竃猫さんのレビュー
参考にされた数
64
このユーザーのレビュー
-
ゴーゴーAi アカデミズム闘争4000日【電子特典付き】
海堂尊 / 講談社
【評価はパス】いや長かった、私には悪くないけど
0
新しい事を始めようとしたときに、必ず抵抗があるものだそうで、事の大小に関わらず、その組織が民間企業であろうと官庁であろうとアカデミック界であろうと、さらにはその事の意義にもよらず、必ずあるのだそうで。…それは、新しい物を産み出す発明や開発の苦労とは、全く異質な苦労だそうで。このAiに関する活動の時期は、公私にわたり多忙だったのか、初耳のことばかりでした。一応、専門分野は異なりますが、学の一端にいるので、好奇心で読み始め、同情心と同じ境遇に遭ったときの実用書として読み進め、達成感とため息とともに読了しました。いや、ご苦労をなさったものです。本書の長さが苦労を表現していますね。ダイジェストの説明では、苦労が伝わらないでしょうね。私だったら、作者のように無私高潔、生真面目なスタイルではなく、もっと・・・と考えたりしました(笑)。医学界は「学」の世界でも一番プライドが高いとされていますが、その中も分化しているのですね。私の場合、経済学者に意地悪されたことが(泣)。
余談ですが、作中に出てくる「省(会)議室」は、その省庁で一番格式の高い会議室とされているそうです。一度入れて貰ったときの印象は、まぁ、少し大きな企業の役員会議室程度のものでしたが・・・。本書で私が不足と唯一つ感じるのは、この一連の出来事の略年表を巻末に付けて欲しいと思うことです。目次でも兼ねますが、年表形式の方が見やすいと思うので。 続きを読む投稿日:2020.02.17
-
小学館電子全集 特別限定無料版 『三浦綾子 電子全集 塩狩峠』
三浦綾子 / 三浦綾子 電子全集
名作に敢えて物申す
0
名作の名が高いのは承知しているが、正直、肌に合わない。時代性によるのかも知れないが、どうも道徳(修身)の教科書を読んでいるようだし、キリスト教のプロパガンダに思えてしまう。もちろん、塩狩峠事件の殉職者…には深い敬意を持っているし、作者自身に思う事はないが、この創作物には多々違和感を感じる。まず、キリスト者の母親が信教とわが子への愛情を天秤にかけなければならない時に信教を採ったことが解せない。その後、義母が死去した後、その家屋にすぐ入り拘りなく同居できるだろうか?義母が長年、寝起きし生活していた思いのこもった部屋にだよ?このような所にキリスト教を最上のものとして、迫害は全て迫害する側を悪とし、キリスト教信者は無垢、無謬な被害者とする”演出”を感じてしまう。キリスト教自体には親近感すら持っているが、私が望むのは遠藤周作の『沈黙』のように思い迷いもする人間であったり、踏むがいいと言ってくれる人である。どうも、肌に合わなかった。あっ、あと父親もどうかねぇ、ウチも武家だったけど昭和まで「(武士として)恥ずかしい行いはするな」と躾けられたよ。”改宗”するのが早すぎだよ。徳川家の300年の御恩をそんなに早く忘れられますかねぇ。 続きを読む
投稿日:2020.02.17
-
ペコロスの母に会いに行く
岡野雄一 / 角川文庫
とても参考になりました
0
お袋がね、あんたたちの分もついでに貰ってきてあげたよって、くれたのよ。何かなぁと思ったら、『終活の手引き』(泣き笑い)。だからね言ったの「母ちゃん、俺ら母ちゃんより30歳若いいんだから、未だ要らないよ…」って、そしたら「あんたの事だから心配だから今から始めておけって」さ(笑)。ポイント消化で何か買おうと思って物色していて、ポイントより大分高かったけど、こういう本は早めに読もうと思って買いました。買って正解でした。やはりためになります。何年か前までは、母が事実を都合の良い具合に変えて話すたびに、いちいち訂正したり、いらいらしてましたが、最近では慣れました。叔母は特養にいるけど、今が一番穏やかで楽しそうです。勿論、大変なことにかわりはないのでしょうが、大変だった叔母の人生に神様が最後に魔法をかけてくれたような気がしています。私自身もどうなるか分かりませんが、身の回りの人達には穏やかに過ごして貰いたいなぁと思います。義務感や悲壮感ではなく、気持ちの持ち方でユーモアも言えるし、それで笑えたら小さくても幸せですね。読んでいて、そんな風に思いました。 続きを読む
投稿日:2020.02.17
-
無人島に生きる十六人
須川邦彦 / 青空文庫
ワンピース好きには是非!
