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shohjiさんのレビュー
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  • 三浦綾子 電子全集 塩狩峠

    三浦綾子 電子全集 塩狩峠

    三浦綾子

    三浦綾子 電子全集

    今年は『塩狩峠』執筆からちょうど50年

    高校生くらいだったのだろうか、読んで衝撃を受け読書にはまるきっかけになった本である。列車暴走事故の際に人命救助のために殉職した鉄道職員のお話。感動の結末は分かりきっていて読んでいるのだが今回はストーリーよりも主人公信夫が母に対する確執から解放され精神的に成長するまでの小さな気づきが面白いなと思った。今まで当たり前だったことが何かがきっかけで全て新たな関心の対象になる。些細なことだと終わらせないことの大切さを感じた。 この小説は明治42年2月28日に実際に起きた列車暴走事故をもとに書かれている。モデルとなった長野政雄さんは主人公の信夫よりもはるかに立派な人であったと著者はあとがきに書いている。敬虔なクリスチャンだった長野青年は常に遺言状を持ち歩いていた。その遺言により手紙や日記が焼却されていて資料が少ないためフィクションという形式で発表されている。 私は仏教徒であるがキリスト教の教えや著者の考えに違和感を感じたことがない。人間として大切なことはどんな宗教でも同じということだろう。

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    投稿日: 2017.01.22
  • クリスマスを探偵と

    クリスマスを探偵と

    伊坂幸太郎

    河出書房新社

    正直なところ期待せずに読んでみたのだけれど非常に面白い。

    伊坂幸太郎さんが18歳の時に書いた作品をご自身でリメイクした60ページほどの小説。クリスマスの夜に探偵のカールが出会った男は公園のベンチで本を読んでいた。「寒いですね」から始まった会話がサンタクロースの話になりカールはクリスマスの思い出を語り始める。ほぼこの2人の会話で成り立っているので登場人物が少なくてわかり易い。二人芝居で舞台にしても良いかなと思うような構成になっている。そもそも真冬の公園でなぜ読書?と思った瞬間に引き込まれてしまった。

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    投稿日: 2017.01.22
  • ダメな文章を達人の文章にする31の方法 なぜあなたの文章はわかりにくいのか?文章の書き方が分かる本(横組版)

    ダメな文章を達人の文章にする31の方法 なぜあなたの文章はわかりにくいのか?文章の書き方が分かる本(横組版)

    山口拓朗

    バレーフィールド

    もう起承転結の書き方は古いのだろうか

    電子書籍半額セールでポイント利用の購入(実質無料)過去のレビューでは「目新しいことは何もない」というのが多い。たしかに読みやすくサラッと書かれている。しかし私は新しい発見もあった。最近はひらがな表記が多いなと思っていたが「抽象的な言い回しはひらがな」という漠然とはしているがルールがあるのなら納得である。もう一つは誰でも使える文章展開の基本、オススメのフォーマット【①一般論とは異なる主張②もちろんorたしかに③しかし④なぜなら⑤事実⑥したがって】これは実際に使えると思う。

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    投稿日: 2017.01.22
  • 内向型を強みにする

    内向型を強みにする

    マーティ・O・レイニー

    パンローリング

    たとえペースが遅くてもレースに勝つのは私だ!

    内向型は必ずしも無口とは限らない。エネルギーを得るために内部に焦点を合わせる。友人と楽しい時を過ごしてもその後は一人の時間が必要だ。人間関係は広さより深さが大切。それが内向型かどうかの判断の基準となる。最初から自分は内向型だと思って読んでいるので前半は退屈して時間がかかった。ところが、後半は外に承認を求めていない内向型の仕事でのアピールポイントなどが面白く一気に読み終えた。【たとえペースが遅くてもレースに勝つのは私だ!】はい、その通り。内向型はそれを口には出さず心の中で灯を点して日々自分と向き合っている。

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    投稿日: 2017.01.22
  • のうだま1 やる気の秘密

    のうだま1 やる気の秘密

    上大岡トメ,池谷裕二

    幻冬舎文庫

    上手にスイッチ入れましょう!

    脳研究の池谷先生とイラストレーターのトメさんのコラボで「やる気」を科学する本。脳は何でもマンネリ化する。でもこのマンネリ化は「面倒なことも慣れてしまうと苦でなくなる」という良い面も持っている。子供たちが小学生の時、先生が「毎日家でも決まった時間に机に向かって勉強する習慣をつけましょう」と言っていた。しかし、やる気もないのに習慣で勉強するの?という疑問に明確な答えを出せる先生はいなかったと記憶している。この本は飽きっぽい脳を分かり易く解説してスイッチの入れ方をアドバイスしている。上手にスイッチ入れましょう!

