私と月につきあって
野尻抱介
ハヤカワ文庫JA
ゆるいんだけどハード
野尻さんのロケットガールシリーズ第3弾。 ストーリー自体はすごくゆるくてライトな感じで進んでいくんだけど,ロケットや宇宙船の挙動,宇宙飛行士の動作なんかがいちいち物理的に考えられていて,無理がない。もちろん,そこはSFなので,現在の科学技術では実現できていないところも多々あるんだけど,そこも科学・技術的に荒唐無稽じゃないところがすごい。その意味では,すごくハードに考えて練り抜かれたSFと言えると思う。 なんか,こう,「宇宙」というものに対して,すごく夢を与えてくれる。
1投稿日: 2014.06.22彼女と彼女の猫
新海誠,永川成基
KANZEN
猫の気持ち
読もう読もうと思いつつなかなか読めていなかったのだけど,とうとう電子書籍に!ということで,ようやく購入。やっぱり,電子書籍って本屋さんまで行かなくても本が買えるので,自分の時間が取れない身には非常にありがたい。 新海誠さんの同名のアニメーションを原作とした小説。主人公の女性とその飼い猫を中心に,さまざまな人と猫とが関わっている。自分自身,特に猫好きというわけじゃないんだけど,「ああ,猫ってこう考えているのかな」って思ってしまう。やっぱり,この小説では,猫たちの他の猫,ヒトへの想いっていうのがポイントなのかな。
2投稿日: 2014.06.06凍りのくじら
辻村深月
講談社文庫
少し不在(SF)
ストーリーの全編にあふれる「ドラえもん」の世界。『僕らはラブストーリーもSFも,一番最初は全部「ドラえもん」からなんだろう。大事なことは全部そこで教わった』そんな父を追いかける娘。他人と少し距離感を持ってしか接することのできない彼女は「少し不在(SF)」。大切なものを失いながらも,自分を見つけ,別の大切なものを見つけていく。
1投稿日: 2014.05.26ヴェイスの盲点
野尻抱介
ハヤカワ文庫JA
楽しいスペースオペラの時間です
宇宙船と有能なパイロット,悪役との対決と,SFの王道的な作品。でも,あまり「戦い」に重点が置かれていないので,気持ちよく読んでいけます。 また,野尻抱介さんのデビュー作ながら,野尻さんらしい科学的な描写が楽しめます。 SFだってサイエンス「フィクション」なんだから,科学的・工学的じゃないところがあってもいいじゃないというのもわかるのですが,やっぱり,宇宙空間で手足のついた人型ロボットで戦闘したり,大気中のように宇宙戦闘機が飛んだりというのはちょっと心の中で引っかかってしまう。
4投稿日: 2014.05.14まぐだら屋のマリア
原田マハ
幻冬舎文庫
罪の意識
死を考え,自分とは関係の無い場所まで行こうと,バスに乗って「尽果」という集落までやってきた紫紋。 東京の一流料亭の板場で見習いとして働いていた紫紋は,後輩を死に追いやってしまったという自責の念に駆られて,ここまでやってきた。そこでふと入った食堂「まぐだら屋」。そして,そこででマリアと出会う。 ここは,罪の意識に追われた人たちが集まるところ,
2投稿日: 2014.05.10ハーモニー
伊藤計劃
早川書房
意思とは何だろう
すべての人々が管理され,「健康的に生きること」が最優先されるようになった世界。 最善の生き方,最善の生活を外部から指示されながら生きていく,人々がそのような道を選び,調和していくとどうなっていくのだろうか。 人とは,意思とは何だろうか。 このようなすばらしいSFを書かれた伊藤 計劃さんだが,若くして亡くなられてしまったというのは非常に残念。
6投稿日: 2014.04.23女子高生、リフトオフ!
野尻抱介
ハヤカワ文庫JA
楽しく読めるSF
作品自体はかなり古いものだけど、今読んでも楽しく読める。少々ストーリーが粗っぽいところもあるけど。 野尻さんならではの軽妙で明るい雰囲気のSFを楽しみたい方にお勧め。
2投稿日: 2014.04.19インディペンデンス・デイ
原田マハ
PHP研究所
自由とは,独立とは
原田マハさんの本ははじめて読んだ。 どこかでつながる強く生きる女性達。 悩みや苦しみを抱えつつも,生きて,そして独立する。 「『自由になる』ってことは,結局『以下に独立するか』ってことなんです。ややこしい,いろんな悩みや苦しみから」 人と人とはつながっていながらも,一人じゃないからこそ独立する。自分自身の人生を歩んでいくために。 「今日が私の,独立記念日」 「カフーを待ちわびて」とかも読んでみたいな。
0投稿日: 2014.03.20想像ラジオ
いとうせいこう
河出文庫
語りかける言葉
想像ラジオ、それは誰もが聞ける放送ではない。 DJアークはあの日から想像ラジオのDJとして、たくさんの人たちに語りかけている。 このストーリーを読むと、自分が日々過ごしている毎日や家族や周りの人とのつながりというものがどれだけ貴重なものなのか、再認識させられる。
0投稿日: 2014.02.11永遠の出口
森絵都
集英社文庫
心の中の出口
人生っていうのは,古い部屋を出て,次の部屋に入っていくというののくり返しなのかもしれない。特に,子どもの頃は,「クラス」という部屋は毎年出口があるし,学校自体も6年もしくは3年で出口に達する。 自分をふり返ると,確かに学生時代までは定期的に出口があって,そこで心機一転していた気がする。でも,就職して社会人になると,出口の見えない大きな部屋に入ってしまっている。周りをよく見て,小さなものでもいいから出口を見つけないと。
0投稿日: 2014.02.09