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あかんたれさんのレビュー
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  • 富士山さんは思春期 1

    富士山さんは思春期 1

    オジロマコト

    漫画アクション

    モゾモゾするほど歯がゆくて、ウズウズするほどもどかしく。

    女バレ部高身長少女のヒロインと、ひょんな事から付き合う事になった男バレ男子。 イメージとしては分かるけど、具体的に「男女交際(おつきあい)」って何をしたらいいのかよく分からない。ちょっと拗れたりする事もあるけど、でも毎日二人で楽しい。 そんな二人の学生生活です。 私のような年寄りは、恥ずかしさともどかしさと、(今の自分の身の)やるせなさに憤死しましょう。 作画は丁寧でヒロイン冨士山さんの描写も実に健康的。でもよくよくディテールを見ると、ちょっとドキドキするような描き込みが施されていて。そのバランスが作品内容と実にマッチしています。

    3
    投稿日: 2014.01.18
  • 機動戦士ガンダム デイアフタートゥモロー -カイ・シデンのメモリーより-(1)

    機動戦士ガンダム デイアフタートゥモロー -カイ・シデンのメモリーより-(1)

    ことぶきつかさ,矢立肇,富野由悠季

    ヤングエース

    安彦良和氏推薦の、デイアフタートゥモロー・第二作

    新訳「Z」合わせ企画だった前作が「Z」の舞台裏ストーリーだったのに対し、続編シリーズとなる本作は敢えて時間を遡って1stガンダムの時代がメインになります。 一年戦争も終わり何年も時代が過ぎ(グリプス戦役も終わっていると推察されますが著者は意図的に時代設定を明示していない)、サイド3で開催される事になった一年戦争の戦争記念展。その監修者として招聘されたジャーナリスト・カイが当時の様々なイベントを振り返りつつ、新たな政治の暗闘や紛争の火種を見出す物語。 前作同様に「重箱の隅をつつく」展開は変わらず、TVや映画のストーリー上の描写の隙間隙間に「こんな事があったかもしれない」「あってもおかしくない」エピソードを見出していく手法が採られています。 前作と同ボリュームの2巻でストーリーが決着し、大団円というほど歯切れが良くは無い(政治問題である以上仕方無い)にしても話が完結しておりますが、また何らかの「重箱の隅」を見つけ出して新作を読んでみたいと思わされます。 安彦良和氏が「ガンダムの〇年後(キャラクターたちの所謂『戦後』イメージ)を感じたのは初めてだ」と激賞したのは、伊達ではありません。

    4
    投稿日: 2014.01.18
  • 機動戦士Zガンダム デイアフタートゥモロー -カイ・シデンのレポートより-(1)

    機動戦士Zガンダム デイアフタートゥモロー -カイ・シデンのレポートより-(1)

    ことぶきつかさ,矢立肇,富野由悠季

    ヤングエース

    新訳「Z」の裏面史

    新訳「Z」劇場三部作の公開時に刊行された増刊「Zガンダムエース」に掲載されたシリーズ。 1stシリーズ同様に「Z」も劇場三部作にシリーズを要約する関係上、明確にTVと路線を異にしたワケで無いにも関わらず描写を省かれたキャラやシーンが幾つも存在し、それ故にTVシリーズを知っているファンにとってモヤモヤする気分になったりするワケですが。 本シリーズは意図的に「そういう、メインのストーリーラインで描かれなかった舞台裏」を描く事に主眼目を置いた作品です。1巻目は主にTV版「Z」キャラを扱ってますが、2巻目は1stのメインキャラも勢揃い。 こういう舞台裏を描くにあたり、カイ=シデンのジャーナリストという立場は実に都合が良く、また「カイがアチコチで集めた情報を、地球で隠遁中のセイラの元に届けに行く」というストーリーの軸も設定されているため、彼が何を調べ、追っているのかを考えながら読み進められ、読み切り連作特有の散漫さもあまり感じません。 著者が自嘲気味に「重箱の隅をつつくシリーズ」と称していますが、それが作品として成立するためには、元の作品や設定に対する強い敬意と配慮が無ければ不可能です。故に本シリーズはガンダム好きな人が裏面史を楽しむだけでなく、著者の作品愛を様々な描写から読み取り満喫するための書と言えます。

