【感想】まほろ駅前多田便利軒

三浦しをん / 文春文庫
(1362件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
285
559
357
50
4
  • 傷を抱えた男、二人の物語。ルルは癒しキャラ。

    東京都の郊外、まほろ市の駅前にある便利屋「多田便利軒」 経営者である多田啓介と、成り行きで転がり込んできた行天春彦、二人を中心としたストーリー。主人公の二人にも過去があり影があり、依頼をしてくる人々にも過去があり、どうしようもない事、それでも葛藤を抱えつつ生きている。様々な人間模様が面白く、するすると引き込まれ、あっという間に最後の頁。行天の行動により、きな臭い依頼にも関わるようになった二人…今後はどうなっていくのか。ルルは癒しキャラ。次作も楽しみです。 続きを読む

    投稿日:2014.07.14

  • 人の孤独が語られているのです

    として読みました。
    私の中では、故杉浦日向子と並ぶ名文家だと思ってまして、作品コンプリート中です。本当にしなやかだけど、芯のある良い文章を書かれる方ですよね。
    確かに面白い作品だし、オフビート系の娯楽映画にもなりましたので、このシリーズは全部、そういう意味でも面白いです。

    が、勝手な深読みかもしれませんが、本作に登場する人物は全て孤独ですよね・・・、作者が言いたいこと、表現したいとこは男の友情物語とか孤独からの解放ではなくって、もうちょっと深い何かだと思います。うーん・・・それが何であるかは読む人によるのかな・・・。

    作中から一例をあげて考えてみたいと思います。
    例えば、チワワの預かりを依頼しに来た女性が書類に、ご主人の氏名を記入するのを見て多田は、そういう女が
    キライだと作者は書きます。何故、キライなんでしょうね?ごく普通で、主婦なら誰しも自然にするだろうことを・・・。
     (1) 自分を裏切った前妻が、いつもそうしていたので、前妻を思い出してしまうから
     (2) 幸せな家庭の空気を感じて、現在の自分と比べてしまいたくないから
     (3) 自分自身の意思なのに、それを誰かの意思であるかのように見せたいという心理が感じられるから
     (4) 便利屋ごときの契約に、何も世帯主名の契約でなくても良いじゃないかと思ったから
    どれでしょうね・・・。これ以外にもあるかも・・・。

    私の読み方は、(3)と(4)の中間ですかね。主婦であっても、ひとりの女性として人間として、平然と便利屋風情の
    書類に自分の氏名を書く、そんな王子様に運命を委ねない生き方、つまり個として確立した人間の存在する様子
    を作者は孤独と称している、のではないかと・・・。あくまでも、私の読み方ですがね(過激なことを書いてしまった、
    怒られたらどうしよう・・・)。

    あ、レビューのタイトルは作者の別作品に出てくるセリフでもあるんです。

    追伸;
    この作者は孤独に、寂寥感はあっても悲惨という色彩を与えないのは特筆すべきだと思います。「政と源」では政の妻は帰ってはこないけど、不思議に悲しくも惨めでもない。
    「職業」と「個としての人間」が、この作者の大きなテーマですよね。
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    投稿日:2014.11.20

  • 迷コンビの魅力全開です

    東京の南部、まほろ市(どう見ても町田ですけどー)を舞台に
    ちょっと怪しい便利屋二人組が大活躍!?

    共に結婚に失敗、地道に仕事をこなす多田と掴みどころのない行天
    二人にかかればどんな依頼も不思議ときな臭い方向に…

    主役の二人をはじめ脇を固める人たちと
    こう言うクセの有る人物を三浦さんに描かせたら抜群で
    実際には友達にしたくないタイプの人も
    何故か魅力的に輝きだすから不思議です

    一見するとただのドタバタ劇のようですが
    どの依頼にも家族であったり過去と再生と言った主題を
    キチンと盛り込んであるのもさすがです
    続きを読む

    投稿日:2014.07.11

  • なんだかちょっと暗かった。

    ほっこりするお話かな?と思って手に取ったらハード、ワイルドなお話でした。
    途中で止まらずに読んだので、苦痛ではなかったです。
    便利屋さんを営む二人組の男性のお話です。
    1人にどんなに慣れている人でも、1人は寂しい、ということ、
    幸福は自分で作るもの、いつでも作り直せること、
    を、暴力だったり風俗だったりが出てくるお話の中に描かれています。
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    投稿日:2014.08.15

