
宇宙兄弟(2)
小山宙哉
モーニング
宇宙と兄弟
ムッタとヒビトという男兄弟の絶妙な距離感、堪能できる一冊でした。 ほんのちょっぴり未来が舞台の本作だけれど、宇宙には無限の可能性がある。希望もあればまた危険も伴う。弟の覚悟、仲間の覚悟、家族の覚悟、そしてムッタは・・・。色々と考えさせられる第二巻。 今更ながらタイトル「宇宙兄弟」にはまさにこの作品の宇宙と兄弟という二大テーマがずばり入っているんだなと感じた。
1投稿日: 2013.11.16宇宙兄弟(1)
小山宙哉
モーニング
荒唐無稽?そんなの読んだ瞬間に吹っ飛ぶ
正直、初めて「宇宙兄弟」の内容を知ったとき「兄弟で宇宙飛行士とか・・・」と設定の荒唐無稽さに飽きれていました。 ところが、読み始めた瞬間にそんな考えは吹っ飛んでしまうほどこの作品の持つ魅力に引き込まれてしまいました。もう一巻目から「この漫画は絶対に面白い」と確信してしまうのです、なぜでしょう。 六太や日々人をはじめ魅力的な人物とクスリと笑えるギャグ、宇宙飛行という壮大な目標に向かって頑張る姿や兄弟愛など、楽しめる要素がたくさん盛り込まれていると思います。この作家さんの描くコミカルな部分とシリアスな部分の塩梅やセンスが大好きです。
2投稿日: 2013.11.16進撃の巨人(1)
諫山創
別冊少年マガジン
表紙のイメージと違うストーリー展開
そこら中で評判だったのでずっと気になっていたけれど絵柄のイメージから敬遠していました。間違いでした。 単なる巨人VS人間のバトルものではありません。当然と言えば当然ですが作者の頭の中にはあるひとつの世界観、ストーリーが出来上がっていて、その「見せ方」が非常にうまいと感じます。一つの謎が解ける、すると過去のあの子のあの発言、行動はそういう意味だったのか!という発見があり、読み返すと非常に面白いです。 さらっと大事なことを言ってたりするんですよね。特に8巻くらいから怒涛の展開が待っています。 先をあれこれ予測したり謎解きが好きな方にはとてもオススメです。
5投稿日: 2013.10.14警視庁捜査一課特殊班
毛利文彦
角川文庫
ここまで明かしちゃっていいの?
誘拐、立てこもり、企業恐喝、ハイ・ジャックなどを専門とする特殊班(SIT)の任務を実際に起こった事件例を挙げながら分かりやすくかつ興味深く論じられているノンフィクション。 人質をとって金を奪おうと計画している人がこれを読んだら間違いなく気勢をそがれるだろうと言うくらい、よく訓練された特殊班の技能が紹介されている。それでも、今まさに動いている現場でどんな予想外の事態に陥るか分からないし、生身の人間だから失敗もある。そういう瞬間の判断や人がとる行動の不思議まで考えさせられ、なかなかの秀作。読んでよかった。 同著者の「警視庁捜査一課殺人班」という本もある。
1投稿日: 2013.10.11パレード
吉田修一
幻冬舎
パレードは続くのか?
第一印象とこれほどかけ離れた結末を迎える小説もちょっと他にはない。 第一章は固有名詞で華やかに飾られた軽妙な文章が並ぶ。そうかこれはちょっとユーモアのある若者たちの青春譚なのかとの印象を持つ。それが、読み進めていくにつれ「あれ?」「あれ?」となり・・・ついにはとんでもない方向へ! ルーム・シェアをする5人の男女。家族ほど近くはないが友達ほど遠くはない。ゆるく結びついた彼らの日常。よく知っていると思ったいた人物が急に他人のように感じたことはありませんか?日常の中の虚像を見たい方に。
5投稿日: 2013.10.05海の稜線
黒川博行
創元推理文庫
大阪vs東京の刑事小説
黒川さんは疫病神シリーズで好きになりましたが、初期の作品も本当に質が高くて、古いのに今読んでもすごく面白いですね。 大阪弁での軽妙なやり取りが醍醐味。どの作品もそうなのにそれぞれに別の面白みがあってすごい。本作は大阪府警の刑事たちと東京から研修に来ているキャリアのぼんぼん新米警部補との口合戦。いいです! ミステリの部分も海運業界を舞台としていますが本格的で「へ~、知らなかった」な発見が多いです。黒川さんの小説を読んでいるとそういう知識も増えるので大変お得な気分になります。 疫病神シリーズも電子化してくれないかな~。
3投稿日: 2013.10.04BANANA FISH(1)
吉田秋生
ベツコミ
どうして今まで読まなかったんだ!
