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KKさんのレビュー
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  • 渚にて 人類最後の日

    渚にて 人類最後の日

    ネヴィル・シュート,佐藤龍雄

    創元SF文庫

    淡々として進んでいく終末世界

    この小説が書かれた1957年当時は冷戦まっただ中で,核による世界戦争の危険も今よりもずっと高かったのだろう。ただ,ここで描かれているのは,その激動の世界ではなく,それが過ぎ去ってしまった後の静けさ。この渚では,世界の日没を眺めているのだろうか。

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    投稿日: 2017.10.07
  • 舟を編む

    舟を編む

    三浦しをん

    光文社文庫

    辞書とはいったいどれだけの時間を費やして作られるものだろう

    最近はあまり辞書を使うこともなくなってしまったのだけど,これを読むと,また手元に1冊置いておきたくなってくる。

    0
    投稿日: 2017.10.01
  • 歩兵の本領

    歩兵の本領

    浅田次郎

    講談社文庫

    自衛隊員の心の内

    実は,これを読むまで浅田次郎さんがもと自衛隊員だということを知らなかった。自伝というわけじゃないだろうけど,自分自身が経験したことをもとにしているんだろう。妙なリアリティを感じる。 自衛隊,軍隊のようであって軍隊でない,非常に不思議な組織。外から見ていても,中の人たちがどのように感じているのか,いまいちわからない。でも,これを読むと,やっぱり民間の企業などとは明らかに違う独自の世界がありそうだ。

    0
    投稿日: 2017.10.01
  • 僕が愛したすべての君へ

    僕が愛したすべての君へ

    乙野四方字

    ハヤカワ文庫JA

    すべての君を愛すること

    対になる「君を愛したひとりの僕へ」とリンクしているパラレルワールドもの。 パラレルワールドというと,ドラえもんの「もしもボックス」が思い浮かぶが,人生というのはこれまで多くの分岐点があって,それぞれで判断した結果が今なのだろう。そして,その時々で別の判断をした「今」というのもあるのだろうか。 なお,必ずこの本と「君を愛した…」とはセットで読まないと,価値が半減以下になってしまう。

    0
    投稿日: 2017.07.23
  • 君を愛したひとりの僕へ

    君を愛したひとりの僕へ

    乙野四方字

    ハヤカワ文庫JA

    パラレルワールド

    テーマとしては割と定番のパラレルワールドもの。ただ,この本は,もう1冊の「僕が愛したすべての君へ」と対になっていて,お互いにリンクし合ったパラレルストーリーにもなっている。片方だけ読んではいけない。読むなら必ず両方を! ただ,個人的にはこの「君を愛した…」を先に読んだ方がいいのではないかと思う。

    1
    投稿日: 2017.07.23
  • オービタル・クラウド 上

    オービタル・クラウド 上

    藤井 太洋

    ハヤカワ文庫JA

    スペーステロ

    衛星軌道を舞台にしたスペーステロ。結構面白い。 宇宙空間でのテザー利用については,最近もこうのとりがテザーを使ってデブリ除去をしようとした(けど失敗した)なんてニュースがあったりして,タイムリー。 ただ,その本質じゃないところでいくつか突っ込みどころが。。。コンピュータ周りの記述はちょっと微妙。(何がとは書かないけど) まあ,そんなところはあっても,テクニカルなSFとして楽しめると思う。

    1
    投稿日: 2017.03.16
  • 時砂の王

    時砂の王

    小川一水

    ハヤカワ文庫JA

    歴史に「もしも」があったら

    子どもの頃,今,自分が実際にとったのとは違う選択肢を選んだら,別の未来につながっているのだろうかと考えたことがある。自分個人の選択なんて,大したバリエーションはないのだけど,人類の存亡に関わるような大きな選択肢だったらどうだろう。 最初に読み始めたとき,古代日本が舞台だったので,荻原規子さんの歴史ファンタジーのような印象を受けた。読み進めると,タイムトラベルもののSFで,過去の改変によるタイムパラドックスが非常に効果的に使われている。 なお,「フリーランチの時代」に収録されている「アルワラの潮の音」がこの話のスピンオフなので,もし両方とも未読であれば,先に「時砂の王」から読むことがお薦め。(私は先にフリーランチの時代を読んでしまったのだけど)

    4
    投稿日: 2017.02.28
  • ロードス島攻防記(新潮文庫)

    ロードス島攻防記(新潮文庫)

    塩野七生

    新潮文庫

    騎士の時代の最後

    キリスト教世界とイスラム教世界の最前線だったロードス島をめぐる聖ヨハネ騎士団とトルコのスレイマン一世の争いが描かれている。塩野さんのストーリーらしく,人を深く描いていて,非常に臨場感がある小説になっている。 前作の「コンスタンティノープルの陥落」に続き,このロードス島をめぐる戦いでも,大砲が活躍し,城の扱いも変わってきた。西洋の騎士が活躍する最後の時代だったのだろう。

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    投稿日: 2017.02.25
  • まつもとゆきひろ 言語のしくみ

    まつもとゆきひろ 言語のしくみ

    まつもとゆきひろ

    日経BP

    プログラミング言語設計者の思考

    Rubyのパパ,まつもとゆきひろさんが新しいプログラム言語を設計していく過程が書籍化されている。 プログラミング言語を設計するといっても,いったい何から始めればいいの?というのが普通の感覚だと思うけど,これを読めば言語設計者の感覚が少しはわかるかも。 自分もプログラムを書くが,あくまでも既存のプログラム言語を使って書いているだけ。もちろん,自分で言語を作ってみたいと思わないわけじゃないが,まあ,ちょっとそこまでの勇気はない。というか,Rubyをはじめとして,世の中には素晴らしい言語がたくさんあるし。

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    投稿日: 2017.02.25
  • スマホに満足してますか?~ユーザインタフェースの心理学~

    スマホに満足してますか?~ユーザインタフェースの心理学~

    増井俊之

    光文社新書

    ユーザインタフェースについて考えてみよう

    著者の増井さんは,UNIX Magazine誌の連載記事「インターフェイスの街角」の頃から,ユニークな発想ができる方だなと思っていた。その後も,Software Design誌でも「コロンブス日和」という連載を読んでいる。 どのようにすれば,より使いやすく,誰でも使えるものができるのか。それは,コンピュータソフトウェアだけではなく,家電製品のリモコンでも,本のデザインでも一緒なのだろう。自分など,改善点を見つけるよりも,人間が機械に合わせてしまうタイプなので,なかなか改善点を見つけることができない。 ただ,この本を読むことで,どういうところに目をつけるとよりよいUIを考えることができるのか,ヒントを得ることができるだろう。

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    投稿日: 2017.02.08