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ココすけのままりんさんのレビュー
いいね!された数571
  • 遺跡発掘師は笑わない ほうらいの海翡翠

    遺跡発掘師は笑わない ほうらいの海翡翠

    桑原水菜

    角川文庫

    発掘作業をエアで体験できます。

    私事で申し訳ございません。実は私、『見返りの鹿』さん(島根の埴輪)の大ファンなのです。 なにかの気配に はっ!とこちらを振り返った瞬間。 この時代背景のなかで、なんで、どんな思いで、どんな人が、どうしても振り返った鹿さんを作りたかったの?。 こんな事を考えながら、弥生時代や古墳時代へ思いを馳せるのです。 明日香あたりに行くとあぜ道でさえ古代の人たちに出会えそうな雰囲気があります。 そして、今回のこの発掘。ここでは権威とお金のなんともやりきれない渦の中。締め付けられるような息苦しさ。 でも発掘作業をエアで体験できたし、萌絵さんの特技も確認できたし。 『絆は生きている。』『そして、未来を紡いでいける。』無量君と相良さんはこのことばを信じて疑わない。 シリーズ追って行きます。

    7
    投稿日: 2015.01.30
  • キッチン

    キッチン

    吉本ばなな

    幻冬舎

    人の心には宝石があると思わせる。

    とにかく読む程に、宇宙の闇にはじき出されるような不安な感覚と、何か大きなものに包まれるような安心感を、 そして一字一句すべてを諳んじてみたくなる、内面から湧き上がる表現力。 例えば、迷い選んだのが、さつきさんがうららさんに呼び出されて、厚着をして自転車に乗っていった時の情景と心理状態。 繊細でこわれてしまいそうな心情がすごく伝わってきます。 本当に読んで良かったなと思います。

    5
    投稿日: 2015.01.19
  • 博士の愛した数式

    博士の愛した数式

    小川洋子

    新潮社

    慈愛に満ちた直球真剣勝負!

    ☆4.5 眠れぬ夜に、ならばとフェルマーの、オイラーのなどと覗いてみても、さっぱり! でも博士の教えてくれたのは、宇宙を創った神々の手帳には、 その時すでに輝く数多の星たちの数や、時の流れの軸や空間の広がりの数値が記されていた。ということ。 そして人の英知がそれを証明しようと過去から未来まで永遠に。博士のように。 話はルート君が11歳になる前から、22歳までの長い年月の中での、慈愛に満ちた博士との3人の直球真剣勝負。 心を引きつけて止まない。 ついでながら、身近に存在する数字を探してみるとありました。 父親の誕生日で2月28日です。一番最初の素数2、完全数の28。なんか嬉しいです。

    1
    投稿日: 2014.12.17
  • 環八イレギュラーズ

    環八イレギュラーズ

    佐伯瑠伽

    中央公論新社

    スピード感!颯爽感!ドキドキ感!

    ある新聞に、この作品の編集者さんが今年(2014)の一押しで、担当できる幸運に感謝との書評。即決! まさしく、知性的な高校生たちの、そして、なんたるやこのスピード感・疾走する颯爽感とでも?・暗黒の世界と現実とのせめぎ合いのドキドキ感。 1分1秒を争う駆け引きの危うさの中でも、 4人それぞれの、愛すべきそれぞれの人たちへの想いが伝わってくる言うこと無しの熱い物語。      Kさんもお気に入りのグレン・グールドの『平均律クラヴィーア曲集』を聞きながら。

    0
    投稿日: 2014.11.28
  • 木暮荘物語

    木暮荘物語

    三浦しをん

    祥伝社文庫

    うす汚れたジョンこそ・・・。

    社会通念というある意味偏見に充ちた重圧を過去に背負ってしまった人たち。 また小暮荘を舞台に交差する悩める隣人たちの日常。 うす汚れた、けれど楽しそうなジョン。 シャンプーしてもらってないジョン。 シャンプーしてもらったジョン。 どちらがジョンにとって・・・。なんて考えても結局分からない。ジョンに聞いてみなければ。 結局あれやこれや悩んでも自分自身が『これでいいのだ』と思えるようになる事こそが、 一歩進める道なのかな。と。 そして小暮荘に縁のある人たち皆の明日はきっと明るい。

