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みかさんのレビュー
いいね!された数101
  • 解錠師

    解錠師

    スティーヴ・ハミルトン,越前敏弥

    早川書房

    ★10個でもいい

    子供の頃にある事件に巻き込まれた主人公マイクルは、精神的ショックから口がきけなくなる。そんなマイクルには、特技があった。解錠だ。 解錠師として犯罪組織から依頼された仕事をこなしていく日々と、子供の頃の事件後、叔父に引き取られ解錠の魅力に取りつかれるまでの日々を、マイクルが回想するという形で描かれていく。 何と言ってもスリリングなのは、解錠の場面。ドアの解錠から始まり、解錠師となるまでの修業、そして金庫破り。鍵と指先の感覚との対決。 そして、スリリングなだけではなく、アメリアとの出会いと愛を育んでいく物語が、切なく、歯がゆい。マイクルが解錠師となり犯罪に手を染めたのは、アメリアを守るため。 ここまで人を愛せるだろうか? ★★★★★どころか、10個星をつけても良いくらい。

    1
    投稿日: 2015.03.23
  • 我が家の問題

    我が家の問題

    奥田英朗

    集英社文庫

    家族がほしくなる

    『家日和』の第2弾。 前作でも登場した、N木賞作家の大塚氏も新たな問題を抱える。 両親が離婚か?と心配する高校生や、UFOと交信していると言い出す夫を心配する妻や、新婚さんのそれぞれの実家への帰省問題やら…。 些細なことかもしれないけれど、家族にとっては大問題。そんな『我が家の問題』を家族愛で乗り越えていく。 ほのぼのとしていて、こんな家族が欲しいなぁと思ってしまう。

    1
    投稿日: 2015.02.13
  • タルト・タタンの夢

    タルト・タタンの夢

    近藤史恵

    東京創元社

    こんな店の常連になりたい

    下町の小さなフレンチレストランでに訪れる客の困りごとを、変人シェフが解決していく。 ミステリーというジャンルに括られているけれど、謎解きというよりも、美味しい料理と裏メニューのヴァン・ショー(ホットワイン)と変人シェフの人柄が、人々の心を溶かしていくようだ。 こんなレストランの常連になりたい。

    1
    投稿日: 2015.01.26
  • すべてがFになる THE PERFECT INSIDER

    すべてがFになる THE PERFECT INSIDER

    森博嗣

    講談社文庫

    凡人には理解不能

    第1回メフィスト賞に輝いた作品ということで読んでみたけれど…。 密室殺人のトリックは素晴らしい。それだけのトリックを編み出す犯人は、天才すぎて凡人には動機が理解できない。 最後の最後も、天才にしてやられた感。 結局一気読みしてしまったから、面白かったのは間違いないのだろう。 もう少し時間をおいて再読しよう。凡人にも理解できるかもしれない。

    1
    投稿日: 2015.01.15
  • 嫌われる勇気

    嫌われる勇気

    岸見一郎,古賀史健

    ダイヤモンド社

    人生の軌道修正を

    人間関係に悩みを抱える青年が、ある哲学者を訪ね問答を重ねる。そんな対話形式をとりながら、アドラー心理学とは何かをまとめている本。 人生の悩みは全て人間関係から生じている。 けれど、人生の諸問題はシンプルである。 自分が変われば、自分のまわりの世界は全く違ったものに見える。 では、どうすれば自分が変われるのか? 題名は「嫌われる勇気」となっているけれど、他人の評価を気にせずに、自分に自信を持ち、「今この瞬間」を大切に生き切ることが重要なのだ。 随分前にカウンセリングのお世話になったこともあったけれど、その時にカンセラーに言われたことが、この本を読んでいて「うん、うん」と再確認できる。知らず知らず、アドラー心理学を実践していたのかもしれない。 時々読み返して、人生の軌道修正をするのも良い。

    2
    投稿日: 2015.01.11
  • 百年法 上

    百年法 上

    山田宗樹

    角川文庫

    大局を見るリーダー

    ヒト不老化技術(HAVI)により、永遠の生命を手に入れた人類。HAVI導入時に、生存制限法(百年法)が制定された。「HAVIを受ける者は、処置後百年を経て、生存権を始めあらゆる権利を放棄することに同意せねばならない」、つまりは、百年後には死ななければならないという法律だ。 最初の百年が迫った日本では、「死にたくない」という思いから、百年法が国民投票によって凍結されてしまう。 そこから始まる停滞と、変革。 「永遠の生命」がテーマかと思って読み始めたが、それよりも大局を見極め、周りからの反発を受けようとも未来を見据えて行動を起こすリーダーの存在の物語だった。 今の政治家さん達は、大局を見ているのかなぁ?

