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パリの皇族モダニズム 領収書が明かす生活と経済感覚
青木淳子 / 角川学芸出版単行本
お忍びパリ滞在記
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1922年から1925年までパリに滞在した朝香宮夫妻、その生活ぶりを残された領収書から読み解いています。タイトルからするとかなり難しそうですが、実際にはそんなことはなく、研究者ではなく一般の読者向けに…書かれた本です。
朝香宮夫妻といえば現在では東京都庭園美術館となっているアール・デコ建築の傑作、旧朝香宮邸で有名ですが、その「モダンさ」はどこから来たのか、というのが本書のタイトルの由来となっています。
領収書とはいっても現在の無味乾燥したものではなく、大判で美々しいロゴが入った見栄えのするものです。海外で買い物した際に免税申告用に出してもらえる明細が感じとしては近いでしょうか。あれをもう一段か二段、「おフランス」な感じにしたものを想像して貰えればいいと思います。取り上げられた領収書のほとんどは一ページまるまる使った大きな写真で掲載されていますので、何が書かれているか、実際に読み取ることができます。流麗な筆記体あり、タイプライターあり、店ごとに特徴があり見ていて飽きません。その他に必要に応じ、電報や地図、現地の写真なども掲載してあり、当時の様子を想像しやすくなっています。
ところで、朝香宮夫妻はお忍びで滞在ということになっていたらしく、正式な外交日程以外では皇族(朝香宮妃は明治天皇の皇女、つまり朝香宮は当時の大正天皇の義弟)としての身分を隠し、「朝伯爵夫妻」を名乗っており、領収書にもその名前が記載されています。ちょっと歴史ロマン溢れすぎじゃないかと思います。 続きを読む投稿日:2015.04.02
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合本 一刀斎夢録【文春e-Books】
浅田次郎 / 文春e-Books
三部作完結編
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浅田次郎版「新撰組」三部作完結編です。語り手が次々に変わった前二作と異なり、今作では斎藤一がひたすら語り手を務めます。京都から戊辰戦争、そして警視庁抜刀隊の一員として戦った西南戦争までです。そういう意…味では、厳密には「新撰組」モノとは言えないかもしれません。
前二作をお読みになった方ならお分かりかと思いますが、こんなにヒドい斎藤一は他の新撰組作品では見たことありません。にもかかわらず、(あるいは、だからこそ)他のどの斎藤一よりも人間的で、不思議なほど魅力的な人物となっています。……まあ趣味の違いはあるかもしれませんので、前二作を読んで浅田次郎版斎藤一がどうしても肌に合わないという方は回避した方がいいかもしれません。そうでない方は是非とも手に取ってご覧になってみてください。 続きを読む投稿日:2015.05.30
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せっかち伯爵と時間どろぼう(1)
久米田康治 / 週刊少年マガジン
原点回帰?
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『かってに改蔵』、『さよなら絶望先生』と続いた小ネタ羅列スタイルは健在。とはいえ直近の『絶望先生』と比べると下ネタが多く、初期の『改蔵』、あるいは後期『南国アイス』に近いノリです。古くからの久米田康治…読者であれば問題ないでしょうが、『絶望先生』の様な作品を求める向きには厳しいかもしれません。
また読んで不安になる著者の近況報告も健在です。ですので、本作を購入して著者の支援をしたい所です。幸か不幸か、本作はそれほど長くないですし。 続きを読む投稿日:2016.01.03
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帝国海軍 戦艦大全
菊池征男 / 学研M文庫
良い入門書
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帝国海軍の戦艦は数有れど、本書では太平洋戦争に参加した金剛、比叡、榛名、霧島、伊勢、日向、長門、陸奥、大和、武蔵を扱っており、色々と丁度良いかと。各艦ごとに一章を割き、戦歴のみらなず改装内容や歴代の艦…長までを網羅しています。また巻尾の付録では砲火を交えたアメリカ戦艦の概略も乗せられており、内容を理解する上での助けとなりました。
軍事史には疎く、他との比較は出来ませんが、入門書として最適な本でした。 続きを読む投稿日:2013.10.13
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リトル・ピープルの時代
宇野常寛 / 幻冬舎文庫
特撮に見る社会の変化
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結論の「ハッキングのように世界を変えることで良くしていくことができる」ってのは要は考え方次第、ってことでしょうか。結論は今一つですが、本論の昭和の社会情勢から見たウルトラマンから仮面ライダーへの転換は…中々面白い。それ以外の内容は同じ著者の『ゼロ年代の想像力』とそれほど変わりません。両方未読でどちらか一冊を読むのであれば、こちらをお勧めします。
続きを読む投稿日:2014.04.28
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銃・病原菌・鉄 下巻
ジャレドダイアモンド / 草思社