    3
    投稿日: 2014.11.19
  • 氷菓

    氷菓

    米澤穂信

    角川文庫

    ことばの世界が豊かで、古典部のメンバーも知的で気持ちいい。

    少し読み進めた段階で、う~んこれはなんとかせねば!なんせ知らない言葉・熟語や難解な文章がつぎつぎと現れる事に。結果クリップボードの満載さ加減たら!。 そしてそして『氷菓』序文の記なんぞは意味を解こうとする程に深く重く到底たどり着けそうにない私。でもその分、捨て置く訳にはいかない魅力的な存在となってしまったのです。 奉太郎のお姉さんからの手紙と電話の、何かを巻き起こしてくれそうな雰囲気が、謎が謎を呼んでこれまた面白い。

    5
    投稿日: 2014.11.07
  • 幽遊菓庵~春寿堂の怪奇帳~

    幽遊菓庵~春寿堂の怪奇帳~

    真鍋卓,二星天

    富士見L文庫

    和菓子を通しての妖怪つながり。

    縁が紡ぎ出す究極受身の妖怪つながりの前半。に引きずりまわされ、時にはツッコミを入れ、なんで高野山やのに関西弁ちゃうねん!みたいな。 いやしかし、たぶん、あの妖怪さんを際立たせるための手法かなと思ったりなんかして。 後半はどんな脱出劇が繰り広げられるのか、めっちゃ興味しんしん。これはもう、アインシュタインの相対性理論?(とはなんたるものかは全くもって分かりませんが)そんな感じ。飲み込まないで良く噛んで味わってください。 それと心惹かれるものは、話の軸となっている和菓子です。高野山の神秘的な空気には、自然と向き合った和菓子特有の優しい味わいが持ってこいなのです。

    4
    投稿日: 2014.10.20
  • 小野妖怪よろず相談処~平安編・弐~

    小野妖怪よろず相談処~平安編・弐~

    鋼雅暁

    いるかネットブックス

    きゅきゅう~っと、しゅりしゅり。

    きゅきゅう~っと抱きしめたい!しゅりしゅり頬ずりしたい!そんな感じの少年 篁や春明そして子鬼の剛奇たち。 平安の色彩豊かな身にまとうものや、衣擦れの気配。そして妖たちの姿形や動きを、もちろん天皇や少年たちも。 それらを一人一人一つ一つ丁寧に思い描いてゆくと、そこに見えてくるものは? 甘いもの食べた時のような気持ちと、いつのまにか微笑んでいる自分。 これからの少年たちの成長を見守りつつ、来るべき難儀な妖怪に一緒に立ち向かいたい。

    0
    投稿日: 2014.09.25
  • 星間商事株式会社社史編纂室

    星間商事株式会社社史編纂室

    三浦しをん

    ちくま文庫

    裏社史をあっと驚く奇襲作戦で!

    私の中の1パーセントもj知らなかった世界へようこそと手招いてくれた『コミケ』。少し勉強しました。熱気むんむんの会場の様子や多岐に渡る創作作品。 その中にどっぷり浸かっている幸代さんの、その止まらないあくまで突き進む力があるこそ、洋平さんとの不思議な生活の形が成り立つのかもしれない。 編纂室の目標とする、裏社史をあっと驚く奇襲作戦で世に知らしめようとする。 それと並行して、幸代さんの小説と『サリメニの女神』になりきりの小説・そして本間課長の自伝?小説も含め、計4作品盛りだくさんな同時進行!皆んな実にイキイキとしていて頼もしい限り。

    2
    投稿日: 2014.09.15
  • 夜市

    夜市

    恒川光太郎

    角川ホラー文庫

    異質な世界へようこそ。

    情景の描写がすごく新鮮に写り、吸い込まれそうな力を感じます。 例えば『夜市』のいづみが夜市を通り抜け、夜市が閉じられた時の夢の中での事。注目して下さい。 巻末に『私は永遠の迷子のごとく独り歩いている。私だけではない。誰もが際限のない迷路のただなかにいるのだ。』と。 そうかも知れない。しかし日々を送る事に精一杯でこのような事を考えることもなく、また考えたくもない。 本当に考えだしたら、このうっとおしい程の深く束縛された異質な世界にもぐり込んでしまいそう。ま、それはそれで・・・。

    3
    投稿日: 2014.08.28