あかんたれさんのレビュー
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97
このユーザーのレビュー
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ニンジャスレイヤー(1) ~マシン・オブ・ヴェンジェンス~
ブラッドレー・ボンド+フィリップ・N・モーゼズ, 余湖裕輝, 田畑由秋, 本兌有・杉ライカ, わらいなく・余湖裕輝 / ヤングエース
アイエエエ!ニンジャナンデ!? ニンジャのウキヨエ?!
11
左脳は要りません。一時的に捨ててください。
これは「日本について誤ったイメージを抱いている外国人」が、その溢れるファンダジー精神と日本への幻想を悪魔合体させた「アメコミでしかお目にかからぬ日本っぽいど…こか」を舞台に作り上げた謎世界です。
……という触れ込みです(上記の設定の下に外国人名義を使った、日本人の執筆だと個人的には推測している)。
そういう設定の話を、「アクメツ」「コミックマスターJ」のコンビがコミカライズしてるワケですから、もう頭使うだけ無駄です。
何も考えずに、このインチキ日本ワールドのアクション活劇を楽しみましょう。
続きを読む投稿日:2014.01.03
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はなとゆめ
冲方丁 / 角川文庫
時代小説二作とは趣が違う歴史小説
6
天地に光圀と、男の心意気とか侘しさを熱く描き出した著者の新作という事で、事前調査もせずに勢いだけで購入。
タイトルが……うん?白泉社?(それは違う とか思ったりしたけれど、内容的にもかなり違うタイプの…ボール投げてきたなという感じ。
「この世をば望月と…」を詠んだ事、安倍晴明の上司としてなどで知られる平安宮廷政治の頂点・藤原道長の弱さやドス黒さを、ライバル側の中宮やそれに仕える清少納言の側から描いております。
(主人公が清少納言故に、語調は抑えながらもかなり辛辣)
現世的な栄華や絆は儚いけれど、心から愛し合えた者同士の幸せは一瞬であれ永遠の輝きを放ち、魂で結ばれた絆は永遠である事が淡々と描かれていきます。 続きを読む投稿日:2014.01.02
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人として軸がブレている
大槻ケンヂ / 角川文庫
いつもの大槻さんですね。
6
ミュージシャンであり小説家でもあり江戸川乱歩に一家言持ち、オカルトネタにも強い、とマルチに活躍している大槻ケンヂの、ぴあ連載コラム(と思われる)書籍化。
武道館ライブを何度もやっておきながら、プロレ…ス観戦の思い出やクラプトンのライブの客席でアナウンサーの小倉氏を見かけた時の思い出しか無いとか、もういい歳なんでライブ中に血糖値が足りなくなってチョコを要求したエピソードとか、フェス参加時に(筋少復活までのブランクが長かった事もあり)他のミュージシャンと楽屋で会話を弾ませようとオカルト誌「ムー」を持参したりとか、色々期待通りの日々を送っている様が赤裸々に綴られています。
……ああ、勿論後進ミュージシャンのために為になる事も書いてます。事務所に搾取された体験談とか、親がライブに来た時は関係者席のセンターには座らせるなとか。
個人的には、ちょうど執筆時期が筋少復活や絶望少女隊(「さよなら絶望先生」アニメ時の声優ユニット)活動時期とかぶっていたため、異色キャラな声優の小林ゆうのエピソードが収録されており、そのインパクトが強かったので、そればかり脳裏に焼き付いてしまいましたが。
まぁ具体的に何があったかは読んだ人のお楽しみ、という事でご容赦を。 続きを読む投稿日:2013.12.11
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『坊っちゃん』の時代
関川夏央, 谷口ジロー / 漫画アクション
読む明治文化史
6
明治の文豪・夏目漱石を中心キャラクターに据え、「江戸文化意識を持ちつつ、明治の急速かつ性急な西欧模倣化に呻吟する人々」を描いた長編シリーズ。
漱石の周囲の知人、その更に知人に同時代の著名人を配して、時…代の空気とそれぞれの人物が抱く違和を丁寧に描き出しています。
知人の知人…というプロセスを6段階経ればほぼ世界中が網羅できるとは言われておりますが、当然ここまで著名人ばかりが揃うのは「歴史のif」。
とはいえ、幾つか史実と齟齬が認められるものの、登場人物のプロフィールを詳細に調べ上げた上での創作なので、「こういう史実があったかもしれない」説得力も非常に高いです。
原作者関川氏の調査・構成力も巧みですが、時代風俗や背景に至るまで丁寧に描き上げた谷口氏の作画力の高さも素晴らしい。
漱石の「坊っちゃん」執筆期(日露戦戦勝直後)を主軸にした本書=1巻からシリーズを重ね、やがて大逆事件を経て「明治という時代思潮の終焉」を描いて本作は漱石の逝去とともに完結します。
明治の文芸史・文学史や近代日本史の副読書たりえるクオリティーを持った、数少ない良書と言えるでしょう。 続きを読む投稿日:2014.01.25
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鍵のかかった部屋
貴志祐介 / 角川文庫
締まりのいい密室トリック集
6
「硝子のハンマー」(シリーズ1作目)を読了した後ウッカリ本書を読んでしまい、途中で2作目を読み忘れていた事に気付くという迂闊な真似をしてしまったが。
連作短編シリーズのメリットというか、割とそういう点…に気を遣わずに読了できた(収録最終話は、流石に以前に事件のあった劇団ネタだったので若干厳しかったが)。
連作短編故に、防犯探偵・榎本と青砥弁護士の2人のキャラさえ最低限把握していればいいし、短編で密室トリックを扱っているためキャラの背景事情や関係性などを掘り下げるような、ある意味「寄り道」が無く、純粋に知的遊戯たるトリックの謎解きに集中して楽しめる。
「黒い家」等のホラーサスペンスや、「新世界より」のようなSF、「悪の教典」のようなピカレスクでもない、推理作家としての貴志祐介を気軽に満喫できるシリーズだと思う。 続きを読む投稿日:2013.12.11
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心臓に毛が生えている理由
米原万里 / 角川文庫
日本人でありながら外国人
4
著者の米原万里は日本人だが、親の仕事の都合で幼少時長期間プラハ(チェコ)にて過ごしていた。
当時は共産主義体制全開なので、当然学校に行くといってもソヴェト学校で、学校内ではロシア語が公用語。
その結果…、長じてロシア語同時通訳という職を得る事になるのだが。
そのロシア事情の通暁ぶりは、外務省在籍時にロシア通として通っていた佐藤優すら驚くほどである(政治的観点から捉える佐藤に対し、生活者視点を確実に押さえていく米原)事は、著者の名著「嘘つきアーニャ~」の解説でも触れられている。
反面、当人は日本語で書く自分の文章に満足できていない事が本書で触れられている。ネイティブなら自然な崩し方を当たり前にしている所で、非常に綺麗な・丁寧な書き方をしてしまう所が、所謂「よく勉強した外国人」的になっていると感じているようで。
だが、それが逆に良かったのではないだろうか。
当たり前の日本人の視点とは違う、ロシア人・プラハっ子的視点で世界を捉える事ができる点が、著者の大きな魅力であるのも事実だが、日本語は崩し方に慣れてしまうとすぐ情に流されたウェットな文体になってしまうように思う。そのウェットな文体では、「嘘つきアーニャ~」のような、心にジワジワと染みこんでいくような感銘が出て来ないのではなかろうか。
そんな著者の日々のエッセイ。「嘘つきアーニャ~」執筆の裏話なども掲載されており、楽しく読了させて貰った。 続きを読む投稿日:2013.11.04