あかんたれさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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マリア・プロジェクト
楡周平 / 角川文庫
命の価値、とは
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著者の「朝倉恭介VS川瀬雅彦」シリーズが面白かった事から「著者買い」した一冊。
先進国の堕胎等によって捨てられる「命」、貧困国(極端な貧富差による)において消息不明になっても碌に警察にケアして貰えない…「命」。
その命を医療研究の実験に利用しようとする話です。
胎児(既にこの時点で必要な卵子は揃っている)の卵子を培養して人工授精に利用したり、所謂スラム的なエリアに住む少年少女を誘拐拉致して、代理出産の「代理母」を強制したり、臓器移植の材料にしたり、と。
本書中盤まで、そういうドクターによるあれやこれやが続くので、かなり重い気分になれます。
当然それは最後のカタルシスのための「溜め」だとは分かってはいるのですが、上記のシリーズのようなアクション・ボリュームも無く(人里離れた研究所への奇襲であればそうならざるを得ないでしょうが)、「溜め」の見返りとしては少し物足りないところが少々。貧弱装備故に味方もバタバタやられてしまいますし。
それ故、読後感としては本書のモチーフとされた医療と貧富差と人命の価値について考え込まされるものとなりました。
フィクション故に本書に描かれた医療技術はまだ実現してはいないようではあるのですが。。。 続きを読む投稿日:2014.02.11
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ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った
堀江貴文 / 角川書店単行本
キュレーション文化の一つの水準
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取引先の偉い人の強いオススメで読むだけ読んでみた。
かの有名な堀江氏が投獄中に読んだ本のレビュー集である。
確かに時折意想外なチョイスの本が登場したり、変わった切り口を提示したりしておるのですが(巻末…対談で、キュレーションサイトを運営している成毛氏も驚いているほど)。
元々マネタイズ周り以外の言動が浮き世離れした感のある著者の、あくまでレビュー集だから、延々浮き世離れした(というか他人事視点な)文面が続く展開にもなっておりまして。
そういう意味では、元々「本なんてインスピレーションと勢いで買え」派な身としては、やや食い足りない。
キュレーション情報なんぞ参考情報でしかないからblog程度で十分、という価値観なため、「今の、レビュー集の書籍化でお金を取るレベルとしては、こういう内容」という参考例にはなりました。 続きを読む投稿日:2014.01.03
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あるゾンビ少女の災難I
池端亮 / 角川スニーカー文庫
おっとりお嬢様がゾンビ。(1・2巻通読)
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ゾンビといってもハイチの呪術に由来するアレではなくて。
寧ろヨーロッパの歴史の影に見え隠れしてきた錬金術の成果による「死者蘇生」的なアレ。
近世の、そんなゾンビお嬢様が現代まで封印されていたのが復活し…ちゃった!さてさてどうなる!?といったタイプのお話ですね。
知識や言語上の不備をサポートするドライな幼女メイド・アルマのサポートのもとで、封印中に奪われた(奪われたが故に復活した)エネルギー源の「石」の奪還に乗り出すお嬢様だが、首が飛んでも目が潰れても指が砕けても平気で、人間離れした身体能力(巨大な象を楽々抱え上げられるほど)を有しているにも拘わらず、価値観が近世の箱入りお嬢様のまんま。
だから物語を牽引する動機付けが明確な割に、そのキャラのために「箸の上げ下ろし」的に色々な所で躓きまくる。
動機付けのドライブするがままにストーリーを進めて貰おうとすれば、石を奪還した上で関係者一同鏖(みなごろし)で自らの存在を改めて秘匿するって所が順当な目的地になるワケですが、チャラい大学生に甘い言葉かけられて浮ついたり、人殺しが可哀想だと躊躇したりしてしまって、それが更に自らを窮地に追いやっていく。
