豚山田さんのレビュー
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オーデュボンの祈り
伊坂幸太郎 / 新潮文庫
良く言えば天才的、悪く言えば理解不能。
14
良く言えば天才的、悪く言えば理解不能。
氏のデビュー作との事ですが、確かに若々しさというか尖った印象を受けました。
虚と実を織り交ぜた不条理な世界観は何故の連続で頁を捲る推進力にはなっていましたが、そ…れも納得できる解答や伝えたい命題が明確であってこそ。
後期クイーン問題やカオス理論の独自解釈については解りやすく述べられていたものの、ただそれだけを伝えたいにしては舞台装置が異質で、もっと別の命題があると想像させられるのが自然でしょう。
そこが読み取れない所に読後をモヤっとさせている一因があるのかと。
読解力のある方向け。 続きを読む投稿日:2014.06.08
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夜は短し歩けよ乙女
森見登美彦 / 角川文庫
楽しくて楽しくて、別れるのが寂しい
14
はぁ、と寂寥感の詰まった溜息をひとつ。
読了後に感じるこの感覚こそ、自分にとっての嘘偽りない良書との出会いの証なのでしょう。
あんなにも大騒ぎして遊んだ友人達が帰宅し、ポツンと残されて見回した自分の…部屋が広く感じられた様な。
夏休みの帰省先から帰る車中の様な。
この本が何故面白かったなど後から考えればいい事。
まずはソファに深々と体を沈め、この気怠げな余韻を味わう所から始めようと思います。
とはいえ感想を少し。
とにかく楽しい本。
文章が、構成が、人物が、読み手を楽しませようと一生懸命な一冊。
素晴らしい出会いに感謝です。 続きを読む投稿日:2014.04.05
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イニシエーション・ラブ
乾くるみ / 文春文庫
怪しんでいても、勘繰っていても、椅子からひっくり返ってしまう結末
11
否が応でも聞こえてくる言葉。
イニラブにはやられるよ。椅子からひっくり返るくらいやられるよ、と。
何だよぉ、そんなこと聞いたら最初から勘繰った眼で読んじゃうから結末見抜いちゃうんじゃないの?
ほらほら…、序盤から何か怪しいのきましたよ…。
あれ? 後半の展開が勘繰ってたのと違うな。
しかし、恋愛ものってどうして結局こういう…あれ、え?
ええ?
どえええ!?
と椅子からひっくり返りました。
いや、これは凄い。
身構えていてもやられました。
しかも、思い返せばヒントが散りばめられていたにも関わらずこの体たらく。
鈍いのかな…。 続きを読む投稿日:2014.08.24
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タイム・リープ<上> あしたはきのう
高畑京一郎, 衣谷遊 / 電撃文庫
極上、至福、痛快・・とにかく最高の時間遡及エンターテインメント
8
再読。ふと、焼酎でも飲みながら至福の時間を過ごしたいなぁ、等と思い引っ張り出したのがこれでした。
本作は自分の読書史における最高の一冊としている物語で、既に二桁回以上も読み返している自分的モンスターノ…ベルです。
どこがいいのかと訊かれても、ここで語るには枠が狭すぎますが、題材、展開、キャラクター、伏線、恋愛、何処を掘っても自分の陳腐な語彙では極上としか出てきません。
特に天才・和彦の存在感は圧倒的で、翔香の時間軸の外から絡まった事象を理解し、巧みにほどいていく様は痛快の一言です。
トイレに行く間も惜しんで下巻へ。 続きを読む投稿日:2014.02.05
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涼宮ハルヒの憂鬱
谷川流 / 角川スニーカー文庫
実はよく練られたSFです
7
再読。果たして何度目の再読でしょうか。。
中学生ごろに、タイラーやらオーフェンやらにハマり、しかしいつしか熱も冷め、すっかり忘れてしまっていた所を「やっぱラノベ楽しいわ」と思い出させてくれたのが、本作…でした。
本シリーズの楽しいところは、何と言っても時間跳躍による伏線の回収なので、真骨頂はこの先というところなのですが、当然本作単体でも大変素晴らしい作品です。一見、何処にでもありそうなドタバタ学園ものを、一転して一気に未体験のSFにシフトしていく様は何度読んでも驚きで飽きさせません。
作者は只者ではないな、と感じずにはいられない一冊です。 続きを読む投稿日:2014.01.04
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とんび
重松清 / 角川文庫
子供への深い愛情にただただ涙
7
いやぁ、泣きました。自分にも息子がいるだけに相当堪えました。
ヤスさんの息子への愛情が伝わりましたし、それをどう表現していいのか困惑する様子には共感できましたし、自分は子供にここまでのことをしてあげら…れているのだろうか・・と不安にもなりました。
良かれ悪しかれ、感情を揺すぶられるのが良い物語と信じる自分としては、これ以上ない物語と出会ってしまったことになりますね・・。
子供がまだ小さいですので、これからも成長とともに再読しては泣くことでしょう。
その時を心待ちにしつつ。
とりあえず明日は家族に電話でもしますか・・。 続きを読む投稿日:2014.01.22