shohjiさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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謝罪の作法
増沢隆太 / ディスカヴァー・トゥエンティワン
作法という言葉にふさわしい考え方を磨く内容である。
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謝罪とは誠意をもって臨めば乗り越えられるものではなく、だからといってテクニックで切り抜けられるものでもない。「申し訳ございません」以外に誰もが納得できる言葉などないのである。山一證券の破綻謝罪会見が繰…返し引用されていることが印象的だった。カスタマーセンターが直接利益の獲得部門でないため立場が微妙なことも同感である。長年カスタマーセンターに関わってきたが最近は特に生産性との戦いと離職率の高さを感じる日々である。こんなレビューしか書けなくて本当に「申し訳ございません」 続きを読む
投稿日:2017.02.13
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高く遠く空へ歌ううた
小路幸也 / 講談社文庫
不思議な雰囲気をもった作品
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不思議な雰囲気をもった「空を見上げる古い歌を口ずさむ」の続編。またまた不思議な世界にひきずりこまれた。何かのきっかけで違う道に迷い込んだ人(タガイモノ)を元の場所に呼び戻す物語。言葉で語ることのできな…い感性、肌で感じ取れる同じ人間だけが理解できる世界。偶然なんてことは実はないんですよと言いながら偶然の出会いを重ねていく。一番怖いのは都合の悪いものを排除するという考え方。感性豊かな子供時代に読みたかったという気がするが、生きてみないとわからないことが沢山あることを知ってしまった今読んでも大いに共感できる。
小路さんの作品の中で一番人気のある「東京バンドワゴンシリーズ」が《第2回吉川英治文庫賞》の最終候補作となった日に読了。 続きを読む投稿日:2017.02.01
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ギャンビット
レックス・スタウト, 大村美根子 / グーテンベルク21
1962年に書かれたネロ・ウルフの長編。
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日本ではEQ掲載のみだったがついに電子書籍が出た。ギャンビットとはチェスの定石のこと。今回の殺人事件はチェス大会(1人vs12人で盤面を見ないで同時進行で進む変わったゲーム大会)で起きる。8割がたウル…フのオフィスが舞台となり会話で進む安楽椅子探偵の見本のような作品。かなり理屈っぽいのでウルフファンでも余程の変わり者でなければ楽しめないのでは・・・と途中で思いながらも私は充分楽しんだ。元妻に殺されかけたウルフの女性恐怖症が全開だがアーチーのフォローが今回も光っている。 続きを読む
投稿日:2018.12.17
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本当に賢い人の 丸くおさめる交渉術
三谷淳 / すばる舎
日常に活用できるノウハウ本
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著者は弁護士さんで若い時は裁判で勝利を続け悦に入っていたという。しかし報復合戦になることも多かった。そんな時に京セラの稲盛氏と出会い人生が大きく変わった。今では「日本一裁判をしない弁護士」と呼ばれてい…るとか。長い目で見て得をすればいいと考えて相手の話を良く聞き落としどころをみつける。本書は日常に活用できるノウハウ本になっていてとても読みやすいが弁護士さんならではの経験談を期待して読むとがっかりする感じもある。弁護士さんでも相手に出来ないほど話の通じない人がいることを知ったのが一番の収穫であった。 続きを読む
投稿日:2017.01.22
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沈黙入門
小池龍之介 / 幻冬舎
人間とは厄介なもの
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沈黙している者も非難され多く語る者も非難され少し語る者も非難される。世に非難されない者はいないのである。人が本当に思っていることなどたかが知れていて相手に伝える必要などなく「口は災いのもと」なのである…。そんなこと言っていたら何も言えないと思うなら黙っていたら良いのだ。特に最近はSNSでの自分語りが少々度を越してきて、みんながコメンテーターのように批判を繰り広げる。人は放っておくと無駄に気持ち良くなりたがるので何かと自慢になりやすい。
こんな感じで話は進み仏道式非難訓練へと入っていく。
普段漠然と思っていることをここまでハッキリ言ってくれてありがとう、という所もあるが少々言い過ぎ感もある。この本は著者の処女作であり20代半ばのご自身の経験~自意識過剰からくる人間関係の苦しみと試行錯誤~から生まれたという「あとがき」を読んですべて納得できた。 続きを読む投稿日:2017.02.17
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獄の棘
大門剛明 / 角川文庫
もっと重い内容を想像していたが人情モノで読みやすかった。
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自分はこの仕事に向いていないのではないかと悩む新人刑務官が個性の強い先輩達の中で成長していく物語。
刑務官の離職率の高さは同僚間の人間関係にあるという。
刑務所は二度と来たくないと思うくらい厳しくて…良いのだと考えるが故に一線を越えてしまう刑務官もいる。
そんな内情を描きながら「被害者の視点を取り入れた教育=ゲストスピーカー制度」などを上手に組み込んで被害者家族の苦しみも書き込んでいる。割と草食系の主人公のサラリとした台詞の中に時々感じる深さが心地よかった。 続きを読む投稿日:2017.02.23