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ゼロ起業
吉江勝, 北野哲正 / 実業之日本社
今まで培った経験・知識を起業に結びつけるヒントが得られます
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本書は、リスクが限りなく「ゼロ」で、今の自分のまま(「ゼロ」の状態)起業したいと思っている人向けの起業ノウハウが詰まった本です。
私は一介のサラリーマンで、自慢できる専門がないので「起業」はちょっと…無理、と尻込みしていましたが、この本を読むと、専門がなくとも、今まで培った経験・知識が起業に結びつく、そんなヒントが得られました。
本書では、まず、「ゼロ起業」を
『自分とクライアントとの知識差を武器に、競合(同業他社のライバルたち)のいない新機軸(自分がつくり出したオンリーワンのポジション)を打ち立てて起業すること』
と定義し、起業を成功させる2つの条件を明らかにします。
1. あなたの知識差ビジネスの種
2. ビジネスにおける新機軸の発見
その上で、具体的な7つの起業法を事例を交えながら紹介しています。
1. コンサルタント起業法
2. セミナー起業法
3. 出版起業法
4. 会員制ビジネス起業法
5. プロデュース起業法
6. コーチング起業法
7. サロン起業法
私が印象に残ったのは、「ファイブ・フォーカス」。これは、「あなたの知識差ビジネスの種」となる自分の強みと売りを発見する手法です。
具体的には次の5つの視点で、思ったことを列挙し、他者にはない自分の強みと売りを発見するというものです。
1. あなたが好きで情熱が湧くこと
2. あなたが今まで経験してきたこと
3. あなたが人からほめられたり、喜ばれたりしたことがあること
4. あなたのコンプレックス
5. 何の規制もなければやってみたいこと
本書を読む前に、私も似たような方法で自分の強みは何かを考えていたところだったので、意を強くしたとともに、背中を押された気分でも有りました。
著者の吉江さんが本書のおわりで、「起業」について次のように書いています。
『自分が心から好きで情熱の湧く仕事を、志や価値観の合う仲間とともに納得いくまでやり抜くことで、サラリーマン時代には想像もつかなかった報酬と感謝、喜びや共感の声をもらえるようになった。
自分の人生を自分の手で完全にコントロールできる幸せは、何物にも代えられない。充実と自尊心の高まり、そして、「自分の生き方は、これでいいんだ。間違いない」という心からの確信と平穏をもたらせてくれる。』
本書で語られるほど起業は甘く無いと自覚しているつもりですが、吉江さんの言われるように、起業が、「自分の人生を自分の手で完全にコントロールできる幸せ」は何物にも代えがたいものだとも思っています。
続きを読む投稿日:2015.09.23
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はじめての事業計画のつくり方
吉本貴志, 伊藤公健 / ディスカヴァー・トゥエンティワン
事業計画策定の基礎が学べます
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本書は、ディスカヴァー・トゥエンティワンが、グローバル化とIT化が進んだ激動の時代を生き抜いていくためのビジネススキルを提供する、「21世紀スキル」シリーズの本です。
本書では、事業計画の作り方のス…キルを学べます。
具体的には、本書では、まず、事業計画をつくる目的を明らかにしたうえで、事業計画をつくる以下の4つのステップの解説がされています。
1. 事業の意義を明確にする
2. ビジネスモデルを考える
3. 期待成果を検証する
4. 具体的アクションを明確にする
概念だけでなく、事例を使った説明も豊富で、理解の助けになります。
私も、業務で事業計画策定に携わることがありますが、このような基礎を学ぶ機会はなかったので、参考になりました。
本書を読んで印象に残ったのは、ミッションコーンという考え。
これは、事業の意義を明確にするミッションをつくるためのフレームワークの1つで、以下の3階層に整理されたものです。
・「ミッション」:目指す姿や提供する価値を定義したもの
・「ベネフィット」:ミッションを達成するために提供する価値を具体化したもの
・「エビデンス」:ベネフィットを生み出す根拠となるもの
私が本書を手にとったのは、会社の業務の参考というよりも、自分自身の人生計画を考えるヒントを求めていたからなので、ミッションコーンというフレームワークは、自分自身のミッションを考えるツールに使えそうだと思いました。
続きを読む投稿日:2015.09.12
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なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略
冨山和彦 / PHP新書
日本経済を考えるためのGとLというフレームワーク
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本書は、これからの日本経済を考えるためのフレームワークを提示した本です。
