豚山田さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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地球図
太宰治 / 青空文庫
「その信を固くして死ぬるとも志を変えるでない」にハッとする
4
西暦1700年頃の物語。
布教の為に日本に辿り着いたロオマン人のシロオテは、幕府に捕縛され獄中死をします。
彼は己の使命に忠実で、獄中にあっても恨みごとを言わず、僅かにでも布教の機会があれば前向きに教…法を説こうとする姿はいじらしくもあり、法なき時代への無力感も感じさせます。
「その信を固くして死ぬるとも志を変えるでない」という彼の最期の言葉に、作者はどの様な気持ちを込めたのか。
僕自身、自らの信念を振り返りハッとさせられるものがありました。
平凡なる本読みの身とて、作者の伝えんとするものが響いたと信じたいものです。 続きを読む投稿日:2015.02.01
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虚(うつろ)の王
馳星周 / 角川文庫
期待通りの展開に、期待通りに引きずり込まれてしまう快感
4
氏の作品は不夜城以外で初でしたが、良くも悪くも期待を裏切らない展開でした。
しかしこれだけ結末まで何が起こるか予測がついてしまう物語にも関わらず、ページを捲らされ先が気になってしまうのは、作者の持つ魔…力としか言いようがありません。
この投げ槍でぶっきら棒な文章に浸かっているだけで、自分も気だるげで刹那的な人生の裏路地を歩いているかの様に錯覚し、その行き着く先を見てみたいという昏い欲求が肚の底でのたりと鎌首をもたげるのですから、むしろ読み通りの展開に期待をしてしまうのは当然の事とも言えるのでしょう。
面白かった。 続きを読む投稿日:2014.10.13
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龍ヶ嬢七々々の埋蔵金1
鳳乃一真, 赤りんご / ファミ通文庫
いくらなんでも詰め込み過ぎでは
4
掴み処のない本でした。
当たり障りのない物ばかり詰め込まれ、結局まともに使えるものが一個も無い福袋の様な…。
一人暮らしで美少女と同居、ゾンビ(幽霊)、学園都市、宝探し、ミステリ的トリック、マジック…アイテム、バトル、イイコト言う系、世界的規模の陰謀、トンデモ女性キャラとツッコミ系主人公のお笑い進行…ついでにこの先アパートに女の子ばかり引っ越してきてハーレムが出来れば完璧という所でしょうか。
全部が無難でしたが、じゃあ続刊に何を期待するかと聞かれると、特に無しとしか言いようが無いかと。
先に進むのはちと苦しいなぁ。 続きを読む投稿日:2014.04.07
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やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(イラスト簡略版)
渡航, ぽんかん8 / ガガガ文庫
半沢直樹辺りが好きなら結構楽しめるのかも
4
2巻を買ったので復習。
改めて読むと善悪が明確な対立構図に驚き。
ラノベ読者層はこういった偏った価値観は却って受け入れられないと思ったのですが。
自分も含め半沢直樹辺りが好きなら結構楽しめるのか…も。
ただ主人公が恵まれていて「ぼっち」という言葉が宙に浮いていたのが物語を薄くしていた様な。
重松清の疾走辺りのぼっち感があればもっと感情移入が出来た気がします。
あとイラスト頼みの描写には苦言を。
自分はしばしば絵無し版を買うので描写が薄いと情景が見えず途方に暮れてしまいます。
そゆことで準備完了。
次は人気作の本領が見れるか? 続きを読む投稿日:2014.06.02
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機動警察パトレイバー 風速40メートル
伊藤和典, 高田明美 / 富士見ファンタジア文庫
ほぼ映画の台詞そのままで、ノベライズとしては完璧??
4
中学時代に観た劇場版が余りに名作。
確か当時はレンタルで借りた際、TVの前にラジカセを置いて録音し、勉強と偽っては机に向かって繰り返し脳内で映像をリフレインさせていた事を思い出します。
本作はその脚本…家さん作ということで、何と台詞の99%が映画のまま(本人感覚)。
お蔭で見事に当時の映像が蘇り、本を読むというよりは次なる台詞を思い出すという回想法の様相に。
残念なのがボリューム不足な点。恐らく映画では描き切れなかった部分が在る筈で、それを詳らかにして欲しかった。
しかし思い出を呼び起こすには良い作品。
楽しめました。 続きを読む投稿日:2014.05.25
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宵山万華鏡
森見登美彦 / 集英社文庫
このままでは宵山が神秘的で摩訶不思議なお祭りに……!
4
つくづく不思議な魅力を持った作品を紡ぐ方と感心しきり。
氏の作品に科学的根拠を追うのはとうに諦めましたが、さりとて百鬼夜行を望む類のものでもない。
その微妙な曖昧さの中に心を委ねると、当たり前の風景…の片隅に当たり前でない何かが潜んでいる気になるのが不思議な所。
本作は祇園祭の宵山を舞台に重なる人間模様が描かれたものですが、京都に全く縁のない自分の白紙に近い宵山に神秘的なイメージが重ね塗りされ、現実と幻想の狭間に在る様な不思議なお祭りが定着してしまったのが可笑しくもあり困った所。
これは一度宵山を見ねばなりません。 続きを読む投稿日:2014.04.06