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豚山田さんのレビュー
いいね!された数471
  • 青森

    青森

    太宰治

    青空文庫

    ひたすら真っ直ぐな愛情と尊敬の念に心が温まる

    氏が中学時代に四年間親戚の家に預けられていたとの事、その時にお世話になった「おどさ」との思い出を書き綴った短い手記の様でした。 氏の作品内では、実家である津島家での思い出について、特に直系の身内に対しては余り好ましくない様な表現で書かれている事が多かったのに対し、この「おどさ」についてはひたすら真っ直ぐに愛情と尊敬の念を込めている事に大変驚きました。 思いがけず気持ちが温まる文章。 また「おどさ」に買った棟方志功の無名時代の絵が、今では値上がりしているだろうと自慢げに語る様子は氏らしい俗っぽさで楽しくなります。

    2
    投稿日: 2014.09.01
  • 失敗園

    失敗園

    太宰治

    青空文庫

    氏の擬人化コメディは外れがありません

    ちょっと太宰治を本気で取り組もうと、無名の小作品からすべて青空文庫ものを一気にダウンロードしてきました。 こうなると何がどの時期の、どんな作品なのだかさっぱり分かりませんが、スタートはまずは笑えるものがどうしても読みたい! となり、明らかにそれっぽいのから開けてみることに。 正解でした。 家庭菜園の失敗した作物たちが自嘲気味に自らの身の上話を囁き合うという内容で、畜犬談やお伽草子にも見られた擬人化によるコメディタッチの語り口調は、氏の作品の中でも最も好物とする所。 思わずニヤニヤとしてしまいます。 もっと長ければ…

    2
    投稿日: 2014.09.01
  • きまぐれロボット

    きまぐれロボット

    星新一

    角川文庫

    子供とのコミュニケーションツールに最適

    七歳の長男がだいぶ本が読めるようになってきたので、コミュニケーションツールとして。 長男にはつばさ文庫版を送り、同時に読んで感想を言い合うという事を試してみました。 そういう意味ではショートショートという形式は非常にいい具合。 互いに読むペースが違っても感想が言い合えるのが良かった。 内容的には、何作かは「ほほう」と唸らせられるものもありましたが、過去に読んだ氏の作品に比べると捻りがソフトなものが多かったでしょうか。 良かった作品としては「災難」ということで長男とも一致。 「悪魔」のシュールさはまだ伝わらなくて残念。

    7
    投稿日: 2014.08.31
  • 機動戦士ガンダム I

    機動戦士ガンダム I

    富野由悠季,美樹本晴彦

    角川スニーカー文庫

    名作の歴史的プロローグは描写が圧巻でお見事

    家が厳しく、TVを余り観せて貰えなかった豚山田少年が夢中になっていたのがこれ。 しかし当時は映像で観れない欲求を本で晴らしていた様なものだったので、TVシリーズと異なるストーリーに不満を感じていたものでした。 ところがTVのストーリーを忘れ去った今、改めて読み直すとその様な違和感は全くなし。 むしろニュータイプ覚醒という本作の主要なテーマの導入部がすっきりと纏められており理解しやすかったです。 特にアムロ、シャア、ララアによる覚醒の描写は圧巻の一言。 作者の作家としての力量も改めて目の当たりにしました。 やはり名作。

    1
    投稿日: 2014.08.31
  • 私の男

    私の男

    桜庭一樹

    文春文庫

    嫌いではないが吸った気もしない。葉巻の様な物語。

    結末の曖昧な物語は葉巻に似ていると感じました。 肺に入れずに味と香りだけを愉しむんだと言われても、煙草との根本的な愉しみ方の違いに戸惑うばかり。 それ自体は嫌なものでもないのだけれど、煙草吸いには芯の所で相容れない、満足できない、そんな感覚。 グロテスクだけど純粋な性愛、現在から過去へと遡っていく形式、秘められた謎。 綺麗な文体とも相まって先へ先へと読ませてくれたのですが、やはり人が一般的な概念から道を外すにはそれなりの理由、つまり結論が欲しくなってしまう。 嫌いではないが吸った気もしない。 そんな感じの物語でした。

