が全くない。中盤から最後は一気に読まされました。次回作が読めないのがとても、とても残念。ハレルヤ ハレルヤ

    投稿日:2013.09.26

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ブクログレビュー

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  • 哀鬼

    哀鬼

    このレビューはネタバレを含みます

    読み上げた所で、ふと、私は日本現代文化に強く影響されたなと感慨みたいな事を思った。私の思案が『調和計画』に似ている。結果と過程は違うが、目標が略一致だ。御冷ミァハは自然な意識を除去して、人類を統一して、人類が自明に行動する生命主義の社会を創建しようと革命した。私は意識を連結して、人類を統一して、意識が一体化した社会の創設を目論でる。そもそも私の思案の源頭の一つは富野由悠季が思考した新人類が理解し合い得るという着想だ。
    批評しなければならない一点は物語を語るが未だ拙い。

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    投稿日:2019.09.09

  • あんみつ

    あんみつ

    このレビューはネタバレを含みます

    人間が社会化されて、何もかもがオープンになっていて。誰もが人に優しく。病気もなく。葛藤もなく。
    それが、虐殺器官後の世界。
    ミァハは「優しい世界」を変えようとするのだけれど、失ったものを取り戻す、のではなく逆の方向へ向かう。
    種が存続するためには「個」も「意識」も必要ない、と。
    気持ち悪いけど分かるような気もしてくる。

    意識のない状態で営まれる世界。
    それは存続することに意味があるのか?
    何とも言えない…

    著者は「この先の言葉をみつけられなかった」と言っている。みつけてほしかったなあ


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    投稿日:2019.08.24

  • Aufgussmeister_T

    Aufgussmeister_T

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    投稿日:2019.05.18

  • ひゃく

    ひゃく

    このレビューはネタバレを含みます

    ユートピアな多分ディストピアの物語

    読書中からhtmlのような記述で装飾された文書は、おそらくは感情のない者向けへの記録文書なのだろうと予感させるものであり、その予感はおおむね合っていた。

    しかし、これが「人類の意識最後の日」とのエピローグには心底ぞっとさせられた。だって、この世界にはWatchMeをインストールされていない人類がまだ社会を形成できる程度には残されていたはず。WatchMeをインストールされていなければ意識が停止されることはないはず。

    つまり、この文書が管理されている世界ではこの日に意識が停止されてハーモニーを形成している人類のみが人類と定義されており、なお意識を持っている存在は「旧人類」として人類の枠からはずしてしまっているのだ。

    彼の世界において、ハーモニーと旧人類は共存できているのだろうか。かつてミァハが生きていた意識を持たない社会は、意識を持つ人々の社会と共存していた。だがおそらく、それは圧倒的な少数派であることと意識を持つ人々の意識を停止する手段がなかったことからの合理的な唯一の帰結(選択ではない)だったからではないだろか。

    もはや圧倒的多数であり、意識の停止を伝播させられる「人類」が旧人類にどう接するのか。あまり楽しくない光景が想像される。
    そんなところもユートピアなディストピア小説として実に素晴らしい。

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    投稿日:2019.05.02

  • tomoyuru

    tomoyuru

    虐殺器官を読んでしまったあとでは色あせて感じるが、面白い。ケアされすぎることに嫌気を感じる感性はよくわかる。そこから発展して頭脳に自殺テロを仕掛けるところまで行くのはぶっ飛んでいるけれども。メディケア用の人体に入れた電子機器をつかってひとの思考を操り自殺にしむけることもできるというのは将来的に本当にあり得そうで、空恐ろしい。続きを読む

    投稿日:2019.02.25

  • tcltk

    tcltk

    ・「生府」による健康管理システム
    ・生活の大部分を外注化。
    ・脳血液関門(Blood-brain barrier):血液と脳(そして脊髄を含む中枢神経系)の組織液との間の物質交換を制限する機構である。

    投稿日:2019.01.03

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