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    投稿日: 2017.01.22
  • シッダールタ(新潮文庫)

    シッダールタ(新潮文庫)

    ヘルマン・ヘッセ,高橋健二

    新潮文庫

    あらゆる真理はその反対も真実なのだ

    今まで一番影響を受けた本を一冊選ぶとしたら迷わず私はこの本を選ぶ。しかし何度も読んでいるが感想の書きにくい本である。知識を伝えることは出来るが知恵を伝えることは出来ない。一度口にだすと全てはいくらか違ってくる。あらゆる真理はその反対も真実なのだ。物事は常に半分だけ正しい。それを思想として伝えるには迷いと真、悩みと解脱とに分けなければならない。このときの思想とは言葉でしかない。世界と自分を愛するためには時として絶望を必要とする。学問や苦行により自分と他人を隔てていた壁を取り去るための遍歴の旅が記されている。

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    投稿日: 2017.01.22
  • サクラサク ~『解夏』より~

    サクラサク ~『解夏』より~

    さだまさし

    幻冬舎文庫

    久々に涙がとまらなくなった

    短編集「解夏」の中の1作品「サクラサク」だけを電子書籍で購入。家族とは何なのか。老いて惚けていくおじいちゃんと家庭を顧みない父親。壊れかけた母親。高校を中退しフリーターをしている息子と高校生のひねくれ娘。永年にわたって乾いた土がわずかばかりの雨ですぐに潤うものではない。このまま家庭は崩壊していくのか。そんな状態を救ったのは半端者扱いされていた20歳の息子のおじいちゃんに対する優しさだった。人間同士、しかも家族なのだから遅すぎることなどないのだ。少しずつほぐれていく家族の姿に久々に涙がとまらなくなった。

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    投稿日: 2017.01.22
  • 法廷のウルフ

    法廷のウルフ

    レックス・スタウト,大村美根子

    グーテンベルク21

    気難しいウルフ

    【死を招く窓】と【法廷のウルフ】の2篇。ウルフは実は働くことが大嫌い。しかしお金のかかる蘭の栽培が趣味のうえに大変な美食家で住込みの料理人がいるので稼がなければならない。一日の時間割が決まっていて余程のことがない限り外出も急な面会もしない。【死を招く窓】では事前連絡なしで訪ねて来た依頼人と不機嫌なウルフの姿から始まる。【法廷のウルフ】ではウルフは証人として法廷に出廷するが証言直前に逃げ出して事件現場に向かう。法廷侮辱罪で逮捕状が出るというオマケ付き。気難しいウルフだけれど2篇とも鮮やかな推理で解決していく

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    投稿日: 2017.01.22
  • 黒い蘭

    黒い蘭

    レックス・スタウト,大村美根子

    グーテンベルク21

    助手のアーチーが面白い

    中篇2篇。【殺しはツケで】ウルフのお気に入りの靴磨きが殺人の嫌疑をかけられ墜死。クレイマー警部に侮辱されたことでスイッチが入り容疑者を自宅に招くため警部も含めて関係者全員を名誉毀損で告訴する。【黒い蘭】ウルフはフラワーショーで起きた殺人事件を解明する報酬に世界に3株しか存在しない黒い蘭を要求する。この話はEQMMで一度読んでいるが面白く読めた。2作ともいつもと違う経緯で依頼を受けて身近な知人のためにお金にならない捜査をする。ウルフと住んでいる助手のアーチーの結婚願望が強くなり女性を鋭く観察していて面白い。

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    投稿日: 2017.01.22
  • 死の招待

    死の招待

    レックス・スタウト,大村美根子

    グーテンベルク21

    少しざんねん

    中篇2作品。【死の招待】再読。パーティを企画する仕事をしている女性に脅迫状が届く。しかし依頼人が亡くなって調査は打ち切りに。アーチーだけがお金にならずとも意地があり調査を続ける。ところが無関心だったはずのウルフが先に真相に気付いてしまう。ペットのチンパンジーや鰐が登場する珍しい作品【ブービー・トラップ】1944年の作品でウルフが陸軍情報部に協力する話。他の作品とは作風が違っている。ウルフとアーチーのいつもの弾けた面白さがない。戦争中なので仕方のないことだが、やはり推理が素晴らしいだけでは面白さも半減。

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    投稿日: 2017.01.22