そのフレームワークは、GとL。
Gはグローバル経済圏を意味し、例えば自動車や電機産業など、グローバルな市場で活動する経済の…ことを指します。
一方、Lはローカル経済圏を意味し、例えば公共交通機関や飲食店、宿泊業等のサービス業などの、ローカルな市場で活動する経済を指します。
本書では、GとLは別の経済特性を持ったものだと認識し、それぞれに合った経済政策や戦略を考えることが重要だとし、Gの世界では資本生産性を上げる施策、Lの世界では労働生産性を上げる施策を提案しています。
GとLの考えに至る著者の問題意識は、それまでの日本の経済政策の論争が、競争を重視した新自由主義か、平等を重視した社会民主主義かの二項対立が、
『現実の経済社会で起こっている姿をまったく無視した、抽象化されたベースで議論しているだけではないのか』
というところにあります。
経済は競争も重要だけど、その結果格差が生まれては問題なので、その意味で平等も重要、ということをどう整理して考えればいいのかと思っていたので、GとLという視点の整理は、非常に分かりやすく理解の助けになりました。
今後の日本経済を考えるために有用なフレームワークだと思います。
以下は余談ですが、私が本書を読もうと思ったのは、2014年10月7日の文部科学省の有識者会議(※1)での冨山和彦氏の報告(※2)に興味をもったからです。
その報告では、これからの大学では、例えば、シェークスピアや経済理論ではなく、説明力や会計ソフトの使い方を教えるなど、「学問」よりも「実践力」を教えることが重要とされていました。
この主張に、非常に違和感を持ったのですが、本書を読んでその背景と主張の意図が理解出来ました。
※1「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」
※2「我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性」
続きを読む投稿日:2015.01.24
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異端児たちの決断 日立製作所 川村改革の2000日
小板橋太郎 / 日経BP
V字回復を果たした日立製作所の内幕に迫ったドキュメンタリー
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2014年3月期に5328億円の営業利益を計上し、23年ぶりに最高益を更新した日立製作所。
そのわずか5年前の2009年3月期は、7873億円という国内製造業史上最大の赤字を計上していました。
本…書は、文字通りのV字回復を果たした日立製作所の内幕に迫ったドキュメンタリーです。
主人公は、2009年4月に社長に抜擢された川村隆氏をはじめとする6人組。
川村氏は当時69歳。社内の出世レースから外れ、子会社の会長をしていたといいます。
このような「異端児」ともいうべき6人組は、これから目指すべき日立製作所のビジョンを定め、そのビジョンと資本の論理にもとづき、事業の選択と集中を行っていったのです。
一口に「事業の選択と集中」と言っても、オーナー企業やベンチャー企業とは違い、100年の歴史があり、傘下の会社は1000を超え、総従業員数は30万人を超える日立製作所。このような巨艦の改革は容易でないこと想像に難くないです。
例えば、これから日立製作所が目指すべきビジョンとして定めた「社会イノベーション事業」。このビジョンに向かい、巨艦をどう動かすか。
『「社会イノベーション」と言ってはみたものの、形がなければ社員はついてこない。川村らは早急にその「プロトタイプ」を作ってみせる必要があった。
新体制発足直後、六人組の最年少で、執行役専務から情報・通信担当の副社長に昇格したばかりの髙橋直也は、川村や三好、八丁地からこう指示を受けた。「社会イノベーションを形にしてみせる融合事業を作り出してくれ。当面は電力や社会インフラ事業とITの融合だ。』
これは一例ですが、本書を読むと、6人組が、それまでの日立製作所内部の経験則に囚われない手法で改革を実現していく様子がわかります。
実績を残しながらも、次世代の日立製作所のことを考え、地位に汲々としない川村隆氏の身の処し方がとても印象的で、この人だからこそ、改革が実現できたのだなと思いました。
続きを読む投稿日:2014.10.18
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経済のしくみをカラー図解で読み解く! 池上彰の経済のニュースが面白いほどわかる本
池上彰 / 中経出版
解説だけでなく、その先の「なぜ?」に答えてくれてます
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本書は経済ニュースを理解するための解説本で、取りあげられるテーマは下記の6つです。
1. 実はこうなっていた「景気」のしくみ
2. 知っておきたい「金融」のキホン
3. 「お金」と向き合うためのルー…ル
4. いまさら聞けない「株」の話
5. 「世界経済」の動きをつかむ
6. 「日本の借金」はこれからどうなる?