    4
    投稿日: 2014.01.18
  • RIKO ─女神の永遠─

    RIKO ─女神の永遠─

    柴田よしき

    角川文庫

    女性という烙印、男性であるという呪い

    事件は悪質・狡猾な男子誘拐。誘拐とともに被害男子のレイプ映像を親に送り、ギリギリ支払可能な身代金をいただいてしまうというもの。 この事件の謎解きを進めつつ、男性優位社会の最右翼たる刑事警察で一度放逐された主人公・緑子の過去が明かされていく。 男である事によるプライドから来る、根拠なきレッテルや組織内で隠蔽される犯罪。その被害に遭ってなお警察組織に留まり事件を追う緑子の生き方とは。 事件の謎自体は割と途中で読めてしまったのだが、この底流に存在している男対女の構図が非常に重いタイトルだった。 女であるというだけでレッテルを貼られ被害を受けねばならない様は何か生来の烙印を押されているかのような辛さがあり、また男であるが故にプライドで自らを支えねば生きられない、性衝動に身を任す事を自制できない様は長い年月の男性優位の中で腐食発酵し醸成された醜い呪いのような印象を受ける。 それでも刑事警察というライフワークを変えられないとすれば、緑子はどういう生き方を選択するのか。 男性読者の一人として、性衝動は自制できているもののプライド依存な生き方を否定しきれない身として、読みながら胃がキリキリくるような思いを味わった。

    1
    投稿日: 2014.01.05
  • あるゾンビ少女の災難I

    あるゾンビ少女の災難I

    池端亮

    角川スニーカー文庫

    おっとりお嬢様がゾンビ。(1・2巻通読)

    ゾンビといってもハイチの呪術に由来するアレではなくて。 寧ろヨーロッパの歴史の影に見え隠れしてきた錬金術の成果による「死者蘇生」的なアレ。 近世の、そんなゾンビお嬢様が現代まで封印されていたのが復活しちゃった!さてさてどうなる!?といったタイプのお話ですね。 知識や言語上の不備をサポートするドライな幼女メイド・アルマのサポートのもとで、封印中に奪われた(奪われたが故に復活した)エネルギー源の「石」の奪還に乗り出すお嬢様だが、首が飛んでも目が潰れても指が砕けても平気で、人間離れした身体能力(巨大な象を楽々抱え上げられるほど)を有しているにも拘わらず、価値観が近世の箱入りお嬢様のまんま。 だから物語を牽引する動機付けが明確な割に、そのキャラのために「箸の上げ下ろし」的に色々な所で躓きまくる。 動機付けのドライブするがままにストーリーを進めて貰おうとすれば、石を奪還した上で関係者一同鏖(みなごろし)で自らの存在を改めて秘匿するって所が順当な目的地になるワケですが、チャラい大学生に甘い言葉かけられて浮ついたり、人殺しが可哀想だと躊躇したりしてしまって、それが更に自らを窮地に追いやっていく。 そこを楽しめるかどうかが、本作の場合肝になります。 人死には当然大量に出てくるし、血飛沫飛び交う内容ではあるけど、恐怖感を抱かせるというよりは「ゲームに負けたプレイヤーが陰惨な死亡という格好で退場する」という風合いのアッサリした描写になっておりますので、このキャラクター小説化したゾンビものを楽しめるかどうか。 個人的には最初楽しんでいたものの、段々フラストレーションが溜まり始め、ちょっとどうにかならんものか……と思ったところでようやっとお嬢様が本気モードになってくれてひと安心、という印象でした。

    1
    投稿日: 2014.01.04
  • ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った

    ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った

    堀江貴文

    角川書店単行本

    キュレーション文化の一つの水準

    取引先の偉い人の強いオススメで読むだけ読んでみた。 かの有名な堀江氏が投獄中に読んだ本のレビュー集である。 確かに時折意想外なチョイスの本が登場したり、変わった切り口を提示したりしておるのですが(巻末対談で、キュレーションサイトを運営している成毛氏も驚いているほど)。 元々マネタイズ周り以外の言動が浮き世離れした感のある著者の、あくまでレビュー集だから、延々浮き世離れした(というか他人事視点な)文面が続く展開にもなっておりまして。 そういう意味では、元々「本なんてインスピレーションと勢いで買え」派な身としては、やや食い足りない。 キュレーション情報なんぞ参考情報でしかないからblog程度で十分、という価値観なため、「今の、レビュー集の書籍化でお金を取るレベルとしては、こういう内容」という参考例にはなりました。

