竃猫さんのレビュー
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64
このユーザーのレビュー
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プロジェクトX 挑戦者たち 執念の逆転劇 巨大台風から日本を守れ富士山頂・男たちは命をかけた
NHK「プロジェクトX」制作班 / プロジェクトX 挑戦者たち
【評価はパス】ちょっと残念な電子化
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言わずと知れた、有名かつ内容充溢したるTV番組を書籍化したもの。
映像自体も廉価版のDVDが発売されたが、書籍もこのように電子版が出されて至極重宝。
もとの書籍は複数放送回分を1冊に纏めていたが、この…電子版は放送回毎に分冊化され直している。
興味あるものだけを買うにも都合が良い。
ただ、残念なのは書籍に掲載されていた写真が収録されていない。多々理由もあろうが、貴重な写真も多く誠に残念。購入されるときは、その点に注意されることを勧める。
記念すべき第1話にコメントを付けたが、ちなみに、この回には気象庁勤務時代の新田次郎が本名で登場するのは、良く知られたエピソード。
続きを読む投稿日:2016.01.10
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黄色い牙
志茂田景樹 / アドレナライズ
こういう文章を書ける人を世間師と呼びたい、と思う
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一言で言えば、”マタギもの”です。かつ、非常に地味で明るい話題の少ない、他人には勧め難い作品です。
でも、直木賞受賞という冠抜きに、★5個に相応しい作品と私は考えました。
題名からは昨年巷間話題にな…った三毛別事件に題材をとった吉村昭の『羆嵐』と同じ系統を想像されるかも知れませんが、内容としてはむしろ矢口高雄の『マタギ列伝』に近いものです。昭和初期の時代の流れを背景に、変わって行かざるを得ないマタギの生活を縦糸に、主人公を取り巻く人間関係を横糸に、物語が織られていきます。
縦糸は自然や食について示唆に富むと思います。
自然に関する示唆としては、主に森林資源、鉱物資源の利用についてのエピソードが物語られています。同じ島国の英国は、森を殆ど伐採して現在の国の形を作り後悔しているようには見えませんが、日本はどうなのでしょうか。
食の部分は、例えば田中康弘『マタギとは山の恵みをいただく者なり』でも同じメッセージに触れることができますが、私のように感傷的な理由で肉食を避ける者にとっては、それを超然とした食の在り方が描写されています。
(野イチゴ落としね・・・。重松清の作品にも、デザートのイチゴを分けてあげたので親子と分かりましたっていうのがあったね。うん・・・。)
さて、横糸です。本レビューのタイトルはこの横糸への印象です。
恐らく、読んでいて歯がゆく、もどかしく、イライラすると思います。何故、バッサリ、あいつを処分しないんだ!?と。
元許嫁はDVにあっているのに、何で絶縁できないんだ?とか、何十年も憧れの人を想っても仕方ないだろ?とか。
でも、そう考えてしまうのは私がそれでも幸運にも単層的で平穏な人生を送ってこれたからなのだと思います。
さほど斯様に、人間とは矛盾に満ちて、割り切れないのでしょう。宮本常一『忘れられた日本人』で述べられている世間師と少々ずれますが、浮世の苦労を重ねた人ならではの含蓄が随所に見て取れます。
ほんの一例をあげますが、司直の追及を受けて逃亡している子供が忍んで実家を訪ねて来る場面がありました。
主人公に追い返されて遠ざかって行く子供を、母親が雪道の中走って追いかけるのですが、作者は特に「内股で走って行く」と描写しています。このさり気ない描写、よく人間を見ているよなぁと感心します。
深読みし過ぎと思いますか?スルメのように何度も噛んで味わって鑑賞するタイプの作品ですから、まぁ分かり難いですかねぇ。何か小包みたいな物を懐に抱えて全力ダッシュをしてみたら・・・とか。済みません、半端者がエラそうに。
ところで、志茂田景樹作品で大分長く待っている作品があります。リクエストも何回もしました。是非、電子化して下さい。明治時代に専修大学を創立した若者達の物語です。映画『学校をつくろう』の原作で、『蒼翼の獅子たち』 (河出書房新社 2008年)です。きっと面白いこと請け合いです。
続きを読む投稿日:2016.02.29
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暗殺までの15328日 五代目山口組 宅見勝若頭の生涯
木村勝美 / メディアックス
うーむ、確かに・・・
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先のレビュアーさんの評価を見て、なんとなくフラリと読んでみました。
そのレビューの評価とおりの内容だったと思いました。
ページの辿り方が不味かったので、済みませんが、恐らく紹介ポイントがついていない…と思います。
お詫びに【参考になった】は押しておきます。
続きを読む投稿日:2016.03.08
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肝臓先生
坂口安吾 / 角川文庫
評価はパス
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文体のせいか、感受性の乏しさのためか、書籍説明のように感動することはないが安吾の代表作なので、一読の価値はあると思う。敢えて勧めるということではないが、良かったらどうぞと言う感じです。
もし、感動を味…わいたいなら映画「カンゾー先生」の方が良いでしょう。
ところで、名湯、伊東温泉にある「ホテル ラ・フォーレ」は東郷元帥の別荘であり、その湯を健身湯と名付け愛したところである。後には、海軍の将校用の保養施設として井上成美が籠り終戦の施策を練ったところでもある。
その宿の斜向かいが肝臓先生の診療所である。現在は存じないが、昔は見学が可能だった。古色蒼然とも味わいのあるとも言える外観の佇まいであった。本作を読み、モデルとなった人物に興味を覚えたら訪ねてみると良いでしょう。
続きを読む投稿日:2015.05.30
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井上成美
阿川弘之 / 新潮文庫
”パイン”焼失を惜しむ
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書籍説明にあるとおり、阿川弘之の海軍提督三部作のひとつ。Smart Navyを体現したかのような井上成美の戦前から戦後、晩年を描いた物語。人気で言えば山本元帥であろうし、米内大臣のような歴史の教科書に…残る業績とも縁遠いが、三提督シリーズの一角を占めるに相応しい人物と思う。狂気の時代に正気を保ち、貫き得た数少ない人間の一人であり、典型なのかも知れない。まぁ、平時であれば、誠に付き合い難いかも知れないが・・・。そんな人が存在したこと、そして、どんな苦労をしたのか、どんな生き方をしたかを知ることは、ある種の基準軸を心に描く助けになると思う。
個人的に井上成美には不思議な縁を感じる。
社会人になった際、長井で新入社員研修を受けたことがある。本作にも出てくる井上邸の近所であった。数年前の記録では、省みられることもなく打ち捨てられているということだが、現存するなら一度、訪れてみたいものである。
また、私の書架にはNHKラジオドラマ『ヘッド・イズ・バッド』の台本がある。本作に登場する青年教師である山ざき先生が後年、大学で教鞭を執られるようになった。その時、山ざき先生の講義を受講していた私が、何か質問をしに行った際に、ご恵贈頂いたものである。その時の、山ざき先生の話しぶりからは、何十年も前に井上成美から受けた感銘を色褪せることなく持ち続けられていることが良く伝わってきて、井上成美の偉大さが感じられたものである。
続きを読む投稿日:2016.05.28