
ガール
奥田英朗
講談社文庫
生々しさとユーモアあふれる短編集
奥田さんの小説ならではの味がしっかりと出ています。 鋭い人間観察から作られる登場人物たちが生きているかのように生々しく、皮肉っぽくも愛情あふれるユーモアがアクセントをつけていると思います。 短編集なので読みやすく、文章のテンポもいいです。ただ、会社内部でのやりとりなど、生々しすぎて息抜きで読むという感じではなくなっているようにも感じました。そこは好みが分かれるかもしれません。
0投稿日: 2016.02.16ホーンテッド・キャンパス
櫛木理宇,ヤマウチシズ
角川ホラー文庫
表紙の雰囲気どおりのエンターテインメントとしてのホラー作品
ホラーは、貴志さんの小説はほぼ全部読みましたが、特別好きというわけでもありません。だからか、ライトなホラーテイストが小気味よく、登場人物同士のテンポの良いかけ合いもあいまって、気楽に楽しめるエンターテインメント作品と感じました。 元となっている心霊設定などは、トンデモ設定ではなく昔からあるものを基盤にしているので、大人が読むには軽すぎるということもありません。ホラーとしては微妙なラインですが、小説としては十二分に楽しめる内容なので、読者賞なんでしょう。 主人公があまりに純なためか、恋愛要素は薄めです。中学生か!と言いたくなるような微笑ましさで、爽やかな余韻を残すのに一役買っていると思います。
1投稿日: 2016.02.13SとSの不埒な同盟 2
野村美月,ふゆの春秋
ダッシュエックス文庫DIGITAL
完結の2巻
1巻にひきつづき読まされてしまった2巻。 この2巻でこのシリーズは完結となります。 このネタで長編にはできないだろうから、 このくらいがちょうどいい長さかなと思います。 美園さんがさらにパワーアップしてます。 大輝が最後に美園さんに語りかける言葉は まさにそとのおりだな!と(笑)。 窓子先輩はつきあいはじめからかなしい結末が予想されて、 どうなるのかと思いましたが、幸せそうになってよかった。 終盤の展開は、こっちまでドキドキしちゃいました。 ジェットコースターにのってもなんとも思わないふたりが その展開をどう感じるのか。 なんだかんだとページをくる手が止まらず、 めんどくさい人たちの結末をみとどけてしまいました。 またまた巻末に美園さんの日記があります。 ゾンビについての心境の変化がほほえましいです。
0投稿日: 2016.02.04SとSの不埒な同盟
野村美月,ふゆの春秋
ダッシュエックス文庫DIGITAL
ピュアなラブストーリー・・なのかな?
主人公たちが変態なので、ピュアかどうかはわかりませんが、自分の欲望に素直で、くすりと笑わされるシーンが多いです。ここまであけすけなのは、そうそうないんじゃないでしょうか。 あとがきでもふれられていますが、第1話がそれ単体で完結している雰囲気があり、第2話からは、とってつけたようだな?と感じてしまうのは仕方ないところでしょうか。 竹岡さんの小説は、サブキャラの女の子に魅力的な子が多い(文学のななせとか)ですが、このシリーズでも美薗さんがいい味だしてます。どんどん存在感が大きくなるというか。巻末のおまけ日記も楽しい。 主人公たちは変態だけど、ほほえましいラブコメ小説だと思います。
0投稿日: 2016.02.04天使の卵 エンジェルス・エッグ
村山由佳
集英社文庫
清冽な小説
端正で清潔、少し愁いをおびた、寂しげな雰囲気。 彼女に初めて会ったときの表現ですが、そのまま小説全体のイメージと重なります。 最初の機会に恋を感じないなら・・の部分は、彼女にもあてはまったのでしょうか。 ひきこまれて一気に読んでしまった後、はかなげで透明な読後感が残りました。 恋愛小説としてはストレートなつくりで重厚感はありませんが、そこがいい。 そんな小説だと思います。
0投稿日: 2016.02.01ゲーマーズ!2 天道花憐と不意打ちハッピーエンド
葵せきな,仙人掌
富士見ファンタジア文庫
一巻が気に入ったのなら楽しめると思います。
基本的なノリは一巻からのものなので、一巻が気に入ったのなら十分楽しめると思います。ユーモアセンスも健在。 ただ、超展開も健在で、ミスミ君の話は本当に必要だったのか…。意味が取りにくかったです。 ラストは予想外ではありませんでしたが、本当に?と興味を惹かれる展開と結末。飲み屋さんの下りは笑いましたね(笑)。
1投稿日: 2016.01.30ゲーマーズ! 雨野景太と青春コンティニュー
葵せきな,仙人掌
富士見ファンタジア文庫
すれ違い系ラブコメ?
