
華竜の宮(上)
上田早夕里
ハヤカワ文庫JA
壮大で、すてきな海のお話です。
まず、おバカな先入観から、タイトルを見て竜宮城の乙姫様みたいな海の神様が降臨する話だと思っていました。大間違い!見事な海洋SFです。特にすごいのが、その世界観。目の前にありありと浮かぶさまざまな模様を持った魚舟たちと多彩な登場人物たち。特に「人工知能」の「感情」形成のリアリティは将来のテクノロジーの進化を予感させます。そして最後のシーンは、ほとんど「2001年宇宙の旅」な雰囲気です。ただ、折角いろいろな伏線を持って登場した何人かのキャラクターが活かされていないのは残念です。スピンオフ作品として読んでみたいです。
7投稿日: 2013.09.25
魚舟・獣舟
上田早夕里
光文社文庫
苦しむために陸に上がる。重力を耐える。百目の前日譚もあり…。お買い得かも
最後の話は、華竜の宮に繋がる短編です。人の物語はやはり自然の中が映えます。そして特に人は海から生まれ、海に還ります。その本能がそうさせるのか、海から陸へ上がるときの苦しい選択がなぜか切ないです。重力をまともに感じる瞬間です。そしておそらく、人は宇宙から生まれ、宇宙に還るのでしょう。世間の重力から解放されるために。社会の痙攣から逃れるために。「華竜の宮」も是非読んでみてください。 [追記] 「妖怪探偵・百目 1: 朱塗の街」に繋がる短い話もあります。話が中途半端だなとは感じていましたが、正直、この話がシリーズになるとは思っていませんでした。妖怪好きの私としては、この展開、期待持てます。 で、結局この本、意外とお買得になりました…。
5投稿日: 2013.09.25
いきなりはじめる仏教入門
内田樹,釈徹宗
角川ソフィア文庫
頭の中が整理される、そして落ち着く
内田さんの文章は、いつも何の引っ掛かりもなく、するする体に入ってきますが、この仏教話もなるほどと納得させられる言葉だらけ。不思議なのは、別にものすごく大変なことや立派なことを言っているわけではないし、自分が前から「そうそう、そう思っていた」ということばかり。なのに腹に落ちて、体に身についてしまいます。ホント不思議な方です。続きがありそうだからそれも読もうかな。
3投稿日: 2013.09.25