そこを楽しめるかどうかが、本作の場合肝になります。
人死には当然大量に出てくるし、血飛沫飛び交う内容ではあるけど、恐怖感を抱かせるというよりは「ゲームに負けたプレイヤーが陰惨な死亡という格好で退場する」という風合いのアッサリした描写になっておりますので、このキャラクター小説化したゾンビものを楽しめるかどうか。
個人的には最初楽しんでいたものの、段々フラストレーションが溜まり始め、ちょっとどうにかならんものか……と思ったところでようやっとお嬢様が本気モードになってくれてひと安心、という印象でした。 続きを読む投稿日:2014.01.04
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RIKO ─女神の永遠─
柴田よしき / 角川文庫
女性という烙印、男性であるという呪い
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事件は悪質・狡猾な男子誘拐。誘拐とともに被害男子のレイプ映像を親に送り、ギリギリ支払可能な身代金をいただいてしまうというもの。
この事件の謎解きを進めつつ、男性優位社会の最右翼たる刑事警察で一度放逐さ…れた主人公・緑子の過去が明かされていく。
男である事によるプライドから来る、根拠なきレッテルや組織内で隠蔽される犯罪。その被害に遭ってなお警察組織に留まり事件を追う緑子の生き方とは。
事件の謎自体は割と途中で読めてしまったのだが、この底流に存在している男対女の構図が非常に重いタイトルだった。
女であるというだけでレッテルを貼られ被害を受けねばならない様は何か生来の烙印を押されているかのような辛さがあり、また男であるが故にプライドで自らを支えねば生きられない、性衝動に身を任す事を自制できない様は長い年月の男性優位の中で腐食発酵し醸成された醜い呪いのような印象を受ける。
それでも刑事警察というライフワークを変えられないとすれば、緑子はどういう生き方を選択するのか。
男性読者の一人として、性衝動は自制できているもののプライド依存な生き方を否定しきれない身として、読みながら胃がキリキリくるような思いを味わった。 続きを読む投稿日:2014.01.05
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藁の楯
木内一裕 / 講談社文庫
映画未見状態で読了。
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基本的に読後爽快感とかいったタイプではないですね。色々胸くそ悪くなる思いや苦々しい気分を味わうタイトルです。
残忍な幼女強姦殺人犯を送検せねばならない、でも被害者の一人の親が大金持ちでその命に莫大な懸…賞金を掛けたため、それが命がけの道行きになってしまいましたというお話。
青年漫画「BE-BOP HIGHSCHOOL」の作者だけあって、テンポの良さとスピード感は秀逸です。場面や舞台装置を次々に切り替えながら、ちゃんとそれぞれでイベントが発生してエピソードになっている。
終盤、このキツい話に救いが見えるか…と思わせて、案の定更に酷い「落とし」が待っているので、そういう展開に抵抗があるかどうかが、読んで楽しめるかどうかの目安にはなるでしょうか。 続きを読む投稿日:2014.02.11
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ファンタジスタドール イヴ
野崎まど / ハヤカワ文庫JA
歳食った童貞は禄な事しません。
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アニメ「ファンタジスタドール」のタイアップ企画小説であるにも関わらず、その作風の異様さ(著者の芸風としては割と普通のようだが)で話題になっていたので、興味本位で購入。
序盤~中盤までは気鋭の理論物理…学者の半生を描いた「SF版『人間失格』」。
終盤になって風合いの変わったキャラが出てきてから展開も変わっていき、果てに「そりゃねーよ幾ら何でも」とツッコミ入れたくなるような大事件が起こり、それを潮に主人公の人生そのものまで大変転。
もうラスト辺りは「ああ、何かこのノリ既視感あると思ったら、昔『電車男』が流行った頃に当てつけて刊行された『電波男』だわどいつもこいつも」という世界。
感想を一言で言えば表題の通りとなりまして。
中々不思議なノリで、アニメ本編より(別な意味で)面白かったです。 続きを読む投稿日:2014.01.02