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ホウトーさんのレビュー
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  • りら荘事件

    りら荘事件

    鮎川哲也

    講談社文庫

    本格的な推理小説として傑作

    秩父の山荘に七人の芸術大学生が滞在した日から、次々発生する恐怖の殺人劇。途中で犯人を確保するものもまだ続く殺人。誰がやったのか、論理的に考えてもさっぱりわからない中、名探偵がやってきて・・・。 かなり本格的な推理小説。本当に細かな描写を覚えておき、かつそれが何を意味しており、それゆえにどういったこととなる、といったような卓越な推理力がなければ、解決編の前に、自分で解読するのは難しい。 それでも、どうにか自分で解決編の前に真実を見抜くつもりで著者に挑戦する気なら一気読みをし、些細な出来事にも意味を見出すように呼んでいくべきかと思います。 そこまでの強い意志で読まなくても、推理小説としてはかなり面白い。解決編も納得感がある。さらにあとがきにあたる部分を読むと、さらに理解が深まるだろう。そしていかにさりげなく、大事なことが描写されているかがわかるはず。 どんでん返し小説としての面白さというよりは、犯人の頭の良さや立ち回りのすごさに感嘆するだろう。推理小説が好きな人には大変おすすめ。

    1
    投稿日: 2016.04.03
  • ノーゲーム・ノーライフ 8 ゲーマーたちは布石を継いでいくそうです

    ノーゲーム・ノーライフ 8 ゲーマーたちは布石を継いでいくそうです

    榎宮祐

    MF文庫J

    位階序列一位・神霊種との双六勝負(後編)

    ・「ゲーム」と呼ばれる全てのものに異常に強いが、社会不適合な兄妹が、「ゲームが全て」な異世界へ飛ばされてしまい、飛ばされた世界で人類の国土を取り戻し、神へゲームで挑もうとする話。 ・8巻は神霊種との双六勝負(後編)。また、ジブリールとの戦略ゲームが展開される。やはり中々難解。6巻からの繋がりもあるため、6巻7巻8巻とまとめて読むべきかと思う。 ・難しいゲームが好きなら、描写されているルールを片手に読み進めていくべき。ルールの細かな表現方法にも意味があるように作られているため、7巻にて描写されていたルールを片手に読み進めていくといい。「囚人のジレンマ」といった、有名な思考実験の話も面白い視点から切り込んで描かれているので、ゲームや思考実験といったものが好きな方は、一度は集中して読んでみてもいいかと思う。 ・5巻までの話にあった、しっかりどんでん返しが仕掛けられています。ちなみに、扉絵を描いているのも作者。その扉絵にもヒントがある。何がヒントかは作者あとがきにも載っているので、よければ、本格的に作者に挑戦してみるのも一興かと思う。

    0
    投稿日: 2016.03.06
  • ノーゲーム・ノーライフ 7 ゲーマー兄妹たちは定石を覆すそうです

    ノーゲーム・ノーライフ 7 ゲーマー兄妹たちは定石を覆すそうです

    榎宮祐

    MF文庫J

    位階序列一位・神霊種との双六勝負(前編)

    ・「ゲーム」と呼ばれる全てのものに異常に強いが、社会不適合な兄妹が、「ゲームが全て」な異世界へ飛ばされてしまい、飛ばされた世界で人類の国土を取り戻し、神へゲームで挑もうとする話。 ・7巻は神霊種との双六勝負(前編)。この巻では完結せず、思わせぶりな展開が続く。6巻7巻8巻と続けて読むべきかと思う。 ・「定石」とは何のことなのか。。。やっぱり、8巻も読まないと辛いかなと思う。 ・難しいゲームが好きなら、描写されているルールを片手に読みす進めていくほうが多少理解が深まる。はず・・・。

    0
    投稿日: 2016.03.06
  • 倒錯の死角 201号室の女

    倒錯の死角 201号室の女

    折原一

    講談社文庫

    被害者は誰?

    覗く男と覗かれる女、そして周囲の人々が絡まったサスペンスミステリー。覗く男の様々な「妄想」が進んでいくと共に、悪夢のような惨劇に繋がっていく・・・。 覗く男の「妄想」の進行、覗かれる女の生活、盗人の侵入、それぞれが絡み合う展開でどんどん引き込まれていく。きっと先が気になって止まらなくなる。 折原一さんの作品だけあって、もちろん仕掛けが隠されている。紙の小説では、「真相」は袋とじされており、明らかに読者への挑戦という体となっている。 きれいな叙述トリックである。ミステリ好きにはかなりおすすめ。また、同作者の「倒錯のロンド」と微妙にリンクしている。作品には、さまざまな「被害者」が出てくるが、さて、誰が「被害者」なのか。。。

    0
    投稿日: 2016.03.06
  • 鬼畜の家

    鬼畜の家

    深木章子

    講談社文庫

    主観語りの罠

    保険金目当てで家族を利用していく母親。その母親も自動車と共に夜の海に沈み、末娘だけが残った。その末娘が語る「鬼畜の家」の所業。それから、関係者から話を聞いていく探偵はさらなる真実に迫っていく。 関係者からの一方的な話言葉で描かれているのは、もちろん仕掛け。関係者の誰もが気づいていない、衝撃の真実が隠されている。 フェアに描かれており、注意深く物語を見ていけば、第4章の前に「真実」にたどり着く手がかりが随所にちりばめられている。 どんでん返しがいくつもあるので、一気に読むことをおすすめ。 この「真実」に読了前にたどり着くことが出来るのであれば、かなり本質を読み取る力に長けているであろうと言い切れるくらい、巧妙に伏線が張り巡らされているので、挑戦するつもりで読むとより楽しめるかもしれない。