    6
    投稿日: 2014.08.28
  • “文学少女”と死にたがりの道化【ピエロ】

    “文学少女”と死にたがりの道化【ピエロ】

    野村美月,竹岡美穂

    ファミ通文庫

    想像以上にしっかりと太宰治を活用した物語

    超有名で、しかも自分もハマっている太宰治を題材にした作品とのこと、読まぬ訳にはいかぬとばかりに手に取る。 成程、人間失格をベースに話を進めて、世間の抱く太宰作品へのレッテルを利用したオチに持っていくという、想像以上にしっかりと太宰治を活用した物語でした。 むしろ太宰スキーでない方が面白く読めたのではないかと。 気になったのは、人間失格をベースにした為か、人の死の概念を物凄く軽く捉えている様に感じられた所です。 人が自分で死ぬって大変な事だと思いますよ。 あと本を食べる妖怪はこの物語に必要だったのか? 最大の謎です。

    2
    投稿日: 2014.08.27
  • イニシエーション・ラブ

    イニシエーション・ラブ

    乾くるみ

    文春文庫

    怪しんでいても、勘繰っていても、椅子からひっくり返ってしまう結末

    否が応でも聞こえてくる言葉。 イニラブにはやられるよ。椅子からひっくり返るくらいやられるよ、と。 何だよぉ、そんなこと聞いたら最初から勘繰った眼で読んじゃうから結末見抜いちゃうんじゃないの? ほらほら、序盤から何か怪しいのきましたよ…。 あれ? 後半の展開が勘繰ってたのと違うな。 しかし、恋愛ものってどうして結局こういう…あれ、え? ええ? どえええ!? と椅子からひっくり返りました。 いや、これは凄い。 身構えていてもやられました。 しかも、思い返せばヒントが散りばめられていたにも関わらずこの体たらく。 鈍いのかな…。

    11
    投稿日: 2014.08.24
  • GO

    GO

    金城一紀

    角川文庫

    ちょっとだけ毒の含んだ、笑える身上話?

    非常に重たい身上話を、強がって笑い話にしたという感じの物語。 ちょっとだけ、と思って手に取ったが最後、気付けば終いまで読まされていました。 大変楽しく、それだけに日本人として胸の奥の奥にまで滲み込んで来られて針でつつかれた様な、逃れ切れない痛みも感じさせられる作品でした。 ただ興味をもって読めたのは個々の細かいエピソードであり、物語全体としての妙を余り感じなかった気もしました。 ノンフィクションを読んでいる感じとでも言いますか、物語性を求めてはぐらかされてしまったとでも言いますか。 面白ければ万事OK! であれば。

    3
    投稿日: 2014.08.24
  • アクロイド殺し

    アクロイド殺し

    アガサ・クリスティー,羽田詩津子

    クリスティー文庫

    嫌ぁな予感をしたい方必読の書

    日曜夕方、独居中年の部屋から「ブラぁボォ!」との叫びと共にまばらな拍手が聞こえたとしても怯えることはありません、お隣さん。 恐らく彼はアクロイド殺しを読了しただけなのだと思います。 そんな侘しい話はさて置き、オリエントでは味わえなかった氏の真価を見た気がしました。 これは面白かった! 所謂フーダニットの真骨頂。 登場人物の巧みな使い方で真相を消臭した読ませ方にも唸らせられますが、それを終盤徐々に緩めて読者に嫌な予感を植え付けていく展開では頁を捲る奴隷と化すしか道はありませんでした。 今日という記念日を覚えておこう。

    3
    投稿日: 2014.08.17
  • フルメタル・パニック!-サイドアームズ-音程は哀しく、射程は遠く

    フルメタル・パニック!-サイドアームズ-音程は哀しく、射程は遠く

    賀東招二,四季童子

    富士見ファンタジア文庫

    宗介の活躍しないフルメタはマヨを失くした一平ちゃん的な侘しさ

    愛すべきフルメタに読み残しがあるのをすっかり忘れていました。 とはいえ元来本編にしか興味を保てない性質ですので、手に取らないという選択肢も当然あったのですが、元々このシリーズ自体、外伝的短編を本編と絡ませて楽しむのが本流と捉えていましたので、であれば本作も読んでおくべきなんだろうなぁ、と漠然と思ったまま忘れていたのでした。 さて宗介の活躍しないフルメタはマヨを失くした一平ちゃん的な侘しさを感じましたが、作者の辻褄合わせの妙が光った作品がここにも含まれていて十分に楽しませていただきました。 最後の話がお勧めです。

    0
    投稿日: 2014.08.15
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