アメリカのストリート・ギャングの抗争と裏でうごめくマフィアそして政府も巻き込んだ陰謀、それに少しSFっぽい要素の混じったアクション漫画・・・そう言ってみても全然この漫画を表現し切れていない。 この漫画の魅力は主人公・アッシュ・リンクス、その人そのもの。そして彼の魂の片割れ・奥村英二、この二人の少年の友情を越えた絆。とにかくすばらしい。 私はずっとこの表紙の感じから少年漫画かと勘違いしていて敬遠していたのだけど大きな間違いでした。少女漫画のカテゴリーで作者も女性と知ったときはひっくり返るほどビックリしましたが、読んでさらに衝撃、「これはカテゴリー云々といってる場合ではない!」と思ったものでした。
3投稿日: 2013.10.02さらい屋五葉(1)
オノ・ナツメ
月刊IKKI
隠れた(?)名作 江戸人情漫画
「さらい屋五葉」の「さらい屋」は「人をさらう(誘拐)」から来ていて、五葉(ごよう)というのはその犯罪集団名。五人で構成されているから五葉というわけで、一言で言ってしまえば「身代金目的・誘拐犯五人組」のお話です。 でも、犯罪自体がメインの話なのではなくて、この五人衆、相当なワケあり者たちの集まりでその各々のワケが徐々に明らかになっていくところが読みどころです。 それぞれがそれぞれの過去や事情を抱えてゆるく結ばれている五葉。 はじめは金のために結成された五葉なのに、いつの間にか心の拠り所というか、その人の居場所みたいになっていく過程がとても丁寧に描かれていて、一人一人の過去が明かされていくたびにじーんとしてしまいます。 特に一番なぞに包まれていてつかみどころのない五葉のリーダー格・弥一は本当に魅力的な人物。気弱な浪人・政之助に出会ったことで重い過去に閉ざされていた心が徐々に開いていきます。そして政之助にとって弥一もまたなくてはならない存在に・・・。 作者のオノ・ナツメさんはイタリアものでも有名ですが、私は結構この江戸人情話も優れていると思います。序盤はほんわかしてますが、終盤ははらはら、全8巻、一気読み確実です。
3投稿日: 2013.10.02フライ,ダディ,フライ
金城一紀
角川文庫
おっさんと高校生のひと夏の青春
ダメダメなおっさんと腕っ節の強い高校生が主人公という珍しい設定の小説。普通教職でもない限り接点のない親子ほどの二人が師弟の関係を結びます。もちろん師→高校生、弟→おっさんです。はじめは反撥し合いながら喧嘩の特訓をする二人だけどだんだんに心を通わせていく過程がいい。高校生・スンシンの切ないバックグラウンドがまたいいのですよ。映画化もされています。 内容からラノベっぽい印象をもたれる方も多いかもしれませんが、直木賞をとっている作家さんでもあるので作風はそれなりにしっかりしていて文芸読みさんにも満足できるレベルかと思います。 ちなみにこの作品はゾンビーズ・シリーズの第二作目ですがこれ単品としても楽しめ、またシリーズ作の中でも一番面白いと思います。ゾンビーズ・シリーズは「レヴォリューションNo.3」「フライ、ダディ、フライ」「SPEED」「レヴォリューションNo.0」の順、この四作で完結しています。お騒がせ高校生ゾンビーズが出てくるシリーズです。
6投稿日: 2013.09.30風渡る
葉室麟
講談社文庫
黒田官兵衛とキリシタン
来年(2014年)の大河ドラマが黒田官兵衛と知って予習のつもりで読みましが、まさにさらっと知るには打ってつけといった風な小説でした。キリシタンとの関わりという切り口も面白く、純粋に宗教の布教ということでなくそれを政治的に利用しようとする武将らの思惑などに翻弄される官兵衛とジョアンの交流が縦軸になっている。 キリシタン禁止令が出るところで終わっていて、続編は「風の軍師 黒田官兵衛」という作品である。
1投稿日: 2013.09.30