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litsさんのレビュー
いいね!された数354
  • 撫物語

    撫物語

    西尾維新,VOFAN

    講談社

    まさに千石撫子の総決算!

    この撫物語は、名前のとおり、千石撫子が主人公で一人語りをします。先の事件以降、不登校になり自室に引きこもっていた撫子ですが、バカバカしいけど笑えない事情により外の世界に飛び出すところから物語は始まります。 最年少ゆえか、そもそもの性格のせいか、シリーズの登場人物の中でも内面の揺れ幅がもっとも大きかったのが千石撫子だと思いますが、外の世界をまわるうちに、避けられぬ過去の自分と、そして所業と対面することを余儀なくされます。そこで、彼女がどう考え行動するのか、それがこの巻の見どころです。 また、この巻でコンビを組むことになる斧乃木余接がいい味を出していて、よき友人(?)であり、よき先導者(?)となっているのも楽しいところです。「?」をつけましたが、本当のところはどうなのかは、実際に読んで判断してみてください(笑)

    4
    投稿日: 2016.08.27
  • 下読み男子と投稿女子 ~優しい空が見た、内気な海の話。

    下読み男子と投稿女子 ~優しい空が見た、内気な海の話。

    野村美月,えいひ

    ファミ通文庫

    さらっと読めて読後感も良い、よくまとまった青春モノ

    一緒になにかをつくっている過程で、心が通じ合っていくという話の流れは、青春モノではよくあるパターンなんじゃないかと思いますが、それを綺麗に読ませる力量は、野村さんならではだと思います。ついでに、美人で近寄りがたい雰囲気なんだけど実は?というキャラを書くのもうまいですね(笑)。 野村さんといえば「文学少女」シリーズが有名で、あれは高校生にしては心を病みすぎじゃないか・・?と心配になるような(?)部分もありましたが、この作品の青と氷雪はごく普通の高校生です。氷雪がとびぬけた美少女なのはお約束ではありますが、普通の高校生が悩み、考え、すれちがい、ぶつかる様は素直に清々しいものがあります。 大作ではありませんが、さらっと読めて読後感も良い、よくまとまった青春モノだと思います。読んでいて、僕も昔気質の喫茶店で紅茶がのみたくなりました(笑)。

    2
    投稿日: 2016.08.22
  • 進撃の巨人(20)

    進撃の巨人(20)

    諫山創

    別冊少年マガジン

    絶望的な戦いの先にあるもの

    もはや兵団と呼べないくらいにまで打ち減らされ、追い詰められた調査兵団。キャラも相変わらずばったばった死んでいきます(泣)。 苦闘の末に掴んだわずかなチャンスをものにできるか?まさに手に汗握る展開です。リヴァイの奮闘にはカタルシスがありますね…!強い、強すぎる! 次の巻は28年の12月ですかあ…遠い。今から待ち遠しいです。

    2
    投稿日: 2016.08.19
  • マギ(30)

    マギ(30)

    大高忍

    少年サンデー

    新世界を飛び回るアリババが最高に主人公っぽいです!

    前の巻で、こんなに超展開しちゃって物語は大丈夫かな…と思ったものですが、生まれ変わった(?)アリババの躍動が清々しく、新世界の様子を無理なく理解させる話の持っていき方はさすがです。 紅玉と打ち解けるシーンが、個人的にはイチオシで良かった!

    3
    投稿日: 2016.08.19
  • はねバド!(8)

    はねバド!(8)

    濱田浩輔

    good!アフタヌーン

    地区予選もいよいよ大詰め

    まさかの橋詰さん表紙(笑)。もう一つのカラー画である綾乃の方が迫力があって表紙向きに見えますが、この巻の内容から考えると橋詰さんの方がふさわしい気がします。 地区予選の団体戦が本格的にスタートし、北小町のチームとしての戦いが描かれます。特にダブルスが熱く、重盛という好キャラの存在もあり、主人公である綾乃がにくらしかったくらい(笑)。 横浜翔栄の監督がホワイトボードに書いた言葉(?)が、部活してる感じがして、とても良かったです。

    2
    投稿日: 2016.08.07
  • はたらく魔王さま!16

    はたらく魔王さま!16

    和ヶ原聡司,029

    電撃文庫

    千穂は本当に普通の女子高生?

