litsさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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沈黙
遠藤周作 / 新潮社
内容は重めですが、遠藤さんの小説の中で一番好き
11
遠藤さんは「不気味な静寂」を実に巧みに表現する作家さんだと思います。その場の空気、ほこりっぽさなんかまで伝わってきて、主人公と同調して息苦しささえ感じるほどです。この作品でも村に踏み込んだときの静寂が…、恐ろしい予感と共に描き出されており、真にリアリズムを追及する作家なんだなとつくづく思います。
クライマックスは、かつて敬愛した師との残酷な対面の場面。残酷なのは、なにもひどい体罰を加えられたり、むごい死に様の死体を見せられたりということではないのです。一番恐ろしい恐喝者は叫んだり激することをしないと言います。まさに、それ、です。
遠藤さんは、「私はカソリックだが、私が生きていた時代に踏絵があったら、私は絶対踏んだだろう。間違いない。」というようなことを別のエッセイ集で語っています。そう素直に吐露できる人の書いた踏絵の話、興味がわきませんか? 続きを読む投稿日:2016.07.20
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3月のライオン 12巻
羽海野チカ / ヤングアニマル
続きを読める幸せを感じました
6
前の巻はシリアスなお話が多かったので、ゆり戻し(?)で、明るい話が多いと感じました。
一番目立ってるのは雷堂さんじゃないですかね(笑)。棋竜防衛なるか?奥さんは戻ってきてくれるのか!?滑川さんはやり…すぎなくらいの存在感で、ついつい笑ってしまう独特の間があって好きです。
あかりさんのお相手探し(?)も進展を見せます。夏祭りで転びそうになったあかりをとっさに支えた二人が最終候補なのかな?僕は年取ってる方の人の方が川本家の風景に溶け込む気がしました!
零君でなくても絵日記…というか壁紙にしたい暖かな団欒のコマ、配信してくれないかなあっておもわず思っちゃうくらい素敵な絵です。羽海野さんの絵は、絵自体に愛情がこもってるというか、こういう場面が好きで仕方ないんだろうなって感じさせる暖かみがあります。
ずーーっと待ってた甲斐があった12巻。次はもう少し早く読みたいけど、面白いからいいかな…でもすぐにでも読みたいです(笑)。 続きを読む投稿日:2016.10.02
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呉越春秋 湖底の城 五
宮城谷昌光 / 講談社文庫
飛躍した子胥を待ち受けるもの
5
公子光が呉王闔廬として即位し、その陪臣であった伍子胥がいよいよ本領を発揮していきます。そして、満を持して稀代の戦略家である孫武を呉に招くが…という内容です。今まで人と時を得ずに苦労を重ねていた子胥がど…う羽ばたくのか?が、この巻の読みどころです。
力と力のぶつかり合いだった戦場に論理を持ち込むと、こうも変わるのか!という爽快感をかんじつつ、子胥の悲願に近づいていく緊張感を存分に楽しめました。目玉をくり抜く故事までこの小説やるのかな…?宮城谷さんらしからぬ(?)激しい人生を送った主人公の今後をどう描くのかに興味津々です! 続きを読む投稿日:2016.12.11
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恋する日本語
小山薫堂 / 幻冬舎文庫
タイトルがすてきです。
5
タイトルに惹かれて購入してみました。「正しい」や「綺麗な」だとなんか教科書っぽいので、センスが香るネーミングだと思います。
内容は、ほぼ恋愛関係に絞ったもので、女性向きかもしれません。彼の家に泊まる…楽しみの一つが彼のシャンプーをこっそり使うことというのは、微笑ましいなと思いますが、男がやってたらドン引きでしょ…(笑)。
reader端末でも読めますが、iPadで読む方が、より本の雰囲気を楽しめるのではないかと思います。難点は、値段に比して内容が薄いことでしょうか。軽い散文詩のような形態で、おおきなイラストが入っているとはいえ、文章量は少な目です。50編くらい入っててちょうどいいかな?と個人的には感じました。 続きを読む投稿日:2017.02.28
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ゴーマニズム宣言外伝 女について
小林よしのり / 幻冬舎plus+
タイトルに内容がつりあってないですが、つまらないわけではないです。
5
大仰な(?)タイトルの割には、踏み込みが足りず、こんなものかなあというような中途半端な内容でした。一人一人との関係を描くより、女性についての小林さんの考えをもっと読みたかったです。練炭殺人の章は読み応…えがありましたけれど。
安売り中だったから、読み流しましたが、定価分の内容があるかといえば、ちょっと苦しい。申し訳ないのですが、これならゴーマニズムの本編を読んだ方が内容があるのではないかと思います。 続きを読む投稿日:2016.12.18
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ワールドトリガー 17
葦原大介 / 週刊少年ジャンプ
読みにくさがないところがいいところだと思います。
5
オサムのワイヤーアシストや、チカの隠し球といった戦術的な要素が強いのに、読みづらくないところが、この漫画の好きなところです。緩急のつけ方がいいというか。真面目な戦術会議に差し込まれる生駒さんのナスカレ…ー・・すごくいいです。
この巻は、表紙でもある香取さんがメインになってきます。むかつく!を連発する敵対キャラとして登場しつつ、華との回想話がとても良くて、ついつい共感してしまいます。壁をくり抜くとこが好きだなー。家族ぐるみかよって(笑)。
後半は、ヒュースの入隊と次期遠征の話が本格化してきます。強力なメンバーを根こそぎ連れてくわけにはいかないだろうけど、今まで攻め込まれるままだったところに、新風が吹きそうで楽しみです。 続きを読む投稿日:2016.12.04