KKさんのレビュー
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旅人 ある物理学者の回想
湯川秀樹 / 角川ソフィア文庫
科学者とは
4
こちらもノーベル賞物理学者,湯川秀樹博士の反省を綴った自叙伝。昭和30年代に朝日新聞に連載されたもののよう。
ただ,前に読んだ「ご冗談でしょうファインマンさん」と比べてしまうと,ちょっといまいち感が。…
湯川博士は,研究者一家の出身ということで,幼い頃からそのような進路を漠然と考えていたようだ。また,学校もいわゆるエリートコースを進み,先生や友人たちにも恵まれていた様子がわかる。その意味では,非常に恵まれた環境で育ったのだろう。
ただ,その環境を活かしてノーベル賞を取るまでの成果を出せたのは,博士の才能と努力の結果なのだろう。
現代の日本でも,このようなエリート教育というのはできるのだろうか。本当に恵まれた才能を伸ばすためには,エリート教育は必要だろう。
続きを読む投稿日:2015.11.03
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これは王国のかぎ
荻原規子 / 角川文庫
いざ,アラビアン・ナイトの世界へ!
4
現代日本の中学生の女の子が,ふと気づくとアラビアン・ナイトの世界の魔神族(ジン)になっていた。
異世界転生ものというとなんかラノベっぽい設定だけど,ちょっと違う感じ。ラノベも悪くないけど,もうちょっと…落ち着いた荻原規子さんのファンタジー世界。
読み終わった後,リムスキー・コルサコフの「シェヘラザード」が聞きたくなる。 続きを読む投稿日:2016.10.14
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ご冗談でしょう,ファインマンさん 上
R.P.ファインマン, 大貫昌子 / 岩波現代文庫
ノーベル賞物理学者の素顔
4
ノーベル賞物理学者ファインマンの逸話集。
実は,ファインマンさんのくわしい業績とか,あまり知らなかったり。量子力学とか,すごく苦手だし。
でも,この本を読むと,ファインマンの人間性というか,実は面白い…人だったんだなあというのはわかる。
割と,コミュニケーションが苦手だったり,ぶっ飛んだ逸話がいろいろあるみたいだけど,まあ,今だと発達障害とかに分類されてしまうのかな。でも,アインシュタインにしてもそういうタイプだったみたいだし,いわゆる「天才」っていうのはそういう人が多いのかも。 続きを読む投稿日:2015.10.25
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翼をください 上
原田マハ / 角川文庫
大空へ
4
第二次大戦前に,世界一周飛行をしたニッポン号とアメリカの女性飛行士アメリア・イアハートをテーマにしたストーリー。(ちなみに,フィクションになっている。)
この当時,まだ「飛ぶ」ということは冒険に近い部…分があった。その上,大陸間を横断するというのは,冒険そのもの。そんな飛行に飛び込んでいった,人々が生き生きと描かれている。
この物語の中,飛行機が魅力的に描かれているのは当然として,やっぱり原田マハと思わせる人の描かれ方が魅力的。 続きを読む投稿日:2015.07.25
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時砂の王
小川一水 / ハヤカワ文庫JA
歴史に「もしも」があったら
4
子どもの頃,今,自分が実際にとったのとは違う選択肢を選んだら,別の未来につながっているのだろうかと考えたことがある。自分個人の選択なんて,大したバリエーションはないのだけど,人類の存亡に関わるような大…きな選択肢だったらどうだろう。
最初に読み始めたとき,古代日本が舞台だったので,荻原規子さんの歴史ファンタジーのような印象を受けた。読み進めると,タイムトラベルもののSFで,過去の改変によるタイムパラドックスが非常に効果的に使われている。
なお,「フリーランチの時代」に収録されている「アルワラの潮の音」がこの話のスピンオフなので,もし両方とも未読であれば,先に「時砂の王」から読むことがお薦め。(私は先にフリーランチの時代を読んでしまったのだけど) 続きを読む投稿日:2017.02.28
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太陽の簒奪者
野尻抱介 / ハヤカワ文庫JA
気持ちのいいSF
4
野尻さんらしい読んでいてすっきりするSF作品。
おとぎ話のようなSFではなく,科学的な根拠も(ある程度ではあるけど)しっかりしていて楽しめる。
内容的には異星人とのファーストコンタクトだけど,こんなア…プローチもあったのかと思わせる。
SF好きなら,ぜひ読んで欲しい。 続きを読む投稿日:2013.11.21