    2
    投稿日: 2016.02.28
  • 夏と花火と私の死体

    夏と花火と私の死体

    乙一

    集英社文庫

    無邪気な怖さ

    ひとつの死体をめぐる、幼い兄弟の悪夢のような四日間の冒険を「殺された死体の目線」で描かれる物語 また、おそらく「死体」つながりで、「優子」という作品も含まれている。 両方合わせても、短めの分量。展開がハラハラすることもあり、かなりテンポよく読むことが出来る。 物語の行方そのものも、もちろん楽しめるが、この物語には「無邪気な怖さ」がある点を踏まえた「衝撃の事実」も隠されている。しっかり、伏線もあるので探りながら読んでみるとさらに楽しめるかと思う。また、「優子」は「夏と花火と私の死体」の後に読むほうが、きっと驚くことが出来るはず。「死体」をキーだと考えて読むといいかと思う。

    1
    投稿日: 2016.02.27
  • アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者14 カラーイラスト増量版

    アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者14 カラーイラスト増量版

    榊一郎,ゆーげん

    講談社ラノベ文庫

    短編集

    高校ドロップアウト,ラノベ作家とエロゲー原画師を両親に持つサラブレッド級おたくが、いきなりファンタジーの世界そのままの異世界へ。日本政府の代表伝道師として封建社会そのものの異世界へおたく文化を流行らせる話。 14巻は、13巻後からの短編集。引きこもり、女体化、赤ちゃん、アフレコ、といったテーマで描かれている。しかし、「アウトブレイク(流行)」という大枠のテーマからは外れており、よりキャラクター達の内面に特化しているように見えます。 3時間位で読み終わりました。 「何かを流行らせる」というのが作品名通りでひとつのテーマではあるが、マーケティングに寄っているわけではなく、あくまでライトノベルの面白さが前面に出ているので、ライトノベル好きにおすすめです。

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    投稿日: 2015.12.25
  • やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。11

    やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。11

    渡航,ぽんかん8

    ガガガ文庫

    明言されない感情

    ひねくれ者故に友達も彼女もいない高校生・八幡(※ただし、残念ゆえの、一人ぼっちの信念が半端ない)が、「奉仕部」に入り、学園一の美少女(かつ才女)・雪乃(※ただし、突出しているがゆえの、一人ぼっちの信念が揺るぎない)と出会い、様々な人の問題を導いていく話。 11巻は、バレンタインを迎えるにあたって様々な人の依頼を一色と共に解決する回。 今回の展開は、一般的に見てリア充的な展開を迎えており、かなりまっとうな解決策が進んでいく。しかし、八幡は違和感を感じ続けている。明らかに終盤に向けての伏線が散りばめられている。 3時間くらいで読み終えることが出来ました。 今回は解決策そのものに焦点は当たってないように思える。むしろ「奉仕部」のこれからについて、緩やかに問題提起している感じになっている。 八幡の妹の小町と話している時が、素の八幡であり、外で奉仕部として会話している時が、何かを避けている八幡だというように見ると、感情のねじくれ具合が見えるように思う。

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    投稿日: 2015.12.23
  • 美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星

    美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星

    西尾維新

    講談社タイガ

    「夢」の諦めに向けた青春ミステリー

    キャラの濃い「美少年探偵」達にひょんなことから、依頼をすることになった、「ある秘密を持った少女」が夢を諦める物語。 夢を諦めると記載したが、決して暗い話ではなく、むしろ常に明るい空気で物語は展開されていき、読み終わると何となく爽快感がある。ミステリーとは書いてあるが、謎を解くための材料が散りばめられているわけではないため、さすがに予測しきれない謎である。伏線は散りばめられているので、引っ掛かりを持ちながら物語が進んでいく感覚がある。 ちょっと変わった「青春」を楽しみたい方や、「夢」というものの考え方に興味がある方は読んでみてもいいように思います。西尾維新独特のキャラは出てくるが、独特な言葉遊びはある程度控えられているため、そこを期待しすぎるべきではないかと思います。 わざと、伏線であることが分かるように記載されている部分が前半部分に多いため、気にしながら読むほうがより楽しめる作品です。

    5
    投稿日: 2015.11.17
  • ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア5

    ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア5

    大森藤ノ,はいむらきよたか,ヤスダスズヒト

    GA文庫

    骨休め(伏線)回

    「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」ヒロインのアイズ・ヴァレンシュタインが主役。RPG的な「強さ」では、スタートからトップクラスの主役。さらなる高みを目指し、「経験値」以外の方法でさらに強くなっていく姿が描かれた物語。 5巻は「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」本編5巻途中からの時系列と平行して動いていた裏話的な物語。骨休み会。だからなのかわからないが、主人公はレフィーヤなのではないか?といった感じ。 今回、アイズの秘密が一つ明かされます。作者あとがきによると、本編との矛盾がないように描いたとのことであったが、若干無理やり詰め込んだ物語であるようにも感じます。 どちらかといえば、伏線ちりばめの物語となっています。ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかの世界観がより広がる位置づけにあるシリーズです。本編を楽しめる方ならば、読んで損はない作品です。また、本編のどの時系列とリンクしているかを想像しながら読み進めていくとより楽しめます。

    1
    投稿日: 2015.10.29