  • 入り込みやすい小説。

    なんというか楽に入り込める小説だった。気付いたら自分も同じ空間にいて、あたかも登場人物たちのやり取りを実際に目にしているような錯覚があった。

    話としては飄々と進んでいく。熱くなる場面もなければ意表を突かれる場面もない。だけど何か先へ先へと促されて、どんどん読んでしまう。

    やはり楽に入り込めるからだろう、この著者の「風が強く吹いている」はもっと好きで五つ星と評価したのでこの本は星四つとしておく。
    続きを読む

    投稿日:2016.02.25

  • まほろ駅前多田便利軒

    ちょっと仕事の合間に読める気分転換におすすめです。
    人にもよるかな?私はでしたけど。

    投稿日:2016.07.18

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ブクログレビュー

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  • Macomi55

    Macomi55

    「あんたはきっと来年忙しくなる」
    「旅をしたり、泣いたり笑ったりさ」
    「とてもとても遠い場所。自分の心の中ぐらい遠い」
    まほろ駅前の便利屋の多田が依頼を受けて「息子」として見舞いに行った曽根田のおばあちゃんの予言だ。
    新年早々、多田は子犬を預りながら、市バスが間引き運転をしていないか監視をするという仕事をしていた。ふと気付くと子犬がいない。と、バス停のベンチに座っている男の膝に子犬は抱かれていた。
    「お前、多田だろ」
    その男は高校時代の同級生、行天だった。小指の傷で分かった。高校の工芸の時間、裁断機を使っていたとき、同級生がふざけていて、小指がスパッと飛んだ時の傷跡である。行天はその時すぐに拾ってくっつけたので、くっついてはいるが、いつまでも生々しい傷跡を残していた。
    行天は小指が飛んだ時に「痛い」と言った以外は、高校時代、全く言葉を発しなかった。
     だから、行天は高校時代、多田だけでなく、誰とも友達ではなかったのだが、何十年ぶりかであったその夜、自分から話しかけてきたのだ。
    「あんた、今何の仕事してんの?なあなあ」とちゃらけた感じで。
    真冬なのに、素足にサンダル。「今晩、多田の事務所に泊めてくれ」と言う。
    二人ともずっとまほろ市にいたのに、高校卒業後会わなかった。行天は多田の予想に反して結婚歴があり、子供も一人いるということだった。多田は順調に幸せな人生を歩んでいるという行天の予想に反して、離婚して子供はいなかった。そして、大学を卒業して順調に就職したにもかかわらず、今は便利屋をしていた。行天は今は家族はおらず、帰るところも無いようだった。
    そのまま行天は多田の事務所に居候を続け、たいして役に立たない従業員として働いた。
    まほろ市は東京の町田市がモデルになっているそうである。
    東京か神奈川かどっちつかずの町。夜はヤンキーであるれる町。東京都南西部最大の住宅街、歓楽街、電気街、書店街、学生街。スーパーもデパートも商店街も映画館もなんでも揃い、福祉と介護制度が充実している。まほろ市民として生まれた者は、なかなかまほろ市から出て行かず、一度出て行ってもまた帰ってくる割合が高いそうだ。
    そんな、まほろ市の「便利屋」多田のところには、さまざまな依頼がくる。大抵は自分でやれないことはないのに人にやってもらいたい依頼。
    依頼者の代わりに動物を預かったり、探し物をしたり、家族の送迎をしたり、物置の片付けをしたり、人を匿ったり…。
    「便利屋」の仕事を通して、様々な人間模様が見えてくる。一見「教育ママ」でありながら子供に無関心な親。その結果、知らぬ間に闇バイトに巻き込まれている子供。DV、風俗、暴力…。
    多田も行天も心に深い傷を負っている。そのため淡々としているが、実は傷ついた分、誰かを愛そうと無意識のうちにしているのが分かる。だから二人の行動は滑稽だが暖かい。

    「旅に出るよ」と予言があった割には、「まほろ市」の中から出ず、まほろ市の中を深く、そして人の人生の過去を深く旅する小説だった。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.08

  • たじたじ

    たじたじ

    非常にわかりやすく小気味のいい文章でとても読みやすかった。話もおもしろい。登場人物は少なくはないけれども、性格や価値観などをもとにしっかりと書き分けられてるから、「あれこれ誰だっけ」とならなかった。

    行天の暗い過去に触れつつも、多田の救済がメインとなった1作という感じかな。本当にそんな経験をしたんだろうかと思えるくらい、心理描写が丁寧で、読みながらも想像が掻き立てられて、終盤の多田の告白と行天の台詞にはグッとくるものがあった。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.04

  • みぃしゃ(みっち)

    みぃしゃ(みっち)

    激しい展開や心揺さぶられるようなことは無いけれども、連続ドラマを見ているように目が離せない感じ。
    ふたりが頭の中で不器用に動く姿が浮かんできて微笑ましくもあった。

    つづき、よみたいかも。

    投稿日:2024.03.30

  • 2063476番目の読書家

    2063476番目の読書家

    上質なバディ、ブロマンスものでとても良かった。小説というか、漫画を読んでいる気分になる。お互いに過去に後ろ暗いものがあり、便利屋として街の人と関わっていく様も温かかった。ひょんなことから事件を呼び、巻き込まれていくのも楽しい。個人的にはふたりしてぷかぷか煙草を吸いまくってるのが、不健康そうで不健全な大人のそれらしくて良かったな〜。行天に振り回されながらも、この1年楽しかったのだ。という回想する多田が良かった。続きを読む

    投稿日:2024.03.30

  • ヒラミ

    ヒラミ

    この街の中に自分がすんなり入れない。自分とは交わらない遠い向こう側の出来事という感覚がぬけきれず、感情移入できる人物が出てこなかった。

    投稿日:2024.03.28

  • 前太ハハ

    前太ハハ

    まほろ町で便利屋を営む主人公のところに、彼の高校の同級生がひょんなことから事務所に転がり込み、ふたりで依頼を解決しながら親睦を深めていく友情物語です。

    直木賞受賞作品であり、映画化もされたのになぜか読んでいなかったのですが、久々に会う友人が好きだったことを思い出し、会う前に読んで当日盛り上がろう、と思い手に取りました。

    が、驚くほど面白くなくて唖然。
    笑いあり涙ありの作品ではありますが、なんか薄っぺらいんですよね、人物像も出来事もトラウマも。
    ギャグマンガならいいんですけど、拳銃で車を撃たれてものんびりした感じとか、私は受け入れられなかったです。。
    人の好みは人それぞれ、とまたつくづく感じました。
    (友人とは、当日この本の話は触れずに終わりました)
    続きを読む

    投稿日:2024.03.26

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