0
無人島漂流物とでも言いましょうか・・・。ロビンソンクルーソー、十五少年漂流記、東京島もそうかな・・・。特に、奇跡の生還者である「無人島長平」や「ジョン万次郎」を主人公にした小説群(吉村昭「漂流」、山本…一力「ジョン・マン」等)は、素材が凄いだけに本当に凄いものが多いのですよね。
でも、本作ほど爽快感のある物語は絶無でしょう。驚くべきは、これが事実であるということ(wikiですが「パールアンドハーミーズ環礁」にも記載があります)。
人間は極限状態に陥れば、たやすく理性を失う弱い存在かもしれませんが、それでも彼らのような実例がいてくれるお蔭で私たちは人間を信じることが出来る・・・(なんてね)。
そんな気がする作品です。海洋国、日本の多くの人が気に入ると思います。
本作で無人島漂流物に興味が出たら、無人島長平を調べると面白いですよ。サルガッソー海みたいな場所は世界中、わりとあるみたいですね。海流が渦を巻いていて難破船が引き寄せられてくるような場所。海流図を見ると鳥島(八丈支庁)はそんな場所の真ん中に、神様が蜘蛛の糸を垂らしたようにポッンとあるんです。この島の存在も奇跡に思えますよ。
追伸;
忘れてならないのは「エンデュアランス号漂流」、爽快感という意味では本作には及びませんが、英国人がユーモアを大切にする理由が分かる気がする作品です。
実際の写真が多いのも探検家らしい姿勢を感じます。ラストの船長のセリフが良いんですよ、これ。 続きを読む投稿日:2014.11.25
-
鼠 鈴木商店焼打ち事件
城山三郎 / 文春文庫
業を営む者の鑑
0
今日、YAHOOニュースに鈴木商会を偲ぶ会合が催されたとあった。
若い人は「お家さん」で鈴木商会を知った人も多いだろう。
本作は鈴木商会の大番頭、金子直吉に焦点を当てた名作です。特に若手の男性ビジネス…マンに勧めたい。
実業家、企業家、起業家、経営者・・・どう称しても良いが、人を雇用し事業を営む者の、ある種の
理想像を私は金子直吉、鼠に見出す。「働きたい者に仕事を与えるそれが企業家の責務である」、この
言葉を口にした人物を、私は寡聞にして他に2人しか知らない。湯婆婆(鈴木敏夫)と池田勇人である。
アメリカ流の経営学に疎いが、わが国における企業の存在意義はこれが第一であろうと愚考する。
それと、ビジネスとはやはり個人のセンスだと思う。ビックデータやら、戦略分析フレームワークやら
結構だが、そこからは「BUY ANY STEEL,ANY QUANTITY,AT ANY PRICE.」は出てくるのだろうか?
男子たるもの生涯に一度は、このような業務指示を出す、または受けたいものだ・・・と思う人も多いの
ではないだろうか?そういう意味で若手の男性ビジネスマンに勧めたい。
城山三郎、吉村昭、新田次郎の3氏には原則、レビューを書くのは畏れ多く憚られるが、つい拙を枉げてしまった。城山三郎で言えば、本作を気に入った人は、石田禮助の「粗にして野だが卑ではない」もお勧めです。 続きを読む投稿日:2015.05.27
-
走れメロス
太宰治 / 角川文庫
誰かこの謎を解いて下さい(評価はパス。コメントのみです)
0
私にとっては分かったつもりでも、未だ作者の真意がはかりかねる作品です。
つまり、教科書で読んだ当時は道徳的教訓に富んだ美談として読みました。恐らく、この話が好きな人も
嫌いな人も、多くの場合そう読むで…しょうね。
私が分からないのは、作者は何故、主人公の名前をメロスにしたのか、ということです。
太宰治ならではの皮肉か、それとも何かの寓意を込めたのか・・・。永い間、察しかねています。
勿論、本作の着想が壇との熱海事件に起因するのは間違いないでしょうから考えすぎかも知れませんが。
急いで解決したい疑問でもないのですが、どなたか分かる方は教えて下さい(笑)。
あ、ご存知ない方も居るかもしれませんので、ご紹介しておきますと、メロスというのはギリシャ時代
の都市国家の名前です。専門ではないので非常にザックリした言い方で勘弁して欲しいのですが、アテネ
とスパルタのペロポネソス戦争のとき出てきます。自由を掲げるアテネと、軍事国家スパルタ、その間
に位置していたメロスは中立の姿勢を堅持します。そのメロスをアテネ(注1)が攻撃し全滅させてしま
いました。アテネの戦後処理は苛烈を極めたようです(注2)。まぁ、アテナという女神がそもそも戦いの神様
でもあるのですが、一般的なイメージとしてはアテネが正義、スパルタが悪という図式のようなので何か
太宰には言いたいことが有ったのではないかと考えてしまうわけです。うーん。
注1:スパルタの書き間違えではないです。もともとスパルタの植民地が独立した経緯があるので、
それも影響しているのかも知れませんが。
注2:寛容な戦後処理など歴史上少数でしょうから強調する必要はなかったかも知れませんね。
続きを読む投稿日:2015.04.29