経済の基本的な部分から世界と日本の経済のこれからについて分かりやすくまとめられていると思います。
池上彰さんのニュース解説がためになると思う理由は、誰でもできる通り一遍の解説ではなく、読者や視聴者が感じている、その先の「なぜ?」に答えてくれることにあると思います。
本書で言うと、私の場合は、2001年から2006年に実施した日銀の「量的緩和」です。
「金利の引き下げではなく中央銀行の当座預金残高量を拡大させることによって金融緩和を行う金融政策」
「市中銀行は日本銀行に置いてある当座預金残高の額に比例して融資を行うことができる。量的金融緩和政策とは、この当座預金の残高を増やすことで、市中のマネーサプライ(マネーストック)を増やそうとする政策である」
というのが、量的緩和の通り一遍の解説です(Wikipediaからの引用)。
意味は、私も何とかわかりますが、問題はその先です。
そもそもゼロ金利になっても銀行から企業にお金が回っていないのに、なぜ、量的緩和が景気回復の施策になるのか、恥ずかしながら私にはさっぱりわからなかったです。
池上彰さんは、銀行が抱えていた不良債権のため、量的緩和を行っても銀行の融資額は増えなかったことを指摘し、
『世の中に出回るお金の量を増やすことを「量的緩和」といいます。しかし、お金が増えたから「給料が上がった!」なんて話は聞きません。「金は天下の回りもの」になっていないのです』
と言います。
私は、そういうことなのか、と合点した次第です。
続きを読む投稿日:2014.11.01
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「使命」ありき3つのステップ キャリアの成功とは何か
伊賀泰代 / ダイヤモンド社
キャリアを考えるときのフレームワーク
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本書は、キャリアを考えるときのフレームワークを紹介した本です。
これからキャリアを踏み出す若者はもとより、自分のキャリアについて考えざるを得なくなる私のような中年世代にも参考になる本です。
本書で…は、次の3つのステップで、キャリアを考えていくことが、キャリアを成功に導くといいます。
・ステップ1 自分が職業人生で達成したい使命が明確になる
・ステップ2 その使命の達成を自分の職業とできる
・ステップ3 職業人生におけるコントロールを握る
私もそうですが、おそらく多くのサラリーマンは、ステップ1の「自分が職業人生で達成したい使命」で立ち止まってしまうのではないかと思います。
そんな我々に対し、伊賀秦代氏は、こう助言してくれています。
『使命というと、「自分にはそんな大それたものはない」と思う人も多いだろうが、難しく考える必要はない。たとえば現在、筆者が職業上の使命と感じているのは、「日本における人材の最適配分に資する」ことだ』
『自分がどんな働き方や仕事に心躍るのかという条件を突き詰めていくと、その分野で突き詰めたい使命が見つかる』
『見つけるべきは「一生変わらない使命」でもないし、周囲を感嘆させるような高尚な使命でもない。その時点で自分自身が、人生の時間を費やす価値があると感じられるものを、そのまま言語化するだけでいい。組織や会社から与えられた業務目標に加え、個人として心からコミットできる使命を持って働くことは、組織に振り回されないキャリア形成への第一歩となるはずだ』
これで使命が見つかるかは、もう、その人の能力や情熱次第かもしれませんが、このような道案内は大変参考になると思います。
また、見つけた使命を職業とする(=ビジネス化する)ことは、これからの時代の重要なスキルであるという点は、私のような中年のみならず、次世代を担う若者の皆さんには重要な指摘であると思います。
『自分が実現したいことをビジネス化するという発想と、それを実現するための具体的なスキルは、これからの時代を生きる人にとって最も重要なキャリア形成スキルとなる』
ところで、本書の背景にある、伊賀秦代氏の一貫した考えは、
・組織に振り回されないキャリア形成
ということだと思います。
そして、自分の職業人生を自分でコントロールすることは、自分の人生においても主体的に生きることにつながると言います。
『仕事上のプロジェクトでリーダーシップを発揮することと、自分の人生設計において、進むべき道の選択を他人任せにせず、主体的に選び取ることは、まったく同じ概念なのである』
この点に関し、使命を見つけて職業化しても自分で仕事をコントロールできない例として、好きな歌を職業としつつも、仕事が事務所に振り回される歌手の例は、伊賀秦代氏の考えの理解の助けになる印象的な事例でした。 続きを読む投稿日:2014.02.05