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このユーザーのレビュー
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お江戸ありんす草紙 瓜ふたつ
七瀬晶 / 小学館
ありんす:「あります」の音変化。江戸新吉原の遊女が用いた語。
7
お互いの存在を知らない双子の少女が、偶然か運命の導きによって入れ替わってしまう物語です。
姉の千代姫は、武家の姫君として育てられ、妹のおいちは、遊郭で花魁になるために育てられていました。おいちは、…振袖新造から一人前の花魁になる水揚げを機に、千代姫はつまらぬ男との縁組を機に、それぞれ廓と大名屋敷から抜け出してきます。そして湯屋で二人がすれ違い、入れ替わってしまします。それからは一体どうなるのか、ハラハラしながら楽しんで読んでください。
素性不明だが頼りになる刀秀や、報われぬ恋心の持ち主だが優しいの半次など登場人物も魅力的です。なかでも、健気なおいちの幸福を祈らずにはいられません。時代小説というジャンルですが、とても読みやすく面白いです。 続きを読む投稿日:2017.02.24
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最後の王妃
白洲 梓, 池上紗京 / 集英社コバルト文庫
愛とは、与えるもの。笑顔は、魔法。
5
最近の少女小説にはお姫様モノが多いです。この本の主人公も有力貴族出身で皇太子に嫁ぎ、皇太子妃となりました。その後、王子様とお姫様は幸せに暮らしました、という風にはなりません。皇太子妃になり、行く末は…、王妃になるために育てられてきた主人公です。その努力が報われないとき、一体どうするのか。
また、最後の王妃となった主人公にどのような出会いがあるのか、前半だけでなく、後半まで読んでください。
甘いだけの少女小説に満足していない人におススメです。読みきりではなく、複数巻かけてヒーローとの関係性を書いても良かったのでは、と思います。 続きを読む投稿日:2016.04.08
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エルフ皇帝の後継者 上
キャサリン・アディスン, 和爾桃子 / 東京創元社
地味な宮廷陰謀物語
4
エルフ帝国の物語ですが、エルフといっても指輪物語のエルフ像とは異なります。普通の人間と同じ存在で、超越的な種族ではありません(この話には、人間と言う種族はいませんが)。エルフとゴブリンとの違いは、肌…の色と顔だちぐらいしかありません。魔法も、この世界では技術の一つとして扱われていますが、物語に大きく関わるような力は持ちません。
王子としての最低限の教育を受けていないが故に苦しむマオですが、素直な性格で一つ一つ政務をこなし、少しずつ周囲と信頼関係を築いていきます。地味な宮廷陰謀物語ですが、面白い作品です。 続きを読む投稿日:2017.02.24
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宋代鬼談 梨生が子猫を助けようとして水鬼と出会うこと
毛利志生子, 宵 マチ / 集英社コバルト文庫
硬い雰囲気のコバルト文庫が好きな方へ
4
主人公の梨生は、科挙に合格し、「主簿」と言う職を得ます。主簿の仕事内容は、税を中心とした帳簿処理です。それ以外に検死も主簿の職務です。赴任地へ向かう途中に心怡と言う名の水鬼の見届け人になったことで、…梨生は亡骸のそばに幽霊が見えるようになります。検死の職務を果たす際、幽霊が見えることで事件に深入りして行く梨生の物語です。
梨生は、のんびり屋の絵に描いたような好青年です。好青年の梨生が、どろどろした人間の欲が起こした事件にどう取り組むのか、是非読んでください。
続きを読む投稿日:2016.06.10
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明治失業忍法帖 じゃじゃ馬主君とリストラ忍者 8
杉山小弥花 / プリンセス
貴方は誰派ですか?私は桐生さん派です。明治婚活出会い帖にランスがいなくて残念。
3
私の浅薄な知識では、話についていくのが難しくなってきました。それでも、8巻の内容は、間違いなく面白いです。2回目からは知らない単語・人物を調べながら読み返しています。
神風連の乱や萩の乱など歴史の…教科書にのっている出来事が起こります。シリアスな物語とは裏腹に清十郎×菊乃、ではなく、桐生×菊乃になれば良いのにと思う気持ちが止まりません(当世白浪でも腹黒の方が好きでした)。清十郎様との恋物語が話の軸の一つだと理解していますが、桐生さんは本当にカッコいい人です。もし、清十郎様よりも桐生さんとの出会いの方が先であれば、桐生×菊乃も有り得たと思います。ただ、桐生さんも清十郎様と一緒で、惚れても刹那的な幸福しかないように感じます。
これから西南の役に続いていくのでしょうが、清十郎様の本当のバックボーンと西南の役がどう関係するのか楽しみです。
また、お師匠様が言っていた四郎とは、東海散士のことでしょうか。
続きを読む投稿日:2016.06.13
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ルワンダ中央銀行総裁日記 [増補版]
服部正也 / 中公新書
人は、宝。人を育て、中央銀行という組織を作った。
3
中央銀行と言えば、銀行の銀行・金融政策、財政政策ぐらいのイメージしか持っていませんでしたが、興味深く本書を読むことができました。敗戦後20年で服部氏のような国際貢献をした日本人がいたことを誇りに思い…ます。
利に聡い現地の商人や、植民地時代の感覚で商売する白人達の様子など、当時の世情がよく分かります。思い込みなしでルワンダの人々と付き合い、地に足のついた政策を進めたやり方は、本当の援助だと思いました。
巻末に、ルワンダの悲劇について増補されています。その中にルワンダの難民支援についても書かれているのですが、シリアの難民支援にも繋がる内容だと思いました。 続きを読む投稿日:2015.10.16