    1
    投稿日: 2014.01.03
  • ニンジャスレイヤー(1) ~マシン・オブ・ヴェンジェンス~

    ニンジャスレイヤー(1) ~マシン・オブ・ヴェンジェンス~

    ブラッドレー・ボンド+フィリップ・N・モーゼズ,余湖裕輝,田畑由秋,本兌有・杉ライカ,わらいなく・余湖裕輝

    ヤングエース

    アイエエエ!ニンジャナンデ!? ニンジャのウキヨエ?!

    左脳は要りません。一時的に捨ててください。 これは「日本について誤ったイメージを抱いている外国人」が、その溢れるファンダジー精神と日本への幻想を悪魔合体させた「アメコミでしかお目にかからぬ日本っぽいどこか」を舞台に作り上げた謎世界です。 ……という触れ込みです(上記の設定の下に外国人名義を使った、日本人の執筆だと個人的には推測している)。 そういう設定の話を、「アクメツ」「コミックマスターJ」のコンビがコミカライズしてるワケですから、もう頭使うだけ無駄です。 何も考えずに、このインチキ日本ワールドのアクション活劇を楽しみましょう。

    11
    投稿日: 2014.01.03
  • ちょっと!そこの男子!

    ちょっと!そこの男子!

    津留崎優

    ヤングエース

    リア喪によるリア喪のための慟哭に満ちたブラック4コマ

    薔薇色の学園生活とかリア充とか、女子率の高い共学校とか、夢は破られるために観てるようなもんだよね!(断言 ……閑話休題。 女子率の高い共学校なのにこれといって美人が居るわけでもなく、マジョリティーの圧力で男子全員パシリ同様レベルの扱いをされ、それでもメゲずに抗う男子3人の、かなり背中の煤けた4コマです。 ネタがいちいちドス黒い上に男子の(女子からすれば)身勝手な視点がベースになっているため読者を間違いなく選びますが、ハマれば病みつきになるタイトルですね。

    1
    投稿日: 2014.01.02
  • ファンタジスタドール イヴ

    ファンタジスタドール イヴ

    野崎まど

    ハヤカワ文庫JA

    歳食った童貞は禄な事しません。

    アニメ「ファンタジスタドール」のタイアップ企画小説であるにも関わらず、その作風の異様さ(著者の芸風としては割と普通のようだが)で話題になっていたので、興味本位で購入。 序盤~中盤までは気鋭の理論物理学者の半生を描いた「SF版『人間失格』」。 終盤になって風合いの変わったキャラが出てきてから展開も変わっていき、果てに「そりゃねーよ幾ら何でも」とツッコミ入れたくなるような大事件が起こり、それを潮に主人公の人生そのものまで大変転。 もうラスト辺りは「ああ、何かこのノリ既視感あると思ったら、昔『電車男』が流行った頃に当てつけて刊行された『電波男』だわどいつもこいつも」という世界。 感想を一言で言えば表題の通りとなりまして。 中々不思議なノリで、アニメ本編より(別な意味で)面白かったです。

    1
    投稿日: 2014.01.02
  • グラスホッパー

    グラスホッパー

    伊坂幸太郎

    角川文庫

    巧みな伏線と複数視点で描かれる、現代殺し屋群像

    愛妻を車でひき殺された主人公。しかし運転者に故意どころか悪意まで窺われるのに微罪という顛末。さあどうする!? そこで復讐を目論む主人公だが、相手は裏社会で相当の顔。ならばそこに自ら踏み入るよりない。物語はこの段階からスタートします。 メインの主人公は上述の素人。それ以外に2人のプロが語り部パートを受け持つ格好の、複数視点でのストーリー展開。 それぞれが当初無関係だった筈なのに、ある事件を切っ掛けに全員が当事者として関わる羽目になってしまい、さあトーシロのメイン主人公はどうするどうなる、そしてこの騒動の元になった事件の真相は何なのか。 それぞれの語り部パートで提供される情報が絡み合いもつれ解れた末にスパッと決着させる展開はお見事。 リーダビリティーの高い文体でもあるので、一気に読了できます。

    2
    投稿日: 2014.01.02