ここまですれ違いを大きく持ってきたラブコメは、なかなかに新鮮に感じました。 一巻なので導入という感じなのですが、シリーズの空気やキャラの横顔はしっかり描かれています。 安定してくすりと笑えるところが多くて、会話の軽妙なやりとりなどに作者さんの味が出ていると思います。 でも、時々話がぶっ飛ぶというか、置いてけぼりにされる箇所がありますね。作者さんの中では盛り上がってるんだろうなあ、って感じのところ。 それを差し引けば、間違いなく良作だと思います。
2投稿日: 2016.01.30ゲーマーズ!3 星ノ守千秋と初恋ニューゲーム
葵せきな,仙人掌
富士見ファンタジア文庫
ぼたもちもぐもぐのすけ
超リア充(?)となったケータの苦闘を描く前半と、水着を挟みたいんだろうと思われる中盤と、物語が動く終盤。 この作者さんの前作を読んでないので、生徒会長のあたりは???という感じでしたが、後半の盛り上がりはページをくる手がはやまる展開でした。 人生ゲームのマスに書かれたことがこの先待ってるのでしょうか。はやくも次の巻が待ち遠しいです。
1投稿日: 2016.01.30ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
大森藤ノ,ヤスダスズヒト
GA文庫
熱い展開と純真な主人公のどストレートな物語
うさぎをイメージしたと思われる主人公は、凄まじい才能を持っているわけでも、イケメンでもないし、男気に溢れる勇猛な男というわけでもありません。 でも、その彼が困難にぶつかり、強敵に遭遇し、それを小さな体に勇気を奮い立たせて乗り越えていく様が、実に清々しい読後感を生んでいると思います。 世界設定の作り込みが曖昧で、いきなりエルフやドワーフといった単語を当然のように使うところ、言葉遣いにやや違和感を覚える箇所があるところ、一人称と三人称の切り替えがスムーズではないところ、そういった小説としての粗はあると思いますが、ぐいぐい読ませてしまう良さも持ち合わせています。 僕はとても楽しめました!次の巻も気になりますね!
0投稿日: 2016.01.28六花の勇者 6
山形石雄,宮城
ダッシュエックス文庫DIGITAL
決着
愛という言葉がこんなに連続して使われる小説も珍しいなってくらい愛があふれてます(笑)。ってのは冗談ですけど、テグネウの愛の力についてあいまいなままだったのは少し残念でした。発動条件を満たすというのはどういう対象で、どういう状況なのか?能力の加減をする条件は?ということを、もう少し具体的に説明してほしかったです。そこだけは残念。 他者をいたぶることで悦びを得ていたテグネウですが、自分の痛みには弱い・・というくだりはテグネウにふさわしいと思います。最後まで意地悪して果てるところも。 アドレットは次の巻で復活すると思いますが、どう復活するのか?がとても気になります!フレミーの支えなのか、仲間の叱咤なのか、一輪の聖者の続きの言葉なのか。復活してひとかわむけたアドレットが見たい。からっぽになった地上最強の男の今後に期待です。やっぱり、一番人間臭い(?)アドレットが主人公にふさわしいと思うので!
2投稿日: 2015.10.21