    最終決戦に向けての準備にバレンタインを絡めた一巻。きたる戦いの規模は大きいのですが、それとはほとんど関係ないところでそれぞれの感情が交錯するのは、このシリーズらしいですね。 この巻の主役は、間違いなく千穂です。普通の女子高生として扱われてきた彼女ですが、ほんとに普通なの!?という疑問に答えをくれたように感じました。 お話がまとめに入ると途端に刊行間隔が開くことがあるのですが、コンスタントに刊行してくれて嬉しいです(笑)。次巻も期待してます。

    1
    投稿日: 2016.08.07
  • 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

    色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

    村上春樹

    文春文庫

    寂しさとせつなさのなかに希望の光がみえる物語

    村上春樹さんは、当代トップクラスの文章家だと思います。彼の文章は、いつもふれるととても心地よいです。平易でしたしみやすくて気取ったところがなく、無駄をそぎ落としたストイックさを感じるほどです。かといって無味乾燥ではありません。ウィットのきいた比喩表現や言語感覚によるところなのでしょうか。海外でも村上作品は人気があるようですが、この心地よさは日本人ならではの喜びだと思います。 長々と村上さんの文章について書いてしまいましたが、中編小説としてもこの小説はよくできてます。1Q84のような長編とくらべるとスケールは比べるべくもありませんが、よくまとまっていて村上さんの小説の良さをしっかりと味わうことができます。ストーリーについてはネタバレになってしまうのであまり書けませんが、寂しさとせつなさのなかに希望の光がみえる物語と結末だったと思います。 やっぱり、村上さんの小説はいいなあ・・というのが素直な読後感です(笑)。

    2
    投稿日: 2016.08.06
  • 沈黙

    沈黙

    遠藤周作

    新潮社

    内容は重めですが、遠藤さんの小説の中で一番好き

    遠藤さんは「不気味な静寂」を実に巧みに表現する作家さんだと思います。その場の空気、ほこりっぽさなんかまで伝わってきて、主人公と同調して息苦しささえ感じるほどです。この作品でも村に踏み込んだときの静寂が、恐ろしい予感と共に描き出されており、真にリアリズムを追及する作家なんだなとつくづく思います。 クライマックスは、かつて敬愛した師との残酷な対面の場面。残酷なのは、なにもひどい体罰を加えられたり、むごい死に様の死体を見せられたりということではないのです。一番恐ろしい恐喝者は叫んだり激することをしないと言います。まさに、それ、です。 遠藤さんは、「私はカソリックだが、私が生きていた時代に踏絵があったら、私は絶対踏んだだろう。間違いない。」というようなことを別のエッセイ集で語っています。そう素直に吐露できる人の書いた踏絵の話、興味がわきませんか?

    11
    投稿日: 2016.07.20
  • 羊をめぐる冒険

    羊をめぐる冒険

    村上春樹

    講談社文庫

    単品でも楽しめますが、前の作品を読んでおくともっとたのしめます。

    通称「初期三部作」の三作目。単品でも楽しめるけど、前の作品を読んでおくと「鼠」や「ジェイズバー」なんかに思い入れがいつの間にかできてしまって、より作品を楽しめるというか。なんだか不思議な感じです。 ただ、この「羊をめぐる冒険」は、前の2作と並べて語ることはできない作品だと思います。ページ数が圧倒的に違うのはもちろんですが、小説としてきちんとまとめようという強い意志を感じるのです。前の2作は良くも悪くも、村上春樹さんの才能があふれだした一部という一面もあって、小説としては中途半端なところもありますから(そこが良さでもあるのですが)。 この「羊をめぐる冒険」は、村上春樹さんいわく、専従小説家としてのデビュー作です。前の2作は、ジャズバーを経営しながら、そのかたわら小説を書いていたようですが、この作品からは、店を閉め、小説一本にしぼって書き上げていくことになったそうです。 そのせいか、全体としてのまとまりが良く、謎の解決を見ずに残りページ数が減ってきてはらはらする村上春樹さんの小説にしては珍しく(?)、大きな問題が解決されて終わるのが特徴といえば特徴かな?この作品、僕はとても楽しめました。 「いるかホテル」がいい味出してますね!あと、読後、無性に寂しくなるような終わり方なのも素敵です。

    4
    投稿日: 2016.07.20
  • 嘘つきアーニャの真っ赤な真実

    嘘つきアーニャの真っ赤な真実

    米原万里

    角川文庫

    現実は小説より奇なり?

    リッツァ、アーニャ、ヤースニ、それぞれと長い年月を経て再開する内容の小編集。どれも、東西冷戦下のプラハで学んだソビエト学校時代、冷戦崩壊後の現実を生きる再会編という流れです。 ソビエト学校の面々は、様々な国から集まっているだけに国際色豊かで、それぞれを生き生きと描写しているのが興味深いです。 また、共産主義社会に生きる人々の現実を、作者さんの皮肉を効かせたユーモアを交えて書かれていて、無味乾燥とは無縁で、自然とページを繰る手が早まってしまいます。 作者さんは、父親への想いから、やや共産主義に対して教条的なところがあり、社会の矛盾や建前には厳しいです。それだけに、うまく立ち回った観のあるアーニャへは若干突き放してます。そのアーニャを表題に持ってきたのはなぜか、ということは、読み進んでいけば自然にわかるようになっているように思います。 しかし、作者さんのバイタリティには脱帽です(笑)。

    1
    投稿日: 2016.07.13
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192021
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