    1
    投稿日: 2014.12.13
  • 家日和

    家日和

    奥田英朗

    集英社文庫

    愛を感じる

    ごくごく普通の家庭に起こる、当事者には大きな問題なのだろうけれど、傍から見ると些細な出来事。 ネットオークションにハマったり、会社が倒産して主夫になったり、夫婦別居した自宅を自分好みの部屋にコーディネイトしたり、妻が“ロハス”に凝りだしたり…。 それでもやっぱり家族愛を感じる。心がほっこりするお話たち。

    0
    投稿日: 2014.11.14
  • さいはての彼女

    さいはての彼女

    原田マハ

    角川文庫

    最初の数行でグググっと

    やり手の女社長涼香は、いつの間にかやり手過ぎて社員が離れていくという状況に陥っていた。沖縄の高級リゾートでの束の間の休暇を…と思い、“有能な秘書”の高見沢に旅行の手配を任せるが…。 辿り着いた北の女満別で、かけがえのない出会いが待っていた「さいはての彼女」。 その他、女性のおひとり様の旅の短編が2つ。そしてさいはての彼女のスピンオフのような短編が1つ。 どれも挫折からの再生をテーマにしている。 原田さんの作品は、最初の数行読んだだけでグググッと惹きつけられる。 私もおひとり様旅行をするけれど、「旅自体を楽しんでいるんだぞ!」と、女性のおひとり様の旅=挫折からの逃避に思われたくないな…と作品と全然違うところで考え込んじゃった。

    4
    投稿日: 2014.11.07
  • マイナス50℃の世界

    マイナス50℃の世界

    米原万里,山本皓一

    角川ソフィア文庫

    米原ワールド全開

    ロシア語通訳として、真冬のシベリア長期取材に同行した米原さん。 「日本から暖かさを運んできてくれましたね。マイナス39℃なんて、こんな暖かい日は久しぶりです。」現地の人々のこんな言葉から取材が始まる。 外に出て1分もすると、吐く息が凍って皮膚や眉毛、まつ毛に付き、真っ白になってしまう。 人間や動物の吐く息、車の排気ガス、家庭で煮炊きする湯気の水分が凍り、氷の霧が発生する。 魚を釣り上げて10秒で冷凍状態。 そんな極寒地でも、住めば都。「モスクワのマイナス30℃は湿気が多く、風が吹くから寒さが骨身にしみる。」という。 子供新聞への記事をそのまま載せているので、文章も平易で読みやすい。 米原さんの処女作でもあるが、好奇心とエスプリは持って生まれたものなのだろう。米原ワールド全開だ。

    3
    投稿日: 2014.11.04
  • 天地明察 上

    天地明察 上

    冲方丁

    角川文庫

    才能を見抜き、どう使うか

    将軍にも御目見えを許された碁打衆の一人、春海には算術の才能もあった。 算術の問題を絵馬にしたためた奉納絵馬を見るために訪れた神社で、運命的な出会いをする。算術の心の師と仰ぐ「関」と、心の支えとなる「えん」との出会いだ。 からん ころん 絵馬が風に揺れる音が、その後の転機の際に聞こえてくる。 碁の才能よりも算術の才能をかわれ、知らず知らず大きなプロジェクトを担うことになる春海。 それは、800年の伝統を打ち破るものだった。 春海の天然さ加減とプロジェクトの巨大さが対照的で、「こいつで大丈夫かよ」と思いつつ読み進む。 最初はプロジェクトの石のひとつだった春海も、沢山の挫折を乗り越えるうちに、困難にも盤石な布石を打ち、最後にはすべての石を動かす中心人物になっていく。 碁と算術と暦のお話なんだけど、人の才能を見抜き、どう使っていくかというお話でもある。

    0
    投稿日: 2014.10.14