
コンスタンティノープルの陥落(新潮文庫)
塩野七生
新潮文庫
世界史の中の登場人物の気分で
1453年 東ローマ帝国(ビザンツ帝国)滅亡 学校での世界史の学習の中では,この1行で終わってしまう。その1行をさまざまな立場・視点で,あたかもその時代にいるかのように感じながら読むことができる。 コンスタンティノープルという街は,単に東ローマ帝国の首都だったというだけでなく,ヴェネツィアやジェノヴァといった北イタリアの都市とも深いつながりがあり,このコンスタンティノープルの陥落自体にもこれら西欧の都市国家がからんでいたというのは知らなかった。これらの登場人物の一人称視点で読めるというのも,塩野七生さんのストーリーの特色だろう。 今まで,イスタンブール(コンスタンティノープル)という街自体,それほど興味は無かったのだが,これを読むと,東ローマ帝国からトルコに続く歴史の中心となった街だということに気づき,一度行ってみたいと思わされる。
2投稿日: 2017.02.05
ばいばい、アース 全4冊合本版
冲方丁
角川文庫
自分は何なのか?
これは,ジャンルとしてはファンタジーでいいのかな? 自分は何なのか,誰なのか,この世界は一体何なのか,そういう哲学的な問いが源流にある。 冲方丁さんらしいんだけど,まず世界の紹介みたいなイントロダクションがないので,最初はいったい何を言っているのかわからない状態から始まった。 いろいろとことば遊びが多いので,そのあたりもだんだん読み進めるうちに見えてくるかも。
2投稿日: 2017.01.30
永遠をさがしに
原田マハ
河出文庫
魅力的な登場人物たち
主人公の和音と,そのもとにやってきた新しい母親の二人。どのような生活が始まるかと思えば…。 それにしても,原田マハさんの描く人たちは,みな魅力的だ。そしてみな生き生きとしていて,心の底に秘めた強いエネルギを感じる。 個人的には,チェロといえば,バッハの無伴奏チェロ組曲が好きだ。(この本には出てこないけど) 最近聴いていなかったが,また聴いてみたくなってきた。
2投稿日: 2017.01.11
もうダマされないための「科学」講義
菊池誠,松永和紀,伊勢田哲治,平川秀幸
光文社新書
科学的な視点
今,世間にあふれているさまざまな情報の中には,科学的に怪しいものも多々ある。わかっている人はそれらを「怪しい」と思うことができるが,信じてしまい,さらに周りの人に広めてしまう人たちというのも確実に存在している。 そのような怪しい情報を「怪しい」と判断することができるための,バックグラウンドを育てていくことが必要なのだろう。 また,リスクに関する考え方も重要だ。「発がん性物質」「放射線による被害」など,リスクの定量的な判断ができないと,「リスクがゼロではない」=「危険」という判断をしてしまいかねない。 ぜひ,多くの人にこの本を読んで,科学的な視点を持ってもらいたい。
1投稿日: 2017.01.03
喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima
森博嗣
講談社文庫
学問には王道しかない
この小説は,森博嗣さん自身の自伝的な小説とのことだが,ストーリーの中の喜嶋先生のような人に出会えるかどうかというところで,人生は大きく変わるのかもしれない。解説にも書かれているが,夏目漱石の「こころ」の「先生」と同じ雰囲気を持っている。学問への向き合い方を考えてみよう。
0投稿日: 2016.12.14
作家の収支
森博嗣
幻冬舎新書
森博嗣さんの勤勉さがわかる
作家,森博嗣さんのこれまで(2015年まで)の収支が赤裸々に書かれている。本に関わる仕事をしている人,したい人は,ぜひ読んでみるべきだ。 森博嗣さんといえば,某国立大学工学部助教授の身で「すべてがFになる」でデビューされた天才作家。この本を読んでも,その天才ぶりがわかる。 森さんは,自分自身のことは「マイナな作家」だと言われているが,決してそんなことはないだろう。なので,この収支というのは作家さんたちの中でも当然上位に分類されるものだとは思うが,それを支えているのは,森さんの超多作ぶりなのだろう。(もちろん,作品が面白いことが大前提だが)19年間で約280冊の本を出すというのは,月1冊以上のペースだ。 しかし,森さんがミリオンセラーを出していないというのは実はちょっと意外。
1投稿日: 2016.12.04
太陽の棘
原田マハ
文春文庫
沖縄の絵
第二次大戦直後の沖縄での,米軍軍医と現地の画家たちとの物語。 実のところ,沖縄自体行ったことがない。なので,沖縄のこと,歴史のこと,ともに学校や本などから得た知識でしかない。それであっても,戦争で破壊され,米軍占領下にあった沖縄というのは生きることすら大変だったろう。 そんな環境下であっても,画家たちは絵を描いていた。画材の入手も簡単ではないが,芸術村をつくり寄り添って生きていた。 いつも繰り返すが,原田マハさんの書く「絵」のストーリーはすばらしい。この本の中で「絵」といえば,表紙だけなのに,ストーリーの中で描かれる「絵」たちが頭の中に浮かび上がる。まあ,私自身が絵の才能が皆無なので,ディテールのまったくない,ぼやっとしたイメージなのだけど。
3投稿日: 2016.12.01
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
フィリップ・K・ディック,浅倉久志
早川書房
ヒトとは何なのか
映画「ブレード・ランナー」の原作で,SFの名作ながらも,今まで読んだことがなかった。 映画の方はずいぶん前に見ていたんだけど,正直よくわからなかった。映像は印象的だったんだけど。 人間とは何なのか,アンドロイドとの違いは?今,人工知能・AIといった言葉がもてはやされているが,ここで出てくるアンドロイドのような人工知能は,まだまだSFの世界の話だ。でも,人間のように振る舞う人工知能と,それを積んだアンドロイドが出てきたとき,人間とアンドロイドはどこで区別されるのだろう。 とりあえず,一度は読んでおくべき本だと思う。
1投稿日: 2016.11.25
BISビブリオバトル部1 翼を持つ少女 下
山本弘
東京創元社
本,本,本
いよいよ,ビブリオバトル本編。(上巻は,導入) 本の紹介というビブリオバトルの本筋はあるのだけど,それ以上に山本弘さんの思いというのが伝わってくる気がする。 それにしても,とにかく本,本,本。よくもこんなにたくさんの本が出てくるものだと感心してしまう。
0投稿日: 2016.11.21
BISビブリオバトル部1 翼を持つ少女 上
山本弘
東京創元社
本を読む楽しさを伝えよう
推薦したい本の魅力を語り合って,もっとも読みたいと思われる本を選ぶゲーム,「ビブリオバトル」。 「本の知名度,値段,文学的価値,歴史的価値…そういった要素を考慮する必要は一切ありません。純粋にあなたが読みたいと思った本に投票してください。」 高尚っぽく見えるノンフィクションや純文学じゃなくとも,ラノベなんかでもいい,とにかく「読みたい本」を選ぶ。なんて楽しそうなんだろう。 それにしても,SFはまだほんの初心者なので,知らない作家・本が山のようにあるようだ。最近,この本の著者の山本弘さんをはじめ,日本人のSFをちょくちょく読んでいるけど,海外のSFにも手を出したくなってきてしまった。
0投稿日: 2016.11.21
